日月じつげつ)” の例文
天地と云い山川さんせんと云い日月じつげつと云い星辰せいしんと云うも皆自己の異名いみょうに過ぎぬ。自己をいて他に研究すべき事項は誰人たれびとにも見出みいだし得ぬ訳だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の日月じつげつはまッ暗な虚空こくうと変り、グラと奈落ならくの口もとでかかとを踏まえるような思いだった。季房も背中合わせに大手をひろげ
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神社じんじゃ境内けいだいに、せものや、ものみせましたなかにまじって、いいかげんにとしとったおとこが、日月じつげつボールをっていたというのであります。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
その学者は決して懶惰らんだ無為むい日月じつげつを消する者に非ず、生来の習慣、あたかも自身の熱心に刺衝ししょうせられて、勉強せざるをえず。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
天地渾沌てんちこんとんとして日月じつげついまだ成らざりし先高天原たかまがはらに出現ましませしにりて、天上天下万物のつかさと仰ぎ、もろもろの足らざるを補ひ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かの長生殿裡ちやうせいでんり日月じつげつのおそきところ、ともに𢌞風くわいふうきよくしやうするにあたりてや、庭前ていぜんさつかぜおこり、はなひら/\とひるがへること、あたか霏々ひゝとしてゆきるがごとくなりしとぞ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
日月じつげつは地におち、須彌山すみせんはくづるとも、かの女人によにんほとけらせたまはん事疑なし。あらたのもしや、たのもしや
されば櫻木大佐さくらぎたいさふたゝ日本につぽんかへつたものとすれば、その勳功くんこう日月じつげつよりもあきらかにかゞやきて、如何いかわたくしたびからたびへと經廻へめぐつてるにしてもその風聞ふうぶんみゝたつせぬことはあるまい
人に生死しょうじあることは天に昼夜あるがごとし。夜は暗しとて日月じつげつ消え失せるにあらず、云云
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
爾来じらい、七八年の日月じつげつは河のやうに流れ去つた。僕はもう何時いつにかひたひ禿上はげあがるのを嘆じてゐる。久米も、今ではあの時のやうに駆け出す勇気などはないに違ひない。(大正十四年)
微笑 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
新聞の届きしとて人の見せ給ふを見ればいづれも既に巴里パリイの宿にて読みしものにさふらへば、今更の如く水上すゐじやう日月じつげつなしと覚束なさを歎かれさふらひき。今宵こよい出帆する予定の変りて明日あす未明に碇を抜くよしさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
面部から咽喉にかけての所は、咽輪のどわ黒漆くろぬりの猛悪な相をした面当めんぼうで隠されてあった。そして、背には、軍配日月じつげつの中央に南無日輪摩利支天なむにちりんまりしてんしたためた母衣ほろを負い、その脇に竜虎の旗差物はたさしものが挾んであった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そののち日月じつげつしょくす幾秋ぞ
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
その日ゆ永き日月じつげつ
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
武家の大逆もさることながら、ここしばしは、日月じつげつくろうなり、至尊しそんたりとも、あめしたにお身を隠す所すらない乱れを地上にみるでしょう。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるこうちゃんは、学校がっこうからかえると、日月じつげつボールをってそとました。そして、自動車屋じどうしゃやまえへきました。ちょうど、せいさんはいました。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
椽側えんがわから拝見すると、向うは茂った森で、ここに往む先生は野中の一軒家に、無名の猫を友にして日月じつげつを送る江湖こうこ処士しょしであるかのごとき感がある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なおすすみて、天文地質の論を聞けば、大空たいくう茫々ぼうぼう日月じつげつ星辰の運転に定則あるを知るべし。地皮の層々、幾千万年の天工に成りて、その物質の位置に順序のみだれざるを知るべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
……もの案じに声も曇るよ、と思うと、その人は、たけだちよく、高尚に、すらりと立った。——この時、日月じつげつを外にして、その丘に、気高く立ったのは、その人ただ一人であった。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此藥このくすりをのませ給はば、疑なかるべきなりやみなれども、りぬればあきらかなり。濁水だくすゐにもつきりぬればすめり。あきらかなること日月じつげつにすぎんや。きよこと蓮華れんげにまさるべきや。法華經は日月じつげつ蓮華れんげなり。
まつた水泡すいほうしたとおもはれたので、いまは、その愛兒あいじをばくにさゝぐること出來できかはりに、せめては一艘いつそう軍艦ぐんかん獻納けんなうして、くにつく日頃ひごろこゝろざしげんものと、その財産ざいさん一半いつぱんき、三年さんねん日月じつげつ
されば宮と富山とのいきほひはあたかも日月じつげつ並懸ならべかけたるやうなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そう尊く思うが故に、わしはの人々のた事を、日月じつげつのように、永劫とわに新しく、永劫に真美の光を失わせとうない気がした。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そのおとこは、子供こどもをだます、わるおとこだったが、そのときっていたのは、金光きんびかりでなく、あか日月じつげつボールだった。」と、せいさんはいいました。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
なんでも出来ると思う、精神一到せいしんいっとう何事なにごとか不成ならざらんというような事を、事実と思っている。意気天をく。怒髪どはつ天をつく。へいとして日月じつげつ云々うんぬんという如き、こういうことばを古人はさかんに用いた。
教育と文芸 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
貧乏のためにあなどりをこうむることとてはなき世の風俗なりしがゆえに、学問には勉強すれども、生計の一点においてはただ飄然ひょうぜんとして日月じつげつしょうする中に、政府は外国と条約を結び
何千年何万年という悠久な日月じつげつの流れの中に人間一生の七十年や八十年は、まるで一瞬でしかない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どこにどうしていても差支さしつかえはない。ただ楽である。いな楽そのものすらも感じ得ない。日月じつげつを切り落し、天地を粉韲ふんせいして不可思議の太平に入る。吾輩は死ぬ。死んでこの太平を得る。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ああ、やはりそうしたお心でしたか。少年日月じつげつ早し。——鬱勃うつぼつたるお嘆きはけだし当然です」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
明治四十年の日月じつげつは、明治開化の初期である。さらにえてこれを説明すれば今日の吾人ごじんは過去をたぬ開化のうちに生息している。したがって吾人は過去を伝うべきために生れたのではない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
留守るすの都で、ピイヒャラドンドンの今宮祭は、やや悠長ゆうちょうすぎるようだが、日本はもともとまつりの国だ。かりそめの戦雲せんうん日月じつげつをおおうても、かみのまつりはえないがいい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
飛毛ふんぷんとって、そこはさながら、日月じつげつあらそって万星ばんせいうずを巻くありさまである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これだけの言葉をはくうちに、秀吉ひでよしは、肌着はだぎ小手こて脛当すねあてをピチンとけて、皆朱碁石かいしゅごいしおどしのよろいをザクリと着こみ、唐織銀文地からおりぎんもんじ日月じつげつを織りうかした具足羽織ぐそくばおりまで着てしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこれの戦場にある期間を約三月と定め、百日交代の制を立てた。——要するに百日ごとに、二軍日月じつげつのごとく戦場に入れ代って絶えず清新な士気を保って魏の大軍を砕かんとしたものである。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日月じつげつの過ぎるは早く、人生には限りがある。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日月じつげつ旗幟きし
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)