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摺
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ず
ふりがな文庫
“
摺
(
ず
)” の例文
それは、
牽
(
ひ
)
かれているというより、
曳
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
られている形だった。青は、二歩歩いては立ち
停
(
ど
)
まり、三歩歩いては立ち停まるのだった。
狂馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
最後の死のゴールへ行くまではどんな豪傑でも弱虫でもみんな同列にならばして
嫌応
(
いやおう
)
なしに引き
摺
(
ず
)
ってゆく——ということであった。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
呀
(
やあ
)
?
衣
(
きぬ
)
も
扱帶
(
しごき
)
も
上
(
うへ
)
へ
摺
(
ず
)
つて、するりと
白
(
しろ
)
い
顏
(
かほ
)
が
襟
(
えり
)
に
埋
(
うま
)
つた、
紫
(
むらさき
)
と
萌黄
(
もえぎ
)
の、
緋
(
ひ
)
を
流
(
なが
)
るゝやうに
宙
(
ちう
)
に
掛
(
か
)
けて、
紳士
(
しんし
)
は
大跨
(
おほまた
)
にづかり/\。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
壁や天井裏はすべて新聞紙を張りまはしてあり、大きな大黒を書いた去年の柱ごよみと、石版
摺
(
ず
)
りの美人繪とが壁に向ひ合つてゐる。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
何だかまた現実世界に
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
り込まれるような気がして、少しく失望した。長蔵さんは自分が黙って橋の
向
(
むこう
)
を
覗
(
のぞ
)
き込んでるのを見て
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
四十五六の用人
摺
(
ず
)
れのした人柄ですが、平次に言はせると、
斯
(
こ
)
んなのが案外恐ろしく
頑固
(
ぐわんこ
)
な主人思ひだつたりすることがあります。
銭形平次捕物控:172 神隠し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
若いし——
縹緻
(
きりょう
)
は優れているし——それに世間
摺
(
ず
)
れていないので、
零落
(
おちぶ
)
れてもまだ多分に、五百石取の若奥様だった香いが
仄
(
ほの
)
かである。
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なんにもしないよ」来太は男をずるずると藪の中へ引き
摺
(
ず
)
り込んだ、「……ちょっとききたいことがあるんだ、静かにしたまえ」
花咲かぬリラ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
迅
(
はや
)
きようにても女の足の
後
(
おく
)
れがちにて、途中は左右の
腰縄
(
こしなわ
)
に引き
摺
(
ず
)
られつつ、
辛
(
かろ
)
うじて
波止場
(
はとば
)
に到り、それより船に移し入れらる。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
万籟
(
ばんらい
)
闃
(
げき
)
として声を
呑
(
の
)
む、無人の地帯にただ一人、姉の死体を湖の中へ引き
摺
(
ず
)
り込むスパセニアの姿こそ、思うだに
凄愴
(
せいそう
)
極まりない。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
うしろに何か重い物を引き
摺
(
ず
)
ったような歩き方で、居住区の中に消えて行った彼のうしろ姿が、奇妙に私の眼に
沁
(
し
)
みついて離れなかった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「ござんせん」がイヤに「ござんせん」
摺
(
ず
)
れがして甘ったるい。
寄席
(
よせ
)
芸人か、
幇間
(
たいこもち
)
か、長唄
鼓
(
つづみ
)
の
望月
(
もちづき
)
一派か……といった
塩梅
(
あんばい
)
だ。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
こう梶は云うと、子供は黙ったまま、
冠
(
かぶ
)
っていた帽子をずるずる鼻の下へ引き
摺
(
ず
)
り降ろして顔から取りのけようとしなかった。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
商売人あがりの小夜子には求められない魅力を惜しまないわけに行かなかった。
嫌悪
(
けんお
)
と愛執との交錯した、悲痛な思いに引き
摺
(
ず
)
られていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
琥珀
(
こはく
)
に
刺繍
(
ぬひ
)
をした白い
蝙蝠傘
(
パラソル
)
を、パツと
蓮
(
はす
)
の花を開くやうに
翳
(
かざ
)
して、
動
(
やゝ
)
もすれば
後
(
おく
)
れやうとする足をお光はせか/\と
内輪
(
うちわ
)
に引き
摺
(
ず
)
つて行つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
水に激する小波烟にも、ハッと胸を躍らすのであったが、まもなく闇の彼方に、鈍い、引き
摺
(
ず
)
るような音響がおこった。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
寧
(
むし
)
ろあべこべにずるずる
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
