ちょう)” の例文
魯侯は女楽にふけってもはやちょうに出なくなった。季桓子きかんし以下の大官連もこれにならい出す。子路は真先に憤慨ふんがいして衝突しょうとつし、官を辞した。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
けれど史中の人物を巧妙自在にらっして活躍させ、後漢ごかんの第十二代霊帝の代(わがちょうの成務天皇の御世、西暦百六十八年頃)から
三国志:01 序 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わがちょうにおいては例の盗跖、貴朝におかれては袴垂はかまだれ、この辺の大盗になりますと、おのずから道教内丹説に、かなった行動をとりますな。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いにしえの「禁野きんや」、推古のちょう薬狩くすりがりのところ、そこを伊勢路へかかって東海道へ出る道と、長瀬越えをして伊賀へ行く路とが貫いて通っております。
氏の挙動きょどうも政府の処分しょぶんも共に天下の一美談びだんにして間然かんぜんすべからずといえども、氏が放免ほうめんのちに更に青雲せいうんの志を起し、新政府のちょうに立つの一段に至りては
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
えん王、しゅう王、せい王、しょう王、だい王、みん王等、秘信相通じ、密使たがいに動き、穏やかならぬ流言ありて、ちょうに聞えたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
常々あれば心おごりて湯水のごとくつかい、無きも同然なるは黄金なり。よって後世こうせいちょうことあるときの用に立てんと、左記の場所へ金——サア、これはわからぬ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「一ちょう国難に際すると、何と言っても軍人だ。あの頃は皆真剣だった。この頃の人間は軍人の恩を忘れている」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
単にちょっと逆立さかだちをしてしっぽを天にちょうしさえすればくちばしが自然に池底に届くのであるが、ひな鳥はこうして全身を没してもぐらないと目的を達しないから
あひると猿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
とうの宰相の賈耽かたんちょうよりしりぞいて自邸に帰ると、急に上東門の番卒を召して、厳重に言い渡した。
われらは文化の帰趨きすうちょうせんとして文化価値の実現を努むる人格として生きんとするのである
婦人指導者への抗議 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
まだ道真がちょうにあって、時平と二人で政務を見ていた頃のこと、いつも時平がひとりで非道に事を処理して、道真にくちばしを入れさせないので、なにがしと云う記録係の属官が一計を案じ
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
李花は猛獣に手を取られ、毒蛇どくじゃはだまとはれて、恐怖の念もあらざるまで、遊魂ゆうこん半ば天にちょうして、夢現の境にさまよひながらも、神崎を一目見るより、やせたるほおをさとあかめつ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
万一にも幕府に非違ひいがあれば、敢然と起ってちょうの御盾とならなければならぬ、忠とはそのことのいいだと仰せられました、……靖献遺言がまことに義烈の精神をやしなう書であるなら
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
うまやけたり。子、ちょうより退き、人をそこなえるかとのみいいて、馬を問いたまわず。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
今でも一ちょう事ある際には、たちまち一国が猛烈なる所為しょいに出る。沙翁さおうげん
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたくしわかたのしいゆめ無残むざんにも一ちょうにしてらされてしまいました……。
あるいは曰く、北野天満神の廟の牝鶏晨を報ずるなり。神巫みここれをちょうに告ぐというと見ゆ。この時女謁盛んで将軍家ばかりか大諸侯の家また女より大事起らんとしたからこんな評判も立ったのだ。
ことごとに党規とうきをみだそうとした四人ではあったが、さて分離してすがたを見せないと、完全した歯が一ちょうにしてぬけおちたようで、なにかたよりない、しっくりと気持ちのあわない空気を感じる。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
これまでは虚心きょしん平気へいきで、健全けんぜんろんじていたが、一ちょう生活せいかつ逆流ぎゃくりゅうるるや、ただちくじけて落胆らくたんしずんでしまった……意気地いくじい……人間にんげん意気地いくじいものです、貴方あなたとてもやはりそうでしょう
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
天にちょうした鼻の頭がヒョコヒョコと蠢きます。
百官の衣へにし奈良のちょう
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
新皇帝の即位とともに、高俅こうきゅうもまた、ちょうに入って、帝の侍座じざとなったのはいうまでもない。まりはついに九天にまで昇ったわけだ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陳の霊公が臣下の妻と通じその女の肌着を身に着けてちょうに立ち、それを見せびらかした時、泄冶せつやという臣がいさめて、殺された。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
ちょう乾雲と坤竜が所をことにすると、きょうの札をめくったも同然で、たちまちそこに何人かの血を見、波瀾万丈、恐ろしい渦を巻き起こさずにはおかないというのだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この点については我輩わがはいも氏の事業を軽々けいけい看過かんかするものにあらざれども、ひとあやしむべきは、氏が維新のちょうきの敵国の士人と並立ならびたっ得々とくとく名利みょうりの地位にるの一事なり
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
