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渦
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うず
ふりがな文庫
“
渦
(
うず
)” の例文
季節とは関係なしに工場の中は暑く、石灰粉の微粒は
渦
(
うず
)
を巻いたり、
条
(
しま
)
を描いたりしながら、白くて厚い幕のように漂い
溢
(
あふ
)
れていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
半蔵や香蔵は平田篤胤没後の門人として、あの先輩から学び得た心を抱いて、互いに革新潮流の
渦
(
うず
)
の中へ行こうとこころざしていた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ひっきりなし、川の
水
(
みず
)
はくるくる
目
(
め
)
の
回
(
まわ
)
るような
速
(
はや
)
さで、
渦
(
うず
)
をまいて、ふくれ
上
(
あ
)
がり、ものすごい
音
(
おと
)
を
立
(
た
)
ててわき
返
(
かえ
)
っていました。
鬼六
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
渦
(
うず
)
を巻いている処、
波状
(
はじょう
)
になった処、
撥
(
は
)
ねた処、ぴったりと引っ
附
(
つ
)
いた処と、その毛並みの趣が、一々実物の趣が現わされている。
幕末維新懐古談:35 実物写生ということのはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
不思議な好奇心と恐怖とが、頭の中で
渦
(
うず
)
を巻いた。女が自分の性癖を
呑
(
の
)
み込んで居て、わざとこんな真似をするのかとも思われた。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
▼ もっと見る
濛々
(
もうもう
)
と天地を
鎖
(
とざ
)
す
秋雨
(
しゅうう
)
を突き抜いて、百里の底から沸き
騰
(
のぼ
)
る濃いものが
渦
(
うず
)
を
捲
(
ま
)
き、渦を捲いて、幾百
噸
(
トン
)
の量とも知れず立ち上がる。
二百十日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
うっかりしたら、お
守役
(
もりやく
)
の
私
(
わたくし
)
までが、あの
昂奮
(
こうふん
)
の
渦
(
うず
)
の
中
(
なか
)
に
引
(
ひ
)
き
込
(
こ
)
まれて、
徒
(
いたず
)
らに
泣
(
な
)
いたり、
怨
(
うら
)
んだりすることになったかも
知
(
し
)
れませぬ。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
だが、かの
女
(
じょ
)
は
萎
(
な
)
えかけた自分の体を、その薬で
癒
(
い
)
やそうとする希望より強く、今の話が胸の底にいろいろな想像の
渦
(
うず
)
を起こしていた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
断えず込み上げて来る好色心が、それからそれへと
渦
(
うず
)
を巻いて、まだ高々と照り渡っている日の色に、
焦慮
(
しょうりょ
)
をさえ感じ始めたのであった。
歌麿懺悔:江戸名人伝
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
畦
(
あぜ
)
に突き当たって
渦
(
うず
)
を巻くと、
其処
(
そこ
)
の蘆は、裏を
乱
(
みだ
)
して、ぐるぐると舞うに連れて、穂綿が、はらはらと
薄暮
(
うすくれ
)
あいを
蒼
(
あお
)
く飛んだ。
海の使者
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、実は
最
(
も
)
う小説どころでなかった。根本の人生の大問題が頭の中で
渦
(
うず
)
を巻いていた。身に迫る生活上の苦労がヒシヒシと押寄せて来た。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
と、ミサ子がもじもじしたので、そこで笑いが
渦
(
うず
)
まいた。だいぶ
酔
(
よ
)
ってきたマスノは、磯吉のそばによってきて、コップを手ににぎらせ
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
そして周囲にたえず
渦
(
うず
)
巻いている。それらの顔、身振り、運動、音響……。子供は疲れてくる。眼は閉じて、彼は眠ってゆく。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
湖水のここは、
淵
(
ふち
)
の水底からどういう加減か
清水
(
しみず
)
が湧き出し、水が水を水面へ擡げる
渦
(
うず
)
が休みなく捲き上り八方へ散っている。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
次郎は、かれらが眼を光らせ、耳をそばだてて聞いている
沈黙
(
ちんもく
)
の底に、すさまじく
渦
(
うず
)
を巻いている感情の
嵐
(
あらし
)
を明らかに感ずることができた。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
校長先生のお話がここまで参りました時に、満場から湧き起った拍手のたまらない
渦
(
うず
)
巻き……それから
暫
(
しばら
)
くの間続いたススリ泣きと溜息……。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「ううん、美事な命中率だ。素晴らしいぞ、照準手!」船長は
紅蓮
(
ぐれん
)
渦
(
うず
)
を巻いて湧きあがる地上を見て、
雀躍
(
こおど
)
