如何いか)” の例文
予は教育に於ては素人しろうとなれど、日本国民を如何いかに教育すべきか、換言せば教育の最大目的は如何いかんとの題下だいかに一げん述べてみようと思う。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかもこれだけで満足せず、これを如何いかに創り直すかが今後の仕事ではないかと考えている。この考えはどうやら及第であるらしい。
感想 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
問題は如何いかにしてこの両者を融合させるかという点にある。しかし話を分りやすくするために、両極端の場合について考えてみよう。
比較科学論 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
或ロシア人は或時のクリストの如何いかに神に近かつたかを知つてゐない。が、四人の伝記作者たちはいづれもこの事実に注目してゐた。
続西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
両性の関係はかくの如く重つ大なるものあるにかかわらず、古来この問題が如何いかほど研究されたかというに、はなはだ怠られて来て居る。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
如何いかにも道楽者らしい年配の顔の長い男であったが、何という事なしに私はこの男がきらいであった。しかしこれも今はなつかしい。
新古細句銀座通 (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
彼はかつての日、深く自信もし、愛惜していた自分の天才が、如何いかに小さく安っぽいものであるかをこの時初めて悟ったのであった。
童貞 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは如何いかにも智識階級だけのもので、あくまで雅潤な味をたのしむものではあっても、民族の間にはみこんでゆかないのである。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
河面口御門へ行った浅二郎は、半刻ほどして戻ってくると如何いかにも晴れ晴れとした顔で、登城したばかりの厨川靱負に面会を求めた。
入婿十万両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
がその月に照らされて美しい顔の表情は、如何いかなる言葉よりも雄弁に、瀕死の村松金之助の眼に、並々ならぬものを焼付やきつけたのです。
歌物語うたものがたりに何の癡言たはことと聞き流せし戀てふ魔に、さては吾れとくよりせられしかと、初めて悟りし今の刹那に、瀧口が心は如何いかなりしぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
塔のまわりは群集のかき、階段の下には警官隊が見張っていた。翼でもない限り、如何いかな怪物とても、この重囲を逃れるすべはない筈だ。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
昨日きのふあさ千葉ちばわたしびまして、奧樣おくさまこの四五にちすぐれやう見上みあげられる、うぞあそばしてかと如何いかにも心配しんぱいらしくまをしますので
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
理智的にその結論が如何いか周匝しゅうそうで正確であろうとも、それが果して本能なる愛の本体を把握し得た結論ということが出来るだろうか。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
少年せうねんゆびさかたながめると如何いかにも大變たいへん! 先刻せんこく吾等われら通※つうくわして黄乳樹わうにうじゆはやしあひだより、一頭いつとう猛獸まうじういきほいするどあらはれてたのである。
如何いかに味の良い御馳走でも盛り方が乱雑で皿が不潔であったらば食べる気にならん。第一に人の食慾を起さしめるものは眼の働きだ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
暗い水の上に、小舟が蚊帳を吊って、ランプをとぼしているのが如何いかにも涼しそうだ。雨あがりのせいか、海辺はひっそりしている。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
科学者の芸術論が専門の芸術評論家の眼から見て如何いかに平凡幼稚なものであっても、芸術家の芸術論と多少でも異なるところがあらば
しかし如何いかなる国の何時いつの代にも、魔法というようなことは人の心の中に存在した。そしてあるいは今でも存在しているかも知れない。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、それには一応何時いつもの須山らしい調子があるようで、しかし如何いかにも取ってつけたただならぬさがあった。それが直接じかに分った。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
かの戦争に如何いかなる意義があったか、如何なる効果をかの戦争の犠牲に由って持ちきたしたか、戦争の名は如何様いかように美くしかったにせよ
婦人と思想 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
女郎屋ぢよらうやふわけにはかず、まゝよとこんなことはさてれたもので、根笹ねざさけて、くさまくらにころりとたが、如何いかにもつき
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
きみばかりでない、ぼく朋友ほういううち何人なんぴといま此名このな如何いかぼくこゝろふかい、やさしい、おだやかなひゞきつたへるかの消息せうそくらないのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こうなっては如何いかなヘンリー四世といえども狼狽せざるを得ず、皇帝の尊厳をなげうって法王に破門免除を懇願するより他には手はなかった。
ローマ法王と外交 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そうそう過去のまずい所ばかり吹聴ふいちょうするのは、如何いかにも現在の己に対して侮辱を加えるようで済まない気がするから故意わざと略した。
