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粘
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ねば
ふりがな文庫
“
粘
(
ねば
)” の例文
彼
(
かれ
)
が
薦
(
こも
)
つくこを
擔
(
かつ
)
いで
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た
時
(
とき
)
は
日向
(
ひなた
)
の
霜
(
しも
)
が
少
(
すこ
)
し
解
(
と
)
けて
粘
(
ねば
)
ついて
居
(
ゐ
)
た。お
品
(
しな
)
は
勘次
(
かんじ
)
が
一寸
(
ちよつと
)
の
間
(
ま
)
居
(
ゐ
)
なく
成
(
な
)
つたので
酷
(
ひど
)
く
寂
(
さび
)
しかつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
夫人の最後の夫ジョルジュには夫人はまだ未練があるようだ。そのせいかジョルジュの話をするときに夫人は一番新吉に
粘
(
ねば
)
りつく。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
粘
(
ねば
)
る土でも踏んでいるように、やわらかな若草の崖を、少しずつ、しかし——いつ
鷲
(
わし
)
のごとく飛ぶかも知れない姿勢をもちながら
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ニヤリニヤリと薄笑ひしながら、恐ろしく
粘
(
ねば
)
つた調子で、こんな齒切れの惡いことを言ふ人間を、平次は見たこともありません。
銭形平次捕物控:132 雛の別れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
満谿——片品川上流の
粘
(
ねば
)
沢、柳沢、中岐沢の一部——を埋むる闊葉樹の大森林は、見渡す限り赤と黄と其間のあらゆる色とに染められて
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
▼ もっと見る
庄造は頻りに溜息をついて、まだ何かしら
粘
(
ねば
)
つてみようとしてゐたが、その時おもてに足音がして、福子が風呂から帰つて来た。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私はいまでもひどく
粘
(
ねば
)
りづよいところがある。たとえば借金などする場合。そんなとき新聞やをしていたときのことがふと意識にのぼる。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
糸が……蜘蛛の巣のような釣り糸が、
粘
(
ねば
)
って、光って、
虹
(
にじ
)
の如くに飛んだ。
絡
(
から
)
んだのである。造酒の刀身に渦をまいて
纏
(
まつ
)
わりついたのだ。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その一回もまたしばらくすると
廃
(
や
)
めになった。そうして葛湯の分量が少しずつ増して来た。同時に口の中が
執拗
(
しゅうね
)
く
粘
(
ねば
)
り始めた。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
孔子の
粘
(
ねば
)
り強さもついに諦めねばならなくなった時、子路はほっとした。そうして、師に従って
欣
(
よろこ
)
んで魯の国を
立退
(
たちの
)
いた。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それにまた、ねばりねばりと
粘
(
ねば
)
りつく。水浴する男は、彼女に抱きつかれると、浜辺を指して逃げて来る。罎詰めの糊をくっつけて逃げて来る。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
それで古来木理の無いような、
粘
(
ねば
)
りの多い材、
白檀
(
びゃくだん
)
、
赤檀
(
しゃくだん
)
の類を用いて
彫刻
(
ちょうこく
)
するが、また特に
杉檜
(
すぎひのき
)
の類、
刀
(
とう
)
の進みの早いものを用いることもする。
鵞鳥
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼曰ふ、上なるマーレブランケの濠の中、
粘
(
ねば
)
き
脂
(
やに
)
煮ゆるところにミケーレ・ツァンケ未だ着かざるうち 一四二—一四四
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
恐ろしい
粘
(
ねば
)
り強さで、ぐんぐんのしかかつて来る力と彼は真剣に闘つた。が、しまひに、彼は馬鹿馬鹿しくなつた。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
納豆はそのまま混ぜてもよいが、普通に納豆を食べる場合と同じように、
醤油
(
しょうゆ
)
、
辛子
(
からし
)
、ねぎの
薬味
(
やくみ
)
切を加えて、充分
粘
(
ねば
)
るまでかき混ぜたものを入れるとよい。
夜寒に火を囲んで懐しい雑炊
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
柘榴口
(
ざくろぐち
)
から
流
(
なが
)
しへ
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
春重
(
はるしげ
)
の
様子
(
ようす
)
には、いつも
通
(
とお
)
りの、
妙
(
みょう
)
な
粘
(
ねば
)
りッ
気
(
け
)
が
絡
(
から
)
みついていて、
傘屋
(
かさや
)
の
金蔵
(
きんぞう
)
の
心持
(
こころもち
)
を、ぞッとする
程
(
ほど
)
暗
(
くら
)
