すな)” の例文
暑いを吸うていたかわらすな鬼魅きみ悪くほかほかしていた。その時莚包むしろづつみ焼明たいまつを持って背の高い男が、を持った角顔の男のほうを見て
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すなが赤錆びているので手拭などすぐ渋紙色に染る。それで赤湯の名があるらしい。宿は一軒で二棟ある。四、五十人は泊れるであろう。
三国山と苗場山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
てんにでもいゝ、にでもいゝ、すがらうとするこゝろいのらうとするねがひが、不純ふじゆんすなとほしてきよくとろ/\と彼女かのぢよむねながた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
沙汰さたという文字は、すなに石まじり見えざるを、水にて洗えば、石の大小も皆知れて、土は流れそうろう。見え来らざれば洗うべきようもなし。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
酒を飲んで石に及ぶといえども、水をもってすなそそぐが如き者であったというのであるから、浴びるほど飲んでいたのであろう。
酒渇記 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
彼らまた水を求むるにさとく、沙中水もっとも多き所を速やかに発見し、手ですなを掘る事人のごとく、水深けば相互交代す
冬の雪のこほらざるは湿気しめりけなくかわきたるすなのごとくなるゆゑなり。これ暖国だんこくの雪に異処ことなるところなり。しかれどもこほりてかたくなるは雪とけんとするのはじめなり。
磧は黒く醜くなりすなは黄ばめる普通つねの沙となれり、見よ見よいかにと告げ知らするに二人は驚き、まなこみはりて見れば全く父の言葉に少しもたがわぬすなこいし
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
インクのにじんだのを吸ひ取るすなが、皿に盛つてあるのを取つて、又非常に早く窓に帰つて、その皿の中の沙を、丁度中庭を通つてゐた誰やらに蒔き掛けた。
(新字旧仮名) / ジュール・クラルテ(著)
新婦の轎のまわりを幾たびかめぐったので、おびただしいすなは眼口を打って大勢もすこぶる辟易へきえきしたが、やがてその風も鎮まって、無事に婿むこの家へ行き着いた。
「さすればこれは海のすなよりも重からん、かかればわが言躁妄みだりなりけれ」とあるは、苦悩大なるため前の哀哭あいこくも我れ知らず躁妄に陥ったのであるとの意である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
さればシエクスピイヤの哲學上所見とその實感とを知らむと欲して、猶その戲曲をあさらむは、氷をりて火をもとめ、すなを壓して油を出さむとするにや似たらむ。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
取るに足らぬすなの上の功名話で、会津どころか、徳川宗家そのものがあぶない今日、彼等とても、百万石や十万石の夢を見ながら請負仕事をしているわけではない。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
われわれはすなの中から金を捜すようなつもりで、閑却された名句を拾い出そうというのではない。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
英吉利イギリス海岸かいがんけば何所どこにでも、うみなかおよいでる澤山たくさん機械きかいられる、子供等こどもらくわすなぽじりをしてゐる、そして一れつならんでる宿屋やどや、それからそのうしろには停車場ステーシヨン
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
裾野からすなを盛り上げたように高く、雪が粉を吹いたように細い筋を入れている、その下に山中湖、それから河口湖が半分喰い取られたようになって、山蔭の本栖もとす湖の一部と
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
又此獸の馬の如く走るさま、力を極めて相鬪ふさま、皆わがために興ある事なりき。我は見たるところをすなに畫き、又歌につゞりて歌ひぬ。媼は我聲のめでたきをたゝへて止まず。
みぎわの水を、仔細に見ると、それは水その物が黄色いのではなく、砥石といしを粉にくだいたような黄色いすな微粒びりゅうが、水にじっていちめんにおどっているため、にごって見えるのであった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少女はほとんど毎日のようにこのあたりまで遊びに来るのであります。低い、小さな破れた家が幾軒となく並んでいて前にはすなの上に鰯や、鯖や、その他いろいろの小魚を乾しているのです。
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてお二人は町の広場を通りけて、だんだん郊外こうがいに来られました。すながずうっとひろがっておりました。そのすなが一ところふかられて、沢山たくさんの人がその中に立ってございました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その翌日よくじつになると、日出雄少年ひでをせうねんは、稻妻いなづまといふよき朋友ともだち出來できたので、最早もはやわたくしそばにのみはらず、朝早あさはやくから戸外こぐわいでゝ、なみあをく、すなしろ海岸かいがんへんに、いぬ脊中せなかまたがつたり、くび抱着いだきついたりして