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日本人にほんじん固有こゆう風習ふうしふてゝ外國ぐわいこく慣習くわんしふにならうは如何いかにも外國ぐわいこくたいして柔順過じうじゆんすぎるといふ怪訝けげんかんおこさしむるにぎぬとおもふ。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ちょっとかれいを——縦におこして泳がせたような恰好かっこうだ。それに、その胴体と殆ど同じ位の大きさの三角帆のようなひれ如何いかにも見事だ。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
万一先生、御他界の間に合わぬ時は、折角の秘伝は消滅して、残念ながら此世にはのこり申さぬ。それが如何いかにも惜しゅうて成らぬ。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
これがため僅々数年間に五万人死せりとは大層な話ながらかかる話の行わるるを見て如何いかに虎害が支那に繁かりしかを察せらるる。
表情の自由な、如何いかにも生き生きとした妖女ようじょの魅力に気圧けおされて、技巧を尽した化粧も着附けも、醜く浅ましい化物のような気がした。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
如何いかにしても常に自信のあったピアニシモが出来なくなって一夜泣き明かしたが、これでは自分自身まで敵にやられたと同じと思って
お蝶夫人 (新字新仮名) / 三浦環(著)
もしそれ日本人の呂宋ルソンに住するもの三千人に過ぎたりという、また以て如何いかに我が同胞が海外に膨脹しつつあるかを知るに足らん。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
柄は木質にてちて居りし事故、如何いかなる方法にて石斧いしおのくくり付けしか詳ならされど、其状そのじやう現今げんこんおこなはるるタガネと大差たいさ無かりしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
此の大事でえじな人間の指い切るの、足い切るのと云って人を不具かたわにするような御遺言状おかきもののこしたという御先祖さまが、如何いかにも馬鹿気た訳だ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
心ここにあらざれば如何いかなる美味ものんどくだらず、今や捕吏ほりの来らんか、今や爆発のひびき聞えんと、三十分がほどを千日せんにちとも待ちびつ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
「君を悪物喰といつたのは小生一生の不覚、自今じこん如何いかやうな事があつても悪物喰などとは決して申すまじ、後日のため一さつよつて而如件くだんのごとし。」
看板に「沢山たくさん道具をお壊しなさい、それ貴君あなたのお幸福しあはせ」と書いてある。如何いかにも破壊を好む気ばや仏蘭西フランス人の気に入りさう遊戯あそびだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
すべて今までとは様子が違う、それを昇の居る前で母親に怪しまれた時はお勢もぱッと顔をあかめて、如何いかにもきまりが悪そうに見えた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼女はその匕首あいくちを身辺から離さないで、最後の最後の用意としていた。そうした最後の用意が、如何いかなる場合にも、彼女を勇気付けた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
特殊の主張を以て臨むものに至っては、そういう主張が如何いかにして作り上げられたかを先ず検討してかからねばならぬのではあるまいか。
だからその生活の一番直接な表現である民藝品が、如何いかにその性質において朝鮮や日本のものとことなるかは当然のことであります。
北支の民芸(放送講演) (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
尾瀬沼は如何いかにして保存すべきか。学生村を創設し、享楽場として自然を有意義に利用せんとするくわだては学生村設立趣意書に発表してある。
尾瀬沼の四季 (新字新仮名) / 平野長蔵(著)
此奴足もない、眼もないものではあるが、蝦や蟹が如何いかに運動感覚の器官が発達していても、この場所ではこれと競争は出来ぬ。
文覚の袈裟けさに対するや、如何いかなる愛情をたもちしやを知らず、然れども世間彼を見る如き荒逸なる愛情にてはあらざりしなるべし。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
父は私が帰朝の翌日静かに将来の方針を質問されました。如何いかにして男子一個の名誉を保ち、国民の義務を全うすべきかという問題です。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
影薄く存在していた蕪村について考える時、人間の史的評価や名声やが、如何いかに頼りなくあてにならないかを、真に痛切に感ずるのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
そうして如何いかにも苦しい、寂しい、悲しい、今にも亡びそうな声である。ある人が彼を評して亡国の声といったのも無理はない。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あたりを明るくするほどの派手な美貌びぼうであつた。その上、気性は如何いかにも痴情で、婚家から出されたとうなずけるほど浮々してゐた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
如何いかに説いても男は帰らぬ。さりとて国へ報知すれば、父母の許さぬのは知れたこと、時宜じぎればたちまち迎いに来ぬとも限らぬ。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼はこころに満たぬ事ある毎に、必ずこの問題を研究せざるなけれども、未だかつて解釈し得ざるなりけり。今日はや如何いかに解釈せんとすらん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)