)” の例文
玄内は奥の六畳、伝二郎が四畳半の茶の間と、それぞれ夜着に包まって寝についたのがかれこれ、あれでの刻を廻っていたか——。
景色けしきだ、とこれから、前記ぜんき奥入瀬おいらせ奇勝きしようくこと一ばんして、くちあさぼらけ、みぎはまつはほんのりと、しまみどりに、なみあをい。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おや? もうこくが過ぎたのかしら、伊那丸いなまるさまもお見えにならず、忍剣にんけんさまも、……蔦之助つたのすけさまもおかしいなあ、だれもいないや。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今夜のの刻(午後十二時)にその蝋燭の火を照らして、壁かまたは障子にうつし出される娘の影を見とどけろというのである。
影を踏まれた女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ウサギという字は、ちがう字で書くと『』でしょう。それからネズミは『』でしょう。つまり両方とも十二支のうちの一つなのです。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
神田橋外元護寺院もとごじいん二番原に来た時は丁度の刻頃であった。往来はもう全く絶えている。九郎右衛門が文吉に目ぐわせをした。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「そうですか。彼児あれがやったのですか。これは私が貰って置きたい。私は実はの歳なので、鼠には縁がある。これは譲ってもらいましょう」
上半身に十二支の内、うしとらたつうま、の七つまで、墨と朱の二色で、いとも鮮やかに彫ってあるのでした。
朔日ついたちとりでしたから、……酉、いぬ……、あっ、の四日……。それで、鼠が四匹か……。どっちみち、あの碁石を
支那で鼠を年、の方位の獣と立つる風と、インドで毘沙門を北方の守護とする経説を融通して、ついに毘沙門の後胤と称する国王も出で来れば
調とゝのさふらひ兩人に提灯持鎗持草履取三人越前守主從しゆじう四人都合十人にて小石川こいしかは御屋形を立出たちいで數寄屋橋御門内なる町奉行御役宅をさしいそゆくはやこく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
同じ巻でも「の日」と「春駒はるこま」、「だびら雪」と「摩耶まやの高根に雲」、「迎いせわしき」と「風呂ふろ」、「すさまじき女」と「夕月夜おか萱根かやね御廟ごびょう
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
あなたがだれよりも先に数えてくだすって年齢としの祝いをしてくださるの日も、少し恨めしくないことはない。もう少し老いは忘れていたいのですがね
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
同夜、こくごろより、石火矢いしびや数百ちょう打ち放し候ところ、異船よりも数十挺打ち放し候えども地方じかたへは届き申さず。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
手続き書と書いたものや、かわせ一札の事と書いたものや、明治二十一年一月約定金請取やくじょうきんうけとりの証と書いた半紙二つ折の帳面やらが順々にあらわれて来た。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
毎夜の刻迄には屹度して差上げる筈の日課が、ゆうべからの騒ぎで暁方になって仕舞った。仏様もお待ち兼ねであろう。どれお湯浴みして差上げましょう。
ある日の蓮月尼 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
寝てもめても恩義の程を忘れず、万事に気を利かして、骨身を惜まず一生懸命にくれ/\と働き、し寅に起るの誡めの通り、子と云えば前の九ツで
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
座禅のために澄み切った心が、いつまでもいつまでも続いた。が、の刻が近づくと、ついとろとろした。
仇討三態 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「ゆうべ自火をお出しなさいましてな、夜半の、さようノ刻半(一時)ごろでございましたろうか」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
裕佐がその夜妓楼ぎろうを出たのはの刻に近かった。頭はズキズキと痛んでほてり、からだは疲れていた。
それからいま一つ外秩父そとちちぶ吾野あがの村、権現山ごんげんやまの登り口に、飯森杉という二本の老木があります。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うしとらたつ、——と、きゃくのないあがりかまちにこしをかけて、ひとり十二じゅん指折ゆびおかぞえていた、仮名床かなどこ亭主ていしゅ伝吉でんきちは、いきなり、いきがつまるくらいあらッぽく
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
五日の月はほんのりと庭の白沙はくさを照らして、由比ゆいはまの方からはおだやかな波の音が、ざアーア、ざアーアと云うように間遠まどおに聞こえていた。それはもうこくに近いころであった。
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
六微旨大論に天の氣はきのえに始まり、地の氣はに始まる、子甲相合するを、なづけて歳立さいりふといふ、謹んで其の時を候すれば、氣與に期す可し、と説けるものや、甲子の歳は、初の氣
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
