ゆる)” の例文
諸君はいくらかのあいまいさをゆるしてくださるだろう。わたしの仕事には世間並みの人のそれよりはより多くの秘密があるのだから。
死があらゆる罪障をゆるすまで、辛い義務を履行し、あらゆる肉欲的快楽を避け、かつ悦んで比類なき道徳律を実践しなければならぬ2
大きくなってもお嫁にもゆかれない。その報いはいつまでも続く。たといその児はゆるしてくれても、子守の心は一生傷つくであろう。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
この手紙を、今暫く書き続ける事を、ゆるしてくれるなら、君は人生の生々しい哀話に、必らずや心を動かされずにはいられないと思う。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
ぢゃによって、おゆるしなされ、はやなびいたをば浮氣うはきゆゑとおもうてくださるな、よるやみ油斷ゆだんして、つい下心したごゝろられたゝめぢゃ。
我輩に於ても固より其野鄙粗暴を好まず、女性の当然なりと雖も、実際不品行の罪は一毫もゆるす可らず、一毫も用捨ようしゃす可らず。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
自己の標準があるだけでもこっちの方がゆるすべく貴ぶべし——といったらどんな奴が出て来るか分らぬが、事実貴ぶべき人もありましょう。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
音楽に関心と知識を有する者でさえも、しばしば、拙劣な演奏をゆるし、巧妙な演奏を聴き流すことがあり得るものである。
「それだけではない、ひとを尊敬し、ひとの意見を重んじ、寛厚に付合い、過ちをゆるし、常に勘忍袋の緒を緊めて、——」
評釈勘忍記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
云つてないことが分つたら、おゆるしするやうにしたうございますけれど。でも、あれはいゝことではございませんわ。
サガレン流刑の実状がゆるすべからざる社会悪であることは勿論で、西欧の文化国なら罪はわれわれ自身にあることがつとに自覚されているはずなのだが
うぞわたくしつみをおゆるあそばして、もとのとおりこの不束ふつつかおんな可愛かわいがって、行末ゆくすえかけておみちびきくださいますよう……。
たとひ彼と同じやうに、放蕩をしてゐたものがあつても、彼は彼自身をゆるすやうに他人を恕す事が出来なかつた。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
不孝の子は、ただ慈父これをあわれみ、不弟の弟は、ただ友兄これをゆるす。定省ていせい怡々いい膝下しっかの歓をつくあたわず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
汲み上げた水は、寧ろ、連日の雨に濁つて居たけれども、彼の静かな気分はそれ位をゆるすには十分であつた。
ニコオロよ、いかにしておん身は歸りし、これも聖母の御惠みめぐみにこそといひつゝ、女は窓に走り寄りぬ。その聲は猶わなゝけり。われはどもりて、ゆるし給へ君と叫びぬ。
ゆるしたまえ妾をお忘れ下されたし君にはあたいなき妾に御心ひろくもたれよ再び妾を見んことを求めたまいそ
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
アはベーツ説に四十フィートに達するそうだが、ピゾン・レチクラツスは三十フィートまで長ずというから『本草』の懸値かけねゆるすべしで、実に東半球最大の蛇だ。
「我れ世に来るは平和をもたらさんとに非ず、子を親に背かせ……。」はゆるすべからざる不埒な言である。
論語とバイブル (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
女子の悋気りんきはなほゆるすべし。男子が嫉妬しっとこそ哀れにも浅間あさましき限りなれ。そもそも嫉妬は私欲の迷にして羨怨せんえんの心憤怒ふんぬと化して復讐の悪意をかもす。野暮やぼ骨頂こっちょうなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ありがたう御座ございますとましてかほつき身長せいさへあればひと串戯じようだんとてゆるすまじけれど、一寸法師いつすんぼし生意氣なまいきつまはじきしてなぶりものに烟草休たばこやすみのはなしのたねなりき。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、犬千代は相手の言葉を、むしろ愛すべき稚気ちき——とゆるしているような寛度で、後をうながした。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから磯貝院長が手術に失敗したことはゆるすべしとしても、うめき苦しむ患者を放置して三日間も顧みなかった一事は、怠慢とも、不誠意とも、不親切とも云いようのないことで
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
仮令たとひ良人にゆるし難き大失策があつても、基督の精神を以て其の罪をゆるす、と夫人の理想はまア出たいのであるが、かゝへあれど柳は柳哉、幾程いくら基督の精神を持つてゐる令夫人でも
未亡人と人道問題 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
罪人でもその行の上に於て非行不正を改めれば、徳義上まだしもゆるすべきである。しかるにこれを放っておいて答弁もしないとあっては、国家の安寧を保つことができるものでない。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
