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惘
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あき
ふりがな文庫
“
惘
(
あき
)” の例文
「ああ、これて
清々
(
せいせい
)
した。」と、お葉は
酔醒
(
よいざめ
)
の水を飲んだ。お清は
惘
(
あき
)
れて
其
(
その
)
顔を眺めている処へ、
彼
(
か
)
のお杉
婆
(
ばばあ
)
の声が聞えたのである。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と有りけるに座中の人々
彌々
(
いよ/\
)
驚き偖は其方が野尻宿の近江屋のお
專殿
(
せんどの
)
なるか
而
(
して
)
又持參の此文はと
惘
(
あき
)
れ果てたるばかりなりお
專
(
せん
)
は
猶
(
なほ
)
も座を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
私はそれを引き受けたが、態々そういう事のために、連れ立って来る門人への親切さに、少々
惘
(
あき
)
れて迢空を見直す気持を持ったのである。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
脇目もふらずに、一日仕事にばかり坐っている沈みがちなその女は、
惘
(
あき
)
れたような顔をして、お島が少し落着きかけて来たとき、言出した。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
まだ
癖
(
くせ
)
が
止
(
や
)
まないかと一
度
(
ど
)
は
腹
(
はら
)
を
立
(
たて
)
ても
見
(
み
)
たり
惘
(
あき
)
れもしたりしたが、
然
(
しか
)
し
何處
(
どこ
)
といつて
庇護
(
かば
)
つてくれるものが
無
(
な
)
いので
恁
(
か
)
うして
來
(
く
)
るのだと
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
▼ もっと見る
おぬひ
惘
(
あき
)
れて貴君は其樣の事正氣で仰しやりますか、
平常
(
つね
)
はやさしい方と存じましたに、お作樣に頓死しろとは蔭ながらの嘘にしろあんまりでござります
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
群
(
むれ
)
を造って出て来るとは
惘
(
あき
)
れ返った大胆者! お武家様の敵でよしなくとも、
抛棄
(
うっちゃ
)
って置くことは出来ません。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
つまり叔父の考えにすりゃ、あたしは主婦と云うよりも、従兄の遊蕩をやめさせる道具に使われるだけなんですもの。ほんとうに
惘
(
あき
)
れ返ってものも云われないわ。
文放古
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
園は少し自分に
惘
(
あき
)
れてまた黙ってしまった。そして気がついて、手にしていた茶碗を
茶托
(
ちゃたく
)
に戻した。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
俺はどうもその出方が怪しいと思ったので、君らが出かけた後で、そっとその
行李
(
こうり
)
を調べてみると、いつ持ちだしたものやら、何一つ残っていないではないか。それには
惘
(
あき
)
れたね。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
お蔦 (弥八が倒れるのを見て喝采し、茂兵衛が意気地なく坐るのを見て
惘
(
あき
)
れる)
一本刀土俵入 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
開いて見れば不思議にも
文字
(
もんじ
)
は
消
(
き
)
えて
唯
(
たゞ
)
の白紙ゆゑ這は如何せし事成かと千太郎は
暫時
(
しばし
)
惘
(
あき
)
れ
果
(
はて
)
茫然
(
ばうぜん
)
として居たりしが我と我が心を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
加之
(
しか
)
も
先方
(
むこう
)
から
真白昼
(
まっぴるま
)
押掛
(
おしか
)
けて来て、平気でお
出
(
い
)
でお
出
(
い
)
でを
極
(
き
)
めるとは、
図迂図迂
(
ずうずう
)
しい奴、
忌々
(
いまいま
)
しい奴と、市郎は
惘
(
あき
)
れを通り越して、
稍
(
やや
)
勃然
(
むっ
)
とした。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
半衿は十六のお庄には渋過ぎるくらいであったので、お浜は、
最中
(
もなか
)
の折と一緒に取次ぎをしてくれたお庄の前に差し出してから、年を聞いて
惘
(
あき
)
れていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
井荻看護婦は手押車につかまったままエレベーターの下降を、出し抜かれた
惘
(
あき
)
れ返った眼をしながらも、ちょっと待ってと言ったが下降は迅速に行われた。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
おぬひ
惘
(
あき
)
れて
貴君
(
あなた
)
は
其樣
(
そのやう
)
の
事
(
こと
)
正氣
(
せうき
)
で
仰
(
おつ
)
しやりますか、
平常
(
つね
)
はやさしい
方
(
かた
)
と
存
(
ぞん
)
じましたに、お
作樣
(
さくさま
)
に
頓死
(
とんし
)
しろとは
蔭
(
かげ
)
ながらの
嘘
(
うそ
)
にしろあんまりでござります
ゆく雲
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
おせいは
惘
(
あき
)
れるばかりだった。父がどうしてこんなになったのか、どう思ってみようもなかった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
黄色
(
きいろ
)
に
熟
