“筧:かけひ” の例文
“筧:かけひ”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治12
泉鏡花12
夢野久作3
木暮理太郎2
柳田国男2
“筧:かけひ”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > スポーツ・体育 > 戸外レクリエーション5.9%
歴史 > 地理・地誌・紀行 > 日本5.8%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
かけひみづくるとて、嫁菜よめなくきひとみつゝ、やさしきひとこゝろかな
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ポトリ/\とバケツに落ちる栓のゆるんだ水道の水音に誘はれて、彼は郷里の家の裏山から引いたかけひの水を懷しく思ひ出した。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
足を洗えというのらしい。かけひの水がたらいに引いてある。摺り切れた草鞋わらじが十足もそこらに脱ぎちらしてあった。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百合 ほほ。(と打笑うちえみ)かけひの下に、ありのみひやしてござんす、上げましょう。(と夕顔の蔭に立廻る。)
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こゑあるはひとりかけひにして、いはきざみ、いしけづりて、つめたえだかげひかる。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その光の流れはこちらへも向うの横丁へも流れて行かず、かけひを流れる水がそのまま氷結してしまったように見えた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
将門は、馬を降りた。水が飲みたかったのである。家々の間を、水のといが通っている。そこのかけひの落ち口へ、顔をよせていた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところへ裏のかけひから手桶ておけに水をんで来たかみさんが、前垂まえだれで手をきながら、
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
枝振りのいい松に、頭を五分がりにした、丸々しいツツジや、梅などで囲んだ小池があって、かけひからの水がいきおい込んで落ちている。
不尽の高根 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
茶屋の裏へ廻って、権六は、かけひの水を竹筒へ汲んだ。——そして戻りかけたが、ふと、窓口から、薄暗い屋の内をのぞいて、足をとめた。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
温泉附近の路がひどくくずれている、宿の前でうがいをしたかけひの水などは、埋没してしまっている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
山中の水を羅馬の市に導くなる、許多あまたかけひの數をば、はじめこそ讀み見むとしつれ、幾程もあらぬに、みて思ひとゞまりつ。
後の山から引いてあるかけひの水が小さい瀑になって落ちている下で、素裸の子供が二人で水遊びをしている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
私はかけひの水で顔を洗い終ってからも昨夜のことを思うと、石に垂れた氷柱の根の太さが気持ち良かった。
で、竹のかけひ山笹やまざさの根に掛けて、ながれの落口のほかに、小さな滝を仕掛けてある。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雅人がじん住居すまいでもありそうな茅葺かやぶきの家、かけひの水がにわさきにせせらぐ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
竹椽ちくえん清らかに、かけひの水も音澄みて、いかさま由緒よしある獣の棲居すみかと覚し。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
二時間近く下ると左岸の山腹に道らしきものが見え、暫くして河を横断してかけひの懸るのをみた。
皇海山紀行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
かけひの水に苔したるとほり新しき手拭を吊したるなぞ、かゝる山中の風情とも覚えず。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
元康の士かけひ正則等が之に乗じて進み、門を閉ざすいとまを与えずに渡り合い、松平義忠の士、左右田正綱一番乗りをし、ついに火を放って焼くことが出来た。
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これはかけひ克彦博士が初めて發議せられたものであつたとおもふ。翁もさう言はれた。そして翁は多年機會あるごとにこの實地宣傳を試みられつゝあるのださうだ。
樹木とその葉:07 野蒜の花 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
小諸の停車場に架けたかけひからは水があふれて、それが太い氷の柱のように成る。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
かけひの音して、くさむらに、虫鳴く一ツ聞えしが、われは思わず身の毛よだちぬ。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
草川巡査は、裸体はだかのまま直ぐに裏口へ出て、冷たいかけひの水で顔を洗った。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おんなはちょうどかけひの水に、嫁菜の茎を手すさびに浸していた。浅葱あさぎしずくする花をたてに、破納屋やれなや上路のぼりみちを指して、
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それから鳴子なるこを繩の中程に掛けて、風で自然に鳴るようにしてある他に、片隅にはかけひで山水を引いて来て、それが自然にブリキの罐を叩くようにもしてある。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
