きさき)” の例文
ですから、いつもおきさきさまのそばにばかりくっついているすえっ子の、ベンジャミンという子が、お妃さまにむかってたずねました。
それで、ひすいを見分みわけるために、御殿ごてんされた老人ろうじんは、きさきくなられると、もはや、仕事しごとがなくなったのでひまされました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見ると、私はむかむかしてくる。彼奴あいつをこれから一日でも家に置いとくくらいなら、ルイ十八世のおきさきにでもなった方がまだましだ。
天皇は、この美しい矢河枝媛やかわえひめを、後におきさきにおしになりました。このお妃から、宇治若郎子うじのわかいらつことおっしゃる皇子がお生まれになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
家来がどんなにおすすめしてもおきさきをお迎えにならず、お子様もない代りに一匹の犬を育てて毎晩可愛がって、「息子よ息子よ」とよんで
犬の王様 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのお城に住んでいる人魚の王さまは、もう何年も前におきさきさまがなくなってからは、ずっと、ひとりでくらしていました。
と申しますのは、昭公はからきさきを迎えられ、その方がご自分と同性なために、ごまかして呉孟子ごもうしと呼んでおられるのです。
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
寵愛ちょうあいいよいよ厚きを加えたが、その後きさきちょうおとろえたとき、かつて食い残した品を捧げた無礼のけんによりてばっせられたという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
今月も生み月になっているきさきが六人いるのですからね。身重みおもになっているのを勘定したら何十人いるかわかりませんよ。
青年と死 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
がさめてのちきさきは、のどの中になにかたくしこるような、たまでもくくんでいるような、みょうなお気持きもちでしたが、やがてお身重みおもにおなりになりました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのきさきを描き女神めがみを描き、あるくれないの島にれなして波間なみまに浮ぶナンフ或は妖艶の人魚の姫。或はまた四季の眺めを形取かたどる肉付のよきポモンの女神。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
城外には、魏軍の奏する楽の音や万歳の声が絶えまなくき立っている。蜀宮の上には降旗がかかげられ、帝は多くのきさきや臣下を連れて城外へ出た。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その剛壮な腹の頂点では、コルシカ産の瑪瑙めのうボタン巴里パリーの半景をゆがませながら、かすかにきさきの指紋のために曇っていた。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
彦火火出見尊ひこほほでみのみことのおきさきの豊玉姫が、海岸の産屋うぶやで御子鵜草葺不合尊うがやふきあえずのみことをお生みになった事は、誰も承知の有名なお話です。
いたつてわがままな王様は、まだおきさきがありませんでしたから、このの女を、是非探し出して連れて参れと、一同の兵士に厳重に命令いたしました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
女帝の信頼も厚く、文武天皇のきさきを選ばれる折にも、必ずや絶大な発言権をもっていたであろうといわれている。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
ゆがみよろぼいたる式部官に案内あないせられてきさき出でたまい、式部官に名をいわせて、ひとりびとりことばをかけ、手袋はずしたる右の手の甲に接吻せっぷんせしめたもう。
文づかい (新字新仮名) / 森鴎外(著)
もうすもかしこけれど、お婿様むこさまは百だい一人ひとりわれる、すぐれた御器量ごきりょう御子みこまたきさきは、しとやかなお姿すがたうち凛々りりしい御気性ごきしょうをつつまれた絶世ぜっせい佳人かじん
香橙色くねんぼいろ薔薇ばらの花、物語に傳はつた威尼知亞女ヹネチヤをんな姫御前ひめごぜよ、きさきよ、香橙色くねんぼいろ薔薇ばらの花、おまへの葉陰の綾絹あやぎぬに、虎のあぎとてゐるやうだ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
この壮大な霊廟れいびょうの中央に、その創建者の墓があり、その彫像がきさきの像とならんで、華麗な墓石の上に横たわり、全体は目もあやな細工をした真鍮の手摺てすりでかこんである。
たとへば河内かはちにある聖徳太子しようとくたいし御墓おはかには、太子たいし母后ぼこうと、太子たいしきさき三人さんにん御棺おかんれてあるとのことです。またなかには死者ししや石棺せきかんでなく木棺もくかんにいれてはうむつた石室せきしつおほくあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
この向うに座しておられるやんごとなき淑女は、わがきさき、ペスト女王であらせられる。
かのヤガミひめは前の約束通りに婚姻なさいました。そのヤガミ姫をれておいでになりましたけれども、おきさきのスセリ姫を恐れて生んだ子を木のまたにさし挾んでお歸りになりました。
お父さまの奥さんに当る人が、王さまや、おきさきさまや、宮廷や、僧侶に、何か夫の消息を聞かしてくれるようにと歎願なすったが、みんな全く何の甲斐かいもなかったとしますと、ですね。
