とも)” の例文
旧字:
瑞雲斎と事をともにした人に十津川産の宮太柱みやたちゆうがある。当時大木主水もんどと称してゐた。太柱は和漢洋の三学に通ずるを以て聞えてゐた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
秋七月布政使ふせいし張昺ちょうへい謝貴しゃきともに士卒を督してみな甲せしめ、燕府を囲んで、朝命により逮捕せらるべき王府の官属を交付せんことを求む。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ともに共に之を定めん、然れども、陛下臣等が考案を聴かんと為さば、臣等固より書して以て、之をたてまつり、或は口づから之を陳せむ。
共に苦楽をともにして心身を労すること正しく同一様なるに、何が故に之を君臣主従の如くならしめんとするか、無稽も亦甚しと言う可し。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼慨然として答えて曰く、「時宗、秀吉はまことに及びやすからず、しかれども義律エリオット伯麦ブレマ馬里遜モリソン陋夷ろういの小才のみ、何ぞともかくするに足らんや」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
私は高い処にみずからを置いて説教しようと思うから、発言することができないのである。人々とともに歩め。ともに真理をきわめ、ともに徳を積め。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
君よ、この特絶無類とも申すべき一種の自覚のこゝろをば誰れとともにか語り候ふべき。げにの夜は物静かなる夜にて候ひき。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
得たるは是れ実に久しく地下に眠つて再びともに現世を歩むこと能はざる此一友人の恩恵に帰すべきこと多きは余の好んで告白せんと欲する所なり。
透谷全集を読む (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
また「孔子世家」によれば、有若の状孔子に似たるをもって、弟子あいともに立てて師となし、孔子に仕えたように仕えた。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
牛乳屋のボルレー真正に良牛乳を市民に与えんとの冀望より、牛乳を貯蔵する所の氷も、牛乳に加味する所の砂糖もその牛乳とともに配達せしめたり。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
此度の事ハ御船明光丸もともに沈没致候得ば如何被成候哉。御主用をかぎ候のみならず、人命多く失ひ可申候。
流転の力汝に迫らず、無常のちから汝をおそはず。「自由」汝と共にあり、国家汝とともてり、何をかおそれとせむ。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
それ梅田はもとより奸猾なれば余ともに志を語ることを欲せざる所なり何の密議をかなさんや」と記している。
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
子貢曰く、詩に云う、せつするが如く、するが如く、たくするが如く、するが如しとは、其れれを之れ謂うかと。子曰く、や、始めてともに詩を言うべきのみ。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それとも一方いつぱうには小説雑誌の気運きうん日増ひましじゆくして来たので、此際このさいなにか発行しやうと金港堂きんこうどう計画けいくわくが有つたのですから、早速さつそく山田やまだ密使みつしむかつたものと見える
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
予、成都議※に参し、事を漢嘉に摂し、一たび茘子の熟するを見る。時に凌雲山、安楽園、皆な盛処。糾曹何預元立、法曹蔡迨肩吾、皆な佳士。相ともに同じく楽む。
書紀にも「いくさやしなひ衆をつどへて、つひともに謀を定めたまふ」と壬申の乱における内助の功をたたえ、また大海人皇子登位して天武天皇となられて後、崩御さるるまで
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
阿那律すなわち閉目正坐し、赤骨観を作す。寡婦またこれなる念いをなす。我かくの如しといえども、彼猶お未だ降らずと。すなわち牀に上りこれとともに共に坐さんと欲す。
当時文風はなはだ盛ニシテ、名士くびすヲ接シテ壇坫だんてんヅ。旗幟きし林立スルコト雲ノ如シ。頼三樹兄弟、池内陶所いけうちとうしょ、藤本鉄石ノ諸人皆ともニ交ヲ訂ス。詩酒徴逐スルゴトニほしいままニ古今ヲ談ズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
膏血かうけつ淋漓りんりたり。下に承くるに盆を以てす。盆満つれば即ち巨桶中に挹注いふちうす。かくの如きもの十余次。巨桶すなはち満つ。数人之を扛して出づ。官文書を判して一吏に付し、ともに同じく出づ。
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
要こそあれと身を翻して、早くも洞中に潜むとともに、ともしびの主は間近に来りぬ。一個の婦人なり。予は燈影を見しはじめより、今夜こよい満願に当るべき咒詛主の、驚破すわや来ると思いしなりき。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
消息盈虚えいきょ時とともに移る
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
朕祖宗ちんそそう遺列いれつ万世一系ばんせいいっけい帝位ていいちんカ親愛スル所ノ臣民しんみんすなわチ朕カ祖宗ノ恵撫慈養けいぶじようシタマヒシ所ノ臣民ナルヲおも康福こうふくヲ増進シ其ノ懿徳良能いとくりょうのうヲ発達セシメムコトヲ願ヒ又其ノ翼賛よくさんともともニ国家ノ進運しんうん扶持ふじセムコトヲ望ミすなわチ明治十四年十月十二日ノ詔命しょうめい履践りせんここ大憲たいけんヲ制定シ朕カ率由そつゆうスル所ヲ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
私らはともに生きているのである。共存の意識は個存の意識より浅いものではない。みずからを一段高く置く態度はとうてい相対的のものである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
孝孺のちに至りて此詩を録して人にしめすの時、書して曰く、前輩せんぱい後学こうがくつとめしむ、惓惓けんけんこころひとり文辞のみにらず、望むらくはあいともに之を勉めんと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
