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洩
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もら
ふりがな文庫
“
洩
(
もら
)” の例文
「
余
(
あんま
)
り
酷
(
ひど
)
すぎる」と
一語
(
ひとこと
)
僅
(
わず
)
かに
洩
(
もら
)
し得たばかり。妻は涙の泉も
涸
(
かれ
)
たか
唯
(
た
)
だ自分の顔を見て血の気のない
唇
(
くちびる
)
をわなわなと
戦
(
ふる
)
わしている。
酒中日記
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
重吉とは兄弟
交際
(
づきあい
)
の友吉爺さんは自分の家でいっしょについた正月の五升の餅を届けに来て、実枝に向って、そう今昔の感を
洩
(
もら
)
した。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
疲れた人のような五月の空は、時々に薄く眼をあいて夏らしい光を
微
(
かす
)
かに
洩
(
もら
)
すかと思うと、またすぐに
睡
(
ね
)
むそうにどんよりと暗くなる。
磯部の若葉
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「藤十郎は、生れながらの色好みじゃが、まだ人の女房と
念頃
(
ねんごろ
)
した覚えはござらぬわ」と、冷めたい苦笑を
洩
(
もら
)
しながら付け加えた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
かくても始末は善しと謂ふかと、
翁
(
をぢ
)
は
打蹙
(
うちひそ
)
むべきを
強
(
し
)
ひて
易
(
か
)
へたるやうの
笑
(
ゑみ
)
を
洩
(
もら
)
せば、満枝はその
言了
(
いひをは
)
せしを喜べるやうに笑ひぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
▼ もっと見る
そして養父から、善く働く作を自分の婿に
択
(
えら
)
ぼうとしているらしい
意嚮
(
いこう
)
を
洩
(
もら
)
されたときに、彼女は体が
竦
(
すく
)
むほど
厭
(
いや
)
な気持がした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
も一つは父のいったことばで、ある時、父はしみじみと、幼い私に言うような事でない言葉を
洩
(
もら
)
した。よほど胸につまっていたのであろう。
旧聞日本橋:15 流れた唾き
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
こんな
溜
(
た
)
め
息
(
いき
)
を
洩
(
もら
)
しながら、大伴氏の
旧
(
ふる
)
い習しを守って、どこまでも、宮廷守護の為の武道の伝襲に、努める外はない家持だったのである。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
初めから一冊の書とする予期があつたのなら、少しは読者の興味を刺激するに足る経験や観察を書き
洩
(
もら
)
さずに置いたものを。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
平次は何か考へたことがあるらしく、『御朱印紛失』は誰にも
洩
(
もら
)
さぬやうにと嚴重に主人の口留めをした上、素知らぬ顏で土藏から出ました。
銭形平次捕物控:146 秤座政談
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それはそれにて可いとして、
少時
(
しばらく
)
なりとも下枝を
蔵匿
(
かくまい
)
たる旅店の亭主、女の口より言い
洩
(
もら
)
して主人を始め
我
(
おれ
)
までの悪事を心得おらんも知れず。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
あとで入間川検査役が
洩
(
もら
)
した言葉に『言葉道断ですよ』と嘆声を発してゐるを考へても、『
呑込
(
のみこ
)
み八百長』はすぐ看破されるに決つてゐるのだ。
呑み込み八百長
(新字旧仮名)
/
栗島山之助
(著)
私はあまりの不思議さに、何度も
感嘆
(
かんたん
)
の声を
洩
(
もら
)
しますと、ミスラ君はやはり微笑したまま、また
無造作
(
むぞうさ
)
にその花をテエブル掛の上へ落しました。
魔術
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
いや人間は賢いものだ、もし
蓬
(
よもぎ
)
と
菖蒲
(
しょうぶ
)
の二種の草を
煎
(
せん
)
じてそれで
行水
(
ぎょうずい
)
を使ったらどうすると、大切な秘密を
洩
(
もら
)
してしまったことにもなっている。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
勾玉は彼の胸の上で、青い
蜥蜴
(
とかげ
)
の
刺青
(
ほりもの
)
を
叩
(
たた
)
いて音を立てた。彼は加わった胸の重みを愛玩するかのように、ひとり微笑を
洩
(
もら
)
しながら玉を
撫
(
な
)
でた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
かの女は
呆
(
あき
)
れて眼を見張った。まだ子供子供している青年の
可愛気
(
かわいげ
)
な顔を見た。青年は伏目になって、しかし、意地強い恥しげな微笑を
洩
(
もら
)
した。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
其れは自分が対象にしてゐる恋人の生温るさには似ない熱意を見せて自分の近づくのを待つ薔薇ではないかと云ふのと同時に作者は溜息を
