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抑
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おさ
ふりがな文庫
“
抑
(
おさ
)” の例文
コスモは手で横腹を強く
抑
(
おさ
)
えていたが、姫はそれをよく見ると、抑えている彼の指のあいだからおびただしい血がほとばしっていた。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
残る一人がちょっと
狼狽
(
ろうばい
)
したところを、飛びかかって、肩を
抑
(
おさ
)
えて二三度こづき廻したら、あっけに取られて、眼をぱちぱちさせた。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
日本人の仕事が一も二もなく
抑
(
おさ
)
えつけられて手も足も出せない当時の哈爾賓の事情を見ては、この上永く
沈着
(
おちつ
)
く気になれなくなった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
本当に病気だったこともあり、誰からともなく
噂
(
うわさ
)
が耳にはいると、ようすをみにゆきたい、という
抑
(
おさ
)
えがたい衝動に駆られたものだ。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
そこで武大さんと
諜
(
しめ
)
し合せ、姦夫と淫婦の現場を
抑
(
おさ
)
えろと、二人で二度目の襲撃をこころみたのだが、何しろ王婆の警戒がきびしい。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
Kはうなずいてみせ、単調で無意味なはしゃぎかたをどうしても
抑
(
おさ
)
えられないでいるあの行員のカミナーのことを、心ひそかに
呪
(
のろ
)
った。
審判
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
が、階子段の下まで行くと、胸は迫って、涙はハラハラととめどなく
堰
(
せ
)
き
上
(
あ
)
ぐるので、顔を
抑
(
おさ
)
えて火鉢の前へ引っ返したのである。
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
と云いさま、
此方
(
こちら
)
も元は会津の藩中
松山久次郎
(
まつやまきゅうじろう
)
…
聊
(
いさゝ
)
か腕に
覚
(
おぼえ
)
が有りまするから、庄三郎の片手を
抑
(
おさ
)
えたなり、ずうンと前にのめり出し。
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
耐え難くもすさぶ心を
抑
(
おさ
)
えながら、昨日は西、今日は東とさすらい求めていたのです。本当に苦しい、それは忍従そのものでした。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
されども浪子は父の
訓戒
(
いましめ
)
ここぞと、われを
抑
(
おさ
)
えて何も家風に従わんと決心の
臍
(
ほぞ
)
を固めつ。その決心を試むる機会は
須臾
(
すゆ
)
に来たりぬ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
お
品
(
しな
)
の
硬着
(
かうちやく
)
した
身體
(
からだ
)
は
曲
(
ま
)
げて
立膝
(
たてひざ
)
にして
棺桶
(
くわんをけ
)
へ
入
(
い
)
れられた。
首
(
くび
)
が
葢
(
ふた
)
に
觸
(
さは
)
るので
骨
(
ほね
)
の
挫
(
くぢ
)
けるまで
抑
(
おさ
)
へつけられてすくみが
掛
(
か
)
けられた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
斯く爲しつつ空中の鳥を目掛けて
投
(
な
)
げる時は、
網
(
あみ
)
を以て之を
覆
(
おほ
)
ふと同樣、翼を
抑
(
おさ
)
へ体を
締
(
し
)
め
付
(
つ
)
け鳥をして
飛揚
(
ひやう
)
する事を得ざらしむ。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
しかし
仮
(
か
)
りに
貴方
(
あなた
)
の
云
(
い
)
う
所
(
ところ
)
が
真実
(
しんじつ
)
として、
私
(
わたくし
)
が
警察
(
けいさつ
)
から
廻
(
まわ
)
された
者
(
もの
)
で、
何
(
なに
)
か
貴方
(
あなた
)
の
言
(
ことば
)
を
抑
(
おさ
)
えようとしているものと
仮定
(
かてい
)
しましょう。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
油断せる貫一が左の
高頬
(
たかほ
)
を平手打に
絶
(
したた
)
か
吃
(
くらは
)
すれば、
呀
(
あ
)
と両手に痛を
抑
(
おさ
)
へて、
少時
(
しばし
)
は顔も
得挙
(
えあ
)
げざりき。蒲田はやうやう座に
復
(
かえ
)
りて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
その宣告は、
抑
(
おさ
)
えられてはいるが、しかし断固たる調子でなされたので、男には重々しく響いたらしかった。彼は立ち上がった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
発狂人の多くは勇気あり熱心あり気象の
旺
(
さかん
)
であるのであるが、惜しいかな心を守り、気を
抑
(
おさ
)
える力がないのである。古人の
曰
(
いわ
)
く
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
賀
(
が
)
の
曰
(
いは
)
く、
其
(
そ
)
の
左
(
ひだり
)
の
目
(
め
)
を
射
(
い
)
よ。
羿
(
げい
)
すなはち
弓
(
ゆみ
)
を
引
(
ひ
)
いて
射
(
い
)
て、
誤
(
あやま
)
つて
右
(
みぎ
)
の
目
(
め
)
にあつ。
首
(
かうべ
)
を
抑
(
おさ
)
へて
愧
(
は
)
ぢて
終身不忘
(
みををはるまでわすれず
)
。
術
(
じゆつ
)
や、
其
(
そ
)
の
愧
(
は
)
ぢたるに
在
(
あ
)
り。
術三則
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「まあ、こんなところへ
巣
(
す
)
を
造
(
つく
)
って、あぶないから
落
(
お
)
としてしまおうか。」と、ほうきを
持
(
も
)
った
手
(
て
)
を
抑
(
おさ
)
えてためらいましたが
ある夏の日のこと
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
「シッ、シッ、大きな声だなあ」松村は両手で
抑
(
おさ
)
えつける様な恰好をして、
囁
(
ささや
)
く様な小声で、「大変なお土産を持って来たよ」
二銭銅貨
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「あんな
藪
(
やぶ
)
医者に何がわかる? あいつは泥棒だ!