くさせずにはおかなかった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
「貴方のその内は
的
(
あて
)
にならないから、その内/\つて最う二月になりますもの。」と
粘
(
ねば
)
つた調子である。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
内部
(
なか
)
から
掌
(
てのひら
)
ほどの青白い臓腑がダラリと垂れ下っているその表面に血にまみれたダイヤ、
紅玉
(
ルビー
)
、
青玉
(
サファイヤ
)
、
黄玉
(
トパーズ
)
の数々がキラキラと光りながら
粘
(
ねば
)
り付いておりました。
死後の恋
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
新しい材料を得て、焔は
飴
(
あめ
)
のように
粘
(
ねば
)
っこく燃え上った。何気なく手をポケットに入れた。何かがさがさした小さなものが手指に触れた。つかんで、取り出した。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
日本の画は
勿論
(
もちろん
)
支那の画と、親類同士の間がらである。しかしこの
粘
(
ねば
)
り強さは、古画や南画にも見当らない。日本のはもつと軽みがある。同時に又もつと優しみがある。
支那の画
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
吹き筆の軸も
煙管
(
きせる
)
の
羅宇
(
らお
)
もべたべた
粘
(
ねば
)
り障子の紙はたるんで
隙漏
(
ひまも
)
る風に
剥
(
はが
)
れはせぬかと思われた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
谷
(
たに
)
の
底
(
そこ
)
にも
落
(
お
)
ちないで、ふわりと
便
(
たより
)
のない
処
(
ところ
)
に、
土器色
(
かはらけいろ
)
して、
畷
(
なはて
)
も
畝
(
あぜ
)
も
茫
(
ばう
)
と
明
(
あかる
)
いのに、
粘
(
ねば
)
つた、
生暖
(
なまぬる
)
い
小糠雨
(
こぬかあめ
)
が、
月
(
つき
)
の
上
(
うへ
)
からともなく、
下
(
した
)
からともなく、しつとりと
来
(
き
)
て
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「口が
粘
(
ねば
)
って気持が悪いから
蜜柑
(
みかん
)
を食べたいがな。辰さんは
奢
(
おご
)
ってくれんかな」とねだった。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
ある年、文展の締切が近づきますのに、どうしたことか何としても構想がまとまらず、だんだんに
粘
(
ねば
)
ってきてしまいました。今、思えは明治四十二年、文展第三回の時でした。
画筆に生きる五十年:――皇太后陛下御下命画に二十一年間の精進をこめて上納――
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
メモの紙切れをくりながらその何行かをあわせようとすると、それがばらばらになって
粘
(
ねば
)
りがなくなりどうしてもくっ附かない、てんで書く気が動かないで
嘔気
(
はきけ
)
めいた厭気までがして来る。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
みな雨に打たれたためにひどく
黴
(
か
)
びていて、黴のために
粘
(
ねば
)
りついていた。草はそのまわりに茂り、その上にまで伸びていた。パラソルの絹は丈夫だったが、その糸は一緒にくっついていた。
マリー・ロジェエの怪事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
おまけに其の晩は蒸し暑かったので、かれの額や首筋には
粘
(
ねば
)
るような気味の悪い汗がにじみ出した。お蝶は長い紅い
総
(
ふさ
)
のついている枕のうえに、幾たびか重い頭の置きどこを取り替えてみた。
半七捕物帳:07 奥女中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
この島の大部分を覆うている唐竹は、屋根を葺くのには、藁よりもはるかに秀れていた。木の枝を、横にいくつも並べて壁にした。そして、近所から
粘
(
ねば
)
い土を見出して、その上から
塗抹
(
とまつ
)
した。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
八年! あなたは
粘
(
ねば
)
り強い方なんですね。そんな所にその半時もゐれば、どんな身體でも疲れてしまふと私は思つてたのだが。確かにあなたはまるで彼の世の人間のやうな顏をしてゐますよ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
その
粘
(
ねば
)
ねばした、泥のような、異様な怪物は、その死人のような白い眼でじっと僕を睨んでいるらしく、そのからだからは腐った海水のような悪臭を発し、濡れて
垢
(
あか
)
びかりのした髪は渦を巻いて
世界怪談名作集:13 上床
(新字新仮名)
/
フランシス・マリオン・クラウフォード
(著)
と、千代松は何處までも
粘
(
ねば
)
り強さうな顏に、太い皺の波を打たせた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
甘げなる線の
粘
(
ねば
)
りのうちもつれやはらかに
交
(
つが
)
へるかれら。
浅草哀歌
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
粘
(
ねば
)
り強く押して行って、落そうとしている。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
