かわ)” の例文
これが全身まるで彫刻製作されるとなると、原図案とはまたかわったものとなることであるが、おおむねこの原図によったものでありました。
前に述べたソーマトランパスなどでは総計二十二個の発光器を分類するとおよそ十種類のおのおのかわった仕掛けで出来ているそうな。
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
神経衰弱の結果こう感ずるのかも知れないとさえ思わなかった彼は、自分に対する注意の足りない点において、細君とかわる所がなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「少しくらい体をいためたって、介意かまうもんですか。私たちは何かかわったことをしなければ、とても女で売出せやしませんよ」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
矢張り友達は多少毛色のかわったのも変化のために必要だ。そうでないと、長短相補ってお互に啓発し合う切っかけがない。
勝ち運負け運 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
男女が逢瀬の短きを恨んで鶏を殺す和漢の例を上に挙げたが、それと打ってかわった理由から鶏を殺す話がイタリアにある。
杢「あれは中々感心な男だ、只の人間じゃない、計り炭を売るなぞと何うも工夫が旨い、それに云う事がみんかわっているよ」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さし代ッたなりに同じ話柄はなしの種類のかわッたのが、後からも後からも出て来て、未来永劫えいごう尽きる期がないらしく見えた。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
神の氏子のこの数々の町に、やがて、あやかしのあろうとてか——その年、秋のこの祭礼まつりに限って、見馴みなれない、商人あきゅうどが、妙な、かわったものを売った。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
冥途よみじつともたらし去らしめんこと思えば憫然あわれ至極なり、良馬りょうめしゅうを得ざるの悲しみ、高士世にれられざるの恨みもせんずるところはかわることなし、よしよし
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大物のこいをやる人は、その執拗な、稀な、強さと電力が、絶世の張りある美人に思へようし、ぶり松魚かつおへまで望みを延ばし、或は外国流なかわり種を捜して
魚美人 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
その半面よこがおを文三がぬすむが如く眺めれば、眼鼻口の美しさは常にかわッたこともないが、月の光を受けて些し蒼味をんだ瓜実顔うりざねがおにほつれ掛ッたいたずら髪
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かわった所はないかと問い返しました、左の手は斯々で異様な手袋に隠して居ると云いました所、彼は顔色を変えて驚き、頓て、事に由ると養母殺しの輪田夏子が
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「何さ、高遠の妖怪は諏訪の妖怪と事かわ意気地いくじがないのでござろうよ」などと皮肉を云う者もある。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
標本みほんとしてわたくしはそれなかすこ毛色けいろかわったものの人相書にんそうがき申上もうしあげてくことにいたしましょう。
無数に生まれて一人一人にかわった無量の生涯しょうがいのこしてった人のなかで、よい人とよくない人と、優れた人と劣った人と、満足した人としなかった人とをくらべてみたら
最も楽しい事業 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
これより両犬義を結び、親こそかわれこののちは、兄となりおとととなりて、共に力を尽すべし。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
幼い頃のおぼろげな記憶の糸を辿たどって行くと、江戸の末期から明治の初年へかけて、物売や見世物の中には随分面白いかわったものがあった。私はそれらを順序なく話して見ようと思う。
梵雲庵漫録 (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
蒲団の上に足をのばしながら、何か近頃この街で珍らしくかわった話は無いか? 私が問うと、老按摩あんま皺首しわくび突出つんだして至って小声に……一週間前にしかもこの宿で大阪おおさか商家あきゅうどの若者が
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
エヒミチはいまもなおこの六号室ごうしつと、ベローワのいえなんかわりもいとおもうていたが、どううものか、手足てあしえて、ふるえてイワン、デミトリチがいまにもきて自分じぶんのこの姿すがた
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
着けたりといえどもさる友市ともいち生れた時は同じ乳呑児ちのみごなり太閤たいこうたると大盗たいとうたるとつんぼが聞かばおんかわるまじきも変るはちりの世の虫けらどもが栄枯窮達一度が末代とは阿房陀羅経あほだらぎょうもまたこれを
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
昔の形と少しもかわる処なく、実に美わしき一種の固形体と化して残りおるなり、されど余はそれらの物を眺めおるうちに、真に名状すべからざる寂寞を感じたり、寂寞はやがて恐怖と化せり
南極の怪事 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
その頃、大徳寺の北派といわれる三玄院には、常に生死の問題を解決しようとする侍とか、武術の研究には同時に精神の究明が必要であると悟った武道家とか、かわった人物の出入りが多くて
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