りせんばかりに、喜んだのだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
その男の立っている辺まで来ますと、
緩
(
ゆる
)
く
渦
(
うず
)
をまき、
躊躇
(
ちゅうちょ
)
でもするように漂ったあげく、沈んでしまうではありませんか。
怪しの者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
えたいの知れぬ
混沌
(
こんとん
)
を成しており、この上もなく
矛盾
(
むじゅん
)
した感情や、想念や、
疑惑
(
ぎわく
)
や、希望や、喜びや、
悩
(
なや
)
みが、つむじ風のように
渦
(
うず
)
まいていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
水のとおらない
皮膚
(
ひふ
)
をもっているのですから、あの
渦
(
うず
)
まいている流れをわたることができないと言われては、だまっているわけにはいきません。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
が、守人の心中には、浮世のあらしよりも、今夜の雨風よりも烈しい、大きな
渦
(
うず
)
がまいていた。近寄る人をまき込まずにはおかない
愛慾
(
あいよく
)
の
鳴門
(
なると
)
だ。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
僕は
眠
(
ねむ
)
たくなって、ゴロリと横になると、帽子を顔にかぶせて眼をとじた。
瞼
(
まぶた
)
の部屋の中は
真暗
(
まっくら
)
だが、
渦
(
うず
)
のような七色のものがくるくる舞っている。
魚の序文
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
それがおりからのからび切った木枯らしにほこり臭い
渦
(
うず
)
を巻いては、ところどころの風陰に寄りかたまって、ふるえおののきあえいでいるのである。
銀座アルプス
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
さっき私がお縁側に立って、
渦
(
うず
)
を巻きつつ吹かれて行く霧雨を眺めながら、あなたのお気持の事を考えていましたら
斜陽
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その署名たるや、水に石を投げ込んだように、正確で、しかも
気紛
(
きまぐ
)
れな線の、波と
渦
(
うず
)
だ。そして、それが、ちゃんと
花押
(
かきはん
)
になり、小さな傑作なのだ。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
わずかに風があって、所々に
塵
(
ちり
)
の
渦
(
うず
)
を立てていた。去年の秋から残ってる少しの黄色い落葉が互いに愉快げに追っかけ合って、戯れてるがようだった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
丁余
(
ちょうよ
)
の上流では
白波
(
しらなみ
)
の瀬をなして騒いだ石狩川も、こゝでは深い
青黝
(
あおぐろ
)
い色をなして、
其処
(
そこ
)
此処に小さな
渦
(
うず
)
を巻き/\彼吊橋の下を音もなく流れて来て
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その光の輪は広くて、光の線は
渦
(
うず
)
巻く火柱のように大空ぜんたいにひろがって、緑と
紅
(
くれない
)
とにきらめいていました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
始終
履歴
(
りれき
)
の
汚
(
よご
)
れ
臭
(
くさ
)
い女に
酷
(
ひど
)
い目に合わされているのを見て
同情
(
おもいやり
)
に
堪
(
た
)
えずにいた上、ちょうど
無暗滅法
(
むやみめっぽう
)
に
浮世
(
うきよ
)
の
渦
(
うず
)
の中へ飛込もうという源三に出会ったので
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その
渦
(
うず
)
の中からのがれたい。たとえこの荒れた島はいかにさびしくとも、ここで静かに
余生
(
よせい
)
を送りましょう。私が朝夕心をつくしてご奉公申し上げますから。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
竹の落葉が烈しい
渦
(
うず
)
を巻いて、二人の足許に乱れ散り始める。風の音に交って、不安げな山鴿の声、しきり。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
雪婆んごの、ぼやぼやつめたい
白髪
(
しらが
)
は、雪と風とのなかで
渦
(
うず
)
になりました。どんどんかける黒雲の間から、その
尖
(
とが
)
った耳と、ぎらぎら光る
黄金
(
きん
)
の眼も見えます。
水仙月の四日
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
私の頭は取りとめのない事で
渦
(
うず
)
を巻いていた。夜はいつの間にか明けて、すがすがしい朝の空気が
靄
(
もや
)
に閉ざされた
窓外
(
そと
)
から飛込んで来た。乗客はざわめき出した。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
ところが、その翌日から、フローラをめぐって、この島には激しい情欲の
渦
(
うず
)
が巻き起こることになった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
彼女を擁護しようと
焦慮
(
あせ
)
ったことが、二重に彼を
嘲笑
(
ちょうしょう
)
の
渦
(
うず
)
に
捲
(
ま
)
