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真紅
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しんく
ふりがな文庫
“
真紅
(
しんく
)” の例文
旧字:
眞紅
逆光線になったM子さんの姿は耳だけ
真紅
(
しんく
)
に
透
(
す
)
いて見えます。僕は何か義務に近いものを感じ、M子さんの隣に立つことにしました。
手紙
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
霧は林を
掠
(
かす
)
めて飛び、道を
横
(
よこぎ
)
つて又た林に入り、
真紅
(
しんく
)
に染つた木の葉は枝を離れて二片三片馬車を追ふて舞ふ。
御者
(
ぎよしや
)
は
一鞭
(
いちべん
)
強く加へて
空知川の岸辺
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
すぐ裏を行く加茂川の水には、もう、都から遠い奥の
紅葉
(
もみじ
)
が浮いてくる。近くは、東山の三十六峰も
真紅
(
しんく
)
に燃えている秋なのである。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
真紅
(
しんく
)
へ、ほんのりと
霞
(
かすみ
)
をかけて、新しい火の
※
(
ぱっ
)
と移る、
棟瓦
(
むねがわら
)
が
夕舂日
(
ゆうづくひ
)
を
噛
(
か
)
んだ
状
(
さま
)
なる
瓦斯暖炉
(
がすだんろ
)
の前へ、
長椅子
(
ながいす
)
を
斜
(
ななめ
)
に、ト
裳
(
もすそ
)
を
床
(
ゆか
)
。
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
御主
(
おんあるじ
)
耶蘇様
(
イエスさま
)
は
百合
(
ゆり
)
のやうにお
白
(
しろ
)
かつたが、
御血
(
おんち
)
の
色
(
いろ
)
は
真紅
(
しんく
)
である。はて、
何故
(
なぜ
)
だらう。
解
(
わか
)
らない。きつと
何
(
なに
)
かの
巻物
(
まきもの
)
に
書
(
か
)
いてある
筈
(
はず
)
だ。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
▼ もっと見る
真紅
(
しんく
)
や、白や、
琥珀
(
こはく
)
のような黄や、いろ/\変った色の、
少女
(
おとめ
)
のような優しい花の姿が、荒れた庭園の夏を
彩
(
いろど
)
る
唯一
(
ゆいいつ
)
の色彩だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
原形は全く散逸してしまってうかがうべくもない。
真紅
(
しんく
)
の布片や金色の刺繍の跡に、わずかに往時の荘厳な美しさが
偲
(
しの
)
ばるるのみである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
半分がた散り尽くした桜の葉は
真紅
(
しんく
)
に紅葉して、軒並みに掲げられた日章旗が、風のない空気の中にあざやかにならんでいた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お浜は畳んでいた小手を上げて、その
掌
(
たなごころ
)
から、手首から、二の腕のところまで、
真紅
(
しんく
)
の血痕が
淋漓
(
りんり
)
として漂うのを示しました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
例えば、瑣末な例であるが『武道伝来記』一の四に、女に変装させて送り出す際に「風俗を
使
(
つかい
)
やくの女に作り、
真紅
(
しんく
)
の網袋に葉付の蜜柑を入」
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
腰の廻りに荒目昆布のごときびらびらのついた
真紅
(
しんく
)
の
水浴着
(
マイヨオ
)
を一着におよび、クローム製の
箍
(
たが
)
太やかなるを七八個も右の
手頸
(
てくび
)
にはめ込んだのは
ノンシャラン道中記:03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
赤い電燈などは、普段よりずっと
真紅
(
しんく
)
のいろを濃くにじみ出させていた。二人が、浜ノ町を抜け、暗い海の方へ行くので、コヨは心配になった。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
また、
聖水
(
ホリーウォーター
)
の近くには、
真紅
(
しんく
)
の
袴
(
ペティコート
)
をはいて、レースのついている
胸衣
(
むなぎ
)
をつけた農家の女たちが、家畜のように動かずに地面に腰をおろしています。
世界怪談名作集:11 聖餐祭
(新字新仮名)
/
アナトール・フランス
(著)
深緑の葉、
真紅
(
しんく
)
の花、さては薄紫の色に、或いは淡紅色に…… そして春の野は緑に包まれ、夏の森林は深緑がしたたり、秋の林は紅葉の錦を
纏
(
まと
)
う。
季節の植物帳
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
今まで
微白
(
ほのじろ
)
いように見えていた花は
鮮
(
あざやか
)
な
真紅
(
しんく
)
の色に染まっていた。彼は驚いて女の顔を見た。女の
濃艶
(
のうえん
)
な
長目
(
ながめ
)
な顔が浮きあがったようになっていた。
港の妖婦
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
朝焼けがそこここに
真紅
(
しんく
)
のまだらを散らした。日の出が近づくにつれて、稲妻はだんだん
淡
(
あわ
)
く、短くなっていった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
海国日本の快男児九名は
真紅
(
しんく
)
のオォル持つ手に血のにじめるが
如
(
ごと
)
き汗を
滴
(
したた
)
らしつつ必死の
奮闘
(
ふんとう
)
を続けて
遂
(
つい
)