ゆるしておやり遊ばすなら帰してやりましょう、そうしないと餓えて死にますと申しあげたら、公主はじっとお考えになって、夜になって何所へも往かす所はないではないかとおっしゃって
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
このゆるし難い無作法な言葉に、もとからいた一座の者はみんななかば立ち上り、前に船乗りたちの注意をひいたのと同じい、あのやかましい、悪魔のような叫び声を速く続けて挙げたのであった。
わたくしの御迷惑を掛けた事は、クリスト様に免じておゆるし下さい。
とき画工ぐわこう——画家ぐわか画伯ぐわはくにはちがひないが、うも、画工ゑかきさんのはうが、けてたびには親味したしみがある(以下いかとき諸氏しよし敬語けいごりやくすることゆるされたし。)くわん五さんは、このたふげを、もとへ二ちやうばかり、ぶり
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はてて、『なれゆるす』とのたまはむその一言ひとことを。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
一 不幸者をあわれみ幸福者をゆるすべし
時に正徳四年ふゆ十二月義士十三回忌くわいきの時に當り庄左衞門は下僕げぼくの爲に切殺されしはしかも大石より與へられし則光の刀なりと小山田が不義ふぎてんなんゆるし給はんや又直助は御尋ね者となり近き頃まで諸所の關所に直助が人相書にんさうがきりしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こん度だけは特別でゆるして遣る。
平俗な詩人とをゆるすわたしも
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ゆるし難き奴なれども……」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ロミオ マーキューシオーどの、ゆるしてくだされ、じつ是非ぜひない所用しょようがあったからぢゃ。あんなをりには、つい、その、れいぐることがあるならひぢゃ。
九月十八日、官、三人の罪を裁して曰く、「こころは国のためにすとうといえども、実に重禁を犯す、罪ゆるすべからず」と。ってみな国にりて禁錮せしむ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
私をゆるして下さい。そしてその真因は私のほしきものを私が捨てないからです。それらの具体的な消息は手紙には書くにあまります。そして醜い現実的なものです。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
又罪を犯すもののゆるすべくして且あはれむべきを知りぬ、一挙手一投足わが運命に関係あるを知りぬ、「サツカレー」の小説を読んで正直なるものの馬鹿らしきを知りぬ
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
名作中こゝかしこに稍〻過ぎたりと見ゆる節あるをば、その作者の一時の出來心と看做みなして、ゆるすこともあるべけれど、その疵瑕しかは遂に疵瑕たることを免るべからず。
これにはさすがのわたくし我慢がまんつのり、とうとう一さい懺悔ざんげしておゆるしをねがいました。そのめにわたくし割合わりあいはやくあの地獄じごくのような境地ところからることができました。
そんな感情を起すには、餘りに價値のない彼女だつた。逆説のやうに見えますがおゆるし下さい。私は本心の事を云つてゐるのです。彼女は華やかではあるが中味なかみはない。
倅の不敬乱暴無法は申すまでもなく、嫁の不埒ふらちも亦にくむ可し。無教育なる下等の暗黒社会なれば尚おゆるす可きなれども、いやしくも上流の貴女紳士に此奇怪談は唯驚く可きのみ。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
神でないものが天下統一の大業を成そうとするのである。大過たいかあらばその業は不適任な者としてみずから止むしかないが、小過は天もゆるしてくれよう、官兵衛もまたゆるすだろう。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時もしわが顔にあざけりの色の浮かびたりせばゆるしたまえ、二郎が耳にはこの声いかに響きつらん、ただかれがそのたなごころを静かにひざの上に置きて貴嬢がつれの方をきっと見たる
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
賈平章こへいしょうは、仁者でないから、どうしてもゆるしてくれないよ」
緑衣人伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
聞て千太郎は漸々心落こゝろおち居つゝ久八の言通り金子の工夫は又有べし何にもせよ今度の事にて小夜衣に愛想あいそもこそも盡果つきはてたり他人に心ゆるすなとはよくいひたる者かな後悔こうくわいおもてあらはれければ久八は打喜びわざはひが却つて僥倖さいはひなり斷念あきらめ給へとて長庵の方へは其後何の懸合かけあひもせざりし程に長庵は五十兩の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我が無禮なめなるをゆるし給へ。君等の歩み寄り給ひしときは、われ早くこゝに坐して涼をむさぼり居たり。御物語の祕事ひめごとと覺しきには、後に心付きしが、せんすべなかりしなり。
只今たゞいま此處これにてのろはるべくもあり、ゆるさるべくもある手前てまへ所行しょぎゃう告發こくはつもし、辯解べんかいつかまつりませう。
だが、(神よ、おゆるし下され!)そのことで私は一時間ばかり前にあのひとが恐ろしく眞面目まじめになるやうなことを云つてやつた。あのひとの口の兩角は、半インチばかり下つたよ。