種々さま/″\)” の例文
蓮太郎も一つ受取つて、秋の果実このみのにほひをいで見乍みながら、さて種々さま/″\な赤倉温泉の物語をした。越後の海岸まで旅したことを話した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
聞て狂氣きやうきの如くかなしみしかども又詮方せんかたも非ざれば無念ながらも甲斐かひなき日をぞ送りける其長庵は心の内の悦び大方ならずなほ種々さま/″\と辯舌を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夫れを種々さま/″\に思ふて見ると父さんだとて私だとて孫なり子なりの顏の見たいは當然あたりまへなれど、餘りうるさく出入りをしてはと控へられて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
俊男の頭の中には今、自分が病身の爲に家庭に於ける種々さま/″\なる出來事を思出した。思出すとそれ大概たいがい自分の病身といふに基因きゐんしてゐる。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
世のありさま、三四年このかた金融の逼迫ひつぱくより、種々さま/″\の転変を見しが、別して其日かせぎの商人あきびとの上には軽からぬ不幸を生ぜしも多かり。
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
両側へずーっと地口行灯じぐちあんどうかゝげ、絹張に致して、良い画工えかき種々さま/″\の絵をかせ、上には花傘を附けまして両側へ数十本立列たちつらね、造り花や飾物が出来ます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御馳走ごちそうには季春しゆんがまだはやいが、たゞるだけなら何時いつでもかまはない。食料しよくれうらないはべつとして、今頃いまごろ梅雨つゆには種々さま/″\きのこがによき/\と野山のやまえる。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かつて汝に海の上を歩ましめし信仰に就き、輕き重き種々さま/″\の事をもて、汝の好むごとく彼を試みよ 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
糸に作るにも座を定めたい囲位かたむる事うむにおなじ。縷綸いとによるその道具その手術てわざその次第しだいじゆん、その名に呼物よぶもの許多いろ/\種々さま/″\あり、繁細はんさいの事をつまびらかにせんはくだ/\しければいはず。
さて、此樣このやう行裝ぎゃうさうで、彼奴きゃつ毎夜々々まいよ/\戀人共こひびとども頭腦あたまなか馳𢌞かけまはると、それがたちま種々さま/″\ゆめとなる。
あゝ、大佐たいさ其後そのご何處いづこ如何どうしてるだらうとかんがへるとまた種々さま/″\想像さうざういてる。
晴れ渡つた空の下に、流れる水の輝き、つゝみ青草あをくさ、その上につゞくさくらの花、種々さま/″\の旗がひらめく大学の艇庫ていこ、そのへんからおこる人々のさけび声、鉄砲のひゞき渡船わたしぶねから上下あがりおりする花見の人の混雑。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
れを種々さま/″\おもふてるととゝさんだとてわたしだとてまごなりなりのかほたいは當然あたりまへなれど、あんまりうるさく出入でいりをしてはとひかへられて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あきらかに見、明に考へることが出来るやうに成つた。眼前めのまへひろがる郊外の景色を眺めると、種々さま/″\追憶おもひでは丑松の胸の中を往つたり来たりする。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
遣ひ居て下されよと出すを久八はおし返したつ辭退じたいをなしけれども千太郎は種々さま/″\に言ひなし漸々やう/\金子を差置さしおきつゝ我が家へこそは歸りけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
種々さま/″\に意見を加えましたが、一方かた/\が頑固な老爺じいさんで肯きませんから、そんならば暇をやろうと万事行届ゆきとゞいた茂木佐平治さんだから多分の手当をてくれ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此事近隣きんりんきこえて人々あつま種々さま/″\評議ひやうぎしてたるをりしも一老夫いちらうふきたりていふやう、あるじの見え給はぬとや、われこゝろあたりの事あるゆゑしらせ申さんとてきたれりといふ。
数歳すさいの星霜を経て、今松川の塾となれるまで、種々さま/″\人の住替すみかはりしが、一月ひとつきしは皆無にて、多きも半月を過ぐるは無し。はなはだしきに到りては、一夜ひとよを超えて引越せしもあり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
路地は其等の浮世絵に見る如く今も昔と変りなく細民の棲息する処、日の当つた表通からは見る事の出来ない種々さま/″\なる生活が潜みかくれてゐる。佗住居わびずまひ果敢はかなさもある。隠棲の平和もある。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
斯う丑松は猜疑深うたがひぶかく推量して、何となく油断がならないやうに思ふのであつた。不安な丑松のまなこには種々さま/″\な心配の種が映つて来たのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
暫時しばしと止め種々さま/″\請勸ときすゝめしゆゑ澁々しぶ/\ふみ取上てふう押切おしきりよむしたがひ小夜衣は少しも知らぬ眞心まごころえ伯父長庵が惡事をなげき我身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
汝ほどの學識ものしりは廣き東京みやこくほどにて、塵塚の隅にもごろごろと有るべし、いづれも立身出世の望みを持たぬはなく、各自めい/\ことはかはりて、出世の向きも種々さま/″\なるべけれど
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
剣難の相があると云うたにって九歳のおりに出家をげ、谷中南泉寺なんせんじの弟子になって玄道、剃髪ていはつをしてから、もう長い間の事じゃ、其の嘉永のはじめ各藩かくばんにて種々さま/″\の議論が起り
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
濃き闇は此処をも立罩たてこめ候ふが、女の点ずる瓦斯のに、秘密の雲破れて、余の目の前には忽如として破れたる長椅子、古びし寝台ねだい、曇りし姿見、水たまれる手洗鉢てあらひばちなぞ、種々さま/″\の家具雑然たる一室の様
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
種々さま/″\曰くのつきし難物のよしなれども、持ねばならぬ義理ありて引うけしにや、それとも父が好みて申受しか、その邊たしかならねど勢力おさ/\女房天下と申やうな景色なれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
種々さま/″\いはくのつきし難物なんぶつのよしなれども、もたねばならぬ義理ぎりありてひきうけしにや、それともちゝこのみて申うけしか、そのへんたしかならねど勢力せいりよくおさ/\女房天下にようぼうてんかと申やうな景色けしきなれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
世話せわにこそなれおんもなにもなきが、つねごろ種々さま/″\苦勞くろうをかけるうへにこの間中あひだぢうよりの病氣びやうき、それほどのことでもかりしを、何故なにゆゑうさぎて、こゝろにも所置しよちありしかもしれず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あめはふれどゆきれど其處そこ轅棒かぢぼうおろさぬことなしとくちさがなき車夫しやふれに申せしやら、それからそれつたはりて想像さうぞうのかたまりはかげとなりかたちとなり種々さま/″\うわさとなり、ひとれずをもみたま御方おんかたもありし
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)