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恁
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こ
ふりがな文庫
“
恁
(
こ
)” の例文
九月は農家の
祭月
(
まつりづき
)
、大事な
交際季節
(
シーズン
)
である。風の心配も兎やら
恁
(
こ
)
うやら通り越して、先
収穫
(
しゅうかく
)
の見込がつくと、
何処
(
どこ
)
の村でも祭をやる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
庄次も
恁
(
こ
)
ういふ小作人の仲間で殊に心掛の慥な人間でありました。彼の
老
(
としよ
)
つた父は毎年夏の仕事には屹度一枚の瓜畑を作りました。
白瓜と青瓜
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
久しぶりで、
恁
(
こ
)
うして火を置かせたまゝ、気に入りの小間使さへ遠ざけて、ハタと
扉
(
ひらき
)
を
閉
(
とざ
)
した音が、
谺
(
こだま
)
するまで響いたのであつた。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
ああ清水さん! 清水さんは憤っていなさるのか知ら。此間も妙に何か嫌味をお言いだったが、どうして世の中は
恁
(
こ
)
うしたものだろう。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
へえ、さようでござえんすと申しあげると、晴二郎は内地で死んだんだから、金は下げる訳にいかん、帰れ帰れと
恁
(
こ
)
う云うんでしょう。
躯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
▼ もっと見る
斑猫蕪作
(
はんみょうぶさく
)
先生は時々
恁
(
こ
)
んな風に思ひつかれることもあつたが、兎に角斑猫先生はアッサリと銀座裏のアパアトへ引越してきた。
群集の人
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
恁
(
こ
)
う何日も売れないで居ると、
屹度
(
きつと
)
、自分が平家物語か何かを開いて、『うれしや水、鳴るは滝の水日は照るとも絶えず、………フム面白いな。』
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
かれの
恁
(
こ
)
ういう詰らない考えは、殆ど熱病のようにかれのからだのなかに広がってゆくのであった。埃と煤と紙きれと。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
私は三越に行く
度
(
たび
)
に、なるほど西洋のデパートメント・ストアを翻訳したら、
恁
(
こ
)
うなるのだなと感心する。恐らくこれ等はうまく翻訳したものであらう。
翻訳製造株式会社
(新字旧仮名)
/
戸川秋骨
(著)
清水
(
しみず
)
がこう
尋
(
たず
)
ねたのを
潮
(
しお
)
に、
近藤
(
こんどう
)
は悠然とマドロス・パイプの灰をはたきながら、大学の
素読
(
そどく
)
でもしそうな声で、
徐
(
おもむろ
)
に西洋の
恁
(
こ
)
うした画の講釈をし始めた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
恁
(
こ
)
う考へたとき自分が生きてゐること、憎みながら、厭ひながらも生きてゐる理由が分つたやうな気がした。恥づることも、恐るゝこともいらないやうに思つた。
愛人と厭人
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
恁
(
こ
)
う考えて来るとそんな強い力、立派な人格を備えた先生と云うものが果してそんなに沢山あるか疑われる。然しそんな先生が沢山なければ多数の幼き国民をどうしよう。
人間性の深奥に立って
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
想起
(
おもいおこ
)
すと夫が既に過去の事とは思はれ無い。先あ聞き給へ、其真相と云ふのは実に
恁
(
こ
)
うなんだ。
野球界奇怪事 早慶紛争回顧録
(新字旧仮名)
/
吉岡信敬
(著)
歴史
(
れきし
)
で
見
(
み
)
ても
最初
(
さいしよ
)
から
出
(
で
)
て
來
(
く
)
る
伏羲氏
(
ふくぎし
)
が
蛇身
(
じやしん
)
人首
(
じんしゆ
)
であつて、
神農氏
(
しんのうし
)
が
人身
(
じんしん
)
牛首
(
ぎうしゆ
)
である。
恁
(
こ
)
ういふ
風
(
ふう
)
に
支那人
(
しなじん
)
は
太古
(
たいこ
)
から
化物
(
ばけもの
)
を
想像
(
さうざう
)
する
力
(
ちから
)
が
非常
(
ひぜう
)
に
強
(
つよ
)
かつた。
是皆
(
これみな
)
國土
(
こくど
)
の
關係
(
くわんけい
)
による
事
(
こと
)
と
思
(
おも
)
はれる。
妖怪研究
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
この会社員岩見慶二と名乗る謎の青年の語る所は
恁
(
こ
)
うであった。
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
返事は即ち
恁
(
こ
)
うだった。
旅客機事件
(新字新仮名)
/
大庭武年
(著)
旧
停車場
(
ステエション
)
の
方
(
かた
)
を見ながら言つた、媼がしよぼ/\した目は、
恁
(
こ
)
うやつて遠方のものに
摺
(
こす
)
りつけるまでにしなければ、見えぬのであらう。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
此
(
こ
)
の
野郎
(
やらう
)
こんな
忙
(
せは
)
しい
時
(
とき
)
に
轉
