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萌
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も
ふりがな文庫
“
萌
(
も
)” の例文
雪が解け、草が
萌
(
も
)
え、そして日光の美しい五月が来た。五月十一日の日曜に久しぶりに川べりに来ると、対岸の町に市が立つてゐる。
イーサル川
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
辰男の明け方の夢には、
薇
(
わらび
)
の
萌
(
も
)
える學校裏の山が現れて、其處には可愛らしい
山家乙女
(
やまがをとめ
)
が眞白な手を
露出
(
むきだ
)
して草を刈りなどしてゐた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
水が
温
(
ぬる
)
み、草が
萌
(
も
)
えるころになった。あすからは外の為事が始まるという日に、二郎が邸を見廻るついでに、三の木戸の小屋に来た。
山椒大夫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
上野の桜は咲いたかしら……桜も何年と見ないけれど、早く若芽がグングン
萌
(
も
)
えてくるといい。夕方ベニのパパが街から帰ってくる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
戸山ヶ原にも春の草が
萌
(
も
)
え出して、その青々とした原の上に、市内ではこのごろ滅多に見られない大きい
鳶
(
とんび
)
が悠々と高く舞っていた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
▼ もっと見る
同じような
夫
(
おっと
)
の墓を思いながら、あちこちと春草の
萌
(
も
)
えだした中からタンポポやスミレをつんで
供
(
そな
)
えると、二人はだまって墓地を出た。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
美しさ、限りもなく、醜さ、あやうさも、際限のない、人間の落花期を、また、大地からは、べつな
人草
(
ひとぐさ
)
が
萌
(
も
)
えんとしています。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
裸になった
梢
(
こずえ
)
の発揮する生気はなんとも云えなかった。また、その梢に新芽が
萌
(
も
)
えだしたときの初々しさといったら、なかった。
犬の生活
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
そうやって出て行くその若衆の、うしろ姿を見送った時、鳰鳥の胸にはこれまでになかった、恋心がほのかに
萌
(
も
)
えたのであった。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それに代って、樹々の
梢
(
こずえ
)
に、うつくしい若葉が
萌
(
も
)
え
出
(
い
)
で、高き
香
(
か
)
を放ちはじめた。
陽
(
ひ
)
の光が若葉を
透
(
とお
)
して、あざやかな緑色の中空をつくる。
二、〇〇〇年戦争
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
人形芝居は下から見るに限ると云う意見の老人は「ここがいいね」と
殊更
(
ことさら
)
土間へ席を取ったので、若葉の
萌
(
も
)
える頃ではあるが
蓼喰う虫
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
でも軽井沢ほど小諸は寒くないので、汽車でここへやって来るに随って、枯々な感じの残った田畠の間には勢よく
萌
(
も
)
え出した麦が見られる。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
石垣の草には、
蕗
(
ふき
)
の
薹
(
とう
)
も
萌
(
も
)
えていよう。特に桃の花を
真先
(
まっさき
)
に挙げたのは、むかしこの一廓は桃の組といった組屋敷だった、と聞くからである。
絵本の春
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
扉
(
ドア
)
などはとうのむかしになくなって、板敷きの床のあいだから草が
萌
(
も
)
えだし、枠だけになった
硝子
(
ガラス
)
窓を風が吹きぬけていた。
キャラコさん:04 女の手
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
橘は用意の酒と
肴
(
さかな
)
とを女房たちにはこばせ、まだ
萌
(
も
)
えたばかりの草の上にひろげた。二人の若者ははじめて橘がものを食べるのを見たのである。
姫たちばな
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ひょろ長い
榛
(
はん
)
の片側並木が
田圃
(
たんぼ
)
の間に一しきり長く続く。それに沿って細い川が流れて
萌
(
も
)
え出した水草のかげを
小魚
(
こうお
)
がちょろちょろ泳いでいる。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
野原の道に、やはらかい春草が一めんに
萌
(
も
)
え出てゐて、そこに一人の女の子が、小腰をかがめて何か白い花を摘み取らうとしてゐるところでした。
のぞき眼鏡
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
菊芋という奴はたしかに豚の飼料には
宜
(
よろ
)
しい、第一その繁殖力が盛んで、
萌
(
も
)
え出してからは、
苅
(
か
)
っても苅ってもあとからあとから成長する、併し
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
