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鮒
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ふな
ふりがな文庫
“
鮒
(
ふな
)” の例文
勘作は起きあがって笊の中を
覗
(
のぞ
)
いた。大きな二尺ばかりの鯉が四
疋
(
ひき
)
と、他に
鮒
(
ふな
)
や
鮠
(
はや
)
などが
数多
(
たくさん
)
入っていた。勘作は驚いて眼を
睜
(
みは
)
った。
ある神主の話
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
あの田圃の畔を流れる川の水は綺麗だったなあ、
芹
(
せり
)
が——芹が川の中に青々と沈んでいやがった。
鮒
(
ふな
)
を捕ったり、
泥鰌
(
どじょう
)
を取ったり……
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
其処
(
そこ
)
へ
懸
(
か
)
けては
我等
(
わしら
)
が
鮒
(
ふな
)
ぢや。
案山子
(
かゝし
)
が
簑
(
みの
)
を
捌
(
さば
)
いて
捕
(
と
)
らうとするなら、ぴち/\
刎
(
は
)
ねる、
見事
(
みごと
)
に
泳
(
およ
)
ぐぞ。
老爺
(
ぢい
)
が
広言
(
くわうげん
)
を
吐
(
は
)
くではねえ。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
する
中
(
うち
)
或日の事、学生の釣り上げた
鮒
(
ふな
)
かと思う大きな魚がわれわれのボートに飛び込んだ。学生は大きな声を出してわれわれを呼んだ。
向島
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「こんなきたねえ堀になっちまっただ」と長が云った、「田圃ができて農薬を使うからねえっ、いまじゃ
鮒
(
ふな
)
一尾いやあしねえだよ」
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
幾百千とも知れぬ小魚が、くるくると光の渦を巻きながら魚紋を描いているのを
指
(
ゆびさ
)
して、
鮒
(
ふな
)
じゃ、
鯉
(
こい
)
じゃ、といい争っていると
ノンシャラン道中記:07 アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
ところが迎ひの大臣は、
鮒
(
ふな
)
よりひどい近眼だつた。わざと馬から下りないで、両手を振つて、みんなに何か命令してると考へた。
北守将軍と三人兄弟の医者
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そのほか、植木の世話をする(水をやること)当番、みんなで飼っている
鮒
(
ふな
)
の世話をする当番、男の子、女の子の区別はない。
砂遊場からの同志:――ソヴェト同盟の共学について――
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
東の池に船などを
浮
(
う
)
けて、御所の
鵜
(
う
)
飼い役人、院の鵜飼いの者に鵜を
下
(
お
)
ろさせてお置きになった。小さい
鮒
(
ふな
)
などを鵜は取った。
源氏物語:33 藤のうら葉
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
彼女は、七八歳の子供の頃、店の小僧に手伝って貰って、たもを持ってよく金魚や
鮒
(
ふな
)
をすくって楽しんだ往時を想い
廻
(
めぐら
)
した。
晩春
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ジストマに罹った
鮒
(
ふな
)
を食べると人の
肝臓
(
かんぞう
)
にもジストマが発生して危険な事もある。だから食物は五味を調和して殺虫剤を食べなければならん。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
俊夫君は途中の魚屋で三寸ほどの
鮒
(
ふな
)
を一匹買い、それに新聞紙を幾重にも巻き、外から少しもにおいのせぬまで包んで、ポケットに入れました。
白痴の知恵
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
銀子はそこで七八つになり、昼前は筏に乗ったり、
攩網
(
たも
)
で
鮒
(
ふな
)
を
掬
(
すく
)
ったり、
石垣
(
いしがき
)
の
隙
(
すき
)
に手を入れて
小蟹
(
こがに
)
を捕ったりしていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
別に
鮒
(
ふな
)
や
鮠
(
はえ
)
の
干
(
ほ
)
したのを粉にした
鮒粉
(
ふなこ
)
と云うものを用意してこの二つを半々に混じ大根の葉を
擦
(
す
)
った
汁
(
しる
)
で
溶
(
と
)
くなかなか面倒なものであるその
外
(
ほか
)
声を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
種類としては
質
(
たち
)
のいい
鮒
(
ふな
)
なのを校長はすぐ見てとった。
利根川
(
とねがわ
)
を渡って一里、そこに板倉沼というのがある。沼のほとりに
雷電
(
らいでん
)
を祭った神社がある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
さざ波は足もとへ寄って来るにつれ、だんだん一匹の
鮒
(
ふな
)
になった。鮒は水の澄んだ中に悠々と
尾鰭
(
おひれ
)
を動かしていた。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
庭の
隅
(
すみ
)
の
蓆
(
ござ
)
の上に、鶏や
