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迚
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とて
ふりがな文庫
“
迚
(
とて
)” の例文
今の日本の有様では君の思って居る様な美術的の建築をして後代に
遺
(
のこ
)
すなどと云うことは
迚
(
とて
)
も不可能な話だ、それよりも文学をやれ
落第
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「未熟者の拙者、
迚
(
とて
)
も人にお教え申すことなどは、出来ませぬが、折角の
思召
(
おぼしめ
)
しを辞するは却って失礼、宜しかったら型だけにても」
おもかげ抄
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「予定は無論
整然
(
ちゃん
)
と拵えて置いて戴かなければなりませんが、あなたは
迚
(
とて
)
も几帳面にお手紙を下さるような方じゃありませんからね」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
受け御
手當金
(
てあてきん
)
百兩と
御墨附
(
おすみつき
)
御短刀まで
後
(
のち
)
の
證據
(
しようこ
)
に
迚
(
とて
)
下されしこと
逐
(
ちく
)
一
物語
(
ものがた
)
ればお三
婆
(
ばゝ
)
は大いに
悦
(
よろこ
)
び其後は
只管
(
ひたすら
)
男子の
誕生
(
たんじやう
)
あらんことを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
謡曲
(
うたひ
)
が済む頃になると、
其家
(
そこ
)
の
忰
(
せがれ
)
が蓄音機を鳴らし出す。それがまた奈良丸の
浪花節
(
なにはぶし
)
一式と来てゐるので、
迚
(
とて
)
も溜つたものではない。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
▼ もっと見る
いくら捜しても、
迚
(
とて
)
も見つかりっこはありゃしねえと云んで、皆なまあ一時引揚げることにして錨を流して見ることになったんだ。
躯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
大洋
(
タイヤン
)
と
小洋
(
ショウヤン
)
と銅貨との計算法が
迚
(
とて
)
もヤヤコシクて、これを上手に活用すると、お銭を細かくこわす
毎
(
ごと
)
にお銭の数と量と価値とを増すし
赤げっと 支那あちこち
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
せいぜい御手のものの手紙の文章で静子を怖がらせる位のことで、
迚
(
とて
)
もそれ以上の悪企みが実行出来る筈はない。とたかを
括
(
くく
)
っていた。
陰獣
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
汗水たらして激しく山登りをして来た上に、握飯には有付けず、塩からい冷肉を
無暗
(
むやみ
)
にパク付いたので、
迚
(
とて
)
も
堪
(
たま
)
ったものではない。
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
ロミオ (炬火持に對ひ)
俺
(
おれ
)
に
炬火
(
たいまつ
)
を
與
(
く
)
れい。
俺
(
おれ
)
には
迚
(
とて
)
も
浮
(
う
)
かれた
眞似
(
まね
)
は
出來
(
でき
)
ぬ。
餘
(
あんま
)
り
氣
(
き
)
が
重
(
おも
)
いによって、
寧
(
いっ
)
そ
明
(
あかる
)
いものを
持
(
も
)
たう。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
これをこの
儘
(
まま
)
にして置ては
迚
(
とて
)
も始末が付かぬから、何でも片付けなければならぬ。
如何
(
どう
)
しよう。
外
(
ほか
)
に仕方がない。何でも売るのだ。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
大「拙者も
然
(
そ
)
う思ってる、
迚
(
とて
)
も国へ往ったっていけんから、何処ぞへ取付こうと思うが、御当家でお羽振の
宜
(
い
)
いお方は何というお方だね」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
只
(
たゞ
)
彼
(
かれ
)
は
目下
(
いま
)
其
(
そ
)
の
幾部分
(
いくぶぶん
)
でも
要求
(
えうきう
)
することが、
自分
(
じぶん
)
の
火
(
ひ
)
が
燒
(
や
)
いた
其
(
そ
)
の
主人
(
しゆじん
)
の
家
(
うち
)
に
對
(
たい
)
して
迚
(
とて
)
も
口
(
くち
)
にするだけの
勇氣
(
ゆうき
)
が
起
(
おこ
)
されなかつたのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ねらつても
迚
(
とて
)
も当らない程、ねらつて投げる事の下手な自分はそれが当る事などは全く考へなかつた。石はコツといつてから流れに落ちた。
志賀直哉氏の作品
