トップ
>
遁
>
のが
ふりがな文庫
“
遁
(
のが
)” の例文
で、結局十二人は異端焚殺に逢ってしまったのだが、ウイチグスのみは秘かに
遁
(
のが
)
れ、この大技巧呪術書を完成したと伝えられている。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
“ワシントン、一夜のうちに
崩壊
(
ほうかい
)
す——白堊館最初に
犠牲
(
ぎせい
)
となる。危機一髪、ル大統領、身を以て
遁
(
のが
)
れる。崩壊事件の真相全く不明”
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
有爲轉變
(
うゐてんぺん
)
の世の中に、只〻最後の
潔
(
いさぎよ
)
きこそ肝要なるに、天に
背
(
そむ
)
き人に離れ、いづれ
遁
(
のが
)
れぬ
終
(
をはり
)
をば、
何處
(
いづこ
)
まで
惜
(
を
)
しまるゝ一門の人々ぞ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
議官
(
セナトオレ
)
の甥と
鞘當
(
さやあて
)
して、
敵手
(
あひて
)
には
痍
(
きず
)
を負はせたれど、不思議にその場を
遁
(
のが
)
れ得たり。かくてこたび「サン、カルロ」座には出でしなり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彼らは
遽
(
にわ
)
かに姿をかくしたにちがいない。——あきらかに本船を意識して
遁
(
のが
)
れた、とそう思われた。港の家々はも抜けの殻であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
▼ もっと見る
並木の桜に
凭
(
もた
)
れかかって、内蔵助は、ぐんにゃりとしていた。あんな危機を
遁
(
のが
)
れた
生命
(
いのち
)
であることも、まだ
判乎
(
はっきり
)
と知らないように——
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
先生
(
せんせい
)
さん
戯談
(
じやうだん
)
いつて、なあにわしや
爺樣
(
ぢいさま
)
に
打
(
ぶ
)
たれたんでさ」
勘次
(
かんじ
)
は
只管
(
ひたすら
)
に
醫者
(
いしや
)
の
前
(
まへ
)
に
追求
(
つゐきう
)
の
壓迫
(
あつぱく
)
から
遁
(
のが
)
れようとするやうにいつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
お雪ちゃんは、当然ここで死なねばならぬ運命を
遁
(
のが
)
れて、とにもかくにも、無事にこの白骨を立ち出でたのは果報でございました。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
先ず経済的に独立しなければ、男子の専横から
遁
(
のが
)
れることができない。こう知った女は職業をこの社会に向って要求したのである。
婦人の過去と将来の予期
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
父母たる者の義務として
遁
(
のが
)
れられぬ役目なれども、
独
(
ひと
)
り女子に限りて其教訓を重んずるとは
抑
(
そもそ
)
も立論の根拠を誤りたるものと言う可し。
女大学評論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
支出に対する租税は
吝嗇家
(
りんしょくか
)
が
遁
(
のが
)
れるであろう。彼は毎年一〇、〇〇〇
磅
(
ポンド
)
の所得を有ち、そして単に三〇〇
磅
(
ポンド
)
を費すに過ぎないであろう。
経済学及び課税の諸原理
(新字新仮名)
/
デイヴィッド・リカード
(著)
遁
(
のが
)
れて、山に入るのがせめても反逆で御座る——強力に存分に、思うところを押し進むる父上に、私風情が
逆
(
さから
)
うことなど思いも寄らない
奇談クラブ〔戦後版〕:09 大名の倅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と咄嗟に、私にも蒼空の下には飛び出せない我身の
永劫
(
えいごふ
)
遁
(
のが
)
れられぬ
手械足枷
(
てかせあしかせ
)
が感じられ、堅い塊りが込み上げて来て
咽喉
(
のど
)
もとが
痞
(
つか
)
へた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
もしも小山さんが自分の責任を
遁
(
のが
)
れるような
工風
(
くふう
)
をするとかあるいは
和女
(
おまえ
)
を
頼
(
たのん
)
で家へ金を借りに来るような
意気地
(
いくじ
)
のない人であったら
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
わたしは生活とその
煩累
(
はんるい
)
を
遁
(
のが
)
れ、人の言う、夢の世界に隠れ家を求めようとする。わたしは、終夜、帽子を根気よく探す夢を見た。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
大王猿猴の勧めに依って弓を引いて敵に向いたもうに、
弓勢
(
ゆんぜい
)
人に
勝
(
すぐ
)
れて
臂
(
ひじ
)
背中
(
はいちゅう
)
に廻る。敵、大王の弓勢を見て
箭
(
や
)
を放たざる先に
遁
(
のが
)
れぬ。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
これは誰もこの雁字といふ題に気がつかなかつたためで、余も輪講の当時書物を見ずに傍聴して居たのでこの題を聞き
遁
(
のが
)
してしまふた。
