不斷ふだん)” の例文
新字:不断
しかしながらわかしゆしようする青年せいねんの一勘次かんじいへ不斷ふだん注目ちうもくおこたらない。れはおつぎの姿すがたわすることが出來できないからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大𢌞おほまはりにはるけれど、呉服橋ごふくばししたちかところに、バラツクにんでひとだから、不斷ふだん落着家おちつきやさんだし、悠然いうぜんとして、やがてよう。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしやおまへのやうなおつと來いならばこといけれど、不斷ふだんつゝしんでお出遊いであそばすだけにしみることふかからう
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
でも不斷ふだんお世話になるお店のことだし、ポンポン斷わるわけにも行かなくて、頭痛に病んでましたよ
いや/\、よもや其樣そのやうなこともあるまい、不斷ふだんから上人しゃうにんひとあがめられたあの法師ほふしぢゃ。
もつと平生へいぜいいそがしさにはれて、別段べつだんにもからないが、七日なのかに一ぺん休日きうじつて、こゝろがゆつたりとける機會きくわい出逢であふと、不斷ふだん生活せいくわつきふにそわ/\した上調子うはてうしえてる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
偶娼あひかたにせしが惚合やみづきにて二度が三度と深くなり互ひに思ひ思はれてわりなき中とは成りにけり偖此伊勢屋五兵衞と云ふはためしなき吝嗇りんしよく者にて不斷ふだん口癖くちぐせにて我程仕合者しあはせものは有るまじ世の中に子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
森林しんりん洪水こうずいがいふせぎ、かはみづ不斷ふだんえずながし、水田すいでんをもからさないといふてんで、土地とち安全あんぜんたもつてくれる效用こうようがあることがわかつてたので、以來いらいはじめて森林しんりん保護ほごしてそだてるようになり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
薄曇うすぐも不斷ふだんいき
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
足袋跣足たびはだしたとふ、今夜こんやは、もしや、あの友染いうぜんに……あの裾模樣すそもやう、とおもふけれども、不斷ふだん見馴みなれてみついた、黒繻子くろじゆすに、小辨慶こべんけい
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
不斷ふだんからいくらか逆上性のぼせしやうでもあるのだがさうおもふとみゝるやうで世間せけんかへつしづかにつてしまつたやうにおもはれた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
が、この顏には、何んな感情もまぎれさせる、不斷ふだんの微笑が、さゞ波のやうに動いて居るのです。
ところが、一夜いちやあけて、ひるつてもかへらない。不斷ふだんそんなしだらでないいはさんだけに、女房にようばう人一倍ひといちばい心配しんぱいした。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かれ性來せいらい嚴疊がんでふおほきな身體からだであつたけれど、しかめたやうなには不斷ふだん何處どこやはらかなひかりつてるやうで
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
覗いて見る氣になつたのでございませう。不斷ふだん危ない/\と言はれて居た井戸ですから
が、不斷ふだんだと、魑魅ちみ光明くわうみやうで、電燈でんとうぱつけて、畜生ちくしやうつぶてにして追拂おひはらふのだけれど、あかり覺束おぼつかなさは、天井てんじやうからいきけると吹消ふつけされさうである。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けだしいろ象徴しやうちようではないのだが、春葉しゆんえふ羽織はおりういふものか、不斷ふだんから、くだん素見山すけんざんふうがあつた。——そいつをパツといで、角力すまふらうとふ。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふべき場合ばあひではないけれども、まことにてん美祿びろくである。家内かない一口ひとくちした。不斷ふだん一滴いつてきたしなまない、一軒いつけんとなりの齒科しくわ白井しらゐさんも、しろ仕事着しごとぎのまゝでかたむけた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたしかへして、裏窓うらまど障子しやうじけた。こゝで、一寸ちよつとはぢはねばきこえない迷信めいしんがある。わたし表二階おもてにかいそらながめて、そのあしすぐ裏窓うらまどのぞくのを不斷ふだんからはゞかるのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
不斷ふだんは、あまり評判ひやうばんのよくないやつで、肩車かたぐるま二十疋にじつぴき三十疋さんじつぴき狼立おほかみだち突立つツたつて、それが火柱ひばしらるの、三聲みこゑつゞけて、きち/\となくとたゝるの、みちるとわるいのとふ。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにりませんけれども、いくらも其處等そこいらるものの、不斷ふだんえない、空氣くうきまぎれてかくれてるのが、うしてちり透通すきとほるやうな心持こゝろもちつたので、自分じぶんえるのだらうとおもひました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)