られるようになり、これではいけないと気が付いた時には、既に自分でもどうする事も出来なくなっていたのでした。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ただしこのアラ
摺
(
ず
)
り方法の発明は新しいことで、近き百年以内までは、貯蔵は多くの地方では
籾
(
もみ
)
を囲い、
糠
(
ぬか
)
を去る仕事は食事の準備に過ぎなかった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
これは余りにも大胆だと思っても、花桐は引きずられるままに引き
摺
(
ず
)
られて行くより外に、つくしようもなかった。
花桐
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
女の重荷を、殊にみのるの樣な我が儘の多い女の重荷を引
摺
(
ず
)
つてゐては、自分の身體がだん/\に人世の
泥沼
(
ぬま
)
の中に沈み込んで行くばかりだと思つた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
意地悪く、
嫉
(
ねた
)
み深く、一
旦
(
たん
)
我物にした女だからというので、無理に引き
摺
(
ず
)
って連れて行く人の姿が見えたのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
そこで一、二町は素直に行きましたがその羊が逃げようとして非常な力を出して私を引き
摺
(
ず
)
り廻すです。大変な力のものでどうしても向うへ進まない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
いわんや人事不省の社長を第二の人が
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
ったとか、または強制的に社長を歩かしめて自殺せしめたとかいうことは決して考えられないのであります。
五階の窓:06 合作の六(終局)
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
新任された開拓監事兼陸軍中佐の堀盛は、ゆるやかなきぬ
摺
(
ず
)
れの音をひびかせて
笏
(
しゃく
)
を、ふりまわしながらやって来た。衣冠をつけた正式の礼装であった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
善ニョムさんも、ブルブルにふるえているほど
怒
(
いか
)
っていた。いきなり、娘の服の
襟
(
えり
)
を掴むとズルズル引き
摺
(
ず
)
って、畑のくろのところへ
投
(
ほう
)
り出してしまった。
麦の芽
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
お杉も辰蔵の店へ引き
摺
(
ず
)
り込まれた。黐竿で人間をさしたのを初めて見た老人は、眼を丸くして眺めていた。
半七捕物帳:15 鷹のゆくえ
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は、かなわぬまでも、ここでX大使を追いつめて、せめて足でも捕えて、
曳
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
りおろしたい考えだった。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「どうだ、貴様——もうそこいらで、その匕首をおろしたら——と申しても、拙者ももう貴様の首根ッこを捉えて、番所へ
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
って行くような気持もなくなったよ」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
すると、行き
摺
(
ず
)
る
行人
(
こうじん
)
の誰彼は、好奇な色を露骨な表情で、テワスの顔を
覗
(
のぞ
)
きこむのである。それからまるで見くらべでもするもののように、改めて近藤の顔に視線を移す。
霧の蕃社
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
そうして彼は全く夢遊病者のそれのように、押入を開けて、四個の行李を引き
摺
(
ず
)
り出した。
あめんちあ
(新字新仮名)
/
富ノ沢麟太郎
(著)
此の
婆
(
ばゞあ
)
は元は深川の泥水育ちのあば
摺
(
ず
)
れもので、頭の
真中
(
まんなか
)
が河童の皿のように
禿
(
は
)
げて、附け
髷
(
まげ
)
をして居ますから、お辞儀をすると時々髷が落ちまする、
頑丈
(
がんじょう
)
な婆さんですから
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
品も新らしいように奇麗で、みんな初版
摺
(
ず
)
りだったから、表紙絵の色
刷
(
ず
)
りも美事だった。
旧聞日本橋:18 神田附木店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
「一歩前へツ!」休職中尉の体操兼舎監の先生が
行
(
い
)
き成り私を列の前に
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
り出した。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
太郎は冷汗を流しているとお婆さんは太郎の
頬辺
(
ほっぺた
)
をつねったり、太郎の
襟元
(
えりもと
)
を捕えて引き
摺
(
ず
)
るのであります。だから、太郎は勇が泣いて帰ればすぐ逃げて姿を隠すのが常であります。
百合の花
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
懐手
(
ふところで
)
をして肩を揺すッて、
昨日
(
きのう
)
あたりの島田
髷
(
まげ
)
をがくりがくりとうなずかせ、
今月
(
この
)
一
日
(
にち
)
に
更衣
(
うつりかえ
)
をしたばかりの
裲襠
(
しかけ
)
の
裾
(
すそ
)
に廊下を
拭
(
ぬぐ
)
わせ、
大跨
(
おおまた
)
にしかも急いで上草履を引き
摺
(
ず
)
ッている。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