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
いや、
迚
(
とて
)
も、ムッシュウ。仮りに私が大学者であって、どんな
語
(
ことば
)
を列ねたからって、あのときの恐怖を適切に云い現わすことは出来ません。
十時五十分の急行
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
否
(
いな
)
、見たりといひ会へりといふの言葉は、なほ皮相的、外面的にして
迚
(
とて
)
もこの刹那の意識を描尽するに足らず、其は神我の融会也、合一也
予が見神の実験
(新字旧仮名)
/
綱島梁川
(著)
きまっていないのは
襟
(
えり
)
だけですが、父のように黒とか黄とかいうような
凝
(
こ
)
った渋好みのものは僕みたいに未熟な者には
迚
(
とて
)
も使えませんから
押絵の奇蹟
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
然しだ、私は言い訳をするんじゃないが、世の中には
迚
(
とて
)
も筆では書けないような不思議なことが、筆で書けることよりも、余っ程多いもんだ。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
かゝる
大發掘
(
だいはつくつ
)
を
試
(
こゝろ
)
みてから、
非常
(
ひじやう
)
に
此所
(
こゝ
)
は
有名
(
いうめい
)
に
成
(
な
)
つたが、
今
(
いま
)
は
兒島惟謙翁
(
こじまゐけんおう
)
の
邸内
(
ていない
)
に
編入
(
へんにふ
)
せられて、
迚
(
とて
)
も
普通
(
ふつう
)
では
發掘
(
はつくつ
)
する
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
ずに
居
(
ゐ
)
た。
探検実記 地中の秘密:20 大森貝塚の発掘
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
智恵ちゃんや阿母さんとして忘られぬ深刻な打撃を与えていて(療病に関し)
迚
(
とて
)
も妥協の見込みないわけなのだそうです。
獄中への手紙:04 一九三七年(昭和十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
町々の町役人は
鉄棒
(
かなぼう
)
でそれらの群衆を制してゐたが、見物人はあとからあとからと押寄せてくるので、
迚
(
とて
)
もそれを追ひ払うことは出来なかつた。
梟娘の話
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
人間様の方は賄賂が効くさうだが、俺達の方ぢやア
迚
(
とて
)
も駄目だよ。握飯で騙されるやうな
半間
(
はんま
)
な犬が
此節
(
このせつ
)
がら有るものか。
犬物語
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
偶には女の様に気絶する事も有り愈々昨年に至り斯う神経の穏かならぬ身では
迚
(
とて
)
も此の職は務らぬとて官職を辞したのだ。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
そんな気休めだけでは私安心出来ないの。奥様は
迚
(
とて
)
もあなたを愛していらしゃるのね。情炎に燃えた、火のようなあのお眼を見ても、あなたの心を
魔性の女
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
科学を
呪
(
のろ
)
うこと
迚
(
とて
)
もはなはだしく、科学的殺人の便宜を指摘する
夫子
(
ふうし
)
自身
(
じしん
)
はいつか
屹度
(
きっと
)
この「
便宜
(
コンビニエンス
)
」の材料に使われて
電気看板の神経
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
とも角、何は
措
(
お
)
いても私は室長に馬鹿にされるのが
辛
(
つら
)
かつた。どうかして、
迚
(
とて
)
も
人間業
(
にんげんわざ
)
では出来ないことをしても、取り入つて可愛がられたかつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
彼等旧小作人は其の土地解放の精神を忠実に実行して漸次其の範囲を拡大して行く如き事は
迚
(
とて
)
も難い様に思はれる。
狩太農場の解放
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
迚
(
とて
)
も
御利生
(
ごりしやう
)
のない
處
(
ところ
)
を、
御新姐樣
(
ごしんぞさま
)
のお
執成
(
とりなし
)
で、
些
(
ちつ
)
と
纏
(
まと
)
まつた
草鞋錢
(
わらぢせん
)
を
頂戴
(
ちやうだい
)
する、と
其
(
そ
)
の
足
(
あし
)
で
新地入
(
しんちばひ
)
りでござります。
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
オヤ、
可哀相
(
かあいさう
)
に
私
(
わたし
)
の
小
(
ちひ
)
さな
足
(
あし
)
は!
今
(
いま
)
、
誰
(
だれ
)
がお
前
(
まへ
)
に
靴
(
くつ
)
や
靴足袋
(
くつした
)
を
穿
(
は
)
かしてくれるでせう?
