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ひとま
ふりがな文庫
“
一間
(
ひとま
)” の例文
一体二絃琴の響は
一間
(
ひとま
)
へだてた方が丸味をおびてよいものだが、しかし、それは弾手の耳と、趣味の深さ浅さによるは論をまたない。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
入口の
襖
(
ふすま
)
をあけて
椽
(
えん
)
へ出ると、
欄干
(
らんかん
)
が四角に曲って、方角から云えば海の見ゆべきはずの所に、中庭を
隔
(
へだ
)
てて、表二階の
一間
(
ひとま
)
がある。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一間
(
ひとま
)
通り越して奥まったところに八畳ほどの洋間があった。白いシーツの懸っている寝台があったが、こいつが少しねじれていた。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
そして五か月の恐ろしい試練の後に、両親の立ち会わない小さな結婚の式が、秋のある午後、木部の
下宿
(
げしゅく
)
の
一間
(
ひとま
)
で執り行なわれた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
伏したるはなき人なるべし。竈の側なる戸を開きて余を導きつ。この処は
所謂
(
いはゆる
)
「マンサルド」の街に面したる
一間
(
ひとま
)
なれば、天井もなし。
舞姫
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
桟敷
(
さじき
)
五人詰
一間
(
ひとま
)
の
値
(
あた
)
い四円五十銭で世間をおどろかした新富座——その劇場のまえに、十二、三歳の少年のすがたが見いだされる。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
半次郎
(
はんじろう
)
が雨の
夜
(
よ
)
の怪談に始めてお
糸
(
いと
)
の手を取ったのもやはりかかる家の
一間
(
ひとま
)
であったろう。長吉は何ともいえぬ
恍惚
(
こうこつ
)
と悲哀とを感じた。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そのののしり合う声々を
戸外
(
そと
)
に聞いて、田丸主水正は、ここ作爺さんの
住居
(
すまい
)
……たった
一間
(
ひとま
)
っきりの家に、四角くなってすわっている。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
芝居町のまがきという茶屋の前まで来て、かごを捨てると、奥まった
一間
(
ひとま
)
に通って、糸目をつけぬ茶代や、心づけを、はずんだが
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
そのために、彼は、叡山から
報復
(
しかえし
)
に来る者があっても、一切顔を出すなといわれ、
一間
(
ひとま
)
のうちに、恐縮して首をすくめていたのだ。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といって、ある日そっと
娘
(
むすめ
)
の
後
(
あと
)
から
一間
(
ひとま
)
に
入
(
はい
)
って
行
(
い
)
きました。そして
娘
(
むすめ
)
が
一心
(
いっしん
)
に
鏡
(
かがみ
)
の中に
見入
(
みい
)
っているうしろから、
出
(
だ
)
し
抜
(
ぬ
)
けに
松山鏡
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「ところが分った事がある。……何しろ、私が、
昨夜
(
ゆうべ
)
、あの桟敷へ入った時、空いていた場所は、その私の処と、隣りに
一間
(
ひとま
)
、」
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一間
(
ひとま
)
隔てて老夫婦の部屋があるので、彼らが
老
(
おい
)
の寝覚めの物語でも交しているのかと想像したが、それにしては人声が遠すぎる。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
我血は湧き返りて、渾身震ひ氣息
塞
(
ふさ
)
がりたり。此時人の足音して
一間
(
ひとま
)
の扉は外より開かれ、主人はフエデリゴと共に入り來りぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
一間
(
ひとま
)
へだてた客間では話し声と、ナイフや皿のがちゃ/\鳴る音がしていました。二人は食事をしていて、ベルの音が聞えなかったのです。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
と、挨拶すると、老人は、信祝が合図の
紐
(
ひも
)
を引いて、鈴を鳴らすのも待たないで、
襖
(
ふすま
)
をあけた。
一間
(
ひとま
)
へだたった所にいた侍が、
周章
(
あわて
)
て立つと
大岡越前の独立
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
戸と云う戸、障子と云う障子、窓と云う窓を残らず
開放
(
あけはな
)
し、
母屋
(
おもや
)
は仕切の
唐紙
(
からかみ
)
障子
(
しょうじ
)
を一切取払うて、六畳二室板の間ぶっ通しの
一間
(
ひとま
)
にした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
五位は、利仁の
館
(
やかた
)
の
一間
(
ひとま
)
に、切燈台の灯を眺めるともなく、眺めながら、寝つかれない長の夜をまぢまぢして、
明
(
あか
)
してゐた。
芋粥
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