に敗れた。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
かつては
真紅
(
しんく
)
の色をなしていた口が、頬の色と同じように弱い薔薇色をしているだけの相違でありました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
且
(
かつ
)
その姿を写真に撮ることを怠らないのであったが、幸子は又、池に沿うた道端の垣根の中に、見事な
椿
(
つばき
)
の樹があって毎年
真紅
(
しんく
)
の花をつけることを覚えていて
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二人
(
ふたり
)
ののぞく
頭
(
あたま
)
のあいだから、
太陽
(
たいよう
)
ものぞくように、
光
(
ひかり
)
はかんの
中
(
なか
)
へ
射
(
い
)
こんで、
金魚
(
きんぎょ
)
のからだが、さんらんとして、
真紅
(
しんく
)
に
金粉
(
きんぷん
)
をちらすがごとくもえるのでした。
夢のような昼と晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかし鶯という可憐な小鳥が、
真紅
(
しんく
)
の小さな口を開けて、春光の下に力一杯鳴いてる姿を考えれば、
何
(
なん
)
らかそこにいじらしい、
可憐
(
かれん
)
な、情緒的の想念が感じられる。
郷愁の詩人 与謝蕪村
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
或る朝目を
醒
(
さま
)
して見ると、そこに思いも寄らぬ
真紅
(
しんく
)
の花が歌っている。舞を舞っている。鶴見はその物狂いの姿を示す奇蹟の朝を楽しみにして待っているのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ふと目に着いたものは
白蝋
(
はくろう
)
のような色をした彼女の肉体のある部分に、
真紅
(
しんく
)
に咲いたダリアの花のように、
茶碗
(
ちゃわん
)
大に
刳
(
く
)
り取られたままに、鮮血のにじむ
隙
(
すき
)
もない深い
痍
(
きず
)
であった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その色は
真紅
(
しんく
)
であった。おれの眼は、河の岸辺にそそり立つ、月の光に照らされた、巨大な灰色の岩石に落ちた。その岩は灰色で、ものすごく、また高かった。——岩は灰色だった。
沈黙:——神話
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
真紅
(
しんく
)
の厚い織物を脳天から肩先まで
被
(
かぶ
)
って、余る背中に
筋違
(
すじかい
)
の
笹
(
ささ
)
の葉の模様を
背負
(
しょ
)
っている。
胴中
(
どうなか
)
にただ
一葉
(
ひとは
)
、
消炭色
(
けしずみいろ
)
の中に取り残された緑が見える。それほど笹の模様は大きかった。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
真白
(
まっしろ
)
に
塗
(
ぬ
)
りつぶされたそれらのかたちが、
間
(
ま
)
もなく
濡手拭
(
ぬれてぬぐい
)
で、おもむろにふき
清
(
きよ
)
められると、やがて
唇
(
くちびる
)
には
真紅
(
しんく
)
のべにがさされて、
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
顔
(
かお
)
は
今
(
いま
)
にも
物
(
もの
)
をいうかと
怪
(
あや
)
しまれるまでに
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
上も下もただひといろの白の中に、
真紅
(
しんく
)
の胴をくっきりと浮かせた平七が、さっと水しぶきを立て乍ら乗り入れたときは、岸の顔も、舟の中の顔も、打ちゆらぐばかりにどよめき立った。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
無論
(
むろん
)
それは
言
(
い
)
わば
刀
(
かたな
)
の
精
(
せい
)
だけで、
現世
(
げんせ
)
の
刀
(
かたな
)
ではないのでございましょうが、しかしいかに
査
(
しら
)
べて
見
(
み
)
ても、
金粉
(
きんぷん
)
を
散
(
ち
)
らした、
濃
(
こ
)
い
朱塗
(
しゅぬ
)
りの
装具
(
つくり
)
といい、
又
(
また
)
それを
包
(
つつ
)
んだ
真紅
(
しんく
)
の
錦襴
(
きんらん
)
の
袋
(
ふくろ
)
といい
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
その手で、す早く、
滾
(
たぎ
)
つて居る鉄瓶を下したが、再び莟を撮み上げると、直ぐさまそれを火の中へ投げ込んだ。——莟の花片はぢぢぢと焦げる……。そのおこり立つた
真紅
(
しんく
)
の炭火を見た瞬間
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
その
靄
(
もや
)
の中には
広漠
(
こうばく
)
たるうねりがあり、
眩
(
まばゆ
)
きばかりの幻影があり、今日ほとんど知られない当時の軍需品があって、炎のような
真紅
(
しんく
)
の毛帽、揺らめいている
提嚢
(
ていのう
)
、十字の負い皮、
擲弾用
(
てきだんよう
)
の
弾薬盒
(
だんやくごう
)
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
相手が上段に構えている、しないの先へポッツリと、
真紅
(
しんく
)
のしみが現われたが、それが見る間に流れ出し、しないを伝い
鍔
(
つば
)
を伝い、柄頭まで伝わった。と思うとタラタラと、床の上へ流れ落ちた。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
フランス人特有の
身振
(
みぶり
)
の多い
饒舌
(
じょうぜつ
)
の中にも、この時
許
(
ばか
)
りはどこかに
長閑
(
のどか
)
さがある。アペリチーフは食欲を呼び
覚
(
さ
)