山番小舎のトボトボと鳴るかけひの前で、勝気な眼を光らして米をいでいる妻の横顔や、自分の姿が枯木立の間から現われるのを待ちかねたように両手を差し上げて、
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
湯殿口のわきに、かけひの水がとうとうと溢れている。かささぎのように行儀わるく辺りへ水を跳ね散らしながら、そこでごしごしと顔を洗っている者が官兵衛であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それだからわざわざ川や池に出かけたり、またはかけひというものを架けて、遠くから水を引いて来たので、あまり離れたところには家を建てて住むことが出来ませんでした。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かけひの水をうけ入れた桶の中には、見事な山桜の枝が無造作に投げ込んである。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
早苗とる山田のかけひもりにけり。ひくめ縄に 露ぞこぼるゝ(新古今)
こんな奇麗な前庭を持っている、そのうえ堂々としたかけひの水溜りさえある立派な家のせがれが、何故また新聞の配達夫というようなひどい労働へはいって行ったのだろう。
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
平家づくりで、数奇すき亭構ちんがまえで、かけひの流れ、吹上げの清水、藤棚などを景色に、四つ五つ構えてあって、通いは庭下駄で、おも屋から、その方は、山の根に。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——それでほっとして、おおき階子段はしごだんの暗いのも、巌山いわやまながめるように珍らしく、手水鉢ちょうずばちかけひのかかった景色なぞ……
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寧子はいそいそと庫裡くりの水屋へかくれた。髪をなで、かけひの水をに溶いて、瞬間に薄化粧をほどこし、帯、襟もとも直してそこから藁草履わらぞうり穿いた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
関守氏は、やおら起き出でて、かけひの水で含嗽うがいを試みようとする時、米友はすり抜けて、早くも庭と森の中へ身を彷徨ほうこうさせて、ちょっとその行方がわかりません。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やつ姿すがたのいとうつくしきが、路傍みちばたかけひ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
米と塩とは貯えたり。かけひの水はいと清ければ、たとい木の実一個ひとつ獲ずもあれ、摩耶も予も餓うることなかるべく、甘きものも酢きものもかれはたえて欲しからずという。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこに、わずか二間ふたまの茶屋がある。小さい水屋が附いているのみで、青苔あおごけの匂うばかりふかい泉石に、銀杏いちょうの黄色な落葉が、かけひの下にたまっていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一本の古びたかけひがその奥の小暗いなかからおりて来ていた。
筧の話 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
きでないかあのものしづかなかけひおとを。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
湿しめりたるかけひのすそに……いまし魔睡ますゐす……
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かけひは雨がしばらく降らないと水がれてしまう。
筧の話 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
かけひかけとる谷水にうち浸しゆれば白露手にこぼれくる
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
冷たいかけひの水でシミジミと顔を洗ったのであった。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
つぐの日まだき起き出でつ。板屋根の上のしたたるばかりにうるおいたるは昨夜の雲のやどりにやあらん。よもすがら雨と聞きしもかけひの音、谷川の響なりしものをとはや山深き心地ぞすなる。
旅の旅の旅 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
それにしても死ぬまで東京にいるとは! おそらく死に際の幻覚には目にたてて見る塵もない自分の家の前庭や、したたり集って来る苔の水が水晶のように美しいかけひの水溜りが彼を悲しませたであろう。
温泉 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
かけひの水音を枕に聞く山家やまがの住居。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
で——つい苦笑が顔にのぼりかける。彼はそれに困って、浴室の隅にあるかけひの下にゆき、髪の元結もとゆいを解いて、一塊ひとかけの粘土を毛の根にこすり、久しぶりで、ざぶざぶと髪を洗いほぐした。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
百合 裏のがけからきますのを、かけひにうけて落します……細いながれでございますが、石に当って、りんりんとがしますので、この谷を、あの琴弾谷ことひきだにと申します。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かけひの水音が淙々そうそうと耳を洗う。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
地唄の三味線は、耳に消えて、御詠歌の声をさながらに聞きますと——はてな、なぜか今朝、起きぬけに、祇園の茶屋の橋がかりでかけひの音のした時と、お絹の姿も同じようで、一日を夢に見たように思いましたが——
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
山田のかけひの水とかや。——……
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わずかに庭前のかけひの傍にある花梨かりんつぼみが一つほころびかけているのを、いかにも尼寺のものらしく眺めなどしながら、山の清水の美味なのに舌鼓を打ちつつコップに何杯もお代りを所望したりして