割合に枝の
繁
(
こ
)
まない所は、依然として、うららかな春の日を受けて、
萌
(
も
)
え出でた
下草
(
したぐさ
)
さえある。
壺菫
(
つぼすみれ
)
の淡き影が、ちらりちらりとその間に見える。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
チョビたちは校庭の主だから、風のあたらない日だまりをよく知っていて、いち早く草の
萌
(
も
)
え出すところへ来て集る。
愉快な教室
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
源氏・平家ともに持ちつづけた「都へ」の憧憬は、父頼朝の代に封禁されても、実朝の心に
萌
(
も
)
え出ないとは限らない。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
座敷から見渡すと向うの河原の
芝生
(
しばふ
)
が真青に
萌
(
も
)
え
出
(
い
)
でて、そちらにも
小褄
(
こづま
)
などをとった美しい女たちが笑い興じている声が、花やかに聞えてきたりした。
黒髪
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
日蔭の窪地にはまだ雪が残っていた。
萌
(
も
)
えだした雑草が路を
塞
(
ふさ
)
いでいた。
嫩
(
わか
)
い木の葉は浅黄色に陽を透していた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
彼
(
かれ
)
は
毎年
(
まいねん
)
冬
(
ふゆ
)
からまだ
草木
(
さうもく
)
の
萌
(
も
)
え
出
(
だ
)
さぬ
春
(
はる
)
までの
内
(
うち
)
に
彼等
(
かれら
)
にしては
驚
(
おどろ
)
くべき
巨額
(
きよがく
)
の四五十
圓
(
ゑん
)
を
贏
(
か
)
ち
得
(
う
)
るのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その年も
何時
(
いつ
)
しか暮れて、また来る春に
草木
(
くさき
)
も
萌
(
も
)
え
出
(
いだ
)
しまする
弥生
(
やよい
)
、世間では上野の花が咲いたの向島が芽ぐんで来たのと
徐々
(
そろ/\
)
騒がしくなって参りまする。
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
その
衣
(
ころも
)
は、今
萌
(
も
)
えいでし若葉のごとく縁なりき、縁の羽に打たれ
飜
(
あふ
)
られて彼等の
後方
(
うしろ
)
に曳かれたり 二八—三〇
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
一つは枯れて土となり、一つは若葉
萌
(
も
)
え花咲きて、
百年
(
ももとせ
)
たたぬ間に野は菫の野となりぬ。この
比喩
(
ひゆ
)
を教えて国民の心の
寛
(
ひろ
)
からんことを祈りし
聖者
(
ひじり
)
おわしける。
詩想
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
残雪がまだ消えやらず化粧柳の若芽が真紅に
萌
(
も
)
え立つ頃には宿の庭先に兎が子供を連れて遊びに来たり、山鳥が餌をあさり歩くことも珍しくないそうである。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
しかし、
山吹
(
やまぶき
)
は、この
寒気
(
かんき
)
と
戦
(
たたか
)
って、ついに
負
(
ま
)
けませんでした。やがて、
春
(
はる
)
がめぐってきたときに、
緑色
(
みどりいろ
)
の
芽
(
め
)
を、
哀
(
あわ
)
れな
曲
(
ま
)
がった
枝
(
えだ
)
に
萌
(
も
)
やしたのであります。
親木と若木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
短く美しく刈り込まれた
芝生
(
しばふ
)
の芝はまだ
萌
(
も
)
えていなかったが、所まばらに立ち連なった小松は緑をふきかけて、
八重
(
やえ
)
桜はのぼせたように花でうなだれていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
嫩葉
(
わかば
)
の
萌
(
も
)
え出る木々の
梢
(
こずえ
)
や、草の
蘇
(
よみが
)
える黒土から、
咽
(
むせ
)
ぶような
瘟気
(
いきれ
)
を発散し、寒さに
怯
(
おび
)
えがちの銀子も、何となし
脊丈
(
せたけ
)
が伸びるような
歓
(
よろこ
)
びを感ずるのであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
(歌い出す)春のはじめのおん喜びは、おんよろこびは、さわらびの
萌
(
も
)
えいずるこころなりけり、きみがため、摘む衣の
袖
(
そで
)
に、雪こそかかれ、わがころも手に……
出家とその弟子
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
山形で一番さきに春の訪れるのを感じるのは、この桑の若芽の
萌
(
も
)
え
出
(
い
)
ずる頃である。
丈
(
たけ
)
の低い、ふしくれだった
頑丈
(
がんじょう
)
なその幹と枝ぶりはゴッホの筆触を思わせた。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
翔
(
か
)
けってる翼のように広がった橅の枝からは雪解けの
零
(
しずく
)
が落ちていた。牧場を
覆
(
おお
)
うている白いマントを通して、柔らかい緑色の草の細芽がすでに
萌
(
も
)
え出していた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
爾
(