(
ころ
)
がり
込
(
こ
)
みやがつてくたばる
積
(
つもり
)
でもあんべえ」と
卯平
(
うへい
)
は
平生
(
へいぜい
)
になく
恁
(
こ
)
んなことをいつた。
勘次
(
かんじ
)
は
後
(
あと
)
で
獨
(
ひと
)
り
泣
(
な
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「何でもいいから芝へ行きましょう。
恁
(
こ
)
うなれば見えも外聞もありゃしない」お島はそう言って
倦
(
う
)
み
憊
(
くたび
)
れた男を引立てた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
おあいが
恁
(
こ
)
ういうと、そとでは、静かに音もしなかった。が、やさしい女らしい声で、透きとおるように言った。
蛾
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「何を言うのだねえ、お前は。姉さん達やお前が可愛いばかりに
遠々
(
とおとお
)
しい処を
恁
(
こ
)
うして来たのじゃないか」
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
一体、此のたびの事の
発源
(
おこり
)
は、
其処
(
そこ
)
な、お
一
(
いち
)
どのが
悪戯
(
いたずら
)
からはじまつた次第だが、さて、
恁
(
こ
)
うなれば高い
処
(
ところ
)
で見物で事が済む。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「お前の体が、たといどういうことになっていようとも、
恁
(
こ
)
うやって
己
(
おれ
)
が来た以上は、引張って行かなくちゃならない」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
わしや
今日
(
けふ
)
らお
内儀
(
かみ
)
さん
處
(
とこ
)
さ
行
(
え
)
くべと
思
(
おも
)
つて
居
(
ゐ
)
たら、
何
(
なん
)
ちこつたか
恁
(
こ
)
んな
騷
(
さわ
)
ぎではあ
行
(
い
)
くも
出來
(
でき
)
ねえで、わしや
昨日
(
きのふ
)
歸
(
けえ
)
つて
來
(
き
)
た
處
(
ところ
)
なのせえ、お
内儀
(
かみ
)
さん
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
乃公
(
おれ
)
は
窃
(
そっ
)
と校長の室へ行って見た。来ない筈だ。木乃伊はストーブの側で椅子に
凭
(
もた
)
れて、心持好さそうに
居睡
(
いねむり
)
をしている。
恁
(
こ
)
うなると校長も他愛ないものだ。乃公が
近傍
(
ちかく
)
へ行っても知らずにいる。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
画工 (あふりたる
児
(
こ
)
の手を離るゝと同時に、
大手
(
おおで
)
を
開
(
ひら
)
いて)
恁
(
こ
)
う成りや凧絵だ、
提灯屋
(
ちょうちんや
)
だ。そりや、しやくるぞ、水
汲
(
く
)
むぞ、べつかつこだ。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
私ア
恁
(
こ
)
う恁うしたもので、これこれで出向いて来ましたって云うことを話すと、直に夫々掛りの人に通じて、忰の死骸の据ってるところへ案内される。
躯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
恁
(
こ
)
んな状態でありますから消極的な身の持方をして居れば案外に苦勞のない生活がして行けるのであります。彼等には幸にも非望を懷くものはありません。
白瓜と青瓜
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
人間、
恁
(
こ
)
うは成りたくないものだわね。——其のうちに目が覚めたら
行
(
ゆ
)
くだらう——別にお座敷の
邪魔
(
じゃま
)
にも成るまいから。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
それじゃ御父さん
恁
(
こ
)
うしましょう。私も長いあいだ世話になった家ですから、これから
忙
(
いそが
)
しくなろうと云うところを
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「
恁
(
こ
)
んな
物
(
もの
)
でよけりや、
夥多
(
みつしら
)
やつておくんなせえ、まあだ
後
(
あと
)
にも
有
(
あ
)
りやんすから」
内
(
うち
)
の
女房
(
にようばう
)
は
鹽
(
しほ
)
で
煮
(
に
)
たかと
思
(
おも
)
ふ
樣
(
やう
)
な
白
(
しろ
)
つぽい
馬鈴薯
(
じやがたらいも
)
の
大
(
おほ
)
きな
皿
(
さら
)
を
膳
(
ぜん
)
へ
乘
(
の
)
せて
二處
(
ふたとこ
)
へ
置
(
お
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「此のね、可愛らしいのが、其の時の、
和蘭陀館
(
オランダやかた
)
の貴公子ですよ。御覧、——お待ちなさいよ。
恁
(
こ
)
うして並べたら、何だか、もの足りないから。」
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
そして、
旅宿
(
りょしゅく
)
に二人
附添
(
つきそ
)
つた、
玉野
(
たまの
)
、
玉江
(
たまえ
)
と云ふ女弟子も連れないで、一人で
密
(
そっ
)
と、……
日盛
(
ひざかり
)
も
恁
(
こ
)
うした身には苦にならず、
町中
(
まちなか
)
を見つゝ
漫
(
そぞろ
)
に来た。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