露国に止まることを勧む
夫
(
そ
)
れから
或日
(
あるひ
)
の事で、その接待委員の一人が私の処に来て、
一寸
(
ちょいと
)
こちらに来て
呉
(
く
)
れろと
云
(
いっ
)
て、
一間
(
ひとま
)
に私を連れて
行
(
いっ
)
た。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「え、私の家ですかな? ……ええまあ随分広うごすなあ」——その実多四郎は家ときたら
一間
(
ひとま
)
しかない
裏店
(
うらだな
)
なのである。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
夢かとばかり驚きながら、
扶
(
たす
)
け參らせて
一間
(
ひとま
)
に
招
(
せう
)
じ、身は
遙
(
はるか
)
に席を隔てて
拜伏
(
はいふく
)
しぬ。思ひ懸けぬ對面に
左右
(
とかう
)
の言葉もなく、
先
(
さき
)
だつものは涙なり。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
そして、
一間
(
ひとま
)
に閉じ籠ったまま、誰とも顔を合せないようにしていた。彼としては、何よりもおしおにした約束を果さなかったことが気に懸った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
ほかに六
畳
(
じょう
)
の
間
(
ま
)
が
二間
(
ふたま
)
と
台所
(
だいどころ
)
つき二
畳
(
じょう
)
が
一間
(
ひとま
)
ある。これで
家賃
(
やちん
)
が十円とは、おどろくほど家賃も高くなったものだ。
老獣医
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
各
(
おのおの
)
静に窓前の竹の
清韻
(
せいいん
)
を聴きて
相対
(
あひたい
)
せる座敷の
一間
(
ひとま
)
奥に、
主
(
あるじ
)
は
乾魚
(
ひもの
)
の如き
親仁
(
おやぢ
)
の黄なる
髯
(
ひげ
)
を長く
生
(
はや
)
したるが、
兀然
(
こつぜん
)
として
独
(
ひと
)
り盤を
磨
(
みが
)
きゐる傍に通りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
今自分はこうして淋しい山の中へ来て唯
一間
(
ひとま
)
しかない所の狭い家に住んでいるけれども精神は真に平安で、毎日毎日を非常に楽しく暮しているのである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
突然、
一間
(
ひとま
)
置いた向の部屋から、冗談らしく怒鳴る聲がして、障子のあく音が續いた。三田の部屋が東の端とすると、その部屋は縁つゞきの西の端になる。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
もう
幾日
(
いくにち
)
も
学校
(
がっこう
)
を
休
(
やす
)
んで、
一間
(
ひとま
)
にねていました。そのうちに、
秋
(
あき
)
もふけて、いつしか
冬
(
ふゆ
)
になりかかり、
木
(
こ
)
がらしが
家
(
いえ
)
のまわりに、
吹
(
ふ
)
きすさんだのであります。
町の天使
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
珠運思い切ってお辰の手を取り
一間
(
ひとま
)
の
中
(
うち
)
に入り何事をか長らく語らいけん、
出
(
いず
)
る時女の耳の
根
(
ね
)
紅
(
あか
)
かりし。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そして焼けた後しばらくは、近くに馬小屋とかがあって、馬丁のいたその
一間
(
ひとま
)
に、石橋様というお
大尽
(
だいじん
)
も、お嬢様たちも住んでいられたようであったというのです。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
こは
何事
(
なにごと
)
やらんと
胷
(
むね
)
もをどりて
臥
(
ふし
)
たる
一間
(
ひとま
)
をはせいでければ、
家
(
いへ
)
の
主
(
あるじ
)
両手
(
りやうて
)
に
物
(
もの
)
を
提
(
さげ
)
、水あがり也とく/\
裏
(
うら
)
の
掘揚
(
ほりあげ
)
へ
立退
(
たちのき
)
給へ、といひすてゝ持たる物を二階へ
運
(
はこ
)
びゆく。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
細き枝に
蝋燭
(
ろうそく
)
の
焔
(
ほのお
)
ほどの火燃え移りてかわるがわる消えつ燃えつす。燃ゆる時は
一間
(
ひとま
)
のうちしばらく
明
(
あか
)
し。翁の影太く壁に映りて動き、
煤
(
すす
)
けし壁に浮かびいずるは
錦絵
(
にしきえ
)
なり。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
例
(
れい
)
の通り
奥
(
おく
)
の
一間
(
ひとま
)
にて先生及び夫人と
鼎坐
(
ていざ
)
し、
寒暄
(
かんけん
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
了
(
おわ
)
りて先生先ず口を開き、この
間
(
あいだ
)
、十六歳の時
咸臨丸
(
かんりんまる
)
にて
御供
(
おとも
)
したる人
来
(
きた
)
りて夕方まで
咄
(
はな
)
しましたと、夫人に
向
(
むか
)
われ
瘠我慢の説:05 福沢先生を憶う
(新字新仮名)
/
木村芥舟
(著)
十五年という永い年月の間、彼女はこうして
一間
(
ひとま
)
にとじ籠ったまま、じッと動かなかった。
狂女
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
……それ、その
一間
(
ひとま
)
を
