かゝ)” の例文
かげから、すらりとむかうへ、くまなき白銀しろがねに、ゆきのやうなはしが、瑠璃色るりいろながれうへを、あたかつき投掛なげかけたなが玉章たまづさ風情ふぜいかゝる。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
白い洲の上流は、河になつてゐると見えて、高い堤の上に、珍しい程メカニックな大きい吊橋つりばしがアーチのやうにかゝつてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
下水と溝川みぞかははその上にかゝつたきたな木橋きばしや、崩れた寺の塀、枯れかゝつた生垣いけがき、または貧しい人家のさまと相対して、しば/\憂鬱なる裏町の光景を組織する。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
田中町から塔の段へくのには、学者の生活のやうな寂しい一筋道を真つ直にけばいゝのだが、途中に鴨河が流れてゐて、それに橋が一つかゝつてゐる。
此の昌平橋は只今は御成道おなりみちの通りにかゝって居りますが、其の頃は万世橋よろずよばしの西にりましたので、多助は山出しでございますから、とんと勝手が知れません。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その頃はまだ後の吾妻橋の大川橋はかゝつて居らず、兩國橋を渡つて、川岸つぷちを上手へ駒形から上流は殺生禁斷で、水戸の下屋敷あたりから上流は、全くの別天地でした。
ちひさな土橋どばしひとつ、小川をがは山川やまがはそゝぐところにかゝつてゐた。山川やまがはにははしがなくて、香魚あゆみさうなみづが、きやう鴨川かもがはのやうに、あれとおなじくらゐのはゞで、あさくちよろ/\とながれてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それは石壁の岸高きが下に碧潭深く湛へてゐる一大河にかゝつてゐる橋が、しかもたゞちに對岸にかゝつてゐるのでは無く、河中の一大巨巖が中流に蟠峙ばんぢして河を二分してゐる其巨巖に架つてゐるので
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
虚空こくうに躍りてかゝるあり
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
このほこらいたゞく、鬱樹うつじゆこずゑさがりに、瀧窟たきむろこみちとほつて、断崖きりぎし中腹ちうふく石溜いしだまりのいはほわづかひらけ、たゞちに、くろがね階子はしごかゝ
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝからビエンホアの町へ這入る間、甘蔗畑かんしよばたけや、果樹園や、椰子やし檳榔びんらうひ茂る、いくつかの小さい部落を抜けて、ドンナイ河にかゝつた、長い鉄橋を二つも渡つた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
飾り付けも立派でございまして、庭からずうと見渡すと、潮入しおいりの泉水せんすいになって、模様を取って土橋どばしかゝり、紅白の萩其のの秋草が盛りで、何とも云えんい景色でございます。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
水の汚い小川にかゝつた土橋どばしの上に立つて、小池が來た方を振り返へると、お光の姿が見えなくなつてゐたので、後戻あともどりして探さうとすると、お光は町はづれの小間物屋こまものやに荒物屋を兼ねたやうな店から
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
やがてまちちかい、すゞはしが、河原かはら晃々きら/\しろい、みづあをい、對岸むかうぎしくらい、川幅かははゞよこつて、艷々つや/\一條ひとすぢかゝる。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
成程なるほど三途川さんづのかは鉄橋てつけうかゝるなどゝふのはえらいもので。民「えらいなんて、地獄ぢごくひらけた事を貴方あなたにお目にかけたいくらゐのものです、かく彼処あすこ茶屋ちやゝりますかららツしやい。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
はまはうへ五六けんすゝむと、土橋どばし一架ひとつなみちひさなのだけれども、滑川なめりがはかゝつたのだの、長谷はせ行合橋ゆきあひばしだのと、おなじきこえた亂橋みだればしといふのである。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宿やど入口いりくち井戸川ゐどがはつて江戸川えどがはをなまつたやうな、いさゝかものしさうなながれがあつた。ふるはしかゝつてた。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あひだ中之橋なかのはしがあつて、ひとうへに、上之橋かみのはしながれるのが仙臺堀川せんだいぼりがはぢやあありませんか。……ことわつてきますが、その川筋かはすぢ松永橋まつながばし相生橋あひおひばし海邊橋うみべばし段々だん/\かゝつてゐます。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うま胴中どうなかほどのいしの、大樫おほかし古槻ふるつきあひだはさまつて、そらかゝつて、した空洞うつろに、黒鱗こくりんふちむかつて、五七にんるべきは、応接間おうせつま飾棚かざりだなである。いしげどはこのいはなのである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しろい、しづかな、くもつたに、山吹やまぶきいろあさい、小流こながれに、苔蒸こけむしたいしはしかゝつて、おくおほきくはありませんがふか神寂かんさびたやしろがあつて、大木たいぼくすぎがすら/\とすぎなりにならんでます。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふぢはなむらさきは、眞晝まひる色香いろかおぼろにして、白日はくじつゆめまみゆる麗人れいじん面影おもかげあり。憧憬あこがれつゝもあふぐものに、きみかよふらむ、高樓たかどのわた廻廊くわいらうは、燃立もえた躑躅つゝじそらかゝりて、宛然さながらにじへるがごとし。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)