引出ひきいだ)” の例文
初更しよかういたるや、めるつまなよやかにきて、粉黛ふんたい盛粧せいしやう都雅とがきはめ、女婢こしもとをしてくだん駿馬しゆんめ引出ひきいださせ、くらきて階前かいぜんより飜然ひらりる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やがてはりを收むる蜂のごとくその魔性の尾を引縮め車底の一部を引出ひきいだして紆曲うねりつつ去りゆけり 一三三—一三五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
みなのもの祝義しうぎでもつかはしませうとてこたへもかずずん/\と引出ひきいだすを、きやくはしらよりかゝつてながめながら小言こゞともいはず、諸事しよじおまかせ申すと寛大かんだいひとなり。
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さては客来きやくらいと言ひしもいつはりにて、あるひは内縁の妻と定れる身の、吾をとがめて邪魔立せんとか、ただし彼人かのひとのこれ見よとてここに引出ひきいだせしかと、今更にたがはざりし父がことばを思ひて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この打合うちあはせがをはると、大佐たいさ命令めいれいで、輕氣球けいきゝゆう海岸かいがん砂上しやじやう引出ひきいだされ、水素瓦斯すいそがす充分じふぶん滿たされ、數日分すうじつぶん食料しよくれうと、飮料水いんれうすいと、藥品やくひん買入かひいれや、船舶せんぱく雇入やとひいれのめにつひや
引出ひきいだすなり加之そのうへ御邊の居間ゐまの金子紛失ふんじつは伴佐十郎建部郷右衞門の兩人が盜取ぬすみとりしと云事確固たしかなる證據しようこありや是とても其身の惡事をかくさんが爲に跡方もなき空言そらごとを申たて渠等かれら兩人に惡名あくめい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何うも沈着おちついたもので、是から八ツの御退出おさがりから一同曲淵甲斐守公のお白洲へ出ました、孫兵衞の娘お筆も引出ひきいだされ、訴えの趣きを目安方が読上げますると甲斐守様がお膝を進められまして
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
荒鷲には襲わるる、少年の身に添えて守っていたと覚ゆるのを、つかむがごとく引出ひきいだして、やにわに手を懸けてむしり棄てようとした趣であった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
らうかりふでずさびに、此樣このやうよびよいものいてれたるまちといふをば引出ひきいだしぬ、をんな容貌きりようきにこそ諸人しよにんあいけて果報くわほうこのうへものなれ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
灰または掘上ほりあげし乾ける土はその衣と色等しかるべし、彼はかゝる衣の下より二のかぎ引出ひきいだせり 一一五—一一七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
引出ひきいださせ大津屋段右衞門事前名ぜんみやう畔倉重四郎とよばれ其方は當月たうげつ二日のすゞもりにて幸手宿の三五郎と申す者を殺害せつがいせし趣きつゝまず白状致せと申されければ段右衞門おもてたゞし私し儀三五郎と申す者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
びっくりするうちに大戸をガラ/\と開けて仮牢から引出ひきいだされましたは
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今しがた見えずなりたる、美人の小腕こがいな邪慳じゃけんつかみて、身をのがれんともだえあせるを容赦ようしゃなく引出ひきいだしぬ。美人は両手に顔を押えて身をすくましておののきいたり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
物言ものいへばやがあらそひの糸口いとくち引出ひきいだし、いてうらんでれ/\のなかに、さりともくからぬ夫婦めをとおりふしのこなしわすれがたく、貴郎あなたうなされ、あなされとへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
身受なし貴宅へ置とのお話し故貴殿のいはるゝ其意にまかせ五十兩の金とても勿々なか/\に出來兼たれど延引えんいんして居る時は外へ身受に成との事故道ならぬ事とは知りながら養父やうふの金を引出ひきいだし命がけにて其金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
引出ひきいだす。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わが指のさき少しく灰にまみれたれば、小親手首を持添えて、たなそこをかえしてじっと見つ。下着の袖口引出ひきいだして払い去るとて、はらはらと涙をぞ落したる。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
づ今夜は帰つてくれとて手を取つて引出ひきいだすやうなるも事あらだてじの親の慈悲、阿関はこれまでの身と覚悟してお父様とつさん、お母様つかさん、今夜の事はこれ限り、帰りまするからは私は原田の妻なり
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「つままれめ、どこをほッつく。」とわめきざま、引立ひったてたり。また庭に引出ひきいだして水をやあびせられむかと、泣叫びてふりもぎるに、おさえたる手をゆるべず
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今夜こんやかへつてれとてつて引出ひきいだすやうなるもことあらだてじのおや慈悲じひ阿關おせきはこれまでの覺悟かくごしてお父樣とつさん、お母樣つかさん今夜こんやことはこれかぎり、かへりまするからはわたし原田はらだつまなり
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「つままれめ、何処どこをほツつく。」とわめきざま、引立ひつたてたり。また庭に引出ひきいだして水をやあびせられむかと、泣叫なきさけびてふりもぎるに、おさへたる手をゆるべず
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そんなのでは無いと言ひながら蒲団ふとんの上に乗せて置きし紙入れを取あげて、お相方あいかたの高尾にこれをばお預けなされまし、みなの者に祝義でもつかはしませうとて答へも聞かずずんずんと引出ひきいだすを
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
折れたる熊手くまで、新しきまた古箒ふるぼうき引出ひきいだし、落葉おちば掻寄かきよせ掻集め、かつ掃きつつ口々にうたう。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
楊家やうかむすめ君寵くんちようをうけてと長恨歌ちようごんか引出ひきいだすまでもなく、むすめ何處いづこにも貴重きちようがらるゝころなれど、このあたりの裏屋うらやより赫奕姫かくやひめうまるゝことそのれいおほし、築地つきぢ某屋それやいまうつして御前ごぜんさまがた御相手をんあいて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毎夜々々湯を召すさえ物憂く見えたまえば、気鬱きうつ疾病やまい引出ひきいだしたまわむ、何か心遣こころやりすべは無きかとこうべを悩ます三太夫、飛んでで、歓迎よろこびむかえ、綾子の居間に案内せり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
楊家やうかの娘君寵くんちようをうけてと長恨歌ちようごんか引出ひきいだすまでもなく、娘の子は何処いづこにも貴重がらるる頃なれど、このあたりの裏屋より赫奕姫かくやひめの生るる事その例多し、築地つきぢ某屋それやに今は根を移して御前さま方のおん相手
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
世に無き母にすくいを呼びて、取りすがる手を得三がもぎ離してじ上ぐれば、お録は落散る腰帯を手繰ってお藤を縛り附け、座敷の真中まんなかにずるずると、まげつかんで引出ひきいだし、押しつけぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)