トップ
>
隣家
>
となり
ふりがな文庫
“
隣家
(
となり
)” の例文
上杉の
隣家
(
となり
)
は何宗かの
御梵刹
(
おんてら
)
さまにて寺内廣々と桃櫻いろ/\植わたしたれば、此方の二階より見おろすに雲は棚曳く天上界に似て
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
家内のことばかり言うと家内を恐れているように誤解されるかも知れないが、実は先月一軒置いて
隣家
(
となり
)
へ囲いものが越して来たのさ。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
まずは、
武大
(
ぶだ
)
もそんな程度と聞くと、西門慶は大胆にも、たった二日ほど
措
(
お
)
いただけで、またぞろ
隣家
(
となり
)
へ来ては金蓮に呼びをかける。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いゝえ、お
祖父樣
(
ぢいさん
)
、私は螢を
捕
(
つかま
)
へに行くのでは無いのです。つい
其處
(
そこ
)
まで…… あの、お
隣家
(
となり
)
の太一さんの
許
(
とこ
)
まで行くのです。」
水郷
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
家の中でも、
隣家
(
となり
)
でも、その
隣家
(
となり
)
でも、誰一人起きたものがない。自分は静かに深呼吸をし乍ら、野菜畑の中を
彼方此方
(
あちこち
)
と歩いて居た。
葬列
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
▼ もっと見る
その金を稀塩酸で磨いて、紙の棒に包んだのを資金として、
故意
(
わざ
)
と直ぐの
隣家
(
となり
)
に理髪店を開いていたところは立派な悪党であった。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
むかし小野
浅之丞
(
あさのじよう
)
といふ少年があつた。
隣家
(
となり
)
の猫が
度々
(
たび/\
)
大事な
雛
(
ひな
)
つ
児
(
こ
)
を盗むので、ある日
築山
(
つきやま
)
のかげで、吹矢で猫を
狙
(
ねら
)
ひ
討
(
うち
)
にした。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一
(
ひ
)
ト月過ぎ
二
(
ふ
)
タ月
過
(
すぎ
)
ても
此
(
この
)
恨
(
うらみ
)
綿々
(
めんめん
)
ろう/\として、
筑紫琴
(
つくしごと
)
習う
隣家
(
となり
)
の
妓
(
こ
)
がうたう唱歌も我に引き
較
(
くら
)
べて絶ゆる事なく悲しきを、コロリン
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
が、まあ、爺が死ぬ、村のものを呼ぼうにも、この通り
隣家
(
となり
)
に遠い。三度の
掟
(
おきて
)
でその外は、火にも水にも鐘を撞くことはならないだろう。
夜叉ヶ池
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
五日ほど前から、千々子さまはお
隣家
(
となり
)
のミドリさまを釣りだそうというので、いろいろと骨を折っていた。はじめの日は電話で
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
後
(
あと
)
で源助は奥の騒ぎを聞きつけて、いきなり自分の部屋を飛びだし、
拳
(
こぶし
)
を
振
(
ふる
)
って
隣家
(
となり
)
の
塀
(
へい
)
を打ち叩き、破れるような声を出して
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
歴史には名は出ていなくても、
隣家
(
となり
)
の大将、裏の
姐
(
ねえ
)
さん、お向うの
兄
(
あん
)
ちゃんには、神のように、父のように慕われ、うやまわれたんです。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
甲野さんが「
無絃
(
むげん
)
の琴を
聴
(
き
)
いて始めて
序破急
(
じょはきゅう
)
の意義を悟る」と書き終った時、
椅子
(
いす
)
に
靠
(
もた
)
れて
隣家
(
となり
)
ばかりを
瞰下
(
みおろ
)
していた宗近君は
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
してみますよって。お母はんも、もう、ちょっと静かにしてとくれやす。
隣家
(
となり
)
が近うおすよって。そのことは私が、後でよう聴かしてもらいます
霜凍る宵
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
その
隣家
(
となり
)
はこんもりした植込みのある——泉水などもある庭をもった二階家で、丁度そこの塀を二塀ばかりきりとって神田上水の井戸があるのを
旧聞日本橋:02 町の構成
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
セエラがお使から帰ってくると、
隣家
(
となり
)
では、ラム・ダスが鎧戸を閉めているところでした。セエラは鎧戸の間から、ちらと部屋の中を覗きました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
デカが
跟
(
つ
)
いて来る。ピンは一昨夜子を生んだので、
隣家
(
となり
)
の前まで見送って、御免を
蒙
(
こうむ
)
った。朝来の雨は止んで、日が出たが、田圃はまだ路が悪い。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
窓から
隣家
(
となり
)
の二階の縁側が見えている。縁側の下はすぐ勝手のトタン屋根になっていて、そこから地続きの低い生垣を越えると、浅田家の庭である。