(
じゆく
)
する
梅
(
うめ
)
の
小枝
(
こえだ
)
を
苦
(
くるし
)
めて
居
(
ゐ
)
る
蚜蟲
(
あぶらむし
)
も
滅亡
(
めつばう
)
して
畢
(
しま
)
ふ
程
(
ほど
)
の
霖雨
(
りんう
)
が
惘
(
あき
)
れもしないで
降
(
ふ
)
り
續
(
つゞ
)
く。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
僕、
惘
(
あき
)
れて先生を見れば、先生、向うを
指
(
ゆびさ
)
して曰、「あすこに
不准怪声叫好
(
ゆるさずかいせいこうとよぶことを
)
と言う札が下っているでしょう。怪声はいかん。わたしのように『好!』と言うのは好いのです。」
北京日記抄
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
が、内蔵助の叔父小山源五右衛門、
従弟
(
じゅうてい
)
進藤源四郎など、義理にも抜けられない者どもまで、
口実
(
こうじつ
)
を設けて同行を
肯
(
がえ
)
んじなかったと聞いては、先着の同志も
惘
(
あき
)
れて物が言えなかった。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
呼
(
よび
)
に
遣
(
やり
)
けるに六右衞門は何事やらんと打
驚怖
(
おどろき
)
直
(
すぐ
)
に其使ひと
倶
(
とも
)
に來て見れば
豈
(
あに
)
※
(
はか
)
らん久八が主人に
折檻
(
せつかん
)
請
(
うけ
)
る有樣に
暫時
(
しばし
)
惘
(
あき
)
れて言葉もなし五兵衞は
皺枯聲
(
しわかれごゑ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
おぬひ
惘
(
あき
)
れて
貴君
(
あなた
)
はその様の事正気で仰しやりますか、
平常
(
つね
)
はやさしい方と存じましたに、お作様に頓死しろとは
蔭
(
かげ
)
ながらの
嘘
(
うそ
)
にしろあんまりでござります
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「金魚屋さんたら
惘
(
あき
)
れちゃって、此方をきょとんとした眼で見て、口を開けたまんま言葉も出ないふうね。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
お庄は父親が、いつのまにあのお婆さんとそんな関係になったものかと、恥じもし
惘
(
あき
)
れもして聞いていた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何
(
いず
)
れも
惘
(
あき
)
れて顔を見合せている処へ、この騒ぎを聞いて市郎も奥から出て来た。人々から委細の話を聴いて、彼も驚かずには居られなかった。お葉の
傍
(
そば
)
へ進み寄って
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そして
惘
(
あき
)
れはてたという顔を母にしてみせた。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
製本屋さんは
惘
(
あき
)
れて返事も出来なかったであろうが、後年、このお母さんの祈りがかなえられ、堀辰雄の生涯の書物はどれも凝った美装の書物ばかりであった。
我が愛する詩人の伝記
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
葉子は半ば
惘
(
あき
)
れた顔をしていたが、北山やお八重が
羨望
(
せんぼう
)
の目で、どこに陰影一つない
粧
(
つく
)
り立ての葉子の顔を見ていたので、庸三はなおさら虫が納まらなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
惑
(
まよ
)
ひし
眼
(
め
)
に
邪正
(
じやしやう
)
は
分
(
わ
)
け
難
(
がた
)
し、
鑑定
(
かんてい
)
は
一重
(
ひとへ
)
に
御眼鏡
(
おめがね
)
に
任
(
まか
)
さんのみと、
恥
(
はじ
)
たる
色
(
いろ
)
もなく
陳
(
の
)
べらるゝに、
母君
(
はゝぎみ
)
一ト
度
(
たび
)
は
惘
(
あき
)
れもしつ
驚
(
おど
)
ろきもせしものゝ、
斯
(
か
)
くまで
熱心
(
ねんしん
)
の
極
(
きは
)
まりには
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
その中に
惘
(
あき
)
れた物言いにたいする茫然の気味までたたえて見せ、次には薄ら笑いが
悄
(
しょ
)
んぼりとのぼった。
われはうたえども やぶれかぶれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
女は
惘
(
あき
)
れたような顔をして、火鉢の傍で小野田と差向いに坐っていたが、間もなく黙って帰って行った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お
前
(
まへ
)
はまだ
寐
(
ね
)
ないのかえ、と
障子
(
しようじ
)
の
外
(
そと
)
から
聲
(
こゑ
)
をかけて、
奧
(
おく
)
さまずつと
入
(
い
)
り
玉
(
たま
)
へば、
室内
(
うち
)
なる
男
(
をとこ
)
は
讀書
(
どくしよ
)
の
腦
(
つむり
)
を
驚
(
おどろ
)
かされて、
思
(
おも
)
ひがけぬやうな
惘
(
あき
)
れ
顏
(
がほ
)
をかしう、
奧
(
おく
)
さま
笑
(
わら
)
ふて
立
(
た
)
ち
玉
(
たま
)
へり。
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「誰が、あんなお爺さんに引っかかるものか。それに、来てみて、家の汚いのに
惘
(
あき
)
れたでしょうよ。」
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あんなに悲しいことはなかつたと言つたが、見物人は話といふのはたつたそれだけかと、
惘
(
あき
)
れ返つてばかばかしい話が話といふものの範圍にさへ入らないことを笑つた。
末野女