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
今朝、寺のかけひの水で、起抜おきぬけに顔を洗うときから、善鬼のおもてには、夜来の感情がすこしもぬぐわれていないのみか、むしろ、そそ毛立っているような凄気せいきをすら——典膳は、ひそかに見ていた。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何か、ほかの用事を命じるつもりでいたにちがいないが、それは忘れ顔に、かわやから出てくると、かけひの音のする手洗囲てあらいがこいで、ガボガボうがいをし、ついでに、辺りへ水をねかしながら顔を洗った。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
拝啓昨今御病床六尺の記二、三寸にすぎすこぶる不穏に存候間ぞんじそうろうあいだ御見舞申上候達磨だるま儀も盆頃より引籠り縄鉢巻なわはちまきにてかけひの滝に荒行中御無音致候ごぶいんいたしそうろう
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
かけひの水は、物語る
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
さもあらばあれ、夕顏ゆふがほ薄化粧うすげしやうかけひみづたまふくむで、露臺ろだいほしに、ゆきおもてうつす、姿すがたまたこゝにあり、姿すがたまたこゝにあり。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
庭へ移って、かけひの水で手を洗い、本丸の一室へはいったかと思うと、忽ち、衣服をあらため、小姓、二、三名をうしろに、書院のほうへ濶歩かっぽしてゆく彼の小がらな姿が、大廊下いっぱいにしている秋の朝陽を横ぎっていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いまも仮の便殿に入ると、かけひの注いでいる大甕おおがめのかたわらへ寄って、自身小桶をつかんでりのたらいにそれを汲み入れ、まるで鶺鴒せきれいのようにあたりを水だらけにしながら、せっかちに顔を洗いぬいていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御馳走ごちそうは……しかも、ああ、何とか云う、ちょっと屠蘇とその香のする青い色の酒に添えて——その時は、かけひの水にほこりも流して、袖の長い、ふりの開いた、柔かな浴衣に着換えなどして、舌鼓を打ちましたよ。」
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と渡す——かけひがそこにあるのであったら、手数てかずは掛けないでも洗ったものを、と思いながら思ったように口へは出ないで、だんまりで、恐入ったんですが、やわらかく絹がからんで、水色に足の透いた処は、玉を踏んで洗うようで。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
早めに起きた右の栄螺が、そっと蓋をあけて、恐る恐る朝日に映る寝乱れた浮世絵をのぞきながら、二階を下りて、廊下を用たしに行く途中、一段高く、下へ水は流れませんが、植込の冷いうちに、さらさらとかけひの音がして、橋づくりに渡りをけた処があった。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これより急調に眼を過ぐるものを言ひ、「三ツ四ツおちし村雨は、つゝみかねたるが涙かな」にて結び、更に「玉鉾たまぼこの道は小暗し、たどりゆく繩手はほそし、松風のかけひの音も、身にしみていとうらかなし、」と巧麗婉艶の筆を以て、行路の詩人の沈痛なる同情を醒起す。
「光仙林」ていうから林の名なんだ、だが門があって、表札が打ってあるからには、人の住むべき構えがなければならないということを、強く予想しながら、弁信にまかせて従って行くと、果して、一口のかけひを引いた遣水やりみずがあって、その傍に草にうずもれた低い家があったのです。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その半腹にかかりある巌角いわかどこけのなめらかなるに、一ちょうはだかろうに灯ともしたる灯影ほかげすずしく、かけひの水むくむくときて玉ちるあたりにたらいを据えて、うつくしく髪結うたるひとの、身に一糸もかけで、むこうざまにひたりていたり。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
硝子戸ガラスどの店頭の一方に篠竹の小藪こやぶをあしらひ、こけ石燈籠いしどうろうのもとにはつくばひがあつて、かけひからは涼しげな垂水たるみが落ちてゐる……硝子戸越しに見える店主らしいのが照明燈の下で静かに黙々と印章を彫つてゐる……それが私なのである。
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
かけひの水の添水は、二十一秒、一つカーンだ、と風呂番が言いますが、私のやすづもりで十九秒。……旦那、おらが時計は、日に二回、東京放送局の時報に合わせるから、一りんも間違わねえぞ、と大分大形おおがたなのを出して威張る。それを、どうこうと、申すわけではありませんけれども。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
内端うちは女心をんなごゝろくにもかれずこほつてしまつたのきしづくは、日光につくわう宿やどしたまゝにちひさな氷柱つらゝとなつて、あたゝかな言葉ことばさへかけられたらいまにもこぼれちさうに、かけひなか凝視みつめてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「それから明朝あくるあさになって眼をさましてからが失恋でさあ」「どうかなさったんですか」「いえ別にどうもしやしませんがね。朝起きて巻煙草まきたばこをふかしながら裏の窓から見ていると、向うのかけひそばで、薬缶頭やかんあたまが顔を洗っているんでさあ」「爺さんか婆さんか」と主人が聞く。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、なお残る不審は、どうしてこの夜中に、わざわざ谷川まで水を汲みに行かなければならなくなったのだろうという事、どなたかが勉強のために夜ふかしをして、お茶が少し上りたくなって、茶釜を見たが水が無い、かめを見てもあいにく——外のかけひは氷っている、やむを得ず、谷川まで御苦労をしたと思えば思えないこともない。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)