歩行あるき)” の例文
歩行あるきうち先夜せんや伊勢屋の前へまゐかゝりし時腹痛ふくつうにて難儀仕なんぎつかまつり夜更なれども詮方せんかたなく伊勢屋の戸をたゝき湯をもらはんとぞんじ候處一かうに戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
体中からだぢう珠数生じゆずなりになつたのを手当次第てあたりしだいむして、りなどして、あしんで、まるをどくるかたち歩行あるきした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お袖の事はマアそれでも善いとして、子供のやうなものに病人を任せ、夜歩行あるきするおぬしもあんまり誉めたものでもあるまい。
小むすめ (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
「もうお歩行あるきのついでにもお立ち寄りにならなくなったような私なんぞの所へ、こんなに可哀らしい子が参りましたけれど、これからはどう遊ばします?」
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
下谷したやの方から来ていた、よいよいのじいさんは、使い歩行あるきをさせるのもみじめなようで、すぐにめてしまった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
兵士へいし軍楽ぐんがくそうしますのはいさましいものでございますが、の時は陰々いん/\としてりまして、くつおともしないやうにお歩行あるきなさる事で、これはどうも歩行あるにくい事で
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
嫁入よめいりてより七ねんあひだ、いまだにりてきやくしこともなく、土産みやげもなしに一人ひとり歩行あるきしてるなど悉皆しつかいためしのなきことなるに、おもひなしか衣類いるいいつもほどきらびやかならず
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
神様も恋しらずならあり難くなしと愚痴と一所いっしょにこぼるゝ涙流れてとどまらぬ月日をいつも/\憂いにあかうらみに暮らしてわがとしの寄るは知ねども、早い者お辰はちょろ/\歩行あるき
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「はい、少し骨が折れよ」と源さんは歩行あるき出す。源さんの馬も歩行出す。じゃらんじゃらん。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
用の少い官吏とか会社員とかが、仕様事なしの暇つぶしに、よくる奴で、恁麽こんな事をする男は、大抵弾力のない思想をツて居るものだ。頭脳に弾機ばねの無い者は、足に力の這入はいらぬ歩行あるき方をする。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
Blue devils の歩行あるきを眺めてゐる。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
余所よそながら姉上の姿見ばやと思いて、木槿垣むくげがきの有りしあとと思うあたりを、そぞろ歩行あるきして、立ちて、伺いしその暮方なりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
長庵と改めてあさからばんまであては無れどいそがぶり歩行あるき廻りければ相應に病家びやうかも出來たるにぞ長庵今は己れ名醫めいいにでも成し心にて辯舌べんぜつ奸計かんけいを以て富家ふうかより金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
暮れむとして暮れはてぬ夕景色、夏ならはここ千金の一刻なるべきを、今は都人の花に酔ふ頃なれや、ここらそぞろ歩行あるきする人は稀なるに、病をここに養ふやらむ。
磯馴松 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
暗い雲のれ下った雨催あまもよいのよいであった。片側町の寂しい広場を歩いていると、歩行あるきべたのお銀は、よろけそうになっては、わざとらしい声を立てて笹村の手につかまった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
土産もなしに一人歩行あるきして來るなど悉皆しつかいためしのなき事なるに、思ひなしか衣類もいつもほどきらびやかならず、稀に逢ひたる嬉しさに左のみは心も付かざりしが、聟よりの言傳とて何一言の口上もなく
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
跡は野となれ山路にかゝりてテク/\歩行あるき
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その歩行あるきにか入るらむ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
綺麗きれいといひて見返勝みかへりがち、のんきにうしろ歩行あるきをすれば、ならぬにほひほそみちを、肥料室こやしむろ挾撃はさみうちなり。ねむつて吶喊とつかんす。すでにして三島神社みしまじんじやかどなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