むろん、花嫁の両親、魔法島の王とその真珠貝のきさきとはそこに出席しました。
虹猫の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
総じて貴人というものは、上淫じょういんたしなむのです。そなた二人は、にじとだに雲の上にかける思いと——いう、恋歌を御存じか。そのとおり、王侯のきさきさえも、犯したいと思うのが性情ならいなのじゃ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
きさきとの離婚問題もあったが、その前から精神に異状があったそうである。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大王はおきさきと王子王女とただ四人で山へ行かれた。大きな林にはいったとき王子たちは林の中の高いを見てああほしいなあとわれたのだ。そのとき大王のとくには林の樹もまたかんじていた。
王も きさきも 群衆ぐんじゆうも はた八衢やちまたも 高殿も
一点鐘 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
きさきよ汝曰ふところ、我今敢て背くまじ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
きさきと元の夫婦になるのだ。
辛夷こぶしこそ深山みやまきさき
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
このわるものの女は、おきさきさまの頭をつかみ、むすめには足をつかませて、ふたりがかりでお妃さまを寝台しんだいからひきずりだしました。
このはなしは、やがて、きさきのおみみにまでたっすると、きさきけても、れても、そのたま空想くうそうかんで、物思ものおもいにしずまれたのであります。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ああ、あんなに多くの家が燃えている。わがきさきのいるお宮も、あの中に焼けているのか」という意味をお歌いになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
でも、いくら小さいとはいっても、おきさきをむかえるのに、ふそくなほどではありませんでした。さて、この王子はお妃をむかえたいと思いました。
それからアアとサアのおきさきの父親の王様も死んでしまって、アアもサアも立派な鬚をやした王様になっておりました。
奇妙な遠眼鏡 (新字新仮名) / 夢野久作香倶土三鳥(著)
うがはやいかおどがって、おきさきおもわずけた口の中へぽんとんでしまったとおもうとおゆめはさめました。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「そうじゃ、聖徳太子しょうとくたいしと、そのおん母君、おきさき、三尊の御墳みつかがある太子びょうもうでて、七日ほど、参籠さんろういたしたい」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また昔時せきじシナのきさきが庭園を散歩し、ももじゅくしたのを食い、味の余りになりしに感じ、独りこれをくろうに忍びず、い残しの半分を皇帝にささげ、その愛情の深きを賞せられ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ソロモンはきょうも宮殿の奥にたった一人すわっていた。ソロモンの心は寂しかった。モアブ人、アンモニ人、エドミ人、シドン人、ヘテ人とうきさきたちも彼の心を慰めなかった。
三つのなぜ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのきさきを描き女神めがみを描き、あるくれないの島に群れなして波間なみまに浮ぶナンフ或は妖艶ようえんの人魚の姫。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
奥のおん目見まみえをゆるされ、正服着て宮に参り、人々と輪なりに一間ひとまに立ちて臨御りんぎょを待つほどに、ゆがみよろぼひたる式部官に案内せられてきさき出でたまひ、式部官に名をいはせて
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこで、そのおきさきが、酒盃さかずきをお取りになり、立ち寄り捧げて、お歌いになつた歌
長羅の父の君長は、きさきを失って以来、饗宴を催すことが最大の慰藉いしゃであった。ぜなら、それは彼の面前で踊る婦女たちの間から、彼は彼の欲する淫蕩いんとうな一夜の肉体を選択するに自由であったから。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ほかでもない、それは大和武尊様やまとたけるのみことさまのおきさき弟橘姫様おとたちばなひめさまでございます……。
この夏、城のきさきは皆わが心の塔のうち餓死がししたり。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
やがて、おきさきさまがこちらへくるのを見ますと、王さまは忠義者ちゅうぎもののヨハネスとふたりの子どもを大きな戸だなのなかにかくしました。
ふじのはなくにおうさまは、どちらかといえば、そんなに欲深よくぶかひとではなかったのでした。けれど、きさきは、たいそうひすいをあいされました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これは、王さまとおきさきさまです。おつぎは、見るもかわいらしいアラセイトウとカーネーションです。あちらへもこちらへも、おじぎをしました。