汽車をくだれば、日落ちて五日の月薄紫の空にかかりぬ。野川の橋を渡りて、一路のすなはほのぐらき松の林に入りつ。林をうがちて、桔槹はねつるべの黒く夕空にそびゆるを望める時、思いがけなき爪音つまおと聞こゆ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
寝て聞くは蒙古のくちの四平街すなをしづむるむら雨の音
すなあぜくろ、穴に穿ち、續いて歩むともがらは
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
窓の明りで干潟ひがたすなのように光るのを見た。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
親爺奴、今ここのすなの上に身を委ねた。
つちふるや、黄なるすな、嵐とたけ
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
サハラのすなとなるであろ。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
すなまみるるあやの波、——
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
霞流るゝすなの上
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
渚のすなさへ
少女と海鬼灯 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
そして、気がいて恐る恐る眼をやった時、南縁なんえんの雨戸のしまる音がして、曲者くせものの姿はもう見えないで、被衣のみがすなの上にふわりと落ちていた。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
冬の雪のこほらざるは湿気しめりけなくかわきたるすなのごとくなるゆゑなり。これ暖国だんこくの雪に異処ことなるところなり。しかれどもこほりてかたくなるは雪とけんとするのはじめなり。
四角なかに、円い蟹、「生きて居る間のおの/\のなり」を果敢はかなく浪の来ぬ間のすなあとつけたまでだ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
或者は河底から湧き出る清水のように、池の底ですなをモクモク吹き上げている。又或者は岩壁の表面に多量の沈澱物を堆積して、自身は其奥に潜まってしまったものもある。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それから数日の後、別のところにすなの盛りあがること十数里、その上に一物いちもつを発見した。それは海亀に似たもので、大きさは車輪のごとく、身にはこうをつけて三つ足であった。
身にけたるは、大抵襦袢一枚のみにて、唯だ稀に短き中單チヨキを襲ねたるがまじれり。「ラツツアロオネ」といふ賤民(立坊たちんばうなどの類)の裸裎らていなるが煖きすなに身を埋めて午睡せるあり。
河原にはよもぎすなの中に埋まって生えている、大さな石から石には、漂木がはさまって、頭を支え、足を延ばし、自然の丸木橋になっているところを、私たちは上ったり下りたりした
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
表街おもてまちの人道にてこそすなをもけ、すきをも揮へ、クロステル街のあたりは凸凹とつあふ坎坷かんかの処は見ゆめれど、表のみは一面に氷りて、朝に戸を開けば飢ゑこゞえし雀の落ちて死にたるも哀れなり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「私は于闐大寺をすなの中からり出した青木晃あおきあきらというものです。」
インドラの網 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
すなあぜくろ、穴に穿うがち、続いて歩むともがらは
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
をし船のすなにきしるや冬の月 素覧
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
つちふるや、なるすな、嵐とたけ
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
すなもて覆うて見えざらしむ。
かわけるすなが置きし
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
わがすなの上に書きつる
女姿の者はじっと四辺あたりに注意するようであったが、やがて体を軽がるとさして庭へおりた。その白い足はすなに触れた。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すな小礫こじやりまじりたる所にあらざればうまずと漁師れふしがいへり。その所為しわざ人のにをさ/\おとらず。
魁岸かいがん勇偉、膂力りょりょく絶倫、満身の花文かぶん、人を驚かして自ら異にす。太祖に従って、出入離れず。かつて太祖にしたがって出でし時、巨舟きょしゅうすなこうして動かず。成すなわち便舟を負いて行きしことあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
両山脈の相対する間隔は、直径約一里もあろうか、間の岳の頂までは、この河原から一里半で達せられる。岳の裾から河原へは、灰色のすなが、幾町の長さの大崩れに押し出している。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)