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懼
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おそ
ふりがな文庫
“
懼
(
おそ
)” の例文
アウシュコルンはなぜそんな不審が自分の上にかかったものか少しもわからないので、もうはや
懼
(
おそ
)
れて、言葉もなく市長を見つめた。
糸くず
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
わが
牀
(
とこ
)
は我を慰め、
休息
(
やすらい
)
はわが
愁
(
うれ
)
いを和らげんと、我思いおる時に、汝は夢をもて我を驚かし、
異象
(
まぼろし
)
をもて我を
懼
(
おそ
)
れしめたまう。……
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
周は驚き
懼
(
おそ
)
れて気絶しそうにしたが、やがて、それは成の法術で
幻
(
まぼろし
)
を見せたではあるまいかと疑いだした。成は周の意を知ったので
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「
朕
(
ちん
)
はここに畏くも我上帝が、正義を行って
懼
(
おそ
)
れざる法官と、恥辱を忍んで法に
遵
(
したが
)
う
皇儲
(
こうちょ
)
とを与えられたる至大の恩恵を感謝し奉る」
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
成程
左様
(
さう
)
言はれて見ると、
少許
(
すこし
)
も人を
懼
(
おそ
)
れない。
白昼
(
ひるま
)
ですら出て
遊
(
あす
)
んで居る。はゝゝゝゝ、寺の
内
(
なか
)
の
光景
(
けしき
)
は違つたものだと思つたよ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
▼ もっと見る
次には「怖ろしき事四方において彼を
懼
(
おそ
)
れしめ、その足に従いて彼を追う」、そして「その力は
饑
(
う
)
え、その傍には
災禍
(
わざわい
)
そなわり……」
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
赤くさびている
兜
(
かぶと
)
の
鉢金
(
はちがね
)
のようなものが透いて見える。ただの鍋かなんぞかも知れないが勘太は、それをさえ足に踏むことを
懼
(
おそ
)
れた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
猛虎の野に
吼
(
ほ
)
ゆるや、其音
懼
(
おそ
)
る可し、然れども、其去れる跡には、
莫然
(
ばくぜん
)
一物の存するなし、花は前の如くに笑ひ、鳥は前の如くに吟ず。
想断々(2)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
示せば、下々の者も之に効う
懼
(
おそ
)
れがあります。それに第一、外聞も悪い事ですから、何卒、そういう真似だけはおやめ下さいますよう。
妖氛録
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
家内の者もみな
懼
(
おそ
)
れた。しかしその子細は判らないので、唯いたずらに憂い懼れていると、となりに住んでいる塾の先生が言った。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これに反してヘロデは洗礼者ヨハネによりて罪を指摘せられた時、多少
懼
(
おそ
)
れはしたけれども、結局良心よりも体面を重んじました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
その時、菩提樹の枝より一枚の葉舞い落ちて、彼の肩を離れず、その
個所
(
ところ
)
のみ彼を傷つけるを得ん。されば、われその手を
懼
(
おそ
)
るるなり】
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
それは被害者総一郎が「蠅男」の忍びこんでくるのを
懼
(
おそ
)
れて、入口以外の扉も窓もすっかり釘づけにして入れなくしてしまったからだ。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼少女は粗暴なる少年に車を
挽
(
ひ
)
かれて、
且
(
かつ
)
は
懼
(
おそ
)
れ且は喜びたりき。彼少女は
面紗
(
めんさ
)
を
緊
(
きび
)
しく引締めて、身をば車の片隅に寄せ居たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
桑はひどく
懼
(
おそ
)
れて歯の根もあわずにわなわなと顫えた。妓もそれを見てあとしざりして帰って往った。隣の男は翌朝早く桑の
斎
(
へや
)
へ往った。
蓮香
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
成熟した美しさ、実った重さと内に籠った力、凝っと静かに深く、
懼
(
おそ
)
れず物でも人でも見、而もその視線に些の害心も含まれない眼差し。
日記:09 一九二三年(大正十二年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「
5
父母の年齢は忘れてはならない。一つには、長生を喜ぶために、二つには、餘命
幾何
(
いくばく
)
もなきを
懼
(
おそ
)
れて、孝養を励むために。」
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
乃
(
すなわ
)
ち城外の
諸渓
(
しょけい
)
の水を
堰
(
せ
)
きて
灌
(
そそ
)
ぎ、一城の
士
(
し
)
を魚とせんとす。城中
是
(
ここ
)
に於て
大
(
おおい
)
に安んぜず。鉉曰く、
懼
(
おそ
)
るゝ
勿
(
なか
)
れ、
吾
(
われ
)