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
悪人ながらお柳は実母でございますから、親殺しの
廉
(
かど
)
は何うしても
遁
(
のが
)
れることは出来ませんので、町奉行筒井和泉守様は
拠
(
よんどこ
)
ろなく
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
白羽
(
しらは
)
の箭が立った若者には、勇んで出かける者もある。
抽籤
(
くじ
)
を
遁
(
のが
)
れた礼参りに、わざ/\
鴻
(
こう
)
の
巣
(
す
)
在
(
ざい
)
の何宮さんまで出かける若者もある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
この画は平家の若い美くしい
上臈
(
じょうろう
)
が
壇
(
だん
)
の
浦
(
うら
)
から
遁
(
のが
)
れて、岸へ上ったばかりの一糸をも掛けない裸体姿で源氏の若武者と向い合ってる処で
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
この時
根津
(
ねづ
)
に
茗荷屋
(
みょうがや
)
という
旅店
(
りょてん
)
があった。その主人
稲垣清蔵
(
いながきせいぞう
)
は
鳥羽
(
とば
)
稲垣家の重臣で、
君
(
きみ
)
を
諌
(
いさ
)
めて
旨
(
むね
)
に
忤
(
さか
)
い、
遁
(
のが
)
れて商人となったのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「花鳥諷詠」という宿命は
遁
(
のが
)
れることは出来ない。もし諸君がその宿命に甘んずる決心がつけば俳句の天地に
留
(
とどま
)
って
勉
(
つと
)
められよ。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
乗員もまた独逸海軍の精を
選
(
すぐ
)
ったものか、百発百中! いったん狙われたが最後、未だこの海の狼から
遁
(
のが
)
れ得た船はなかった。
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それにしても
和主
(
おぬし
)
は
不憫
(
ふびん
)
なが、何にも知らずこんな山へ迷い込んで来たばかりに、
遁
(
のが
)
れることも出来ない呪いの網にかかってしまったのだ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
これはすべて
輪廻
(
りんね
)
の
造顕
(
ぞうけん
)
によることでござって、まして、限り知れたわれらの
法力
(
ほうりき
)
では、その呪いから
遁
(
のが
)
れしむることはむずかしゅうござる
顎十郎捕物帳:15 日高川
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
お亀は一寸
遁
(
のが
)
れの口上で、なんとか此の場を切り抜けるつもりらしかったが、相手はなかなか承知しなかった。女は
嵩
(
かさ
)
にかかって又云った。
半七捕物帳:07 奥女中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
遁
(
のが
)
れて嬉しいという多くの歌を残しているのと反対に、そんな
泣言
(
なきごと
)
はもう流行しなくなってから、かえって
怖
(
おそ
)
ろしく塵が我々を攻め出した。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
塾の庭にある桜は濃い淡い樹の影を地に落していた。谷づたいに高瀬は
独
(
ひと
)
り桑畠の間を帰りながら、都会から
遁
(
のが
)
れて来た自分の身を考えた。
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
何でも相手の
銃先
(
つゝさき
)
から
遁
(
のが
)
れたい一心で、
死物狂
(
しにものぐるひ
)
に踠いてゐるうち、古い柳の根を
発見
(
めつ
)
けて、それに
縋
(
すが
)
つてやつとこさで
這
(
は
)
ひ
上
(
あが
)
る事が出来た。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
土地の芸者も顔が揃うた。二三度、その中に、国手、お前んも因果は
遁
(
のが
)
れぬ、御存じですだ、滝の家の清葉とな、
別嬪
(
べっぴん
)
が居たでねえですか。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その
遁
(
のが
)
れられぬを観じて神妙にお縄をちょうだいしたらどうだッ! この
期
(
ご
)
におよんで無益の腕立ては、なんじの
罪科
(
ざいか
)
を重らすのみだぞッ!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ここまで身は
遁
(
のが
)
れ来にけれど、なかなか心安からで、
両人
(
ふたり
)
を
置去
(
おきざり
)
に
為
(
せ
)
し跡は
如何
(
いかに
)
、又我が
為
(
せ
)
んやうは
如何
(
いかに
)
など、彼は打惑へり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
女は恐ろしいものから
遁
(
のが
)
れたように、「ああ。」と言って溜息をついたが、息がはずんでいるために肩さきが震えて見えた。
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「当然あるべきことを非常に恐れて無暗に
遁
(
のが
)
れようとするのは
愚
(
ぐ
)
な話だと思う。生が人生の実務なら、死も亦人生の実務だ」