危
(
あぶ
)
ないと車掌が絶叫したのも
遅
(
おそ
)
し早し、上りの電車が運悪く地を
撼
(
うご
)
かしてやってきたので、たちまちその黒い大きい一塊物は、あなやという間に、三、四間ずるずると
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
られて
少女病
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
その頃私は
廓
(
くるわ
)
を歩くと、いつも「応援団長」とか「
朴歯
(
ほおば
)
の旦那」とか呼ばれた。私は
久留米絣
(
くるめがすり
)
の
袷
(
あわせ
)
を着て、
袴
(
はかま
)
をはいて、そうして朴歯の下駄をガラガラ
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
って歩いていたのである。
朴歯の下駄
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
まるで
酒場
(
さかば
)
の
醉
(
よ
)
ひどれのやうな
兵士
(
へいし
)
の
集團
(
しふだん
)
は
濕
(
しめ
)
つた
路上
(
ろじやう
)
に
重
(
おも
)
い
靴
(
くつ
)
を
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
りながら、
革具
(
かはぐ
)
をぎゆつぎゆつ
軋
(
きし
)
らせながら
劍鞘
(
けんざや
)
を
互
(
たがひ
)
にかち
合
(
あは
)
せながら、
折折
(
をりをり
)
寢言
(
ねごと
)
のやうな
唸
(
うな
)
り
聲
(
ごゑ
)
を
立
(
た
)
てながら
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
彼は何物かに自分が
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
られて行くのをもうどうにもしようがないような心もちで、遂に大森の家に向って、はじめて自分の帰ろうとしているのが母の
許
(
もと
)
だと云う事を妙に意識しながら
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
如何にのんきに悠々といつまでも
這
(
は
)
ひ
摺
(
ず
)
り廻り、家中で一番弱い人間の頭の上へと落ちて来たのではあるまいか? 衛生知識の乏しい上に、仏教思想の影響で、早くも世の無常を観ずる習慣から
念仏の家
(新字旧仮名)
/
小寺菊子
(著)
「さあ! 殿のお声掛りじゃ。天下晴れて娘を引き
摺
(
ず
)
って来い。」
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そこへ彼の伜が来て、
曳
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
るようにして彼を
拉
(
つ
)
れ帰ったのだったが、彼はその晩、ひどく腹を病み、とうとうその明け方に死んだ。
或る部落の五つの話
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
よそ
行着
(
ゆきぎ
)
を着た細君を
労
(
いたわ
)
らなければならなかった津田は、やや重い
手提鞄
(
てさげかばん
)
と小さな
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
を、自分の手で
戸棚
(
とだな
)
から
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
り出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
またぼうとなって、
居心
(
いごころ
)
が
据
(
すわ
)
らず、四畳半を
燈火
(
ともしび
)
の
前後
(
まえうしろ
)
、障子に
凭懸
(
よりかか
)
ると、透間からふっと蛇の
臭
(
におい
)
が来そうで、驚いて
摺
(
ず
)
って出る。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蹴ったり、引き
摺
(
ず
)
ったり、ようやく秀吉の前まで引っ立てて来たのを見ると、無残や、鼻の下に深く突き刺さった矢はまだ抜けずにある。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お君の話のテンポの遅さと、八五郎の
逢曳
(
あいびき
)
? を享楽する
心持
(
こころもち
)
に
引
(
ひ
)
き
摺
(
ず
)
られて、いつの間にやら
四半刻
(
しはんとき
)
(三十分)ほどの時間は
経
(
た
)
ちました。
銭形平次捕物控:282 密室
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
壜の内側を身体に付著した牛乳を引き
摺
(
ず
)
りながらのぼって来るのであるが、力のない彼らはどうしても中途で落ちてしまう。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
犬はまだ二声三声吠えつづけたが家人が日本語の怒声を聞きつけると、初めてテラスへ出て来て犬を屋内へ引き
摺
(
ず
)
り入れた。
厨房日記
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
金に目の
晦
(
くら
)
んだ兄に引き
摺
(
ず
)
られて、絶望の
淵
(
ふち
)
へ沈められて行った、お柳に対する
憐愍
(
れんびん
)
の情が、やがて胸に
沁
(
し
)
み拡がって来た。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ここもやはり、前室と同様荒れるに任せていたらしく、歩くにつれて、壁の上方から層をなした埃が
摺
(
ず
)
り落ちてくる。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
摺
漢検準1級
部首:⼿
14画
“摺”を含む語句
引摺
地摺
手摺
頬摺
笈摺
阿婆摺
摺合
雲母摺
手古摺
摺鉢
摺寄
袖摺
摺付
悪摺
青摺
摺出
籾摺
摺附木
摺上川
衣摺
...