器用きよう)” の例文
方なくそれはあきらめたが、そのころから割合わりあひに手先の器用きようわたしだつたので、「せう寫眞術しやしんじゆつ」の説明せつめいしたがつて、わたしはとう/\寫眞器しんき自作じさくこゝろざした。
ひる午睡ひるねゆるされてあるので時間じかんいて器用きようかれには内職ないしよく小遣取こづかひどりすこしは出來できた。きな煙草たばことコツプざけかつすることはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「なかなか器用きようには作者のねらったところは一貫しています」と、天神さまみたような顔つきの人が熱心な口調くちょうで口を出した。
猫八 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
ないしょで料理りょうりをして、いつも同じようなじゃがいもにあきあきしているおっかあに食べさせて、『まあルミ、おまえはなんて器用きような子だろう』
花むこも、こんな器用きようなはたらきもののおよめさんをもらうのをよろこんで、女の子のことをそれはそれはほめました。
「あなたの遣り方に賛成したのですね、ジエィン? それは器用きようなものだつたと思ふ、あなたは才能のある人だから。」
日本人種にほんじんしゆといふものは却々なか/\器用きようでござりますから、たちまち一つの発明はつめいをいたし、器械きかい出来できて見ると、これいて一つの新商法しんしやうはふ目論見もくろみおこしました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いまぐにもける器用きよううでかえって邪間じゃまになって、着物きものなんぞおんないても、はじまらないとのこころからであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
角谷は手が器用きようで、書籍の箱造り荷拵にごしらえなどがうまかった。職人になればよかった、と自身もしばしばこぼして居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おれだって、十手をさばかせては、腕に覚えのねえこともねえが、若しヒョッとして器用きように逃げられでもしようもんなら、この黒門町の名折れになる。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これをあやすなどという、世の常の親のように器用きようなまねは出来ぬが、とにかく腕の上にのせて散歩した。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
かれは、ろくろく学校がっこうへもいかず、はやくから、まち箔屋はくや弟子入でしいりして、手仕事てしごとをおぼえさせられたのでした。まれつき器用きよう正吉しょうきちは、よくはりをはこびました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わざとらしく俯伏うつぶいてゐたが、其處そこへ女房がなしを五つばかり盆に載せ、ナイフをへて持つて來たので、顏を上げてそれを受け取ると、器用きような手付きで梨の皮をいて
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そしておもからだ器用きよう調子ちょうしをとりながら、綱渡つなわたりの一きょく首尾しゅびよくやってのけましたから、見物けんぶつはいよいよ感心かんしんして、小屋こやもわれるほどのかっさいをあびせかけました。
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みんなは、リスのすばしこい動きかたや、器用きようにクルミのからをかじるところや、たのしそうにあそぶのを見ていれば、夏じゅうおもしろくすごせるだろうと思いました。
けれど、そんなに器用きようにうごく手でさえも、うっかりして、あやまちをおかしたことがあったのでしょうか。なぜなら、おじいさんの左手には、名なし指がありませんでした。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
写本しやほん挿絵さしゑ担当たんたうした画家ぐわか二人ふたりで、一人ひとり積翠せきすゐ工学士こうがくし大沢三之介おほさはさんのすけくん一人ひとり緑芽りよくが法学士はうがくし松岡鉦吉まつをかしやうきちくん積翠せきすゐ鉛筆画えんぴつぐわ得意とくいで、水彩風すゐさいふうのもき、器用きよう日本画にほんぐわつた
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
少しわきのほうには、讃美歌さんびか器用きようにこなす子供たちがならんでいて、そのなかの一人はいつもうたす前に、そっといろいろな声でうなるような真似まねをする——これをしょうして、調子ちょうしめるというのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ず右の女と夫婦ふうふになり小細工こざいくなどしてくらせしに生質せいしつ器用きようにて學問も出來其上醫道いだう心懸こゝろがけも有りしゆゑ森通仙もりつうせんと改名し外科げくわもつぱらとしてかたはら賣藥をひさぎ不自由もなく世を送りし中女子一人をまうけ名を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
器用きようつきで、はらから拔出ぬけだしたやうに横衣兜よこがくし時計とけいたが
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
器用きようにあけたり またふさいだり
魔法の笛 (新字新仮名) / ロバート・ブラウニング(著)
まつろうしばしのあいだおしたけのこるような恰好かっこうをしていたが、やがてにぎこぶしなかに、五六まい小粒こつぶ器用きようにぎりしめて、ぱっと春重はるしげはなさきひろげてみせた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
卯平うへいるから不器用ぶきよう容子ようすをしてて、おそろしく手先てさきわざ器用きよう性來たちであつた。それでかれ仕事しごとるとつてからは方々はう/″\やとはれてたわらんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
きょうから仮りの父子おやことなった左膳と、チョビ安——左膳にとっては、まるで世話女房が来たようなもので、このチョビ安、子供のくせにはなはだ器用きようで、御飯もたけば茶碗も洗う。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
けれどいよいよ食事がすんで、かれが小ようじを言いつけて、器用きように歯をせせって(つついて)見せたとき、れるほど大かっさいがほうぼうに起こって、芝居しばいはめでたくまいおさめた。
そういいながら、指先ゆびさき器用きよううごかした春重はるしげは、糠袋ぬかぶくろくちくと、まるできんこなでもあけるように、まつろうてのひらへ、三つばかりを、勿体もったいらしくげた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
の二つのほかには別段べつだんれというてかぞへるほど他人たにん記憶きおくにものこつてなかつた。それでもかれおほきな躰躯からだ性來せいらい器用きようとは主人しゆじんをして比較的ひかくてき餘計よけい給料きふれうをしませなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かの女はまだことばをほんとうに出すだけに器用きようしたはたらかなかった。