かく)” の例文
関東には右に述べたように沢山の機場はたばがありますが、結城のみがただ独り名誉を重んじて頑固にそのかくを守り続けているのであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
一寸ちよつとくつさき團栗どんぐりちたやうなかたちらしい。たゞしその風丰ふうばう地仙ちせんかく豫言者よげんしやがいがあつた。小狡こざかしきで、じろりと
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お山の大将たいしょうおれひとり——というかくで、中にまじっている徳川万千代とくがわまんちよは、みんなと一しょに、つなぎめた大鷲おおわしを取りまきながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
学校へ出る子供などは平生へいぜいおそらく市の方にいたのでしょうが、これも休暇のために田舎いなかへ遊び半分といったかくで引き取られていました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかも今度こんどわたくし修行場しゅぎょうばは、やま修行場しゅぎょうばよりも一だんかくたか浄地じょうちで、そこにはたいそうお立派りっぱな一たい竜神様りゅうじんさましずまってられたのでした。
善庵は次男かくをして片山氏をがしめたが、格は早世した。長男正準せいじゅんでて相田あいだ氏をおかしたので、善庵の跡は次女の壻横山氏しんいだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
おこさせて新田につたとは名告なのらすれど諸事しよじ別家べつけかくじゆんじて子々孫々しゝそん/\末迄すゑまで同心どうしん協力けふりよくことしよあひ隔離かくりすべからずといふ遺旨ゐしかたく奉戴ほうたいして代々よゝまじはりを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二番目では、序幕が松破目まつばめの能舞台で、此所に招待された蒲地左衛門(水蔭)が地頭ぢがしらといふかくで坐つてゐる。
硯友社と文士劇 (新字旧仮名) / 江見水蔭(著)
二 賢人百官を總べ、政權一途に歸し、一かくの國體定制無ければ、縱令たとひ人材を登用し、言路を開き、衆説を容るゝ共、取捨方向無く、事業雜駁にして成功有べからず。
遺訓 (旧字旧仮名) / 西郷隆盛(著)
豐島さんの至極しごくち着いた瞑そうてきり、里見さんは持てんはたしか四十てんで、まあ十れうつけ出しといつたかくだが、時々じつに鋭い、じつにこまかいたまり方を見せる。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そしてその新聞の恐ろしさに、市民の誰彼が、表面だけ父を尊敬しているように見せかけているらしかった。父は、いわゆる敬して遠ざけられているといったかくだったのだ。
マーキュ 足下おぬし洒落しゃれ橙々酢だい/\ずといふかくぢゃ、藥味やくみにしたらすッぱからう。
三年と二年! 双方の陣に一道の殺気陰々いんいんとしてあいかくあいした。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
駄馬にもしのむち、というかくで、少しは心に勇みを添えられる。
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
芝居見物のかくで我々を引き合したものだ。
子守こもりがまた澤山たくさんつてた。其中そのなか年嵩としかさな、上品じやうひんなのがおもりをしてむつつばかりのむすめ着附きつけ萬端ばんたん姫樣ひいさまといはれるかく一人ひとりた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
まとつては隨分ずいぶんつらいこともあらう、なれどもれほどの良人おつとのつとめ、區役所くやくしよがよひの腰辨當こしべんたうかましたきつけてくれるのとはかくちが
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
楽屋へ抱え込まれると同時に、死んだものと思って騒いでいた粂吉が、ひょっこり大部屋かくの娘れんをつれて出たので
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのくせいまだ大した所へ連れて行ってくれたためしがない。「今度こんだいっしょに連れてってやろうか」もおおかたそのかくだろうと思ってただうんと答えておいた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また時とすると、うでよりも口の仕合しあひになつてしまふ。しかし、ここにも先生の風かくあらはれて、そのりたるやゆう重厚じうこうかんじがある。そして、一めんには纎細せんさい妙巧めうこうおもむきを見る。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
塾生じゆくせい家族かぞくとがんで使つかつてゐるのは三室みま四室よまぎない。玄關げんくわんはひると十五六疊じふごろくでふ板敷いたじきそれ卓子テエブル椅子いすそなへて道場だうぢやうといつたかくの、英漢數學えいかんすうがく教場けうぢやうになつてる。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
和田呂宋兵衛わだるそんべえたちが、おおきな十をささげて、層雲そううんくずれの祈祷きとうにでていったあとは、腹心の轟又八とどろきまたはち軍奉行いくさぶぎょうかくになって、伊那丸いなまる咲耶子さくやこをうつべき、明日あすの作戦に忙殺ぼうさつされていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たゞ、いさゝかみづかやすんずるところがないでもないのは、柳田やなぎださんは、もつてそのしようあたるのだが、わたしはう間接かんせつで、よりにつたかくで、按摩あんまかみをもませてるのは家内かない
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小太郎山こたろうざんからずるずるべったりに、はなかけ卜斎ぼくさいはそのお長屋の一けんをちょうだいして、いまでは、大久保石見守おおくぼいわみのかみ身内みうちともつかず、躑躅ヶ崎の客分きゃくぶんともつかないかくで、のんきにらしているのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
殿様がたかえたかくで、てのひらに置いて、それと見せると、パッと飛んで虫を退治たいじた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つゆすくないのを、百間堀ひやくけんぼりあられふ。田螺たにしおもつたら目球めだまだと、おなかくなり。百間堀ひやくけんぼりしろほりにて、意氣いき不意氣ぶいきも、身投みなげおほき、ひるさびしきところなりしが、埋立うめたてたればいまはなし。電車でんしやとほる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)