もと)” の例文
学校を卒業して二年目、父の死によって全く係累のなくなった三造が、その時残された若干の資産をもと爾後じごの生活の設計を立てた。
狼疾記 (新字新仮名) / 中島敦(著)
此君このきみにして此臣このしんあり、十萬石じふまんごく政治せいぢたなそこにぎりて富國強兵ふこくきやうへいもとひらきし、恩田杢おんだもくは、幸豐公ゆきとよぎみ活眼くわつがんにて、擢出ぬきんでられしひとにぞありける。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
以て此證據の品にもとづき事成就じやうじゆ致すやう深慮しんりよの程こそ願はしとのべければ伊賀亮は欣然きんぜんと打笑ひ左こそ有べし事を分てたのむとあれば義を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そして属名の Narcissus は麻痺まひの意で、それはその草に含まれているナルキッシネという毒成分にもとづいたものであろう。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「ところで、この工場では、あの十八枚の図面をもととして、すでに人造人間の製造を始めているんだ。お前に、それを見せたいと思う」
人造人間の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『勝負事は、身を滅ぼすもとじゃから、真似でもしてはならんぞ』と、父は口癖のように幾度も幾度も繰り返して私を戒めました。
勝負事 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼は既に陣中にある以上、女装をすることは却って不審を招くもとだと感じたので、かぶっていた被衣かつぎを、小さく畳んでふところに入れた。
今日こんにちまで下女の人望をつないだのも全くこの自覚にもとづく。小野さんは下女の人望をさえみだりに落す事を好まぬほどの人物である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かういふ長波長ちようはちよう津浪つなみ海底かいてい大地震だいぢしんによつていかにしておこされるかといふに、それはおほ海底かいてい地形變動ちけいへんどうもとづくのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
のがれるだけは免れようと犬を殺したり、飛脚に化けたりしました。親仁が練馬へ行ったことと思い込んだのが間違いのもとです
そちたちは江戸をもとにして考えるからそうなるのじゃ、京都を根本として計略を立てる時には、甲斐を取るよりも飛騨を定むるのが先じゃわい。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
雇いきんも年々に積もってまいりました。宿方困窮のもとと申せば、あまりに諸家様の御権威が高くなったためかと存じます。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「交通機関が発達したからな、日本だけ遅れている訳に行かん。それに日本は人間が多過ぎる。之が犯罪のもとなんじゃ」
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
「大日本は神国なり。天祖始めてもといを開き、日神長く統を伝え給う。我が国のみこの事あり。異朝にはその類なし。このゆえに神国というなり」
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今、またこの明治十八年に於ける少教正の書によつて、天地萬物の生々的威力は陽根やうこんの氣にもとゐすると云ふ思想を得た。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
娘時代に我が理想なぞという生意気な心を出すのは他日たじつ身を不幸の地におとしいれるもとだとよく兄が申しますから私は決して未来の事を自分では考えません
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
此事に付きては後段こうだんべつに述ぶる所有るべけれど、土偶の形状けいじやうはコロボツクル日常の有樣ありさまもととして作りしものならんとの事丈ことだけ此所ここに記し置くべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
それが丁度そこへ来合わせたのがいよいよ間違いを大きくするもとで、もう逆上のぼせている紋作はその侍の顔をみると、黒崎さんどうぞ拝借と云いながら
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かえりみてれば、一国の独立は国民の独立にもといし、国民の独立はその精神の独立に根ざす(謹聴々々、拍手)。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
今日に至って国民が皆先生の徳を慕うというのは、即ち明治初年に於ける破壊的大運動、日本の精神界に思想界に大破壊を加えられた、これがもといである。
「何事も、そのもとは人です。人を得る国はさかんになり、人を失う国は亡びましょう。ですからあなたは、高徳才明な人をかたわらに持つことが第一です」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうともネそうともネ、幾程いくら母親おっかさんの機に入ッたからッて肝腎のお前さんの機に入らなきゃア不熟のもとだ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もとより両親のことばではあるし、自分でも強いて淋しい生活に入るのを望むわけでもないから、一切いっせつ両親にまかすことにしたのがそもそも娘の不運のもとであった。
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
その気質のもとを成している、規律と放漫との深い本能的融合を、会得えとくする者があろうか。なぜといって、有効な覚醒を欲し得ないというのは、放漫なのである。
それ二の物相合してこの犧牲いけにへの要素を成す、一はその作らるゝもととなるもの一は即ち契約なり 四三—四五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
握飯にぎりめしほどな珊瑚珠さんごじゅ鉄火箸かなひばしほどな黄金脚きんあしすげてさゝしてやりたいものを神通じんつうなき身の是非もなし、家財うっ退けて懐中にはまだ三百両あれどこれ我身わがみたつもと