部分部分に作者の才気の見えるデリカアな所が多いのと、舞台面が一寸ちよつとかわつて居るのとで、昨冬来俗衆の間に評判のよいプリム・ロオズの様な単調モノトオンな感を与へず、相応に芸術上の効果を備へて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
他の骸骨とすこしもかわるところがなかった。
誰? (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「何かかわったことでもありましたかい?」
国際殺人団の崩壊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昨日きのうかわらぬ慣例しきたりに従えばよい。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
言葉も顔つきもかわっていました
人としてかわりないものを。
「店並は東京とかわらないが、住宅が妙だね。入口が馬鹿に小さい。君の家もあんな鈴虫籠すずむしかごのような細い格子構えかい?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
さてこの土堤に捨てられた角は、日数経て一パーム、もしくはそれ已上いじょう長き根を石だらけの荒地に下す事、草木にかわらず、他に例もなければ訳も別らず。
ほかの職人とはかわっているとは聞いていたが、それ程まで見識のある者とは思わなんだ、今の世に珍らしい男である
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小児こどもの内は間抜けのようだったけれど、すっかり人がかわって、癇癪持かんしゃくもちの乱暴な奴になったと見えるんだよ。……姉さん、年紀としがゆくと変るものかしら。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
名高い女流作家とかわった愛の巣を造っている若い作家を訪れたりした時には、庸三はホテルの人たちが寝静まったころに、やっと原稿紙に向かうことができた。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
昨日と今日とは見どころかわれば同じ流れながら如何なるさまをかなせると、路より少し左に下る小径のあるにまかせて伝い行くに、たちまちにしてささやかなる家を得たり。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
家数にして五百軒、いらかを並べ軒を連ね、規矩きく整然と立ち並んださまは、普通の町とかわりがない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
別段かわった事もない。小娘でないから、少しは物慣れた処もあったろうが、其は当然あたりまえだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
よるよるで、また神様かみさま御礼おれい申上もうしあげます。『今日きょうにち仕事しごと無事ぶじつとめさせていただきまして、まことに難有ありがとうございました……。』その気持きもちべつ現世げんせときすこしもかわりはしませぬ。
拾い上げてあらため見るに是れ通常の酒瓶の栓にして別にかわりし所も無し、上の端には青き封蝋の着きし儘にて其真中にきりをもみ込し如き穴あるは是れ螺旋形うずまきのコロップぬきにて引抜ひきぬきたるあとなるべし
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
自分は中村といっしょに方々遊んで歩いた。中村も以前とかわって、貴様の読んでいる西洋の小説には美人が出て来るかなどとは聞かなかった。かえって向うから西洋の美人の話をいろいろした。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところが、丁度ちょうどわたしもこのせつひまもらって、かわった空気くうきいに出掛でかけようとおもっている矢先やさき、どうでしょう、一しょ付合つきあってはくださらんか、そうして旧事ふるいことみんなわすれてしまいましょうじゃありませんか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
娘は、別にかわったこともありませんが、容色きりょうは三人のうちで一番かった——そう思うと、今でも目前めさきに見えますが。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「此奴も奇抜な意匠だ。左右少し面相のかわっているのはめすおすの積りなんだろう。君、用心し給え。掏摸すりがいるぜ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
なにさし捨てられては仇は討てず、亦これから先は長い旅、水もかわり気候も違うから、詰らん物を食して腹をいためぬ様にしなさい、左様そうじゃアないか
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼女は十六時間もかかる古里と東京を、銀座へ出るのとかわらぬ気軽さでったり来たりするのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
また一八七二年ミネプリ辺で猟師が狼窠から燻べ出しきずだらけのまま件の孤児院に伴れ来た児は動作全く野獣で水を飲む様狗にかわらず、別けて骨と生肉を好み食う
いずれ趣致おもむきなきはなけれど、ここのはそれらとはさまかわりて、巌という巌にはあるが習いなる劈痕さけめ皺裂ひびりほとんどなくして、光るというにはあらざれど底におのずからうるおいを含みたる美しさ
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ト常にかわッた文三の決心を聞いてお政はようやく眉を開いてしきりに点頭うなず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かわった美人にございます。おっ、笑いましてございます」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
秀子「ハイ是ほどかわった身の上は二人と此の世に有りますまい、私は最う一切の力が盡きて仕舞いました」権田「夫だから私が助けて上げようと云うのです」秀子「ダッテ貴方は——」権田「イヤ何も「ダッテ」などと仰有ることは有りません
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)