秘められたる挿話
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
薄暗い雨の夜に
隣家
(
となり
)
の
塀
(
へい
)
から伸び出てゐる松の枝は、彼れの身體をぶら下げて息の根を絶つに役立つやうだつた。……
仮面
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
お雪は住居の近くに、二人の小母さんの助言者をも得た。一人は壁一重隔てて
隣家
(
となり
)
に住む細君で、この小母さんは病身の夫と多勢の子供とを控えていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
はじめ、その
姿
(
すがた
)
は
小
(
ちい
)
さかったのが、だんだん
大
(
おお
)
きくなって、よくわかるようになると、
手
(
て
)
にブリキかんを
持
(
も
)
っていました。それは、
隣家
(
となり
)
の
武
(
たけ
)
ちゃんでした。
夢のような昼と晩
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
その
中
(
なか
)
でもとりわけ
立派
(
りつぱ
)
な
總縫模樣
(
そうぬいもやう
)
の
晴着
(
はれぎ
)
がちらと、
塀
(
へい
)
の
隙
(
すき
)
から、
貧乏
(
びんぼう
)
な
隣家
(
となり
)
のうらに
干
(
ほ
)
してある
洗晒
(
あらひざら
)
しの、ところどころあてつぎ などもある
單衣
(
ひとへもの
)
をみて
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
第二篇の饗庭篁村の『掘出し物』は丁度
新店
(
しんみせ
)
の
見世開
(
みせびら
)
きに
隣家
(
となり
)
の
老舗
(
しにせ
)
の番頭を
傭
(
やと
)
って来たようなものであるが、続いて思案の『
乙女心
(
おとめごころ
)
』、漣の『
妹背貝
(
いもせがい
)
』と
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
朝晩魚が
鮮
(
あた
)
らしかつたり、庭先の砂地に
蟹
(
かに
)
が出てゐたり、
隣家
(
となり
)
の井戸端に海水着が沢山干されてあつたりしてゐると、やはり避暑地の晴々とした安楽を感じる。
愚かな父
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
二人が争っているところへ女の
所天
(
ていしゅ
)
はじめ
隣家
(
となり
)
の者が三四人やって来た。勘作は女を渡して帰って来た。
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
昨夜
隣家
(
となり
)
に越して来た凄い引き眉毛の洋装少女のことも、共にすっかり忘れてしまわねばならなかった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
理髪所
(
とこや
)
の裏が百姓
家
(
や
)
で、牛のうなる声が往来まで聞こえる、酒屋の
隣家
(
となり
)
が
納豆売
(
なっとううり
)
の老爺の住家で、毎朝早く
納豆
(
なっとう
)
納豆と
嗄声
(
しわがれごえ
)
で呼んで都のほうへ向かって出かける。
武蔵野
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
信實
(
まこと
)
となし
貴妃
(
きひ
)
小町にも勝るとも劣はせじと思ふ程なる美人であれば其樣な病も
素
(
もと
)
より有るまじと思ふが故に
近所
(
きんじよ
)
隣家
(
となり
)
の人にも更に平常の
行跡
(
ぎやうせき
)
さへも聞事なく
縁
(
えん
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
生垣などで
隣家
(
となり
)
と境いし、並んでいるというような——ざっと中流以下の人が、
隠
(
かく
)
し女を囲って置くのに、うってつけとでもいいたげの、そういう場所の一軒から
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
隣家
(
となり
)
のラディオも閉めた雨戸に
遮
(
さえぎ
)
られて、それほどわたくしを苦しめないようになったので、わたくしは家に居てもどうやら燈火に親しむことができるようになった。
濹東綺譚
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
家の前うしろや
隣家
(
となり
)
までなら、
猿
(
さる
)
も同様にむき出しでもかかえて行けるが、散ったりこぼれたり人に見られたりするのをいとえば、容器すなわち入れ物がほしくなる。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一昨日
(
おとつい
)
昇に
誘引
(
さそわれ
)
た時既にキッパリ
辞
(
ことわ
)
ッて行かぬと決心したからは、人が騒ごうが騒ぐまいが
隣家
(
となり
)
の
疝気
(
せんき
)
で
関繋
(
かけかまい
)
のない
噺
(
はなし
)
、ズット澄していられそうなもののさて居られぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
予は翁からの注文で、
隣家
(
となり
)
の着古るしの芝簑を一領携へて行つた。翁は直ぐと着て見て大喜び。
大野人
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
雲根志
(
うんこんし
)
灵異
(
れいい
)
の部に曰、
予
(
よ
)
が
隣家
(
となり
)
に
壮勇
(
さうゆう
)
の者あり儀兵衛といふ。或時
田上谷
(
たがみだに
)
といふ山中に
行
(
ゆき
)
て