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この偉大ゐだい現象げんしやうおこさせるものは人間以上にんげんいじやうもの人間以上にんげんいじやうかたちをしたものだらう。この想像さうざう宗教しうけうもととなり、化物ばけもの創造さうざうするのである。かつまた人間にんげんには由來ゆらい好奇心かうきしんる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ただかんたんに一時のくちさびしさをまぎらし得るということが、おそらくは茶の人望じんぼうもとであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『聖書』とかの宗教の書を許可せられしのみなりければ、ある時は英学を独習せんことを思い立ち、少しく西洋人に学びしことあるをもととして、日々勉励べんれいしたりしかど
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
いつもよく出るお今のことがもとで、それからそれへと、喧嘩いさかいことばが募って行った。時々花などにかこつけてふけっている、赤坂の女のことなども、お前の口から言い出された。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
第六十七条 憲法上ノ大権たいけんもとツケル既定きていノ歳出及法律ノ結果ニリ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会これヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
始めのうちはわざと負けて見せる博徒の手段に甘々うまうまと乗せられて、勢い込んだのが失敗のもとで、深入りするほど損をしたが、損をするほど深入りしないではいられなかった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
〔評〕維新のげふは三藩の兵力に由ると雖、抑之を養ふにあり、曰く名義めいぎなり、曰く名分めいぶんなり。或は云ふ、維新のこう大日本史だいにつぽんし及び外史にもとづくと、亦しとせざるなり。
おそらくこれは大発見、と同時に又、景岡秀三郎の身を危く滅ぼすもとでもあったのです……。
足の裏 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
しかして現今の医学の主要なる部分をむる薬物療法なるものは、実に原始人類から伝へられて来た種々の毒に関する口碑こうひもととなつて発達して来たものであつて、この意味に於て
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
あるいはきみなるものは自分に対して常に衣食いしょくきゅうしていてごろ生命のもとである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そんな訳で、私はこの記録をいまぐ発表する気はないけれど、いつかは一度、これをもとにして私の専門の探偵小説を書いて見たいと思っている。これはわばそのノートに過ぎないのだ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もう少しすると霧の来る時間になる、そうなったら益々仕事が困難になるもとだ。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
試験に及第する事、学問のよく出来る事が、即ち生活のもとであり、享楽の種であるという意味で、現在の日本の若い男女はことごとく文化の歎美者であり、物質万能主義者となったわけである。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
楠山氏への偏愛問題とかが脚本部動揺のもとになっていたようであったが、彼女がこの後いくらいきていて誰れに愛を求めようとも、抱月氏の高さ、尊さが、胸に響きかえってくるばかりで
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
が、この頓挫とんざが二葉亭の生涯の行程をこじらすもといとなったは争われない。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
また原形質とかいうもの(なんとなく彼にはそれが牡蠣かきみたいなものに想像された)をもとにして、人類の起原や生態までを包括している問題を解こうとかかるのを見ると、腹が立ってならなかった。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
奥様はコンな幸福は無いツて喜んで在らつしやいましたが、感冒おかぜの一寸こじれたのがもとあへない御最後でせう——私は尋常ひとかたならぬ御恩おめぐみに預つたもんですから、おしまひ迄御介抱申し上げましたがネ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
後の文芸協会のもとを作った由緒ゆいしょづきな家だったそうだ。
早稲田神楽坂 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
これぞ文治が大難に逢うのもとでございます。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
つかの上には一もとずつのかわらが立とう。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
すべてのもとを つくります
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
まさ秋霜しうさうとなるとも檻羊かんやうとなる勿れと此言や男子だんしたる者の本意ほんいと思ふはかへつて其方向をあやまるのもとにしてせいは善なる孩兒がいじも生立にしたがひ其質を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この属名の Platycodon はギリシア語の広いかねの意で、それはその広く口をけた形の花冠かかんもとづいて名づけたものである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
このとき以来、彼は、右の解釈をもととして、その後の活動をすることにしたのであるが、実はもう一つ、彼が考えたことがあった。それは
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)