大詐偽
(
おおさぎ
)
師だ! それよりもお前、ここへ来て俺の体を
抑
(
おさ
)
えていてくれ。」
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
この言葉に、私は破顔一笑、——重く
抑
(
おさ
)
えつけられたような気持からほッと救われた。ここで私は高勢という名で通っていた。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
抑
(
おさ
)
え抑えている葉子の気持ちが抑えきれなくなって激しく働き出して来ると、それはいつでも
惻々
(
そくそく
)
として人に迫り人を圧した。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
おれのう、もう掴まるか、もう掴まるかと思って、両手で鳥を
抑
(
おさ
)
えると、ひょいひょいと、うまい具合に鳥は逃げるんです。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
最も卑しむべき動物は百姓だ——これには強圧を加えるよりほかに道はないと、それ以来の神尾家は、代々そう心得て百姓を
抑
(
おさ
)
えて来ていた。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二人が愛情の
生
(
お
)
い立ちから言っても、これから将来のことを考えても、彼の心は
抑
(
おさ
)
えに抑えたものであらねば成らなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
この機会になりとも女王への初めの消息を送りたいとお思いになり、そのお心持ちがしまいに
抑
(
おさ
)
えきれずに、美しい桜の枝をお折らせになって
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
そしてつまらぬことをお宮に根掘り葉掘り
訊
(
き
)
きたいのを、じっと
抑
(
おさ
)
えて
耐
(
こら
)
えながらもやっぱり耐えられなくなって、さあらぬようにして
訊
(
たず
)
ねた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「
中根
(
なかね
)
だな、
相變
(
あひかは
)
らず
爲樣
(
しやう
)
のない
奴
(
やつ
)
だ‥‥」と、
私
(
わたし
)
は
銃身
(
じうしん
)
で
突
(
つ
)
き
上
(
あ
)
げられた
左
(
ひだり
)
の
頬
(
ほほ
)
を
抑
(
おさ
)
へながら、
忌々
(
いまいま
)
しさに
舌打
(
したう
)
ちした。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
なんら後悔の情は起こさなかったが、「おまえがこの老夫人の
下手人
(
げしゅにん
)
だぞ」という良心の声を、彼はどうしても
抑
(
おさ
)
えつけることが出来なかった。
世界怪談名作集:03 スペードの女王
(新字新仮名)
/
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
(著)
こうこぼしながらも心中の喜びは
抑
(
おさ
)
えきれない。それと同時に文子も次第に美しくなった、が文子の顔に何やら一点の曇りがたなびきはじめた。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
それだからドイツの政治は、旧教の南ドイツを
逆
(
さから
)
わないように
抑
(
おさ
)
えていて、北ドイツの新教の精神で、文化の進歩を
謀
(
はか
)
って行かなくてはならない。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼女は何かの香気のこもつてゐさうな夜気を大きく吸ひながら、こみ上げて来る安堵の表情を
抑
(
おさ
)
へる事が出来なかつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
そして、滑稽にして悲惨なる此の場面の主人公の腕を
抑
(
おさ
)
え、脚を抑えて、庭から裏山づたいに、間道の方へ運び出した。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
青年歴史家が帰ってからしばらくして、ふと、ナブ・アヘ・エリバは、薄くなった
縮
(
ちぢ
)
れっ毛の頭を
抑
(
おさ
)
えて考え
込
(
こ
)
んだ。
文字禍
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
モスクワへ行きたい希望を
抑
(
おさ
)
えることができなかった。黒河に住んで一年になる。いつか、ブラゴウエシチェンスクにも、顔見知りが多くなっていた。
国境
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
ややもすれば湧き立とうとする人の情と人の心を、荒々しい言葉で
抑
(
おさ
)
えつけるように手きびしく叱っておくと、
傍
(
かたわ
)
らを
顧
(
かえり
)
みて対馬守はふいっと言った。
老中の眼鏡