首抜
(
くびぬき
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
に、
浅葱
(
あさぎ
)
と
紺
(
こん
)
の
石松
(
いしまつ
)
の
伊達巻
(
だてまき
)
ばかり、
寝衣
(
ねまき
)
のなりで来たらしい。
恁
(
こ
)
う
照
(
てら
)
されると、
眉毛
(
まゆげ
)
は濃く、顔は
大
(
おおき
)
い。
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
恁
(
こ
)
う、
嘴
(
はし
)
を伏せ、
翼
(
はね
)
をすぼめ、あとじさりに、目を据ゑつゝ、あはれに
悄気
(
しよげ
)
て、ホ、と寂しく、ホと弱く、ポポーと真昼の夢に
魘
(
うな
)
されたやうに鳴く。
玉川の草
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
何しに来たつて、お前さんが
咎
(
とが
)
めるやうに聞くから言ふんだが、何も其の
何
(
ど
)
うしよう、
恁
(
こ
)
うしようといふ
悪気
(
わるぎ
)
はない。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「…………」桂木は返す
言
(
ことば
)
は出なかつたが、
恁
(
こ
)
う
謂
(
い
)
はるれば謂はれるほど、
却
(
かえ
)
つて怪しさが増すのであつたが。
二世の契
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
此の頃の
恁
(
こ
)
うした場合の、江戸の将軍家——までもない、
諸侯
(
だいみょう
)
の大奥と
表
(
おもて
)
の
容体
(
ようだい
)
に比較して見るが
可
(
よ
)
い。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
森を高く抜けると、
三国
(
さんごく
)
見霽
(
みはら
)
しの一面の広場に成る。
赫
(
かっ
)
と
射
(
い
)
る日に、
手廂
(
てびさし
)
して
恁
(
こ
)
う
視
(
なが
)
むれば、松、桜、梅いろ/\樹の
状
(
さま
)
、枝の
振
(
ふり
)
の、
各自
(
おのおの
)
名ある
神仙
(
しんせん
)
の形を映すのみ。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
恁
(
こ
)
う
仰々
(
ぎょうぎょう
)
しく
言出
(
いいだ
)
すと、
仇
(
かたき
)
の
髑髏
(
しゃれこうべ
)
か、毒薬の
瓶
(
びん
)
か、と驚かれよう、
真個
(
まったく
)
の事を言ひませう、さしたる儀でない、
紫
(
むらさき
)
の
切
(
きれ
)
を掛けたなりで、一
尺
(
しゃく
)
三
寸
(
ずん
)
、
一口
(
ひとふり
)
の
白鞘
(
しらさや
)
ものの刀がある。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
入替
(
いれかわ
)
りに、
軒
(
のき
)
に立つて、中に居る沢に
恁
(
こ
)
う言ひながら、其の安からぬ顔を見て
莞爾
(
にっこり
)
した。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
駆けて出て
我家
(
わがや
)
の
門
(
かど
)
へ
飛着
(
とびつ
)
いて、と思ふに、
夜
(
よ
)
も
恁
(
こ
)
う
更
(
ふ
)
けて、
他人
(
ひと
)
の家からは勝手が分らず、考ふれば、毎夜
寐
(
ね
)
つきに聞く職人が湯から帰る
跫音
(
あしおと
)
も、向うと
此方
(
こちら
)
、音にも
裏表
(
うらおもて
)
があるか
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
三味線
背負
(
しょ
)
つた乞食坊主が、
引掻
(
ひっか
)
くやうにもぞ/\と肩を
揺
(
ゆす
)
ると、
一眼
(
いちがん
)
ひたと
盲
(
し
)
ひた、
眇
(
めっかち
)
の青ぶくれの
面
(
かお
)
を向けて、
恁
(
こ
)
う、
引傾
(
ひっかたが
)
つて、
熟
(
じっ
)
と紫玉の其の
状
(
さま
)
を
視
(
み
)
ると、肩を
抽
(
ぬ
)
いた
杖
(
つえ
)
の
尖
(
さき
)
が
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
蓋を向うへはづすと、水も溢れるまで、手桶の中に輪をぬめらせた、鰻が
一條
(
ひとすじ
)
、唯一條であつた。のろ/\と
畝
(
うね
)
つて、尖つた頭を
恁
(
こ
)
うあげて、女房の蒼白い顔を
熟
(
じっ
)
と視た。——と言ふのである。
夜釣
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
もののけはいを、
夜毎
(
よごと
)
の
心持
(
こころもち
)
で考えると、まだ三時には
間
(
ま
)
があったので、
最
(
も
)
う最うあたまがおもいから、そのまま黙って、母上の
御名
(
おんな
)
を念じた。——人は
恁
(
こ
)
ういうことから気が違うのであろう。
星あかり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「……
然
(
そ
)
うだ、
姉
(
あね
)
え。
恁
(
こ
)
う言ふ時だ、
掬
(
しゃく
)
つた月影は
何
(
ど
)
うしたい。」
光籃
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「
恁
(
こ
)
うして、さ。」
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
恁
漢検1級
部首:⼼
10画
“恁”を含む語句
恁麽
恁許
恁云
恁麼
恁々
恁懸
恁様
恁那
有恁
正当恁麼時