見給みたま)” の例文
かつ面白おもしろ人物じんぶつであるから交際かうさいして見給みたまへとふのでありました、これからわたしまた山田やまだ石橋いしばしとを引合ひきあはせて、桃園とうゑんむすんだかたちです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そして、最も平凡な犯罪者の心理で、あんな風に証人の一役を買って出た——と言うわけさ。……兎に角この手提蓄音器ポータブルを開けて見給みたまえ。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
問題は何がその鉄瓶を傾けたかという点だよ。実はね、僕はさっき、君がここへ来るまでに、変なものを発見したのだ。ソラ、これを見給みたま
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その局長が下僚に向ってどっしり構えているところをちょっと見給みたまえ——それこそ怖ろしくなって、言葉も出ない位だ。
幼君えうくんこれを見給みたまひて、「さても恰好かつかうかな」とちてのたまへば「なるほどよろしくさふらふ」とかごなかにてこたへたり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
冬の雪おろしは遠慮なく身をきる寒さ、うをといひては甲府まで五里の道を取りにやりて、やうやう𩻩まぐろの刺身が口にる位、あなたは御存じなけれどお親父とつさんに聞て見給みたま
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見給みたまえ、維新以来我輩等の友人にて大事を成したものは、皆その当時乱暴者と称せらるる手合で、一室に閉じこもって学問ばかりしておった者は、実際何の役にも立たなかった。
運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ゆめ一個ひとり風采ふうさい堂々だう/\たる丈夫ますらをあらはれて、自分は石清虚せきせいきよといふものである、けつして心配しんぱいなさるな、君とわかれて居るのは一年ばかりのことで、明年八月二日、あさはや海岱門かいたいもんまう見給みたま
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
この大不調和を忍んでいる所が、既に無形の大失敗じゃないか。何故と云って見給みたまえ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて奧方ある夜のゆめ日輪にちりん月輪ぐわつりん兩手りやうてにぎると見給みたまひ是より御懷姙ごくわいにん御身おんみとはなり給ふ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
諸君の理性は、決してそんなはずがないと思う。しかも知覚上の事実として、汽車はたしかに反対に、諸君の目的地から遠ざかって行く。そうした時、試みに窓から外を眺めて見給みたまえ。
猫町:散文詩風な小説 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
然しその力はいう。わしを使って見給みたまえ。案外人間を真剣にするものだから。お前は遂に彼に従うことにした——お前が精神的に死に切れなかったのはまだ恋の熱情があったからだね。
ある日の蓮月尼 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
福澤々々、君のように無法な事ばかりうが、マアく考えて見給みたまえ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
片葉かたはとだにも見給みたまはじ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
考えても見給みたまえ。
地獄街道 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ホラ見給みたまえ。あの時と今と、一体どう違うのだ。君は、妙子が今どこにいるか、知っているのかね」
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ふゆゆきおろしは遠慮ゑんりよなくをきるさむさ、うをといひては甲府かうふまで五みちりにやりて、やう/\𩻩まぐろ刺身さしみくちくらゐ、あなたは御存ごぞんじなけれどお親父とつさんにきい見給みたま
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
禪師ぜんじ見給みたまひて、やがて禪杖ぜんぢやうとりなほし、作麽生そもさん何所爲なんのしよゐぞと一喝いつかつして、かれかうべうちたまへば、たちまちこほり朝日あさひふがごとせて、かの青頭巾あをづきんほねのみぞ草葉くさばにとゞまりける。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
通り候をり出格子でがうしの中にて金談きんだんの聲致すにより何事やらんと承まはりしに彦兵衞事無心むしんの處折惡をりあしく百兩は御門跡に奉納の願ひにて御講中おかうぢうに差上るつもりこれ見給みたまへとて彼女隱居は紙に包みし金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
見給みたまえ、一時は相当の声望信用あって世上に持囃もてはやされた連中でもいつとはなく社会と遠ざかり、全然時勢後れの骨董物となりさがりて、からくも過去の惰力によりて旧位置を維持している者や
我輩の智識吸収法 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
考えて見給みたまえ随分非常識な話じゃないかね。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
むねのなやみにのおそろしく、おもへば卑怯ひけふ振舞ふるまひなりし、おこなひはきよくもあれこゝろくさりの棄難すてがたくばおな不貞ふていなりけるを、いざさらば心試こゝろだめしにはいまゐらせん、殿との我心わがこゝろ見給みたま
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
早い話が、ある貴族的な集会所でオブシーン・ピクチュアの活動写真をやったなんてことは、世間周知しゅうちの事実だが、あれを考えて見給みたまえ。あれなんか、都会の暗黒面の一片鱗へんりんに過ぎないのだよ。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
立直たてなほやうに相だんして見給みたまへと深切しんせつ言葉ことばに庄三郎大に喜び何から何迄なにまで段々だん/\御世話おせわかたじけなく是にすぎたる事はなし然れども我々われ/\かたまゐ養子やうしあるべき能々よく/\御聞糺おんきゝたゞしくださるゝやうひとへ御頼おたのみ申なりと云けるにぞしからば先方へ申きくべきあひだ御家内うちかたへも此段このだん能々よく/\御相談ごさうだん成るべし我等方は明日みやうにちしかいたしたる返事へんじ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
にはたすくるひとし、此小このちいさきすてたまふに仔細わけはあるまじ、美事みごとすてゝ此家このいゑきみものにしたまふおか、りて見給みたまへ、れをばてゝ御覽ごらんぜよ、一ねん御座ござりまするとて、はたと白睨にらむを
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
びたりとかやまいもとはお前様まへさまはるゝも道理どうりなりらざりしわれうらめしくもらさぬきみうらめしく今朝けさ見舞みまひしときせてゆるびし指輪ゆびわぬきりてこれ形見かたみとも見給みたまはゞうれしとて心細こゝろぼそげにみたる其心そのこゝろ今少いますこはやらばくまでにはおとろへさせじを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)