置去おきざりにせん心なら最初さいしよより諸方を尋ね歩行あるきこうより態々わざ/\つれては歸らず私しの江戸へ出るは我が身の利を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お銀は障子を伝い歩行あるきしている子供の様子に目を配りながら、晩に笹村の食べるようなものを考えなどしていたが、笹村は余所よその家へでも来たように、柱にりかかってたばこふかしていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いまだにに入りて客に来しこともなく、土産もなしに一人歩行あるきして来るなど悉皆しつかいためしのなき事なるに、思ひなしか衣類もいつもほどきらびやかならず、まれひたる嬉しさにさのみは心も付かざりしが
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
六七人と銑吉がこの近所の名代の天麸羅てんぷらで、したたかにくらい且つ飲んで、腹こなしに、ぞろぞろと歩行あるき出して、つい梅水の長く続いた黒塀に通りかかった。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私たちのぶらぶら歩行あるきを通越す大八車の連中も、水とも、川とも言うものはなく、がったり通る。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
本来ならこの散策子さんさくしが、そのぶらぶら歩行あるきの手すさびに、近頃買求かいもとめた安直あんちょくステッキを、真直まっすぐみちに立てて、鎌倉かまくらの方へ倒れたらじいを呼ぼう、逗子ずしの方へ寝たら黙って置こう
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうもまだ話の切目ではなさそうで、これから一物あるらしい、底の方のくすぐったさに、礼之進は、日一日歩行あるき廻る、ほとぼりの冷めやらぬ、靴足袋の裏が何となく生熱い。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あのまた、歩行あるきぶりといったらなかったよ。ただもう、すうっとこうかすみに乗って行くようだっけ。裾捌き、つまはずれなんということを、なるほどと見たは今日がはじめてよ。
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御利益ごりやくで、怪我けがもしないで御堂おどうからうらはうへうか/\と𢌞まはつて、ざう野兎のうさぎ歩行あるきツくら、とちんかたちくと、たちまのちらつくくらがりに、眞白まつしろかほと、あを半襟はんえり爾側りやうがはから
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ますます可懐なつかしさはまさったけれども、これまでと違って玉司子爵梓氏となってからは、やしきを出入の送迎も仰々しく、往来ゆききの人の目にも着く、湯島のそぞろ歩行あるきは次第に日を
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このあたりを、ちらほらと、そぞろ歩行あるきの人通り。見附正面の総湯の門には、浅葱あさぎに、紺に、茶の旗が、納手拭おさめてぬぐいのように立って、湯の中は祭礼まつりかと思う人声の、女まじりの賑かさ。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歩行あるき出す、と暗くなり掛けた影法師も、はげしい人脚の塵に消えて、天満てんま筋の真昼間まっぴるま
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
リボンも顔もひとえに白く、かすりの羽織が夜のつやに、ちらちらと蝶が行交う歩行あるきぶり、くれないちらめく袖は長いが、不断着の姿は、年も二ツ三ツけて大人びて、愛らしいよりも艶麗あでやかであった。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
でも車だから、かえりはぶらぶら歩行あるきにして、行って見ようかと思ったんですがね、お茶の水あたりまで来ると、何だかしきりに気がいてね、急いで急いでッていうもんだから、車夫が慌ててさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
らぬそゞろ歩行あるきも、山路やまぢとほく、遙々はる/″\辿たどるとばかりながる……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
秦氏も御多分に漏れず——もっとも色が白くて鼻筋の通った処はむしろ兎の部に属してはいるが——歩行あるき悩んで、今日は本郷どおりの電車を万世橋で下りて、例の、銅像を横に、おおき煉瓦れんがくぐって
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四辺あたり長閑のどかさ。しかししずかな事は——昼飯をすませてから——買ものに出た時とは反対の方に——そぞろ歩行あるきでぶらりと出て、温泉いでゆくるわを一巡り、店さきのきらびやかな九谷焼、奥深く彩った漆器店。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「食べながら歩行あるきましょう。」
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
歩行あるき出して
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)