てつ)” の例文
ズボリと踏込ふみこんだ一息ひといきあひだは、つめた骨髓こつずゐてつするのですが、いきほひよく歩行あるいてるうちにはあたゝかります、ほか/\するくらゐです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
町方から取締りの役人は出て居りますが、外の事と違つて、信心に關する限り、幕府は放任政策にてつして、大抵のことは見て見ぬ振り。
卯平うへいはそれととも乾燥かんさうした肌膚はだ餘計よけいれて寒冷かんれいほねてつしたかとおもふとにはか自由じいううしなつてたやうに自覺じかくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それが、かえって、人を遠ざけ、近ごろの武士気質かたぎからは、一てつなかたくな者と見られがちな点なども、彼は全然、意にかけていなかったのだ。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と溝淵閣下は一てつだったけれど、結局、郁子夫人の主張が通った。それは相身互の立場から入念に調査して、及ぶ限り建設的の努力をするということだった。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
聞いた玄心斎は、一てつものだけに、火のように怒って、こうしてしきりに、主君源三郎のすがたを求めているのだが、肝腎かんじんの伊賀のあばれン坊、どこにもいない。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また他の人々は、理性の楽しみを、一てつな論理を、そこで満足さしていた。彼らは人間に奉仕しなくて、観念に奉仕していた。それはもっとも勇敢な人たちだった。
引受ひきうけアノ一てつなる親父殿どのに罪なき足下そなた打擲たゝかれ廿餘年の奉公を贅事むだにしていとまを引され夫を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みづから一の目的もくてきさだめ、万障ばんしやうはいし、終生しうせいてつその目的点もくてきてんたつせんとつとむるが如きは不信仰ふしんこう時代じだい行為こうゐなりき、しゆめいしたがひ、今日こんにち今日こんにちげふす、今日こんにち生涯しやうがいなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
自分達が浮世絵の博物館をふた時は曇つた日の午後三時頃であつたが、各室の監視人は自分達の為におほひのとばりてつして浮世絵の一一いち/\を実は内内ない/\迷惑を感じるまで仕細に観せて
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
... 若氣わかげの一てつは吾れ人ともに思ひ返しのなきもの、可惜あたら丈夫ますらをこがじにしても御身は見殺しにせらるゝ氣か、さりとはつれなの御心や』。横笛はさもものうげに、『左樣の事は横笛の知らぬこと』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
代助からふと寧ろ賛成な位なもので、かれめかけを置く余裕のないものにかぎつて、蓄妾ちくしようの攻撃をするんだと考へてゐる。親爺おやぢは又大分だいぶ八釜やかまである。小供のうちは心魂しんこんてつして困却した事がある。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
端金はしたにはあらざりけんを、六三ろくさ此金これとヾめず、重々ぢゆう/\大罪だいざいくびおふせらるヽともらみはきを、なさけのおことばてつしぬとて男一匹をとこいつぴき美事みごとなきしが、さても下賤げせんてば、こひかねゆゑするとやおぼ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その道の御心得なき故、一てつに左様思わるるならんと申候。
だじつとてつして燃えてゐる。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かれさへあらずば無事ぶじなるべきにと、各々おの/\わがいのちをしあまりに、そのほつするにいたるまで、怨恨うらみ骨髓こつずゐてつして、法華僧ほつけそうにくへり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
頑固一てつなやうでも、その爲に美しく育つた十九の娘を、非業に死なせたくいのやうなものが、犇々ひし/\と老ひの胸をしめ付けるのです。
かれさむさがほねてつするのことを明瞭めいれうあたまうかべて判斷はんだんするのには氣候きこう變化へんくわあまりに急激きふげきであつた。かれあひだ人事不省じんじふせい幾時間いくじかん經過けいくわした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
こういう一てつな曲げない風は、老人ばかりでなく、彼のようつわものばらには皆あった。坂東の原野と山川が人間のなかにはぐくんだ太いすじ骨というものであろう。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はげむゆゑに山伏といふ又修驗しゆけんといツパ其修行そのしゆぎやう終り修行滿みちたる後の本學ほんがくとあれば難行苦行をなし修行しゆぎやうをはりて後の本名ほんみやうなりかるがゆゑに十かい輪宗りんしう嘲言てうげんてつすればいとふべき肉食にくじきなし兩部りやうぶ不二の法水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