鯉
(
こひ
)
や
鮒
(
ふな
)
や芋や
蕪
(
かぶ
)
などが、山のやうにつみ重ねてあつて、そのまはりに犬達が並んでゐます。
犬の八公
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
「それにこの間向う岸であの子が一人で、
鮒
(
ふな
)
を釣っていたの。よく似た子だと思うとあの子は目が見えるような顔をして、弟さんと一しょにいたの。」
童話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「ちょっといらっしてごらんなさいな。小さな
鮒
(
ふな
)
かしらたくさんいますわ」と、藤さんは
眩
(
まぶ
)
しそうにこちらを見る。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
しかし、
今朝
(
けさ
)
程から
茄子
(
なすび
)
の黒焼を酒で飲みまして、御覧の通り、妙薬の
鮒
(
ふな
)
を潰して貼っておりますけに、おかげで余程痛みが
寛
(
くつろ
)
いだようで御座います。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
栂の尾から余等は
広沢
(
ひろさわ
)
の池を
経
(
へ
)
て嵐山に往った。広沢の池の水が
乾
(
ほ
)
されて、
鮒
(
ふな
)
や、
鰌
(
どじょう
)
が泥の中にばた/\して居た。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
鮒
(
ふな
)
、
鮠
(
はや
)
、鯉、うぐひ、鰻、何でも結構である。一體に私は海のものより川の魚が好きだ。但しこれは海のものよりたべる機會が少ないからかも知れない。
樹木とその葉:07 野蒜の花
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
煤
(
すす
)
だらけな浪宅に竹脚の膳をすえ、裂いた
松茸
(
まつたけ
)
に
鮒
(
ふな
)
の
串焼
(
くしやき
)
、貧乏徳利をそばにおいて、チビリ、チビリ、昼の酒。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「親分、
北冥
(
ほくめい
)
の魚でしょう。
鯉
(
こい
)
でも
鮒
(
ふな
)
でも構わないが、ここに魚がありさえすりゃ、三万両と転げ込むんだが、無住になった寺方じゃ、
鰯
(
いわし
)
の頭もねえ——」
銭形平次捕物控:113 北冥の魚
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まっ赤に血走った眼、大きくふくれ上がった小鼻、
鮒
(
ふな
)
のようにひらいた唇、青ざめきって
藍
(
あい
)
色に死相をたたえた顔、その顔で彼女はニヤニヤと笑ったのだ。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
小さな
鮒
(
ふな
)
であったのである。ただ口をぱくぱくとやって鼻さきの
疣
(
いぼ
)
をうごめかしただけのことであったのに。
魚服記
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
横町で
鮒
(
ふな
)
売りの声がきこえる。大通りでは大綿来い/\の唄がきこえる。冬の日は暗く寂しく暮れてゆく。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ところどころ
籾殻
(
もみがら
)
を
箕
(
み
)
であおっている。鶏は喜んであっちこちこぼれた米をひろっている。子供が小流で何か釣っている。「
鮒
(
ふな
)
か。」「ウン。」精の友達らしい。
鴫つき
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
庭
(
には
)
で
幾
(
いく
)
らでも
鮒
(
ふな
)
釣
(
つ
)
れるつちんだから
知
(
し
)
らねえものが
見
(
み
)
ちや
酷
(
ひど
)
く
困
(
こま
)
んねえ
奴等
(
やつら
)
だと
思
(
おも
)
ふ
位
(
くれえ
)
なもんだんべのさ
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
退学を決行して東京に上った余は大海に泳ぎ出た
鮒
(
ふな
)
のようなものでどうしていいんだか判らなかった。
子規居士と余
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
鯉は
何故
(
なにゆえ
)
に鯉なりや、鯉と
鮒
(
ふな
)
との相異についての
形而上
(
けいじじょう
)
学的考察、等々の、ばかばかしく
高尚
(
こうしょう
)
な問題にひっかかって、いつも鯉を捕えそこなう男じゃろう、お
前
(
まえ
)
は。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
尾張の
治黙
(
じもく
)
寺に手習にやられたが、勿論手習なんぞ仕様ともしない。川から
鮒
(
ふな
)
を獲って来て
蕗
(
ふき
)
の葉で
膾
(
なます
)
を造る位は罪の無い方で、朋輩の弁当を略奪して平げたりした。
桶狭間合戦
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
それからまた片身の魚、片目の
鮒
(
ふな
)
などという話もあります。焼いて食べようとしているところへ大師がやって来て、それを私にくれといって、乞い受けて小池へ放した。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ルピック夫人——そらそら! 嘘を
吐
(
つ
)
こうと思って、もう、うろうろしてるじゃないか、あわ
喰
(
く
)
った
鮒
(
ふな
)
みたいに……。ゆっくり返事をおし。何を失くした? こまかい?
