)” の例文
「何が馬鹿だい、そいつは乞食こじきの金じゃねエんだ、猫ババをめこむと唯じゃすまねエぞ、サア悪いことはいわない、素直に返しな」
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
じゃ下手人げしゅにんではなかったのですね。でも、同類でないとはめられませんよ。彼等は実に符節を合わすように似ているんですからね。
彼の意地はむしろ彼女の思いがけない弱気を示した態度につけ込んで、出来るだけの強味と素気なさを見せていようと度胸をめた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
庭の掃除はこれまで朝一度にまっていたのに、こないだの事があってからは、梅が朝晩に掃除をするので、これも手が出しにくい。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
お葉は覚悟をめた。𤢖わろ見たような奴等の玩弄おもちゃになる位ならば、いっそ死んだ方がましである。彼女かれは足の向く方へと遮二無二しゃにむにと進んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おい、男がものを言掛けるには、もしそれが肯入れなかったらどうする、と覚悟をめてかかるのが法だ。……恥を知れ、恥を知れ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そりゃあそうよ、初めに条件をめて置くのよ。———どう? 承知した? そんなにまでしてあたしを奥さんに持つのはイヤ?」
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
どれを問題にすると云ふことをめておいて皆でいろんな方面から研究してこの次のか次の次のかで発表することにしたらと思ひます。
従来わめて親切につ妥当な批評をして来た、甲賀三郎氏がこれいて、批評しなかったということを、私には鳥渡受け取れません。
印象に残った新作家 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それで私は夏の間あまり日照りが続いた為に、葉がいたんで色が冴えないのであろうと独りでめて、自ら慰めていたのであった。
尾瀬雑談 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
私は木曾に一晩宿とまったとき、夜ふけて一度この鳥のこえを聴いたことがあるので、その時にはもう仏法僧鳥とめてしまっていた。
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
元来呑気のんきな連中の事とて、発車時間表もよくは調べず、誰言うとなく十時にめておったのだ、とにかく約二時間待たねばならぬ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
それをまり悪そうにもしないで、彼の聞くことを穏やかにはきはきと受け答えする。——信子はそんな好もしいところを持っていた。
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
いやいや、はじめがあればおわりのあるものだ。まれたものはかならぬにまったものだ。これは人間にんげんさだまったみちでしかたがない。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
咄嗟とっさに腹をめた私は、赤いレッテルの生長液の入った壜をとりあげて栓を抜くと、グッといきに生長液をんだのであった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
すると友人は「カーライルが胃弱だって、胃弱の病人が必ずカーライルにはなれないさ」とめ付けたので主人は黙然もくねんとしていた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
などと殊勝な覚悟をめた手前もあり、しょんぼりした気持で、その土産はひとまずベッドの引出しにしまい込んで置く事にした。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
喇叭ラッパめると、すぐそのまま、大事そうに仕舞い込んでしまった、別に飲みたくはないが、むらむらっと疳癪が込み上げて来た。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
N老人が最年長者だ、まった極まったで、これは一議に及ばず可決、それから誰いうとなくロッペン団なるものが出来あがった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
近頃は社員中にも食道楽がさかんになって食物問題を注意しますから順番をめて一人ずつその日の御馳走役を引受けるものが出来ました。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし長く止まって居る事が出来ぬというお話でござれば長く引留ひきとめは致さぬけれども、とにかく私の一了簡りょうけんめる訳にいかないから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「そりゃあお園さんかて惚れてはりましたがな。商売を止めたらお園さん自分でも三野村さんの奥さんになることにめておったのどす」
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
また事実湿地でもあるから何処どこかに引移りたいと思い、飯倉いいくらの方に相当の売家うりや捜出さがしだしてほぼ相談をめようとするときに、塾の人の申すに
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その地割じわりがその筋でやかましく、いろいろ干渉されますので、土地の世話役はうまめ合いを附けるのが骨が折れたものです。
年越の晩には、まって来ますが、その外の晩にも、冬になるとちょいちょい来て一しょにトッジイを飲んで話して行きます。
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
しきり世間を騒がせた結婚沙汰がめられて、愈々いよ/\名妓八千代が菅家すがけ輿入こしいれのその当日、花婿の楯彦たてひこ氏は恥かしさうに一寸鏡を見ると