私
(
わたし
)
には
迚
(
とて
)
も
出來
(
でき
)
ないわ!でも、
餘
(
あンま
)
り
遠
(
とほ
)
ッ
離
(
ぱな
)
れて
居
(
ゐ
)
るんですもの。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
その時ふと私達の目には白い着物を着た
婦
(
おんな
)
達が四五人、遠く砂浜を歩いて来るのが見えた。丁度夕焼頃となり、それが
迚
(
とて
)
も美しく映えて見えるのだった。
玄海灘密航
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
古い鉄の歯車の大きな奴を
重
(
おもし
)
にしてありましたよ。
迚
(
とて
)
も持って来れませんので、途中で綱を切って
了
(
しま
)
ったんです。
カンカン虫殺人事件
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
(現今クンベツ)且つ
行
(
ゆ
)
く処として倒れたる大樹ありて、其上を飛越え、或は曲り或は迂回する
等
(
とう
)
は、
迚
(
とて
)
も言語を以て語り筆紙を以て尽すべからざるあり。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
「ダンスなんて一種のぐわんみたいなもんぢやないですか。僕には
迚
(
とて
)
も正視する事が出来ない位ゐですね。」
私の社交ダンス
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
動物にしても
海鞘
(
ほや
)
のように腎臓のない規則外れの奴があるが、こいつは
迚
(
とて
)
も動物とは思えないほど
鈍間
(
のろま
)
なんだから、このことからも残滓の排泄を知らないで
植物人間
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
昨日出来たばかりの百科辞書を見ても旧説ばかり書いてあって、
迚
(
とて
)
も問題にならん。だから研究して居る人は知って居るが、そうでない人にはまるで分らぬ。
植物記
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
いづれ參上仕候
而
(
て
)
、
得
(
とく
)
と可
二
申上
一
筈御座候得共、纔
中
(
なか
)
兩日之御滯留に而、
迚
(
とて
)
も罷出候儀不
二
相叶
一
候に付、以
二
書面
一
申上候間、
旁
(
かた/″\
)
御汲取可
レ
被
レ
下候。頓首。
遺牘
(旧字旧仮名)
/
西郷隆盛
(著)
運転手は
迚
(
とて
)
も寒くなりました、旦那、風邪を惹きますよ、と注意を促して居る様でしたが、後は耳に入らず其儘車の震動に身を委せて居眠りを続けて了いました。
陳情書
(新字新仮名)
/
西尾正
(著)
大事に使えば生涯使えぬこともないが、ぞんざいに使えば直ぐにこわれる、治療したって駄目じゃ只眼を大事して居ればよい。そうさ学問などは
迚
(
とて
)
ても駄目だなあ。
家庭小言
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
しかるを其方がこのように、世にも不思議な何時までも、そのうら若さを保っているのは、
迚
(
とて
)
も理窟で考えられぬ。其処でつい拙者も疑うのじゃ——呉羽之介どの。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
この芝兼さんは
迚
(
とて
)
も将棋が好きで、その芝居の暇さへあれば、浅草、神田、日本橋といつた具合に、将棋の会所のあるところをぐるぐる廻つて将棋ばかりさしてゐた。
手数将棋
(新字旧仮名)
/
関根金次郎
(著)
が
扨
(
さて
)
、中日の十四日の勘定前だから、小遣銭が、
迚
(
とて
)
も
逼迫
(
ひっぱく
)
で、活動へも行かれぬ。
斯様
(
こん
)
な時には、辰公は
常
(
いつ
)
も、通りのラジオ屋の前へ、演芸放送の立聴きと出掛ける。
越後獅子
(新字新仮名)
/
羽志主水
(著)
そして、「ね、栄坊さん、こいぢや
迚
(
とて
)
も担げん。一ぱいひつかけなきや、力が出ねえ。」といつた。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
そうよ、だからあたしがもうちょっと収入の多いことしなきゃ、これでは
迚
(
とて
)
もおっつかないわよ。
女給
(新字新仮名)
/
細井和喜蔵
(著)
「婆さん/\。今帰つた。今日は売り
溜
(
だめ
)
のお
銭
(
あし
)
は一文も持つて来なかつたが、その代り
迚
(
とて
)
も幾百両だしても買へない
善
(
い
)
いお土産をもつて来た。何だか当てゝみなさい。」
竜宮の犬
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
で、
迚
(
とて
)
ものついでに、誓紙の交換を申し入れ、まず秀吉の証文を、この立ち際に求めたのだった。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それからは、
毎日
(
まいにち
)
毎日
(
まいにち
)
、
菜
(
な
)
の
事
(
こと
)
ばかり
考
(
かんが
)
えていたが、いくら
欲
(
ほ
)
しがっても、
迚
(
とて
)
も
食
(
た
)
べられないと
思
(
おも
)
うと、それが
元
(
もと
)
で、
病気
(
びょうき
)
になって、
日増
(
ひまし
)
に
痩
(
や
)
せて、
青
(
あお
)
くなって
行
(
ゆ
)
きます。
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
全体世の変りを離れたる者故、年々金銀を取込計にて、出す事
迚
(
とて
)
は此本願寺えの奉納のみと云。
特殊部落と細民部落・密集部落
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
よし又行つたとしても一週間位は面白からうが
迚
(
とて
)
も一ヶ月余は居られまい、単調になり淋しくなるは矢張り同じことだ、矢張り一人ぼつちだ、行つたとてつまらない……。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
いつも
贔屓
(
ひいき
)
にしておくんなはる御新さんにおはなしゝて、
迚
(
とて
)
も大変なお金だからしやうがあるめいけど、たゞ可哀さうだつていつて
貰
(
もら
)
つてもそれ
丈
(
だけ
)
気もちが
好
(
よい
)
と思つてさ
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
赤痢病の襲来を
蒙
(
かうむ
)
つた
山間
(
やまなか
)
の
荒村
(
あれむら
)
の、重い恐怖と
心痛
(
そこびえ
)
に充ち満ちた、目もあてられぬ、そして、不愉快な
状態
(
ありさま
)
は、一度その境を実見したんで無ければ、
迚
(
とて
)
も想像も及ぶまい。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
迚
漢検1級
部首:⾡
8画
“迚”を含む語句
去迚
子迚