きこんで、手も足も出なくしてしまった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
悪くしていた源吉は死ぬ前にどうしても、青森に残してきた母親に一度会いたいとよくそう言っていた。二十三だった。源吉が、二日前の雨ですっかり濁って、
渦
(
うず
)
を
人を殺す犬
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
昨夜のあの
護摩壇
(
ごまだん
)
へ行こうとして大師堂の傍まで来たのであったが、不意に火事よという声で振返って見ると、すぐ眼の下の、室町屋のあたりから黒煙が
渦
(
うず
)
をまく。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いわば
悠々
(
ゆうゆう
)
閑々と澄み渡った水の隣に、薄紙
一重
(
ひとえ
)
の
界
(
さかい
)
も置かず、たぎり返って
渦
(
うず
)
巻き流れる水がある。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
硝子戸
(
ガラスど
)
の外れるのと共に、
室
(
へや
)
の中へ吹き入った風と雨とは、
忽
(
たちま
)
ちに、二十畳に近い大広間に
渦
(
うず
)
巻いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
下手の方、路の
片隅
(
かたすみ
)
によりて月色
渦
(
うず
)
をなし、陰地には
散斑
(
ばらふ
)
なる
蒼
(
あお
)
き光、木の間を
洩
(
も
)
れてゆらめき落つ。風の音時ありて怪しき潮のごとく、おののける
樹
(
き
)
々の梢を渡る。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
社会活動の
渦
(
うず
)
からはねとばされ、もしくははねとばされんとしつつ、なにもかも思うようにできないで、
失意
(
しつい
)
に
嘆
(
なげ
)
いてる人などに、ひとりだって
同情
(
どうじょう
)
するものはない。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
両国広小路の人混みの中に
渦
(
うず
)
を巻いた喧嘩の輪が、
雪崩
(
なだれ
)
を打って柳橋の方へ砕けて来たのでした。
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
激しい憤りが頭の中で
渦
(
うず
)
を巻いた。老母や幼児のことを考えると心は
灼
(
や
)
けるようであったが、涙は一滴も出ない。あまりに強い怒りは涙を
涸渇
(
こかつ
)
させてしまうのであろう。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
覆
(
くつがえ
)
るかと思う位でしたが、その内に耳をもつんざく程、大きな雷鳴が
轟
(
とどろ
)
いたと思うと、空に
渦
(
うず
)
巻いた黒雲の中から、まっ赤な一本の火柱が、杜子春の頭へ落ちかかりました。
杜子春
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
藍
(
あい
)
と
碧
(
あお
)
と
群青
(
ぐんじょう
)
と、また
水浅葱
(
みずあさぎ
)
と白と銀と緑と、
渦
(
うず
)
と
飛沫
(
ひまつ
)
と
水漚
(
すいおう
)
と、泡と、泡と、泡と。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
すべて女性中心の
渦
(
うず
)
は
捲
(
ま
)
き起り、生々とした力を持って
振
(
ふる
)
い立った。その時に「人形の家」のノラに異常な成功をした彼女は、驚異の眼をもって眺められた。彼女の名はあがった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
たちまち、
白
(
しろ
)
い
雲
(
くも
)
が
渦
(
うず
)
を
巻
(
ま
)
いて、
空
(
そら
)
を
低
(
ひく
)
く
流
(
なが
)
れてゆきます。それは、すぐに
太陽
(
たいよう
)
を
隠
(
かく
)
してしまうばかりでなく、あるときは、まったくそのありかすらわからなくしてしまうのでありました。
公園の花と毒蛾
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
たちまち狂おしく
痙攣
(
けいれん
)
し、——高まり、
湧
(
わ
)
きたち、ざわめき、——巨大な無数の
渦
(
うず
)
となって旋回し、まっさかさまに落下する急流のほかにはどこにも見られぬような速さで、渦巻きながら
メールストロムの旋渦
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
すなわち谷川の
淵
(
ふち
)
の水がひとところ、
渦
(
うず
)
を巻いているのが珍らしいので、正月の松を刈りに来た爺さんが、その松を
一束
(
ひとたば
)
投げ込んで見たところが、くるくると廻ってつぶりと沈んで行くのが
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
清新な暖かい気流、
麗
(
うら
)
らかな陽光。静かに
青波
(
あおなみ
)
を打つ麦畑。煤煙に汚れた赤
煉瓦
(
れんが
)
の建物が、重々しく麦畑の上に、雄牛のように横たわっていた。白い煙突からは黒い煙が
渦
(
うず
)
を巻いて立ちのぼった。
汽笛
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
“渦”の意味
《名詞》
水などの流体が作る回転した流れ。
(出典:Wiktionary)
渦
常用漢字
中学
部首:⽔
12画
“渦”を含む語句
巴渦
渦巻
渦紋
旋渦
渦潮
渦流
盤渦
渦巻毛
渦中
渦卷
渦動
渦毛
大渦
大渦巻
渦環
渦福
渦捲
人渦
渦高
対流渦
...