行逢ゆきあ)” の例文
ことに寛永の初年に陸中平泉ひらいずみの古戦場に近い山中で、仙台の藩士小野太左衛門が行逢ゆきあうたというのは、よほど怪しい常陸坊であった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
身の潔白を立てる為には、今後何処どこ行逢ゆきあおうとも決して彼女かれとは口を利くまいと、ひそかに決心している矢先へ、あたかのお葉が現われた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その家の下女げじょ行逢ゆきあいて近状を聞き、(万感万嘆この夜ねむることかたし)と書いたのは、彼女の青春二十一歳のことであった。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ちまたでは、行逢ゆきあう人から、木で鼻をくくるような扱いを受けた殺気立った中に、何ともいえぬ間の抜けたものも感じられる、奇怪な世界であった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
其処そこで、大きな鳥打帽ハンチングかぶった背広服に仕事着の技師らしい男に行逢ゆきあうと、喬介は早速さっそくその男をとらえて切り出した。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
そしてかの美貌の男か、美女か、小山すみれかに行逢ゆきあえば、直ちに補えるつもりでいたけれど、結局この重要なる三人の人物をむなしくいっしてしまった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
身體からだゆすり、下駄げたにて板敷いたじき踏鳴ふみならすおとおどろ/\し。そのまゝ渡場わたしばこゝろざす、石段いしだん中途ちうとにて行逢ゆきあひしは、日傘ひがささしたる、十二ばかりの友禪縮緬いうぜんちりめん踊子をどりこか。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
昨日浴場の裏で三造に行逢ゆきあった時、ふと気がつくと、彼の手の甲に黒い筋がついている、当然私は例の犯人の手の傷痕を思い出さない訳には行きませんでした。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
仮令たとい教師先進者に行逢ゆきあうとも丁寧に辞儀するは無用の沙汰さたなり、たがいに相見て互に目礼をもって足るべし。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その頃私は番町の島田邸近くすまっていたので、度々島田夫人と途中で行逢ゆきあった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
阿關おせきつむりさきより爪先つまさきまでながめていゑ/\わたしだとて徃來わうらい行逢ゆきあふたくらゐではよもや貴君あなたきますまい、たついまさきまでもらぬ他人たにん車夫くるまやさんとのみおもふてましたに御存ごぞんじないは當然あたりまへ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二度目の婿むこを取り候後も、年々寒暑の折には欠かさず屋敷へ見舞にまいり候ほどにて、愚僧山内の学寮へ寄宿の後も、有馬様ありまさま御長屋おながや外の往来おうらいにて、図らず行逢ゆきあひ候事など思ひ浮べ、その日の昼下り
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
も持ず歩行せし時其方に行逢ゆきあひし者あるよし然る上は其節病中との申立はいつはりならんと有りければ長庵不審ふしんさうなる面色おももちして決して他行は勿論もちろんかどへも出申さず候とまことしやかに申立てけるにぞ然る上は證據人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ギシリ/\とやつてまゐりハタと朋友ほういう行逢ゆきあひまして、甲
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
山の神の母一神の君に行逢ゆきあひたまふとき、われ産をして今日三日になるまでうぶ腹を温めず、なんじが持ちしわり子を少し得さすべしと仰せける。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
途中で行逢ゆきあった職工の一人に屑捨場の所在を訊ねた私達は、それから間もなく鉄工場の隅の裏手へやって来た。
カンカン虫殺人事件 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それく……お前樣まへさま途中とちうでありませう。とほりがかりから、行逢ゆきあうて、うやつて擦違すれちがうたまでの跫音あしおとで、ようれました。とぼ/\した、うはそらなのでちやんわかる……
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
また足軽は一般に上等士族に対して、下座げざとて、雨中うちゅう、往来に行逢ゆきあうとき下駄げたいで路傍ろぼう平伏へいふくするの法あり。足軽以上小役人格の者にても、大臣にえば下座げざ平伏へいふくを法とす。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかも私の不運なる、遂に両人に行逢ゆきあうことができないのであった。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)
よめになどゝはおもひもらぬことなり芳之助よしのすけもあれゆるさずと御立腹ごりつぷく數々かず/\それいさゝかも御無理ごむりならねどおまへさまとえんきれて此世このよなんたのしからずつらき錦野にしきのがこともあり所詮しよせん此命このいのちひとつぞと覺悟かくごみちおなじやうに行逢ゆきあつておまへさまのおこゝろうかゞへば其通そのとほりとか今更いまさら御違背ごゐはいのあるはずなしわたしうれしうぞんじますを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
村の猟人かりうどの某という者が、五葉山ごようざんの中腹の大きな岩の陰において、この女に行逢ゆきあって互いに喫驚びっくりしたという話である。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それ/\、坊様ばうさまなら、よひくちわしたのんで四手場よつでばもらふたのぢや……、はあ、其処そこへお前様めえさま行逢ゆきあはしつたの。はて、どうも、妙智力めうちりき旦那様だんなさまわしえんるだね。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
所がその行逢ゆきあごとに、新入生などは勝手を知らずに、私の顔を見ると丁寧に辞儀じぎをする。先方さきから丁寧にれば、此方こっちこれに応じて辞儀をしなければならぬ。忙しい中にウルサクてまらぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
て、行逢ゆきあつたものは、ひとならびにならんだ三にんづれで、どれも悄乎しよんぼりとした按摩あんまである。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……時間を思っても、まだ小学校前らしいのが、手に、すかんぼも茅花つばなも持たないけれど、摘み草の夢の中を歩行あるくように、うっとりとした顔をしたのと、みちの角で行逢ゆきあった。
若菜のうち (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
高箒たかぼうきを片手にたすきがけで、刻足きざみあしに出て行逢ゆきあったのがその優しいおんなで、一寸ちょっと手拭を取って会釈しながら、軽くすり抜けてトントンと、堅い段を下りて行くのが、あわただしい中にも
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なん約束やくそくもなく、おもひもけず行逢ゆきあつたのに、トながら行過ゆきすぎるうち、れなり何事なにごとしにはわかれまい。ぶか、めるか、きつくちくにちがひない、と坂上さかがみ不思議ふしぎにもおもつた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一人いちにんづいと行逢ゆきあひ、そでいて、ながいふし、くつどのがを、ひしとにぎつて
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それおなじに日本国中にほんこくちゆう何処どこともなう、或年あるとし或月あるつき或日あるひに、ひと行逢ゆきあはす、やまにもにも、みづにもにも、くさにもいしにも、はしにもいへにも、まへからさだまるうんがあつて、はなならば、はなてふならば、てふ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この間に早瀬主税ちから、おつたとともに仮色使と行逢ゆきあいつつ、登場。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)