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
国民の不安が、もう
抑
(
おさ
)
えきれない程、
絶頂
(
ぜっちょう
)
にのぼりつめたと思われた其の日の夜、東京では、JOAKから、実に意外な臨時ニュースの放送があった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
再び彼は
鉛色
(
なまりいろ
)
に蒼ざめた。しかし、先と同じく彼は怒りを完全に
抑
(
おさ
)
へた。彼は力を入れて、しかし落着いて答へた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
兄上先にお渡りなされ、弟よ先に渡るがよいと譲り合いしが、年順なれば兄まず渡るその時に、
転
(
まろ
)
びやすきを気遣いて弟は端を揺がぬようしかと
抑
(
おさ
)
ゆる
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
突然絶望の声を上げ、山吹が両眼を
抑
(
おさ
)
えたので多四郎はギョッとして腰を浮かせたが、何が駄目なのか解らない。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「あツ、あツ」と、私は奇妙な叫び声を発して下腹を
抑
(
おさ
)
へた。両手の十本の指を宙に拡げて机の前で暴れ騒いだ。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「人皆の行くごと見めや」の句は強くて情味を
湛
(
たた
)
え、情熱があってもそれを
抑
(
おさ
)
えて、傍観しているような趣が、この歌をして平板から脱却せしめている。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
庭へ出るつもりで、京子の部屋の前などを通り、つい声をかけられたらことだと思ったので、村川はいらだって来る心を
抑
(
おさ
)
えて、じっと書斎で待っていた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
強い意志でわが思いを
抑
(
おさ
)
えている。いくら抑えてもただ抑えているというだけで、決して思いは消えない。むしろ抑えているだけ思いはかえって深くなる。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
かかればたとひ汝等の
衷
(
うち
)
に燃ゆる愛みな必須より起ると見做すも、汝等にはこれを
抑
(
おさ
)
ふべき力あり 七〇—七二
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
母親の優しい小さい目にも、一時に涙が
湧
(
わ
)
き立った。そして何にも言わずに、
手巾
(
ハンケチ
)
で面を
抑
(
おさ
)
えた。お庄も傍で目を
曇
(
うる
)
ませながら、
擽
(
くすぐ
)
ッたいような気がした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
『
其
(
そ
)
の
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
彩色
(
いろど
)
れ』と
女王樣
(
ぢよわうさま
)
が
金切聲
(
かなきりごゑ
)
で
叫
(
さけ
)
ばれました。『
其
(
そ
)
の
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
斬
(
き
)
れ!
其
(
そ
)
の
福鼠
(
ふくねずみ
)
を
法廷
(
はふてい
)
から
逐
(
お
)
ひ
出
(
だ
)
せ!それ、
抑
(
おさ
)
えよ!そら
抓
(
つね
)
ろ!
其
(
そ
)
の
髯
(
ひげ
)
を
引
(
ひ
)
ッ
張
(
ぱ
)
れ』
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
私が
他所
(
よそ
)
から
独
(
ひと
)
りで帰って来る——すると時々パパがうちから出迎えてだまって肩を
抑
(
おさ
)
えて眼をつぶって、そして
開
(
あ
)
けた時の眼が泣いている。こんなことも?
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
然しそれらの同志たちよりも
或
(
あ
)
る意味ではモットつらいことは、ブラリと外へ出ることが出来て、しかもそれを
抑
(
おさ
)
えて行かなければならなかったからである。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
父がそれ等の乱暴な俥夫の横理屈に対して
飽
(
あく
)
まで自分を
抑
(
おさ
)
へて彼等の機嫌を取つてゐるのを私は
屡々
(
しば/\
)
見た。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
抑
常用漢字
中学
部首:⼿
7画
“抑”を含む語句
抑揚
抑々
抑〻
抑留
抑圧
抑止
抑制
圧抑
一揚一抑
謙抑
抑遜
抑損
抑揚頓挫
抑塞
抑鬱
抑覇
抑聞
斂抑
枉抑
裁抑
...