夜更
(
よふけ
)
て
皈
(
かへ
)
るに、むかうなる山の
澗底
(
たにそこ
)
より青く光り
虹
(
にじ
)
の如く
昇
(
のぼり
)
てすゑは
天
(
そら
)
に
接
(
まじは
)
る。
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
何人
(
なんぴと
)
の会合か
隣家
(
となり
)
の戸口へかけて七八輛の黒塗車が居并らび、脊に
褐色
(
ちゃ
)
や萠黄や好々の
記号
(
しるし
)
を縫附けた
紺法被
(
こんはっぴ
)
が往来し、二階は
温雅
(
しっとり
)
した内におのずからさゞめいて居るので
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
この騒ぎの最初の日、欣之介は自分の家に
留
(
とどま
)
つてゐるに
堪
(
た
)
へない気がして、朝から
隣家
(
となり
)
の病身の大学生のところへ出かけて行つた。友達は以前から見るとまた一層弱つてゐた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
すると
隣家
(
となり
)
に十二ばかりの女の子を上に
八歳
(
やつ
)
ばかりと
五歳
(
いつつ
)
ばかりの男の子が居た。
闥の響
(新字新仮名)
/
北村四海
(著)
幾が
親類
(
みうち
)
の
隣家
(
となり
)
に
一人
(
ひとり
)
そんな
娘
(
こ
)
がございましてね、もとはあなたおとなしい
娘
(
こ
)
で、それがあの宗旨の学校にあがるようになりますとね、あなた、すっかりようすが変わっちまいましてね
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
「なんだ、
先刻
(
さつき
)
にから戸の破れる程叩いたじやあないか、なぜ開けない、
隣家
(
となり
)
へ聞こえても不都合じやないか、夫を戸外に立たせておいて、優々閑々と熟睡しておるとは、随分気楽な先生だ」
こわれ指環
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
隣家
(
となり
)
の
中庭
(
には
)
のこつちをばこつそり通り抜けるのでした。
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
隣家
(
となり
)
は空に 舞ひ去つてゐた!
在りし日の歌:亡き児文也の霊に捧ぐ
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
上杉の
隣家
(
となり
)
は何宗かの
御梵刹
(
おんてら
)
さまにて
寺内
(
じない
)
広々と桃桜いろいろ
植
(
うゑ
)
わたしたれば、
此方
(
こなた
)
の二階より見おろすに雲は
棚曳
(
たなび
)
く天上界に似て
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そして、今日
隣家
(
となり
)
の松太郎と云ふ
若者
(
わかいもの
)
が、源助さんと一緒に東京に行きたいと言つた事を思出して、男ならばだけれども、と考へてゐた。
天鵞絨
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
時たま活動を見に行く事もあったが、その時は、
隣家
(
となり
)
の店に居る泊り込みの小使い爺さんに留守を頼んで、表から南京錠をかけて行った。
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
そこで
裸体
(
はだか
)
で手を
曳
(
ひ
)
かれて、土間の隅を抜けて、
隣家
(
となり
)
へ
連込
(
つれこ
)
まれる時分には、
鳶
(
とび
)
が鳴いて、遠くで大勢の人声、
祭礼
(
まつり
)
の
太鼓
(
たいこ
)
が聞えました。
薬草取
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
隣家
(
となり
)
の書生が木刀を握って武者慄いをした。お歌さんは乃公の手を
捉
(
つかま
)
えている。捉えているのか捉っているのか分らない。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
丈
(
じょう
)
に足らぬ
檜
(
ひのき
)
が春に用なき、去年の葉を
硬
(
かた
)
く
尖
(
とが
)
らして、
瘠
(
や
)
せこけて立つ
後
(
うし
)
ろは、
腰高塀
(
こしだかべい
)
に
隣家
(
となり
)
の話が手に取るように聞える。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
耳朶
(
みみたぶ
)
を
真
(
ま
)
っ
紅
(
か
)
にして、お蔦は、外へ出て行った。すぐ、
隣家
(
となり
)
の格子が鳴り、がたぴしと、壁越しに、
箪笥
(
たんす
)
の
鐶
(
かん
)
の音があらっぽく聞こえてくる。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と裏の枯れた渋辛声で名乗ったので、これが係長の話していたお
隣家
(
となり
)
の太田夫人なのだと、鈍い百々子にもすぐわかった。
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「
貴郎
(
あなた
)
、そんな
身装
(
みなり
)
をしてお
隣家
(
となり
)
へ往つてらしたんですか。
襟飾
(
ネクタイ
)
もつけないで、何てまあ礼儀を知らない方なんでせう。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
“隣家”の意味
《名詞》
隣にある家。
(出典:Wiktionary)
隣
常用漢字
中学
部首:⾩
16画
家
常用漢字
小2
部首:⼧
10画
“隣”で始まる語句
隣
隣室
隣村
隣人
隣席
隣国
隣合
隣近所
隣座敷
隣町