に計ありと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
この書は英清鴉片戦争の
顛末
(
てんまつ
)
を通俗平易に書きつづり挿画を入れて、軍記の如き体裁となし、英人侵略の
懼
(
おそ
)
るべきことを説いたのである。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
裏に
愧
(
は
)
づること、
懼
(
おそ
)
るること、
疚
(
やまし
)
きことなどの常に
抑
(
おさ
)
へたるが、
忽
(
たちま
)
ち
涌立
(
わきた
)
ち、
跳出
(
をどりい
)
でて、その身を責むる痛苦に
堪
(
た
)
へざるなりき。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
海を
懼
(
おそ
)
れず陸を懼れずなさんと欲するところをなすはこの若者なるをわれ知れば、ただしばしそのなすところに任さんのみと思いてやみぬ。
おとずれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
訢大いに怒り、その宅へ押し寄ると、要離平気で門を閉じず、放髪
僵臥
(
きょうが
)
懼
(
おそ
)
るるところなく、更に訢を
諭
(
さと
)
したのでその大勇に心服したとある。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そこにあの女をまつたく人目に觸れること無しに住はせ、その場所の不健康なことにも
些
(
いさゝ
)
かの
懼
(
おそ
)
れを抱かず、森の眞中にそんな備へをして
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
吾
(
われ
)
聞
(
き
)
く、
昔
(
むかし
)
は
呉道子
(
ごだうし
)
、
地獄變相
(
ぢごくへんさう
)
の
圖
(
づ
)
を
作
(
つく
)
る。
成都
(
せいと
)
の
人
(
ひと
)
、
一度
(
ひとたび
)
是
(
これ
)
を
見
(
み
)
るや
咸
(
こと/″\
)
く
戰寒
(
せんかん
)
して
罪
(
つみ
)
を
懼
(
おそ
)
れ、
福
(
ふく
)
を
修
(
しう
)
せざるなく、ために
牛肉
(
ぎうにく
)
賣
(
う
)
れず、
魚
(
うを
)
乾
(
かわ
)
く。
聞きたるまゝ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「天主の教を奉じての
事故
(
ことゆえ
)
日本全土を敵とするも
懼
(
おそ
)
るるに当らない。
況
(
いわ
)
んや九州の辺土をや。事成らばよし、成らずば一族天に昇るまでの事だ」
島原の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ところが百里の間に名の響いた挙人老爺がこの様に
懼
(
おそ
)
れたときいては、彼もまたいささか感心させられずにはいられない。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
親切を
懼
(
おそ
)
れるのは善くない。——だが、なろうことなら、自分の悲惨を家の人達に際立って感じさせたくないと思うた。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
そんなことをすれば、相手は、腹をかかへて笑ふか、つんと横を向いてしまふに違ひないといふ
懼
(
おそ
)
れがあるからだ。
落葉日記
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
この螺旋段が、塔の内部でなしにそとについて、太陽をめがけて昇っている、つまり太陽を
懼
(
おそ
)
れないものだ、じつに恐ろしいほど大それた設計である。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
ただ私が
懼
(
おそ
)
れるのは私がはたしてあなたを理解してるかどうかということである。もし私の理解が浅薄であるのならば、私は赤面してあなたに謝する。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
かれその御手を取らしむれば、すなはち
立氷
(
たちび
)
に取り成し
一三
、また
劒刃
(
つるぎは
)
に取り成しつ。かれここに
懼
(
おそ
)
りて
退
(
そ
)
き居り。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
或日五百は使を
遣
(
や
)
って貞白を招いた。貞白はおそるおそる日野屋の
閾
(
しきい
)
を
跨
(
また
)
いだ。兄の非行を
幇
(
たす
)
けているので、妹に
譴
(
せ
)
められはせぬかと
懼
(
おそ
)
れたのである。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
懼
(
おそ
)
れて居るのか心服して居るのか、兎に角彼の命令を遵奉して、此の間のように沼倉の身に間違いでもあれば、自ら進んで代りに体罰を受けようとする。
小さな王国
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
悪業を以ての
故
(
ゆえ
)
に、
更
(
さら
)
に又諸の悪業を作る。
継起
(
けいき
)
して
遂
(
つい
)
に
竟
(
おわ
)
ることなし。昼は則ち日光を
懼
(
おそ
)
れ、又人
及
(
および
)
諸の強鳥を
恐
(
おそ
)
る。心
暫
(
しば
)
らくも安らかなることなし。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
深く自ら恥じかつ
懼
(
おそ
)
れて「自分には小説は書けない、自分は文人たる資格がない」とまで気を腐らせてしまった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
随って