なんぢ
)
畎
(
たみぞ
)
を大にうるほし、
畝
(
うね
)
をたひらにし、
白雨
(
むらさめ
)
にてこれをやはらかにし、その
萌
(
も
)
え出づるを祝し、また
恩恵
(
めぐみ
)
をもて年の
冕弁
(
かんむり
)
としたまへり。
爾
(
なんぢ
)
の途には
膏
(
あぶら
)
したゝれり。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
あたたかい太陽の下の木々には芽が
萌
(
も
)
え出し、楽しげな鳥の声が方々から聞こえるようになりました。
虫の生命
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
海若藍平
(著)
同時に彼は芸術の空気を——ひそやかな生みの喜びのなかで、すべてが
萌
(
も
)
え、
醸
(
かも
)
され、芽ばえてゆく不断の春の、生暖かい、甘い、芳香にみちた空気を呼吸していた。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
如何に世は寒いにしても、草はいつか地の懐から
萌
(
も
)
え出るであろう。よし刃の勢いに攻められる事があっても人間そのものが朝鮮の運命を固く保護すると私は確信する。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
そこからは、比叡の山の青葉若葉の
萌
(
も
)
えたつような色どりの中に
文殊楼
(
もんじゅろう
)
の
軒端
(
のきば
)
が白々とみえる。
現代語訳 平家物語:02 第二巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
また生え乱れる八重
葎
(
むぐら
)
にも手をつけぬままの、荒々しく峨々たる山の急斜面に置かれ、石の土台さえも地衣や
蘚
(
こけ
)
に被われ、岩の裂目からは美しい
羊歯
(
しだ
)
の葉が
萌
(
も
)
え出ている。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
「いろ/\の」の句は、春になっていろいろの草が
萌
(
も
)
え出る、嫁菜とか
薺
(
なずな
)
とか
蓬
(
よもぎ
)
とか芹とかそれぞれ名があるが、それを一々覚えるのは難しいことだというのであります。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ささやかな菜園にわずかに
萌
(
も
)
え
出
(
で
)
た
小松菜
(
こまつな
)
を摘んで朝々の味噌汁の
仕度
(
したく
)
をする。そんな生活の様子がまざまざと思い出される。菜園にはまだ雪が消え残っていたのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
かつての日そこに眺めた森や林や小川や草原の美しさを
偲
(
しの
)
んでは涙を流し、年若い詩人は、やがてそこに
萌
(
も
)
え出るであろう、新しい草々の芽の鮮やかさを想っては、涙を流す。
二十歳のエチュード
(新字新仮名)
/
原口統三
(著)
と言った横蔵の唇が、いつになく
物懶
(
ものう
)
げであったように、それから数日後になると、果たしてステツレルの出現と合わしたかのごとく、城内には、
悪疫
(
えやみ
)
の芽が
萌
(
も
)
えはじめてきた。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
その様な感情を起させるものは、空を覆ってのしかかって来る様な、森の雄大さにもありましょう。或は又
萌
(
も
)
え立つ若葉から発散する、あの圧倒的な
獣物
(
けもの
)
の香気にもありましょう。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
嬉々
(
きき
)
たる日の光が、新しく
萌
(
も
)
え出たばかりの輝いてる木の葉の間にさし込んでいた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
やれ懐かしかったと喜び、水は
温
(
ぬる
)
み下草は
萌
(
も
)
えた、
鷹
(
たか
)
はまだ出ぬか、
雉子
(
きじ
)
はどうだと、
終
(
つい
)
に
若鮎
(
わかあゆ
)
の
噂
(
うわさ
)
にまで先走りて若い者は
駒
(
こま
)
と共に元気
付
(
づき
)
て来る中に、さりとてはあるまじき
鬱
(
ふさ
)
ぎ
様
(
よう
)
。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
白堊
(
はくあ
)
の小学校。土蔵作りの銀行。寺の屋根。そしてそこここ、西洋菓子の間に詰めてあるカンナ
屑
(
くず
)
めいて、緑色の植物が家々の間から
萌
(
も
)
え出ている。ある家の裏には
芭蕉
(
ばしょう
)
の葉が垂れている。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
殊に春さき、——庭の
内外
(
うちそと
)
の木々の梢に、一度に若芽の
萌
(
も
)
え立つ頃には、この
明媚
(
めいび
)
な人工の景色の背後に、何か人間を不安にする、野蛮な力の迫つて来た事が、一層露骨に感ぜられるのだつた。
庭
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お聴きなさい、農夫が
種播
(
たねま
)
きに出た。ところで、路傍に落ちた種はすぐに鳥に食われてしまった。土の薄くかぶった岩地の上に落ちた種は、
萌
(
も
)
え出るには出たが日に焼かれてすぐに枯れてしまった。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
萌
漢検準1級
部首:⾋
11画
“萌”を含む語句
萌芽
未萌
下萌
草萌
萌黄匂
萌黄縅
萌出
斑萌
萌黄羅紗
萌黄
萌黄色
萌葱
萌黄緞子
薄萌黄
留萌
郝萌
萌黄地
萌初
萌黄紗
葭萌関
...