洩
(
もら
)
した。
註釈与謝野寛全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
私はもうくよくよすることを止め、先程とは打って変って、ニヤニヤと気味の悪い
独
(
ひと
)
り笑いを、
洩
(
もら
)
しさえするのでした。
覆面の舞踏者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
作戦の機密を
洩
(
もら
)
させまいと努力しているのだというか、とにかく林の如く静かであることが、汎米連邦側にはすこぶる気味のわるいものであった。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「一
詩箋
(
しせん
)
後便
迄
(
まで
)
に社中の者どもに書かせ差上げ申す可く候。
万
(
よろ
)
づ後便に申し
洩
(
もら
)
し候。
頓首
(
とんしゅ
)
。春道様。四月二十日。藍。」
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
だから、他人をやり過したあと、そういう受け答えに抜け眼のない自分の性格に満足して、思わず会心の微笑を
洩
(
もら
)
す。
南方郵信
(新字新仮名)
/
中村地平
(著)
中には気味の悪い笑を
洩
(
もら
)
して、さもさも、被害者の解剖されるのを喜ぶかのような表情をするものさえありました。
三つの痣
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
斯う言つて多吉は無邪気な笑ひを
洩
(
もら
)
した。それにつれて皆笑つた。危く破れんとした平和は何うやら
以前
(
もと
)
に還つた。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
するとちょうど助手の不注意で一枚余分に焼いたのが在ったので、草川巡査は久し振りに満足そうな笑顔を
洩
(
もら
)
した。
巡査辞職
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
たゞ
一寸
(
ちよつと
)
洩
(
もら
)
して
置
(
お
)
くが、
此
(
この
)
艇
(
てい
)
百種
(
ひやくしゆ
)
の
機關
(
きくわん
)
の
作用
(
さよう
)
を
宰
(
つかさど
)
る
動力
(
どうりよく
)
は
世
(
よ
)
の
常
(
つね
)
の
蒸氣力
(
じようきりよく
)
でもなく
電氣力
(
でんきりよく
)
でもなく、
現世紀
(
げんせいき
)
には
未
(
いま
)
だ
知
(
し
)
られざる
一種
(
いつしゆ
)
の
化學的作用
(
くわがくてきさよう
)
で
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
芥川氏はその手紙を
開
(
あ
)
けて見た。そしてにやりと皮肉な笑ひを
洩
(
もら
)
してゐると、丁度そこへ東洋精芸会社の社長某氏の手紙を持つた若い男が訪ねて来た。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
前人の詩、多くは一時の感慨を
洩
(
もら
)
し、単純なる悲哀の想を鼓吹するに
止
(
とどま
)
りしかど、この詩人に至り、始めて、悲哀は一種の系統を
樹
(
た
)
て、芸術の荘厳を帯ぶ。
海潮音
(新字旧仮名)
/
上田敏
(著)
さて、幽霊船虎丸の甲板の、亡霊のような怪老人は、五ツの
屍骸
(
しがい
)
の
横
(
よこた
)
わる中甲板を、血の
匂
(
にお
)
いを
嗅
(
か
)
ぎ、よろよろ歩き廻りながら、不気味な薄笑いを
洩
(
もら
)
した。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
自動車の中でルパンのいったこの言葉を、ボートルレは聞き
洩
(
もら
)
さなかった。ルパンが十日掛ったのなら、ボートルレにもきっと十日で出来ないことはない。
奇巌城:アルセーヌ・ルパン
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
諸君、僕はわが海軍の軍機を
洩
(
もら
)
すようで非常に心苦しいのだが、諸君にだけある重大な秘密をお告げしたい。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
縛
(
いまし
)
めからでも解かれたやうに、一同は急にくつろいで、陽気に、がやがやとしやべり出した。「やれやれ!」といつたやうに大きな吐息を
洩
(
もら
)
すものさへあつた。
野の哄笑
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
いかにも陰謀の一端を
洩
(
もら
)
すという風につかみどころなく、しかも動顛のおおえない調子で報道されていた。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
怒髪は天を衝いたけれども、差当り、その怒気を
洩
(
もら
)
すべき対象物とては、長持と馬とのほかにありません。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鱒の口がピシヤリと〆ると、武の口が大きく開いて、
恐
(
こ
)
はいのと痛いので、ワツト一声叫びを
洩
(
もら
)
し升た。
鼻で鱒を釣つた話(実事)
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
輪
(
わ
)
の
音
(
おと
)
が、
雨
(
あめ
)
を
圧
(
あつ
)
して代助の
耳
(
みゝ
)
に響いた時、彼は
蒼白
(
あをしろ
)
い
頬
(
ほゝ
)
に微笑を
洩
(
もら
)
しながら、
右
(
みぎ
)
の手を
胸
(
むね
)
に
当
(
あ
)
