一個いつこ)” の例文
ると、太陽たいやうがキラ/\とかゞやいてひがしほうの、赤裸あかはだかやまいたゞきなゝめかすめて、一個いつこ大輕氣球だいけいききゆうかぜのまに/\此方こなたむかつてんでた。
他愛たわいなくかしらさがつたとふのは、中年ちうねん一個いつこ美髯びぜん紳士しんしまゆにおのづから品位ひんゐのあるのが、寶石はうせきちりばめたあゐ頭巾づきんで、悠然いうぜんあごひげしごいてた。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つみばつ」はじつにこの險惡けんあくなる性質せいしつ苦慘くさん實况じつけうを、一個いつこのヒポコンデリアかんうへ直寫ちよくしやしたるものなるべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
其處そこ學校がくかうたて決心けつしんかれこゝろわいたのです、諸君しよくんかれ決心けつしんあま露骨むきだしで、單純たんじゆんなことをわらはれるかもれませんが、しかし元來ぐわんらい教育けういくのない一個いつこ百姓ひやくしやうです
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
住居ぢうきよの大小は家族かぞくの多少に因る事勿論もちろんなれど塲合ばあひに由つては一個いつこの大部屋をもうくる代りに數個すうこの小部屋を作る事も有りしと思はる。瓢形ひやうかた竪穴たてあなの如き即ち其例なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
この菊塢きくう狂歌きやうかしゆ発句ほつくあり、(手紙と其書そのしよ移転ひつこしまぎれにさがしても知れぬは残念ざんねんにもかくにも一個いつこ豪傑がうけつ山師やましなにやらゑし隅田川すみだがは」と白猿はくゑんが、芭蕉ばせうの句をもじりて笑ひしは
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
造船所ざうせんじよない一部いちぶ貯藏ちよぞうされてあつたのだが、あゝ、昨夜さくや大海嘯おほつなみではその一個いつこ無事ぶじではるまい、イヤ、けつして無事ぶじはづはありません。
上段じやうだんづきの大廣間おほひろま正面しやうめん一段いちだんたかところに、たゝみ二疊にでふもあらうとおもふ、あたかほのほいけごと眞鍮しんちう大火鉢おほひばち炭火たんくわ烈々れつ/\としたのをまへひかへて、たゞ一個いつこ大丈夫だいぢやうぶ
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おどろいてつむりげると、いましも一個いつこ端艇たんてい前方ぜんぽう十四五ヤードの距離へだゝりうかんでる、これ先刻せんこく多人數たにんずうつたために、轉覆てんぷくしたうち一艘いつさうであらう。
せきくばつた、座蒲團ざぶとんひとひとつのたくうへに、古色こしよくやゝ蒼然さうぜんたらむとほつする一錢銅貨いつせんどうくわがコツンと一個いつこにひらきをいて、またコツンと一個いつこ會員くわいゐんすうだけせてある。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかるに家業かげふ出精しゆつせいゆゑもつて、これよりさきとく一個いつここの鍛冶屋かぢやしやうたまひしより、昧爽まいさうける市街しがい現象げんしやううておもむきへんじ、今日けふ此頃このごろいたりては、鍛冶屋かぢや丁々てう/\ふもさらなり
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
老爺ぢいさけぶ、……それなるは、黄金こがねしやちかしらた、一個いつこ青面せいめん獅子しゝかしらけるがごと木彫きぼり名作めいさくやぐらあつして、のつしとあり。つのも、きばも、双六谷すごろくだに黒雲くろくもなかた、それであつた。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
半纏はんてんいだあとで、ほゝかぶりをつて、ぶらりとげると、すぐに湯氣ゆげとともにしろかたまるこしあひだけて、一個いつこたちまち、ぶくりといた茶色ちやいろあたまつて、そしてばちや/\とねた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さつとばかりゆきをまいて、ばつさり飛込とびこんだ一個いつこ怪物くわいぶつ
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)