恰も佐幕家の宿論に投ずるが故に、これと共に爾後じごの方針をともにすると云えば至極しごくもっともに聞ゆれども、当時の争に開鎖など云う主義の沙汰さたは少しもない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
子曰く、や始めてともに詩をいうべきなり、これにぎにしことをつぐれば来たらんことをも知るものなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
あれは小説家だからともに医学を談ずるには足らないと云い、予が官職を以て相対する人は、他は小説家だから重事をたくするには足らないと云って、暗々裡あんあんりに我進歩をさまた
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ここにおいて彼は、その友金子重輔じゅうすけともに神奈川にいたり、横浜に赴き、外艦に近づくの策を講ず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
予は今尚ほ其の折を回想して、吾れ神とともに観たりてふその刹那の意識を批評し去る能はず。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
たけなわニシテ詩ヲ賦シ筆ヲ下スコト縦横、大篇たちドコロニル。駿発しゅんぱつ一座ヲ驚ス。子寿指シテ余ニ告ゲテ曰クコレ房州ノ鱸子彦之ろしげんしナリト。予心ひそかニコレヲ奇トス。乃チともニ交ヲ訂ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
不死不朽、彼とともにあり、衰老病死、我と与にあり。鮮美透涼なる彼に対して、たわみ易く折れ易き我れ如何に赧然たんぜんたるべきぞ。こゝに於て、我は一種の悲慨に撃たれたるが如き心地す。
一夕観 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
石橋いしばしひに行つてもはん、わたしから手紙を出しても返事が無い、もう是迄これまでふので、わたしが筆を取つて猛烈まうれつ絶交状ぜつかうじやうを送つて、山田やまだ硯友社けんいうしやとのえんみやこはなの発行とともたゝれてしまつたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
友三人あり、天姿奇秀なり。あいともに議して曰く、天下の理義は、神明を開悟し、幽旨を洞発し、智慧を増長す。かくのごときの事は、われら悉く達せり、更に何の方を以て、自ら娯楽せんかと。
このうちとどまりて憂目うきめを見るは、三人みたり婦女おんな厄介やっかい盲人めしいとのみ。婦女等おんなたちは船の動くととも船暈せんうんおこして、かつき、かつうめき、正体無く領伏ひれふしたる髪のみだれ汚穢けがれものまみらして、半死半生の間に苦悶せり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
破れたる縕袍おんぼう狐貉こかくを衣る者と、ともに立って恥じざる
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
概してこれを言えば、人を束縛してひとり心配を求むるより、人を放ちてともに苦楽をともにするにかざるなり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
済南の防禦ぼうぎょ、徳州の回復に、其の材を認められて、平燕へいえん将軍となり、陳暉ちんき平安へいあん馬溥ばふ徐真じょしん等の上に立ち、呉傑ごけつ徐凱じょがい等とともに燕をつの任に当りぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
予にしてもし彼の偽の幸福のために、別方面の種々の事業の阻礙そがいをさえ忘るるものであったなら、予は我分身とともに情死したであろう。そうして今の読者に語るものは幽霊であろう。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蝉羽子せんうし悄然として立つこと少時、かれを招きてともに車を推し、之を小亭に引きて飯を命じ、鮮魚をさいして食はしめ、未だ言を交ゆる事多からず、其の旧事を回想せしめん事を恐るればなり。
客居偶録 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
笑フベキノ甚シキ者ナリ。ソモソモコレニ従事スル者ハ、精ト簡トノ要タルト、長ト短トノ異ルコトナキトヲ知レバ、すなわち始メテともニ詩ヲ言フベキノミ。近日余ガ『絶句抄』ノ梨棗りそう竣功しゅんこうス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二に曰く、「御所内に落文あり、その手蹟汝に似たりと源二郎その外申立つる者あり、覚ありや」。この二条のみ。それ梅田はもとより奸猾かんかつなれば、余ともに志を語ることを欲せざる所なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ここに於てすなわあいともに徒役を発して孔子を野に囲む。(孔子)行くを得ず。糧(粮)を絶つ。従者病みて(起)つあたわず。孔子、講誦弦歌して衰えず。子路いかまみえて曰く、君子も亦窮するあるか。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
共に苦楽をともにするの契約は、生命を賭して背くべからずと雖も、元来両者の身の有様を言えば、家事経営に内外の別こそあれ、相互に尊卑の階級あるに非ざれば
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
不知案内の地へ臨んで戦い、料簡りょうけん不明の政宗とともにするに、氏郷が此の輪之丞以下の伊賀衆をポカリと遊ばせて置いたりいたずらに卒伍そつごの間に編入して居ることの有り得る訳は無い。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
独り予は医者で、しかも軍医である。そこで世間で我虚名を伝うるとともに、門外の見は作と評との別をさえ模糊もこたらしめて、かれは小説家だということになった。何故に予は小説家であるか。
鴎外漁史とは誰ぞ (新字新仮名) / 森鴎外(著)
劇の中に存して劇とともに、進歩せしむるは到底、望むべき事にはあらず。
劇詩の前途如何 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
身并忘刀筆名 ともあわせわす刀筆とうひつの名
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
我輩は此新人を友にして親友と共に事をともにせんとする者なれば、彼等の反対は恐るゝに足らず。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
政宗は前に云った通り、まだ秀吉に帰服せぬ前に、木村父子が今度拝領した大崎を取ろうと思って、大崎の臣下たる湯山隆信をわれに内通させて氏家吉継とともに大崎を図らせて居たのである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)