ガラマサどん
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
犯すに至れること恐るべき次第なり
然
(
され
)
ども
天
(
てん
)
誠
(
まこと
)
を
照
(
てら
)
し給ふにより大岡越前守殿の如き
賢
(
けん
)
奉行の
明斷
(
めいだん
)
に依て
遁
(
のが
)
れ難き死刑一等を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
その陶酔と恍惚から谷村も
遁
(
のが
)
れることはできない。谷村は抱擁に就いて考へる。抱擁の素子は音楽の助力を必要としない。
恋をしに行く(「女体」につゞく)
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それは老練な猟犬のもつ、誤りのない判断と、
嗅
(
か
)
ぎつけた獲物は決して
遁
(
のが
)
さない、冷静で
執拗
(
しつよう
)
なねばり、という感じを連想させるものであった。
夕靄の中
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
然らば豊内記に「洛中ニ
栖
(
すみ
)
カネテ西山辺ニ身ヲ
遁
(
のが
)
レ、菜摘水汲薪採リ心ナラズモ世ヲ厭ヒ、佛ヲ供養シテゾ光陰ヲ送ケル」
聞書抄:第二盲目物語
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
到底
(
とても
)
遁
(
のが
)
れぬ
不仕合
(
ふしあわせ
)
と一概に悟られしはあまり浮世を恨みすぎた云い分、道理には
合
(
あ
)
っても人情には
外
(
はず
)
れた言葉が
御前
(
おまえ
)
のその美しい
唇
(
くちびる
)
から出るも
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
忽
(
たちま
)
ち、
暗澹
(
あんたん
)
たる
海上
(
かいじやう
)
に、
不意
(
ふい
)
に
大叫喚
(
だいけうくわん
)
の
起
(
おこ
)
つたのは、
本船
(
ほんせん
)
を
遁
(
のが
)
れ
去
(
さ
)
つた
端艇
(
たんてい
)
の
餘
(
あま
)
りに
多人數
(
たにんずう
)
を
載
(
の
)
せたため一二
艘
(
そう
)
波
(
なみ
)
を
被
(
かぶ
)
つて
沈沒
(
ちんぼつ
)
したのであらう。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
もう蟹は
遁
(
のが
)
れることはできません。網を一打ち、バッサリとやられればそれでおしまいです。蟹はその時下を見ました。
椰子蟹
(新字新仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
離れず。君となり臣となること、全く私にあらず。生死禍福は、人情の私曲なるに
随
(
したが
)
はず。天命歴然として
遁
(
のが
)
るゝ処なし
四条畷の戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
そこでその過失の反理性的な
処
(
とこ
)
に、どうかすると一旦堕落した女の、自業自得の禍から
遁
(
のが
)
れ出る手掛かりもあるものだ。
クサンチス
(新字旧仮名)
/
アルベール・サマン
(著)
思うている幽霊が、三世も四世も前から、生きかわり死にかわり、いろいろの
容
(
さま
)
を変えてつきまとうているから、
遁
(
のが
)
れようとしても遁れられないが
円朝の牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
彼は天災地變に
苛
(
さいな
)
まれる人生の焦熱地獄に堪へられなくなつて、この假現の
濁世
(
ぢよくせ
)
穢土
(
ゑど
)
から
遁
(
のが
)
れようとしたのです。そして
解脱
(
げだつ
)
しようとしたのです。
猫又先生
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
かの淑女に從はんため我若うして世を
遁
(
のが
)
れ、身に彼の衣を
纏
(
まと
)
ひ、またわが誓ひをその派の道に結びたり 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
そうして、きのう私にむかって、病気
賜暇
(
しか
)
願いを送らなければならないと言った。そんなものは、まぼろしの仲間を
遁
(
のが
)
れるための願書ではないか。
世界怪談名作集:12 幻の人力車
(新字新仮名)
/
ラデャード・キプリング
(著)
勝四郎が妻なるものも、いづちへも
遁
(
のが
)
れんものをと思ひしかど、此の秋を待てと聞えし
夫
(
をつと
)
の
言
(
ことば
)
を頼みつつも、安からぬ心に日をかぞへて暮しける。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
その度ごとに偶然にも、馬車は急転して銃口から
遁
(
のが
)
れるのだった。遁れては隠れ、遁れては樹の陰に隠れるのだった。
熊の出る開墾地
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
つがひたる一矢は、はや先方の胸を刺したり、かかる事に注意深き庄太郎の、いかでかは昨日夏と聞きし名の、その封筒に記されたるを見
遁
(
のが
)
すべき。
心の鬼
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
遁
漢検準1級
部首:⾡
13画
“遁”を含む語句
遁出
見遁
遁亡
遁走曲
遁世
遁走
遁辞
火遁
夜遁
遁帰
八門遁甲
出家遁世
遁構
遁失
門遁甲
隠遁者
遁世者
遁口上
遁生菩提
隠遁所
...