てた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「ああ」と私は詠嘆を
洩
(
もら
)
した。「矢張り沙漠の生活の方がよかった。我に来よや! 蛮人の力よ!」
沙漠の美姫
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
これ
等
(
ら
)
の事情を以て、下士の
輩
(
はい
)
は
満腹
(
まんぷく
)
、常に不平なれども、かつてこの不平を
洩
(
もら
)
すべき機会を得ず。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
どうぞ御聞遊してときつとなつて畳に手を突く時、はじめて一トしづく
幾層
(
いくそ
)
の憂きを
洩
(
もら
)
しそめぬ。
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それで私は重要な用件を聞き
洩
(
もら
)
したり頼まれた用事を皆忘れてしまったりしてしまうのである。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
それから後、お兄様に関することどもは細大
洩
(
もら
)
さず書抜いたり、切抜いたりしてそれが長年の間に大分の量になったのを整理して、『鴎外森林太郎』の一冊を作りました。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
誰やらが、樺太のテレベン油は非常な利益になりそうで、始て製造を試みた何某の着眼は実にえらいという評判だと云うと、黙って酒を飲んでいた博士が短い笑声を
洩
(
もら
)
した。
里芋の芽と不動の目
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
自然にしんがりになっていた彼らは、言葉を聞き
洩
(
もら
)
すまいとして耳をそばだて、足を速めた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
政宗は秀吉の男ぶりに感じて之を愛したには相違ないが、帰ってから人に語って、其の底の底までは愛しきらぬところを
洩
(
もら
)
したことは、
尭雄僧都話
(
ぎょうゆうそうずばなし
)
に見えて居るとされている。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そういう言葉をちょっとでも
洩
(
もら
)
そうものなら、それが故意であろうと無かろうと、阿Qはたちまち頭じゅうの禿を
真赤
(
まっか
)
にして怒り出し、相手を見積って、無口の奴は言い負かし
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
たとえば読者に悲しさを伝えるために、作者が
嗚乎
(
ああ
)
と
溜息
(
ためいき
)
を
洩
(
もら
)
したり、すぐさま悲しいと告白したとする。成程読者はこれを読んで、作者が悲しんでいるなということは納得がゆく。
意慾的創作文章の形式と方法
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
独
(
ひと
)
り
語
(
ご
)
ちを
洩
(
もら
)
しながら、権内は、両わきの帳面と、算盤の珠とを見くらべて
雲霧閻魔帳
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
亦
(
また
)
、『新ロマン派』十二月号にも拙作に関する感想をお
洩
(
もら
)
しになったこと、『新潮』一月号掲載の貴作中、一少女に『春服』を携えさせたこと等、あなたの御心づかいを伝えてくれました。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
戸口
(
とぐち
)
から
第
(
だい
)
一の
者
(
もの
)
は、
瘠
(
や
)
せて
脊
(
せ
)
の
高
(
たか
)
い、
栗色
(
くりいろ
)
に
光
(
ひか
)
る
鬚
(
ひげ
)
の、
眼
(
め
)
を
始終
(
しゞゆう
)
泣腫
(
なきは
)
らしてゐる
發狂
(
はつきやう
)
の
中風患者
(
ちゆうぶくわんじや
)
、
頭
(
あたま
)
を
支
(
さゝ
)
へて
凝
(
ぢつ
)
と
坐
(
すわ
)
つて、一つ
所
(
ところ
)
を
瞶
(
みつ
)
めながら、
晝夜
(
ちうや
)
も
別
(
わ
)
かず
泣
(
な
)
き
悲
(
かなし
)
んで、
頭
(
あたま
)
を
振
(
ふ
)
り
太息
(
といき
)
を
洩
(
もら
)
し
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
娘は
忽
(
たちま
)
ちその蒼白く美しい顔に、
会心
(
かいしん
)
の
笑
(
えみ
)
を
洩
(
もら
)
して、一礼を述べて
後
(
のち
)
、
妾
(
わたし
)
がほんの
志
(
こころ
)
ばかりの御礼の品にもと、
兼
(
かね
)
てその娘が死せし際に、その
枢
(
ひつぎ
)
に納めたという、その家に古くより伝わった
古鏡
(
こきょう
)
と
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
却
(
かえ
)
って嬉しく、よろこばしく感じ乍ら、会心の
微笑
(
えみ
)
を
洩
(
もら
)
すのでした。
艶容万年若衆
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
“洩”の解説
洩(せつ)は、夏朝の第10代帝。『竹書紀年』によると、在位21年。
第10代
(出典:Wikipedia)
洩
漢検準1級
部首:⽔
9画
“洩”を含む語句
洩聞
漏洩
書洩
雨洩
木洩
隙洩
打洩
葉洩陽
葉洩
洩出
聞洩
露洩
洩灯
討洩
香洩
相洩
麁洩
浸洩
事洩
洩冶
...