野山のやま)” の例文
見わたすかぎり、野山のやまは黄色く、とりいれのあとのたんぼはくろずみ、空は雲一つなく晴れわたっていました。
山の別荘の少年 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
つまりうさぎ外敵がいてきよわ動物どうぶつですから、ふゆゆきつて野山のやま眞白まつしろになれば自分じぶんのからだをもおなじようにしろくしてほかから容易よういつからないようにするのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
御馳走ごちそうには季春しゆんがまだはやいが、たゞるだけなら何時いつでもかまはない。食料しよくれうらないはべつとして、今頃いまごろ梅雨つゆには種々さま/″\きのこがによき/\と野山のやまえる。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほんとうの讃岐さぬき造麻呂みやつこまろといふのでしたが、毎日まいにちのように野山のやま竹藪たけやぶにはひつて、たけつて、いろ/\のものつくり、それをあきなふことにしてゐましたので
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
しかしあのあか水々みづ/″\したは、ながい/\野山のやまゆきえるまでのあひだを、かみ小鳥達ことりたち糧食りやうしよくにとそなへられたものではないかとおもふと、痛々いた/\しくなたれたひとつみおそろしい。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
わたしは、二人ふたりあねほしはなになったとき、小鳥ことりとなりました。それは、野山のやまびまわってあそぶためではありません。毎日まいにち山河やまかわえてゆく旅人たびびと幾人いくにんあるかしれません。
王さまの感心された話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
懸て燒立やきたて其中にて切腹し果たれば死骸は更にわからずとなん惡徒とは云へ天晴あつぱれの器量人と稱すべし斯て越前守には御目附野山のやまいち十郎松田勘解由まつだかげゆ等立合にて一同呼出し先天一坊を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
獅子しゝ友呼ともよび!。』と一名いちめい水兵すいへいさゝやいた。成程なるほど遠雷えんらいごと叫聲さけびごゑ野山のやま響渡ひゞきわたると、たちま其處そこもりからも、彼處かしこ岩陰いはかげからも三頭さんとう五頭ごとう猛獸まうじうぐんをなしてあらはれてた。
何處いづこ野山のやま如何いかにひろく、それうみにはのつけやうもなき大魚たいぎよありて、ひれうごかせばなみのあがること幾千丈いくせんぢやうれがまたとりしてと、めづらしきことあやしきこととりとめなくつまらなきことを
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だまつて大股おほまたに、あとをもず、廣々ひろ/″\とした野山のやまはうつてしまひました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
それよりも日本という国のありがたいことは、竹と葛蔓かずらとが野山のやまにありあまって、これをいろいろの容器に利用する技術が、まことにらくらくと国民のあいだに進みかつひろまってきたことである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
二人で畫板ゑばんたづさ野山のやま寫生しやせいしてあるいたことも幾度いくどれない。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
十月二十四日、長門野山のやまの獄に下る。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そら青し、雲白し、野山のやま影短き
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
今日けふよりは、野山のやまに、たに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
野山のやまに、によき/\、とつて、あのかたちおもふと、なんとなく滑稽おどけてきこえて、大分だいぶ安直あんちよくあつかふやうだけれども、んでもないこと、あれでなか/\凄味すごみがある。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少年せうねん端艇たんてい野球等やきゆうとうほかひまがあるといしげる、のぼる、猛犬稻妻まうけんいなづまひきつれて野山のやまけめぐる、其爲そのため體格たいかく非常ひじやう見事みごと發達はつたつして、以前いぜんには人形にんぎようのやうに奇麗きれいであつたかほ
くさひらいて、天守てんしゆのぼみち一筋ひとすぢじやうぬまみづそゝいで、野山のやまをかけてながすやうに足許あしもとからうごいてえる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
誰方どなたもしばらく。……あゝ、野山のやまえ、かはわたり、つるぎした往來わうらいした。が、うまれて以來このかた今日けふ今日けふほど、ひとなさけみたことおぼえません。」と、こゑ途絶とだえて、チリ/\とりんつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほそかすかゆきのやうにしろ野山のやま降懸ふりかゝつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)