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
御新造
(
ごしんぞ
)
は
驚
(
おど
)
きたるやうの
惘
(
あき
)
れ
顏
(
がほ
)
して、
夫
(
そ
)
れはまあ
何
(
なん
)
の
事
(
こと
)
やら、
成
(
なる
)
ほどお
前
(
まへ
)
が
伯父
(
おぢ
)
さんの
病氣
(
びやうき
)
、つゞいて
借金
(
しやくきん
)
の
話
(
はな
)
しも
聞
(
きゝ
)
ましたが、
今
(
いま
)
が
今
(
いま
)
私
(
わた
)
しの
宅
(
うち
)
から
立換
(
たてか
)
へようとは
言
(
い
)
はなかつた
筈
(
はづ
)
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「島、お前よく考えてごらんよ。
衆
(
みな
)
さんの前でそんな御挨拶をして、それで済むと思っているのかい。義理としても、そうは言わせておかないよ。
真実
(
ほんと
)
に
惘
(
あき
)
れたもんだね」
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何処までも定見のない自分に
惘
(
あき
)
れていた、彼はこれらのありふれた壺に、ちょっとでも心が惹かれることは、行きずりの女の人に眼を惹かれる美しさによく似ている故をもって
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
八重
(
やへ
)
さぞ
打
(
うち
)
つけなと
惘
(
あき
)
れもせんが
一生
(
いつしやう
)
の
願
(
ねが
)
ひぞよ
此心
(
このこゝろ
)
傳
(
つた
)
へては
給
(
たま
)
はるまじや
嬉
(
うれ
)
しき
御返事
(
おへんじ
)
聞
(
き
)
きたしとは
努々
(
ゆめ/\
)
思
(
おも
)
はねど
誰
(
た
)
れ
故
(
ゆゑ
)
みじかき
命
(
いのち
)
ぞとも
知
(
し
)
られて
果
(
は
)
てなば
本望
(
ほんもう
)
ぞかしと
打
(
うち
)
しほるれば
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
お雪はその方を見ながら、
惘
(
あき
)
れたように笑った。青柳は太いしなやかな手で、胸や
腋
(
わき
)
のあたりを撫で廻しながら、起き上った。そして不思議そうに、じろじろとお増の顔を眺めた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
さりとは
愛敬
(
あいきやう
)
の
無
(
な
)
き
人
(
ひと
)
と
惘
(
あき
)
れし
事
(
こと
)
も
有
(
あり
)
しが、
度
(
たび
)
かさなりての
末
(
すゑ
)
には
自
(
おのづか
)
ら
故意
(
わざと
)
の
意地惡
(
いぢわる
)
のやうに
思
(
おも
)
はれて、
人
(
ひと
)
には
左
(
さ
)
もなきに
我
(
わ
)
れにばかり
愁
(
つ
)
らき
處爲
(
しうち
)
をみせ、
物
(
もの
)
を
問
(
と
)
へば
碌
(
ろく
)
な
返事
(
へんじ
)
した
事
(
こと
)
なく
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
『
當
(
あて
)
になるものか。』と女は鼻で笑つて、『お前さんの
口前
(
くちまへ
)
の巧いにも
惘
(
あき
)
れるよ。』
絶望
(旧字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
忘れてか何とも仰せの無き心もとなさ、我れには身に迫りし大事と言ひにくきを我慢して斯くと申ける、御新造は驚きたるやうの
惘
(
あき
)
れ顏して、夫れはまあ何の事やら、成ほどお前が伯父さんの病氣
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
浅井は廊下で見つかって古い
昵
(
なじ
)
みの婆さんに、
惘
(
あき
)
れた顔をしてそこに突っ立たれた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
忘れてか何とも仰せの無き心もとなさ、我れには身に迫りし大事と言ひにくきを我慢してかくと申ける、御新造は驚きたるやうの
惘
(
あき
)
れ顔して、それはまあ何の事やら、なるほどお前が伯父さんの病気
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
笹村は
叢
(
くさむら
)
のなかにしゃがんで、
惘
(
あき
)
れたように女の様子を
眺
(
なが
)
めていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
手近の枝を引寄せて
好惡
(
よしあし
)
かまはず申譯ばかりに折りて、投つけるやうにすたすたと行過ぎるを、さりとは愛敬の無き人と
惘
(
あき
)
れし事も有しが、度かさなりての末には自ら
故意
(
わざと
)
の意地惡のやうに思はれて
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
手近の枝を引寄せて
好悪
(
よしあし
)
かまはず申訳ばかりに折りて、投つけるやうにすたすたと行過ぎるを、さりとは
愛敬
(
あいけう
)
の無き人と
惘
(
あき
)
れし事も有しが、度かさなりての末には
自
(
おのづか
)
ら
故意
(
わざと
)
の意地悪のやうに思はれて
たけくらべ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
と余念なく豆の葉の虫を
除
(
とっ
)
ている。助役は
惘
(
あき
)
れ顔にて
厄払い
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お作は
惘
(
あき
)
れたような顔をした。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
庸三は
惘
(
あき
)
れもしなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
惘
漢検1級
部首:⼼
11画
“惘”を含む語句
惘然
惘々
惘乎
惘然自失
惘々然
惘果
惘気
昏惘