して祖訓をるにえることあり、ちょうに正臣無く、内に奸悪あらば、すなわち親王兵を訓して命を待ち、天子ひそかに諸王にみことのりし、鎮兵を統領して之を討平せしむと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わずらわすことになったが、実は一ちょうせきの思いつきじゃない。この一二年、手当り次第に伝記書類を読んで見た。しかし何うも気に入らん。初めから教訓の積りで書いているから、肩が凝ってしまう
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
初冬はつふゆの朝の鰹にも我がちょうの意気のさかんなるを知って、窓の入口に河岸へ着いた帆柱の影を見ながら、この蒼空あおぞらの雲を真帆、片帆、電燈の月も明石ヶ浦、どんなもんだ唐人、と太平楽で煩っていたのも
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
槿花きんかちょうの夢”といえば、わずか六字でもことはすむが、如実に再現しようとか分かろうとしてゆくと、きのうの経験さえも容易でない。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或る時、霊公がちょうにいて、上卿しょうけい孔寧こうねい儀行父ぎこうほとに戯れ、チラリと其の衵服はだぎを見せた。なまめかしい女ものの肌着である。二人はギョッとした。
妖氛録 (新字新仮名) / 中島敦(著)
諸王不穏の流言、ちょうに聞ゆることしきりなれば、一日帝は子澄を召したまいて、先生、疇昔ちゅうせき東角門とうかくもんの言をおぼえたもうや、とおおす。子澄直ちにこたえて、あえて忘れもうさずともうす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ちょう、なにか事があって外部に対するとなると、即座に、おどろくほど一致団結して当たる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
榎本氏が主戦論をとりて脱走だっそうし、ついに力きてくだりたるまでは、幕臣ばくしん本分ほんぶんそむかず、忠勇の功名なりといえども、降参こうさん放免ほうめんのちに更に青雲の志を発して新政府のちょう富貴ふうきを求め得たるは
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「人間の性格って、然う一ちょうせきに分るものじゃありませんわ」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
地勢の按配と双方の力の伯仲しているこのいくさは、ちょうどわがちょうの川中島における武田上杉の対戦に似ているといってもよい。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
陵のごとき変節漢へんせつかんと肩を比べてちょうに仕えていたことを思うといまさらながらずかしいと言出した。平生の陵の行為の一つ一つがすべて疑わしかったことに意見が一致した。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
命に従わずちょうかろんずるというので、節刀を賜わって関白が愈々東下して北条氏を攻めるというのである。北条氏以外には政宗が有って、迂闊うかつに取片付けられる者では無かった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いわゆる君公には容易に目通めどおりもかなわざりし小家来しょうけらいが、一朝いっちょうの機に乗じて新政府に出身すれば、儼然たる正何位・従何位にして、旧君公と同じくちょうに立つのみならず、君公かえってじゅうにして
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
う一ちょうせきに行くまい」
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
また、同じ増鏡の別の章では、そうした持明院派のちょうに時めく人々のさまは、そこはかとなく、板屋の獄裡ごくりへもしのばれようと
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後、大夫として魯のちょうに立つに及んで、初めて妻子を呼ぼうとしたが、妻は既に斉の大夫某と通じていて、一向夫の許に来ようとはしない。結局、二子孟丙もうへい仲壬ちゅうじんだけが父の所へ来た。
牛人 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「それは一ちょうせきに話せぬが、つまるところ、お千絵という世阿弥よあみの娘も、弦之丞に思いをよせて、あいつに逢うのを一念で待っているのだ」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人間がそういうものとは昔からいやになるほど知ってはいるのだが、それにしてもその不愉快さに変わりはないのである。下大夫かたいふの一人としてちょうにつらなっていたために彼もまた下問を受けた。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「おつかれがたまったのでしょう。ちょうへ上ると、いろいろわずらわしい事が多いらしいと、禅尼にも、お案じなされておりました」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夫人南子なんしはつとに淫奔いんぽんの噂が高い。まだそうの公女だった頃異母兄のちょうという有名な美男と通じていたが、衛侯の夫人となってからもなお宋朝を衛に呼び大夫に任じてこれとしゅう関係を続けている。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
わずか五年前をかえりみれば、執権しっけん高時は、後醍醐の怨敵おんてきだった。また義貞は、その北条九代の府を、一ちょうのまに、瓦礫がれきとなさしめた人だった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どう考えても漢のちょうから厚遇されていたとは称しがたいのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そのくせ武張ぶばってみせるのだ。ちょうに上っても、柔軟な公卿を、その小柄で下に見る風があるので、見られる者は何となく
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なお、寄りすがって、紅涙雨の如き姿態しなであった。——ところへ、董卓はちょうから帰って来るなり、ただならぬ血相をたたえて彼方から歩いて来た。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)