たとえば、たつ年に生まれたるものは剛邁ごうまいの気性を有し、とら年に生まれたるものは腕力を有し、年に生まれたるものは臆病なりというごとき類は、世間にてよくいうことであります。
妖怪学一斑 (新字新仮名) / 井上円了(著)
の刻を過ごした雨後の庭園は、鬱蒼うっそうと繁った木立におおわれ、所々に築山を見せ、深夜の月に照らされた鉛色の池を一方にたたえ、淅瀝せきれきたる秋風の渡るまにまに、竹の林は唸りを上げ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こやみもなく時雨しぐれがしょぼふって、病床にふしていた老母がふとトロトロと、まどろみにおちたのは、もはや夜もの刻どき、あるいは草木も眠るうしみつごろであったかもしれません。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
かたがたおそくともの刻までにはここへ戻ってきているようにしてもらいたい。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
一一四玲瓏れいろうとしていたらぬくまもなし。一一五ひとつともおもふころ、あるじの僧眠蔵を出でて、あわただしく一一六物をたづぬ。たづね得ずして大いに叫び、一一七禿驢とくろいづくに隠れけん。
「それではとしでいらっしゃいますな。それからお生れになったのは。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
其で思い合せられるのは、此頃ちょくちょく、からうしの間に、里から見えるこのあたりのに、光り物がしたり、時ならぬ一時颪いっときおろしの凄いうなりが、聞えたりする。今までついに聞かぬこと。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
の日する昔の人のあらまほし
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「こ、今夜、こく前に——」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
前日ぜんじつくちあさみぎはるゝ飴色あめいろ小蝦こえびしたを、ちよろ/\とはしつた——真黒まつくろ蠑螈ゐもりふたつながら、こゝにたけぢやうあまんぬる。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これは摂津国屋の嗣子で、小字おさなな子之助ねのすけと云った。文政五年はうまであるので、俗習にしたがって、それから七つ目のを以て名となしたのである。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「まだ今夜は、三日の真夜半、ようやくの刻(十二時)頃と思われます。あす四日中に和議をおすすめあるとも、両三日中にはまとめられましょう」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上半身に十二の内、、丑、寅、、辰、うまの七つまで、墨と朱の二色で、いともあざやかに彫つてあるのでした。
丑満うしみつ近えの刻に、相好のわからなくなるほどの煮え湯を何だってまた沸かしておきゃがったもんだろう。」
「今夜すぐにこの火をもやすのではない。今から数へて百日目の夜、時刻はやはりこく、お忘れなさるな。」
正月の二十三日はの日であったが、左大将の夫人から若菜わかなの賀をささげたいという申し出があった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)
六月三日の刻であるが、五日の朝まで、信長生害の事を秘して、ついに毛利との媾和に成功した。
賤ヶ岳合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
いのりたるが已につき滿みち寛永くわんえい三年三月十五日の上刻じやうこくに玉の如くなる男子なんしを誕生し澤の井母子おやこの悦び大方おほかたならず天へものぼ心地こゝちして此若君このわかぎみ生長せいちやうを待つより外はなかるべし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
裕佐が其夜妓楼を出たのはの刻に近かつた。頭はズキ/\と痛んでほてり、体は疲れてゐた。
月日の経つのは早いもので、十一年が其の間奉公に陰陽かげひなたなく、実に身をに砕いての働き、し寅に起き、一寸いっすんも油断せず身体を苦しめ、身を惜まず働きまする。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
起きて股引を穿きながら、にふし銅鑼に起きはどうだろうと思って一人でニヤニヤと笑った。それから寝台を離れて顔を洗う台の前へ立った。これから御化粧が始まるのだ。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うしとらの十二支を十二ヵ月に割り当てると、正月が寅だから旧十月は亥の月であった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
十月の亥の日を例としての月なる十一月のの日を(祭りに)用ゆるなるべしと記す。
何時いつかこの二日三日前、周防様すおうさまと二人で、こく過ぎ、お廊下を見廻みまわっておりますと、怪しい人影が御寝所の唐戸からどを開けて、出てまいりましたから、手燭てしょくをさしつけましたところ
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大急ぎに急いだが、出がけに油を売ったもんだから府中へついたのは真夜中のの刻。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
猛犬にあいたるとき、右手の拇指おやゆびより、うしとらと唱えつつ順次に指を屈し、小指を口にてかみ、「寅の尾を踏んだ」と言うときは、いかなる猛犬も尾を巻きて遁走とんそうするという。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)