それが面白いので、毎日まって遣りますと、時刻が来ると親雀の方で、軒先にいて私を待つようになりました。それが幾日も続きました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
と云って、この容子では所詮しょせん自分で腹を切るだけの勇気はないにまっている。いっそ助けてやろうかとも思うのであったが
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが睡眠中すゐみんちう身體からだきやうで一變調へんてうきたしたのだかどうだかわからないにもかゝはらず、かれたゞ病氣びやうきゆゑだとめてしまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
秀夫はそのじょちゅうにビールの酌をしてもらいながら、琵琶びわいていたきれいな婢のことを聞こうと思ったが、それはまりがわるくて聞けなかった。
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
覚悟むればなかなかに、ちっとも騒がぬ狐が本性。天晴あっぱれなりとたたへつつ、黄金丸は牙をらし、やがて咽喉をぞ噬み切りける。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
何故だか独りでめて掛って、惨澹たる苦心の末、雪江せっこう一代の智慧を絞り尽して、其翌日の昼過ぎ本郷の一友人を尋ねて、うそ八百をならべ立て
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
感歓かんくわんまりて涙にむせばれしもあるべし、人を押分おしわくるやうにしてからく車を向島むかふじままでやりしが、長命寺ちやうめいじより四五けん此方こなたにてすゝむひくもならず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
いろいろ他にも相談したすえに、結局市の聾唖ろうあ学校へ行って、聴音器などのことをよく聞きただして来ることにまった。
私は隅の方の席から、自分で「我が師」とめている人を「ここにあなたの貧しい弟子が一人います。」という気持をめて見つめていました。
聖アンデルセン (新字新仮名) / 小山清(著)
此家こゝへ來れば酒を飮むものとめてゐるらしい道臣は、直ぐ盃を取り上げたが、かん微温ぬるさうなので、長火鉢の鐵瓶の中へ自分に徳利をけた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
オイ軽蔑さげすむめえぜ、馬鹿なものを買ったのもせんじつめりゃあ、相場をするのとちげえはねえのだ、当らねえにはまらねえわサ。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
遠方ゑんほう左遷させんことまり今日けふ御風聽ごふいてうながらの御告別いとまごひなりとわけもなくいへばおたみあきれて、御串談ごじようだんをおつしやりますな
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼奴やつつまみ塩か何かで、グイグイ引っかけてかア。うちは新店だから、帳面のほか貸しは一切しねえというめなんだ。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうしたなかで関の在の小林という村まで入ってきたとき、今度は団丸がドロンをめた、しかも下座のお芳を連れて。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「貴方、何時までもそんな事を言つてゐらしつてはきりがございませんから、好い加減にめやうでは御坐いませんか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
……それを精しく聞いて知っていたから、三之丞が仔細しさいの申訳をしたら滝川を呼び出して叱ろうと思った。それでわざと烈しくめつけたのである。
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一、送り荷の運賃、運上うんじょうは一駄一分割いちぶわりと御定めもあることなれば、その余を駄賃として残らず牛方どもへ下さるよう、今後御取りめありたきこと。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おさよの考えでは、こうして臨時にいただいたお鳥目ちょうもくをためたら、半分にはめのお給金よりもこのほうが多かろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「今泣いた子が笑った……」私はこうして会費も持たずに引張られてきた自分をまり悪く思いながら、女中に導かれて土井の後から二階へあがった。
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
日本にほんでも徳川柳營とくがはりうえいにおいて、いつのころからか『地震ぢしん』としやうして、はめて頑丈ぐわんぜうな一しつをつくり、地震ぢしんさいげこむことをかんがへ、安政大震あんせいだいしんのち
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
善平は初めて心づきたるごとく、なに帰る? わしも帰るさ。一時も早く東京へ帰って、何彼なにかの手はずをめねばならぬ。光代、明日ははやくとうぞ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
それでは先に靄の中へ隠れたのが藤さんのだ。そしてもう山を曲って、今は地方じがたの岬を望んで走っているのである。それにめねば収まりがつかない。
千鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
しかし僕は谷崎氏も引用したやうに「純粋であるか否かの一点に依つて芸術家の価値はまる」と言つたのである。
男は考えをめようと思って見たが、どうも輪廓りんかくがぼやけて来て、思想がまとまらない。かくこんな事を考えた。ここに大病になった人間が寝ている。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)