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
、
亜細亜
(
アジア
)
両種の文明的要素を有しておるからしてその勢力も強くして、他の
欧羅巴
(
ヨーロッパ
)
列国に
懼
(
おそ
)
れられておったが、土地が偏在しておるからして
日本の文明
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
懼
(
おそ
)
れてか、それとも
真実
(
まこと
)
和尚さんに暗え筋のあってか、ま、なんにしても、縁あらばこそ墓所で旅立った死人を
釘抜藤吉捕物覚書:02 梅雨に咲く花
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
にんじんは、心臓がどきどきしているにもかかわらず、それほどあせっている様子はない。自分の腕を見せなければならない瞬間を
懼
(
おそ
)
れているからである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
是
(
ここ
)
に
於
(
おい
)
て
呉起
(
ごき
)
、
公主
(
こうしゆ
)
の・
魏
(
ぎ
)
の
相
(
しやう
)
を
賤
(
いや
)
しむを
見
(
み
)
、
(一〇四)
果
(
はた
)
して
魏
(
ぎ
)
の
武矦
(
ぶこう
)
に
辭
(
じ
)
す。
武矦
(
ぶこう
)
之
(
これ
)
を
疑
(
うたが
)
うて
信
(
しん
)
ぜず。
呉起
(
ごき
)
、
罪
(
つみ
)
を
得
(
う
)
るを
懼
(
おそ
)
れ、
遂
(
つひ
)
に
去
(
さ
)
り、
即
(
すなは
)
ち
楚
(
そ
)
に
之
(
ゆ
)
く。
国訳史記列伝:05 孫子呉起列伝第五
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
(魔女杓子にて鍋を掻き廻し、ファウスト、メフィストフェレス、獣等に
燄
(
ほのお
)
を弾き掛く。獣等
懼
(
おそ
)
れうめく。)
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
一匹の老いぼれた
驢馬
(
ろば
)
を道ばたで見つけて、微笑してそれに打ち乗り、これこそは、「シオンの娘よ、
懼
(
おそ
)
るな、視よ、なんじの王は
驢馬
(
ろば
)
の子に乗りて来り給う」
駈込み訴え
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ほかの患者が向こうから来ると、彼は着物の
縁
(
へり
)
の触れ合うのを
懼
(
おそ
)
れて、遠廻りに
避
(
よ
)
けて通った。『傍へ寄らんで呉れ、傍へ寄らんで呉れ!』と彼は叫んでいた。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
生理学の教科書と『無門関』釈義とを、それぞればらばらにして、一枚ずつ入れまぜて製本したような「日本的科学」の出現に、一つの温床を与える
懼
(
おそ
)
れがある。
身辺雑記:――『日本のこころ』を囲って――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
発狂か自殺の
懼
(
おそ
)
れがあるというので、忙しいブラッチ夫人にとうぶんロイドを見張る用事が付加された。
浴槽の花嫁
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
その時にお松は、この場の悪くとらわれたような羞恥の心が、自分ながら驚くほど綺麗に拭い去られて、ずっと駒井の傍へ寄ることを
懼
(
おそ
)
れようとしませんでした。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
敬愛
(
けいあい
)
する
讀者
(
どくしや
)
諸君
(
しよくん
)
よ、
私
(
わたくし
)
は
今
(
いま
)
、
此
(
この
)
驚
(
おどろ
)
く
可
(
べ
)
く
懼
(
おそ
)
る
可
(
べ
)
き
海底戰鬪艇
(
かいていせんとうてい
)
の
構造
(
こうざう
)
について、
詳
(
くわ
)
しき
説明
(
せつめい
)
を
試
(
こゝろ
)
みたいのだが、それは
櫻木海軍大佐
(
さくらぎかいぐんたいさ
)
の
大秘密
(
だいひみつ
)
に
屬
(
ぞく
)
するから
出來
(
でき
)
ぬ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
あるいは無理なる理屈を言いかけらるることあればただに驚くのみならず、その威力に震い
懼
(
おそ
)
れて、無理と知りながら大なる損亡を受け大なる恥辱を
蒙
(
こうむ
)
ることあり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
……後に王者あり、
挙
(
あ
)
げてこれを開き、春秋の義行なわるれば、則ち天下の乱臣賊子これを
懼
(
おそ
)
れん。
孔子
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
吾ら純粋の
羅布
(
ロブ
)
人はここの
緑地
(
オアシス
)
に集まって吾らの唯一の守り本尊アラなる神を祠に祭りアラ大神の使者の燐光を纒った狛犬を神の権化と
懼
(
おそ
)
れ恭い、数千年住んで来た。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
すなわち夏日水辺に遊ぶ者の彼らの害を
懼
(
おそ
)
るるごとく、山に入ってはまた山童を忌み
憚
(
はばか
)
っていた結果かと思われるが、近世に入ってからその実例がようやく減少した。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
懼
漢検1級
部首:⼼
21画
“懼”を含む語句
恐懼
危懼
驚懼
疑懼
畏懼
懼怖
可懼
戒懼
憂懼
懼色
慙懼
懼気
意甚疑懼
無畏懼
愁懼
異懼
惶懼
疑懼心
衝懼
恐懼戦慄