日中ひなかまたてつしてあかつきまで僕の下宿の附近には音楽と歌がきこえると云ふ風である。初めて越して来た日に重いトランクを女中のマリイと二人で三階へ引上げる時は泣き出したくなつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「いや、一てつにそうでもないが……」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
傷は浴衣ゆかたの後ろから一と突き、路地一パイにひたす血潮の中に、頑固ぐわんこてつで鳴らした六兵衞は、石つころの樣に冷たくなつてゐるのでした。
働くにぞ大膳は元來短氣たんきの性質なれば無念むねん骨髓こつずゐてつすれども伊賀亮が戒めしは此所ここなりと憤怒ふんどこらへ居たりける斯て八山の天一坊が行列には眞先に葵の紋を染出せし萌黄純子もえぎどんす油箪ゆたん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お譲り下さるなどと、あまりに望外過ぎて、ご返辞にうろたえます。——それがしは元来、武弁ぶべんてつ、州の吏務りむをつかさどるなどということは、本来の才ではありません。まあ、まあ
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半分は口の中で言ふ言葉が、千萬言の雄辯よりも、少なくとも、平次の後ろからヒヨコヒヨコとお辭儀をする八五郎にはてつした樣子です。
それは、執拗しつようをきわめていたろう。一てつ、わき見を知らない男の横恋慕である。
たゞしこんなのは、思ひの外思慮が淺く、一てつなことをして大間違ひをするのではないか、——平次はフトそんな事を考へて居る樣子です。
と同志のうちで云う者も多くなって、一てつものの奥野将監しょうげんなどは、すでに
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あかりを背負つた五十年配の屈強な親仁おやぢ、左官の彦兵衞といへば、仕事のうまいよりは、頑固ぐわんこてつなので界隈に知られた顏です。
元来が一てつである。にうけると、急傾斜する。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あんな良い方ですもの、怨んでなんかゐるものはありません。少し固過ぎましたが、忠義一てつで、よく奉公人達にも眼をかけてやりました」
平次は口を酢つぱくして説き勸めますが、若くて一てつな二人は、心中の仕損ひの顏を、ノメノメと元の店へは持つて行く氣になりさうもありません。
平次は藁打臺わらうちだいを引寄せて、どつかと腰をおろしました。今となつては、この頑固ぐわんこてつの下男の口から訊くほかに、眞相をきはめやうはなかつたのです。
頑固ぐわんこてつで、つむじ曲りで、口やかましくて、少しケチで、そしてなか/\の商賣上手といふ評判の老人でした。
てつな人で、こんなことを教へると、お前の出世のさまたげだから——と、若いときのことや、私の氣持を荒立てるやうなことは、口にも出さなかつたのです
それにもかゝはらず、二人の娘は、默つて顏を見合せてゐるのです。この頃の町人達のやうな、事勿ことなかれ主義にてつして、極端に掛り合ひを恐れてゐるのでせう。
弱氣と言つても、夫の言ひ付けだけは、精一杯に守り通さうと言つた、弱きが故の女の一てつさが見えます。
肉體的に弱り拔いてゐても、氣丈者らしい林太郎のハキハキした言葉を聽いて、頑固ぐわんこてつとふれ込んだ父親右京が合點々々をして喜んでゐるではありませんか。
少し一てつ者ではあつたが、義理堅くて深切で、評判の良い人でしたよ。それを虫のやうに殺すなんか、ひどいぢやありませんか、八方から人氣のあつた孫右衞門を
押の強さうな頑固ぐわんこな感じのする人間ですが、一てつの忠義らしいところが、次第に平次の好感をさそひます。
親御の庄司右京殿は、中風で身動きも覺束おぼつかないが、恐ろしく氣が確かな上、弓町きつての一てつ者だ。
「小三郎さんは何も彼も知つてゐますが、あの通り正直一てつの人ですから、誰にも言ひません」
しましたが、聽いちやくれなかつた。あの通り一てつだからね。——割つたのは誰の仕業かわからないが、あれが若し眞物ほんものなら一つ/\が國の寶だ。よくない事だと思ふんだよ
拙者切腹を仰せ付けられなかつたのが、見付けものと言つて宜いくらゐ。いや、この怨み骨髓こつずゐてつして忘れる隙もない、いづれは叩き斬つて溜飮を下げるつもりで居た拙者だ。
肉體の衰へを自覺しまいとする、年寄の一てつさをムキ出しに、斯んな事を言ふのでした。
正直者で頑固一てつな茂吉に言ひ付けて、空井戸の仕掛けと、土藏の虎挾みを造らせ、拔け驅けして八千兩の大金を獨り占めしようとする者に思ひ知らせる手段を講じたのでした。
その節藏の係をして居た拙者が役目の落度で長のいとまと相成り、無念骨髓こつずゐてつして、伊八の跡をつけ廻して居るが、何處に隱したか見付ける工夫がなく、しかとした證據もないので
てつで短氣ではあるが、町中の評判の良いことから、師匠の鶴吉とはくされ縁で、本人は手を切りたがつてゐるが、鶴吉の方でなか/\離さないこと、お優との間は平凡な從兄妹いとこ同士で
拙者も必死とお止め申したが、御老體の一てつさ、何としてもお心が解けない