庄造は頻りに溜息をついて、まだ何かしら
粘
(
ねば
)
つてみようとしてゐたが、その時おもてに足音がして、福子が風呂から帰つて来た。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「だが? ……なんでござんす」お綱の手は汗に
粘
(
ねば
)
って、もがれても、離そうとはしなかった。弦之丞は悩ましい肉感に怖れた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
後でわかつたことですが、八五郎に無理を言つて、錢形平次を誘ひ出させたのは、この老主人の
粘
(
ねば
)
り強い根性と、物柔かな驅け引きだつたのです。
銭形平次捕物控:202 隠し念仏
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ボイルドした秋田産のシギ鱈は季末になって、かなり脂づき、フォークで一へぎ/\する身の肉の間にも何だかもち/\した
粘
(
ねば
)
りが出来ています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
唾液は水なり、ムチンの存在によつて
粘
(
ねば
)
きも、其実は弱アルカリ性の水にして、酵素のプチアリンを含めるのみ。
水
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
二人
(
ふたり
)
は
藁
(
わら
)
で
縛
(
くゝ
)
つた
大
(
おほ
)
きな
束
(
たば
)
を
解
(
と
)
いては
粘
(
ねば
)
つた
物
(
もの
)
でも
引
(
ひ
)
き
剥
(
はが
)
す
樣
(
やう
)
に
攫
(
つか
)
み
取
(
と
)
つて
熱心
(
ねつしん
)
に
忙
(
せは
)
しく
臼
(
うす
)
の
腹
(
はら
)
へ
叩
(
たゝ
)
きつけた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
たとへば冬の日ヴェネーツィア人の
船廠
(
アールセーナ
)
に、
健
(
すこや
)
かならぬ船を塗替へんとて、
粘
(
ねば
)
き
脂
(
やに
)
煮ゆるごとく 七—九
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
その頭を絞るように彼は、薄い
眉
(
まゆ
)
をグット引寄せながら、
爪先
(
つまさき
)
に
粘
(
ねば
)
り付いている赤い泥を
凝視
(
みつ
)
めた。
木魂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
片品川が大清水の
上手
(
かみて
)
で、
粘
(
ねば
)
沢と三平峠から来る沢とを分ち、三叉状をなしているその中央の本流を指して呼ぶ名であって、それが東北流又東流し、再び東北に転向するに至って
上州の古図と山名
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
思うまま春風に
曝
(
さら
)
して、
粘
(
ねば
)
り着いた黒髪の、
逆
(
さか
)
に飛ばぬを
恨
(
うら
)
むごとくに、
手巾
(
ハンケチ
)
を片手に握って、額とも云わず、顔とも云わず、
頸窩
(
ぼんのくぼ
)
の尽くるあたりまで、くちゃくちゃに
掻
(
か
)
き廻した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
言
(
い
)
ふ
追
(
お
)
ふ
聲
(
こゑ
)
も、
玄米
(
げんまい
)
の
粥
(
かゆ
)
に、
罐詰
(
くわんづめ
)
の
海苔
(
のり
)
だから、しつこしも、
粘
(
ねば
)
りも、
力
(
ちから
)
もない。
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
一方の狗熊を殺してその
生皮
(
なまかわ
)
を剥ぎ、すぐに自分の肌の上を包んだので、人の生き血と熊の生き血とが一つに
粘
(
ねば
)
り着いて、皮は再び剥がれることなく、自分はそのままの狗熊になってしまった。
中国怪奇小説集:16 子不語(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「口が御
粘
(
ねば
)
りになるんでしょう。——これで水をさし上げて下さい。」
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
粘
(
ねば
)
りついたり、もつれたり
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
そのため紅い唇や、蜂蜜のように
粘
(
ねば
)
る手や、
甘酢
(
あまず
)
い髪の毛のにおいやらが、すぐ頭から去って、彼は、常の彼の身に
回
(
かえ
)
っていた。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「嘘を言つちやいけない。腹掛の下に隱せば、矢尻の毒が腹掛へ附く筈だ。矢の根は
脂
(
やに
)
のやうにベトベト
粘
(
ねば
)
つて居るぜ」
銭形平次捕物控:315 毒矢
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
津村も私も、歯ぐきから
膓
(
はらわた
)
の底へ
沁
(
し
)
み
徹
(
とお
)
る
冷
(
つ
)
めたさを喜びつつ甘い
粘
(
ねば
)
っこい柹の実を
貪
(
むさぼ
)
るように二つまで食べた。私は自分の
口腔
(
こうこう
)
に吉野の秋を
一杯
(
いっぱい
)
に
頬張
(
ほおば
)
った。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
粘
常用漢字
中学
部首:⽶
11画
“粘”を含む語句
粘着
粘土
粘着力
粘々
粘付
粘稠
粘力
粘墨
粘着性
粘液
粘氣
粘膜
血粘
粘泥
粘液質
鼻粘膜
粘滑油膩
粘質
粘著
粘質硝子
...