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
露伴
(
ろはん
)
先生の評釈では、
鮒
(
ふな
)
の鮓か
鰆
(
さわら
)
の鮓となっているが、「又も」と「大事の」が、相当長期間の保存を意味するようにみえる。そうするとかぶらずしの方が、ぴったりする。
かぶらずし
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
中には
玉蜀黍
(
とうもろこし
)
を焼いて出すもあり、握飯の菜には
昆布
(
こぶ
)
に
鮒
(
ふな
)
の煮付を
突出
(
つきだし
)
に載せて売りました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
鮒
(
ふな
)
やたなごは
宜
(
い
)
い
迷惑
(
めいわく
)
な、
釣
(
つ
)
るほどに
釣
(
つ
)
るほどに、
夕日
(
ゆふひ
)
が
西
(
にし
)
へ
落
(
お
)
ちても
歸
(
かへ
)
るが
惜
(
お
)
しく、
其子
(
そのこ
)
出
(
で
)
て
來
(
こ
)
よ
殘
(
のこ
)
り
無
(
な
)
くお
魚
(
さかな
)
を
遣
(
や
)
つて、
喜
(
よろこ
)
ぶ
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
たいとでも
思
(
おも
)
ふたので
御座
(
ござ
)
りましよ
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
眼を見合せた
両人
(
ふたり
)
の間には何らの電気も通わぬ。男は魚の事ばかり考えている。久一さんの頭の中には一尾の
鮒
(
ふな
)
も
宿
(
やど
)
る余地がない。一行の舟は静かに
太公望
(
たいこうぼう
)
の前を通り越す。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
山路三里は子供には少し難儀で初めのうちこそ母よりも先に勇ましく飛んだり
跳
(
は
)
ねたり、田溝の
鮒
(
ふな
)
に石を投げたりして参りますが峠にかかる
半
(
なか
)
ほどでへこたれてしまいました。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
何時
(
いつ
)
だったか、私の家へ、獲って来たばかりの
鯰
(
なまず
)
や、
鮒
(
ふな
)
などを売りに来た時心配屋の私の母が、時節柄、チブスやコレラの流行を
怖
(
おそ
)
れて買わなかったら、兵さんは、
怪訝
(
けげん
)
そうに
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
鰌
(
どじょう
)
なども八寸以上のものがよく獲れるそうである、沼尻川でいつか捕えた
鮒
(
ふな
)
は、鮒とはいえない程余りに大きかったので、これこそ主とでもいう
可
(
べ
)
きものと如何にも気味わるく
尾瀬雑談
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
家に居ると息苦しいので、午飯をすますとすぐ、俊三と二人で
鮒
(
ふな
)
釣りに行くことにした。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
蚯蚓 を用ゐるものは
鮠
(
はや
)
釣、
鮒
(
ふな
)
釣、ドンコ釣、ゲイモ釣、
鰻
(
うなぎ
)
釣、
手長海老
(
てながえび
)
釣、スツポン釣
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
風の日には吹きよせられたあとに水があらわれて
鮒
(
ふな
)
が鼻をならべてるのがみえる。白い蓮の花の咲きみちてるのはこうごうしいものである。
蕾
(
つぼみ
)
はさきのほうだけほんのりとあかい。
妹の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
夏じゅう寺内のK院の古池で
鮒
(
ふな
)
を釣って遊んだ
継
(
つ
)
ぎ竿、腰にさげるようにできたテグスや針など入れる箱——そういったものなど詰められるのを、さすがに淋しい気持で眺めやった。
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
此所へ落ちたらそれ
限
(
ぎ
)
りだ。藻や
菱
(
ひし
)
が手足に
搦
(
から
)
んで、どうにも斯うにも動きが取れなく成るんだぞ。へへ、鯉でさえ、
鮒
(
ふな
)
でさえ、大きく成ると藻に搦まれて、往生するという魔所だ。
死剣と生縄
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
それは今の季節の京都に必ずなくてはならぬ
鰉
(
ひがい
)
の焼いたの、
鮒
(
ふな
)
の子
膾
(
なます
)
、
明石鯛
(
あかしだい
)
のう塩、それから
高野
(
こうや
)
豆腐の
白醤油煮
(
しろしょうゆに
)
に、柔かい卵色湯葉と真青な
莢豌豆
(
さやえんどう
)
の煮しめというような物であった。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
「ほら! ほら! あとすこしでお濠でござるぞ。お濠の
水雑炊
(
みずぞうすい
)
おたしなみなさるも御一興。
鮒
(
ふな
)
、鯉、どしょう、お好みならばいもり、すっぽんもおりましょうぞ。——ほらッ。ほらッ」
旗本退屈男:11 第十一話 千代田城へ乗り込んだ退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
小姓は
鮒
(
ふな
)
のやうに泳ぐやうな
手附
(
てつき
)
をした。それを見て一座は声を揚げて笑つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そこで、私は兄妹を伴い巣離れの
鮒
(
ふな
)
を狙い、水之趣味社の人々と行を共にして、千葉県と茨城県にまたがる水郷地方へ釣遊を試みたことがある。それは、娘が女学校の一、二年の頃であった。
瀞
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
“鮒(フナ)”の解説
フナ(鮒、鯽、鮅)は、コイ目コイ科コイ亜科フナ属(フナぞく、学名: Carassius)に分類される魚の総称。ユーラシア大陸において広く分布する魚の一種。
(出典:Wikipedia)
鮒
漢検準1級
部首:⿂
16画
“鮒”を含む語句
小鮒
池鯉鮒
轍鮒
寒鮒
鮒鮓
緋鮒
大鮒
鮒鮨
鮒鱮
鮒釣
鮒粉
鮒男
鮒屋
鮒侍
鮒佐
近江鮒
鯉鮒
燒鮒
藻臥束鮒
片目鮒
...