ます酒——男は
大抵
(
たいてい
)
エメラルド・グリーンのペルノーを、女は
真紅
(
しんく
)
のベルモットを好む。
異国食餌抄
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
眼は邪慾の光に
物凄
(
ものすご
)
く輝き、額には疲れと恐怖の
皺
(
しわ
)
がたたみ、口元は色情の罪の
歪
(
ゆが
)
みに引歪められて、毒々しい
真紅
(
しんく
)
な唇が妖怪らしく
蒼
(
あお
)
ざめた顔色と物恐ろしい対照を作り、
迚
(
とて
)
も人の姿とは思われぬ
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
だから、
真紅
(
しんく
)
の波紋絹に、かの女の愛の言葉は乗って
東京ロマンティック恋愛記
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
毛糸の
真紅
(
しんく
)
の
頭巾
(
ずきん
)
をかぶって首をかしげ
貧しき信徒
(新字新仮名)
/
八木重吉
(著)
犬よ、その
真紅
(
しんく
)
のこぼれを噛め。
新頌
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
真紅
(
しんく
)
の
薔薇
(
ばら
)
を摘むこころ
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
梅子の
面
(
かほ
)
は
真紅
(
しんく
)
を染めぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
夜みれば
真紅
(
しんく
)
なる
ヒウザン会とパンの会
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
怏々
(
おうおう
)
と、楽しまない日を、幾月もうそこで暮したことか、人知れず
葉隠
(
はがく
)
れに燃えて腐って、やがて散るしかない——
真紅
(
しんく
)
の花の悩みのように。
夏虫行燈
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
岩の上には処どころ
石南花
(
しゃくなげ
)
の
真紅
(
しんく
)
の花が咲いていた。谷の上に見える狭い空には
午
(
ひる
)
近い暑い
陽
(
ひ
)
がぎらぎらしていたが、谷底は秋のように冷びえしていた。
岩魚の怪
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そう云いながら、瑠璃子は右の手に折り持っていた、
真紅
(
しんく
)
の大輪のダリヤを、
食卓
(
テーブル
)
の上の
一輪挿
(
いちりんざし
)
に投げ入れた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
黒琥珀
(
くろこはく
)
の袋に入れた長い折り畳み式釣竿のごときものを小脇にかかえ、大きな自動車用の
塵
(
ちり
)
除け眼鏡をかけ、
真紅
(
しんく
)
の靴下にズックの
西班牙靴
(
エスパドリエイ
)
をはいた異装の人物。
ノンシャラン道中記:03 謝肉祭の支那服 ――地中海避寒地の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
彼等の一人は、——
真紅
(
しんく
)
の海水着を着た少女は特にずんずん進んでいた。と思うと乳ほどの水の中に立ち、もう一人の少女を招きながら、何か
甲高
(
かんだか
)
い声をあげた。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
高い
石垣
(
いしがき
)
に
蔦葛
(
つたかつら
)
がからみついて、それが
真紅
(
しんく
)
に染まっているあんばいなど得も言われぬ趣でした。
春の鳥
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
唯違ふのは彼女の眼の緑色の光が、前よりも輝かないのと嘗ては燃えたつやうな
真紅
(
しんく
)
の唇が、今は其頬の色のやうな、微かなやさしい薔薇色に染んでゐるとの二つである。
クラリモンド
(新字旧仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
さのみ大きな滝とは見えないが、
懸崖
(
けんがい
)
を直下に落ちて、見上ぐるばかりに
真紅
(
しんく
)
の色をした
楓
(
もみじ
)
が
生
(
お
)
い重なって、その一ひら二ひらが、ちらちらと笠の上に降りかかって来ました。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
始
(
はじめ
)
てこの人ならばと思って、
打明
(
うちあ
)
けて言うと、
暫
(
しばら
)
く黙って
瞳
(
ひとみ
)
を
据
(
す
)
えて、私の顔を見ていたが、月夜に色の
真紅
(
しんく
)
な花——きっと探しましょうと言って、——
可
(
よ
)
し、
可
(
よ
)
し、女の
念
(
おもい
)
で
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そうして宅へ帰ったら瓦が二、三枚落ちて壁土が少しこぼれていたが、庭の
葉鶏頭
(
はげいとう
)
はおよそ天下に何事もなかったように
真紅
(
しんく
)
の葉を
紺碧
(
こんぺき
)
の空の光の下に
耀
(
かがや
)
かしていたことであった。
烏瓜の花と蛾
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
股のところまで下っている
真紅
(
しんく
)
のチョッキを着、鹿皮の半ズボンをはき、赤い毛の靴下と、大きな銀の締め金のついた重い靴とをはき、青貝の大きなボタンのついた長い上着を着ている。
鐘塔の悪魔
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
“真紅”の意味
《名詞》
真 紅(しんく)
濃い紅色。
(出典:Wiktionary)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
紅
常用漢字
小6
部首:⽷
9画
“真紅”で始まる語句
真紅島田
真紅金繍