距
(
へだ
)
てた向うの
襖
(
ふすま
)
の中には、現在この俺を生んだ母が何か
喋舌
(
しゃべ
)
っているではないか。それがこの俺の耳に今聞えているではないか。そら! その襖が開くぞ。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
海禪は又小さい声で「挨拶するから
此方
(
こっち
)
へ
這入
(
へえ
)
れよ」
何
(
ど
)
んな声で云っても
訛
(
なまり
)
が違いますから露顕しそうなものだが、そこは夢中で小兼が問掛けると、半治は
一間
(
ひとま
)
から飛出しまして
松の操美人の生埋:02 侠骨今に馨く賊胆猶お腥し
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
八カ月もの間、壁と壁と壁と壁との間に——つまり小ッちゃい独房の
一間
(
ひとま
)
に、たった一人ッ切りでいたのだから、自分で自分の声をきけるのは、
独
(
ひと
)
り
言
(
ごと
)
でもした時の外はないわけだ。
独房
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
下にもまだ八畳が
一間
(
ひとま
)
あったが、其処には姿見がなかった。同じような部屋でありながら、間代が其処より此処の方が三割方高かったのは、半分は此姿見の為だったかとも思われる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
引き合わすと云っても、向うは
一間
(
ひとま
)
隔てた部屋の床の間にいるのに、遥かこっちで平伏でもないが、坐っているわけなんです。一遍で参っちゃって、その後行きませんでしたよ。呵々。
私は隠居ではない
(新字新仮名)
/
吉田茂
(著)
青眼先生は占めたと思いまして、なおも提灯を地面にさし付けて、
紅玉
(
ルビー
)
を探しながら、だんだんと跡を付けて行きますと、その跡は
一間
(
ひとま
)
置いて隣りの
室
(
へや
)
の窓の下に来て止まっています。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
朝、人々が眼を覚した時には、船はある小さな
埠頭
(
はとば
)
に留つて居た。朝霧の晴れ間から、青い
蚊帳
(
かや
)
を吊つた岸の二階屋の
一間
(
ひとま
)
が見えたり、女が水に臨んで物を洗つて居るのが眺められたりした。
朝
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
初
(
はじ
)
めは宿屋の亭主もわたしたちに目をくれようともしなかった。けれども親方のもっともらしい様子がみごとにかれを
圧迫
(
あっぱく
)
した。かれは女中に言いつけて、わたしたちを
一間
(
ひとま
)
へ通すようにした。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
鶯や
婿
(
むこ
)
に来にける子の
一間
(
ひとま
)
太祇
(
たいぎ
)
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
聞
(
きゝ
)
道理
(
もつとも
)
の願なり
許
(
ゆる
)
し遣はす
座
(
ざ
)
隔
(
へだ
)
たれば
遲速
(
ちそく
)
あり親子三人
一間
(
ひとま
)
に於て
切腹
(
せつぷく
)
すべければ此所へ參れとの御言葉に用人は
畏
(
かし
)
こまり
此旨
(
このむね
)
奧方
(
おくがた
)
へ申上げれば奧方には
早速
(
さつそく
)
白裝束
(
しろしやうぞく
)
に
改
(
あらた
)
められ此方の一間へ來り給ひ
涙
(
なみだ
)
も
溢
(
こぼ
)
さず
良人
(
をつと
)
の
傍
(
そば
)
に
座
(
ざし
)
て三人時刻を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
裁物
(
たちもの
)
にせばき
一間
(
ひとま
)
や冬籠 夕市
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
「
一間
(
ひとま
)
にこそはあゝ……」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
暗い
一間
(
ひとま
)
を脱け出して
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
半次郎
(
はんじらう
)
が雨の
夜
(
よ
)
の
怪談
(
くわいだん
)
に始めてお
糸
(
いと
)
の手を取つたのも
矢張
(
やはり
)
斯
(
かゝ
)
る家の
一間
(
ひとま
)
であつたらう。
長吉
(
ちやうきち
)
は
何
(
なん
)
とも
云
(
い
)
へぬ
恍惚
(
くわうこつ
)
と
悲哀
(
ひあい
)
とを感じた。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
権之助の家へ戻って来てから、着のみ着のまま、
一間
(
ひとま
)
を借りて横になったが、小鳥の声がし始める頃は、もう眼をさましていた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一間
(
ひとま
)
に
籠
(
こも
)
ったまま足腰のきかなかったおばあさんが、ふと
陰
(
かげ
)
をかくして、行方知れずになったということがあるというのです。
糸繰沼
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
俳優の共進会と噂されたほどの
大一座
(
おおいちざ
)
であっただけに、入場料の高くなるのもまた自然の結果で、
桟敷
(
さじき
)
一間
(
ひとま
)
が四円五十銭というのであった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
間
常用漢字
小2
部首:⾨
12画
“一間”で始まる語句
一間幅
一間余
一間間
一間高
一間一間
一間以上