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優しみと若やかな感じとは芸術本来がつべき姿である。これを文芸について云えば、色彩描写たると平面描写たるとは問題でない。
若き姿の文芸 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かかる世界において個物が客観界において自己をつ、即ち物において自己を有つということが我々が財産を有つということである。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
これが年收五萬乃至七萬に上るといふ(椰子の密生した島をつてゐるといふだけで、コプラ採取による收入が年にその位あるのだ)
種々いろ/\なる感想が自分の胸にうしほのやうに集つて来て、其山中の村が何だか自分と深い宿縁をつて居るやうな気がて、何うもらぬ。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
十三絃じゅうさんげんを南部の菖蒲形しょうぶがたに張って、象牙ぞうげに置いた蒔絵まきえした気高けだかしと思う数奇すきたぬ。宗近君はただ漫然といているばかりである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここの品物でとりわけ不思議なのは木工具でありまして、全く他の日本のものと類を異にし、大変朝鮮のものに近い性質をちます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
かれ憎惡ぞうを嫉妬しつととを村落むらたれからもはなかつた。憎惡ぞうを嫉妬しつともない其處そこ故意わざ惡評あくひやうほど百姓ひやくしやう邪心じやしんつてなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
死のうとしている自分の姿が、一度心の中にはいって来ると、どうしても死にきれない、人間はこういう宿命をっているのだろうか。
いのちの初夜 (新字新仮名) / 北条民雄(著)
イヱスの奥義は幼児の如くになることにあり。イヱスにありてさいはひなるものは、つところ多きものより、有つところ少なきものにあり。
実行的道徳 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
いくら僕の喋ったことに誘惑されたのだからって、あんな奴に同情してやるほど、安価なセンチメンタリズムを僕はっていないよ
偽悪病患者 (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
首里にいた時分から昆虫の採集に趣味をつようになり、昆虫のことを書いた本を愛読して、いつも蝶々ばかり追いまわしていた。
私の子供時分 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
彼は私にとりて一の実在であり、一の人格であり、その性情は、私が地上で接触する人間と同様に、顕著なる一つの輪廓をっていた。
此処に眉間に疵をってる男があるとする。何だかいやだ、気に喰わないような心持がする。これは浅間あさましいようだが実際である。
イエスキリストの友誼 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
母に似て美しく生れた上に、養父母に非常に愛せられ、軈てあの巨万の富を受け継いで男爵夫人となる輝かしい前途をつ身なのです。
消えた霊媒女 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
満足せる少数の牛と、最新式耕作機具と、健康な食慾と文芸物の家庭図書館——おもに史劇全集——とをつ、由緒ある小農の一家族。
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
頭の蛇は、わが身にった毒のために十分眠ることが出来ないのでしょうか、メヅサの額の上で、始終からだをよじりつづけています。
平生へいぜいは一ぽんきりしてゐないけれども、二本帶ほんさしてある資格しかくつてゐて、與力よりき京武士みやこぶしあとまはらなくてもいいだけの地位ちゐになつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「往きて汝のてる物をことごとく売りて、貧しき者に施せ。さらば財宝たからを天に得む」「富めるものの神の国に入るはいかにかたいかな」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼は既に読みたいと思うかずかずの書籍をっていたが、覚束おぼつかない彼の語学の知識では多くはまだ書架の飾り物であるに過ぎなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
されどいへ、汝はこれを己が財布の中につや。我即ち。然り、そをさまに何の疑はしき事もなきまで光りてまるし。 八五—八七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
頭の悪いものは、分りやすい事でも分りにくい代りにまたほんとうに分らない事を分らせ得る可能性をもっているようである。
断片(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
限のない未来をっている我々の国民にとっては、過去の千四、五百年は、個人に比較していうと、極めて短い幼童期であろう。
陳言套語 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
私の玩具道楽、しかも我楽多玩具に趣味をっているのは、少年時代の昔を懐しむ心、それがどうも根本になっているようです。
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
理由はどうあろうとも、旗色の悪いほうに味方せずんばやまぬ性癖を私はっている。私は或る日、三田君に向ってこう言った。
散華 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その顏つきも、どこか脂肪じみて處女らしい垢ぬけしないあの晩にくらべると、一枚ばかり皮膚をヒン剥いたやうな美しさをつてゐた。
蒼白き巣窟 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
露ほどの愛情をたぬ女性をんなの生涯、その女性を中心とした一家の運命、見る聞くに如何ばかり吾等若い者の胸を凍らしめて居るであらう。
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
今云った国際問題等に興味をつに至って浦塩うらじおから満洲にり、更に蒙古にろうとして、暫時しばし警務学堂に奉職していた事なんぞがある。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ンガオド何歳ナンボだバ。ワイのナ今歳コドシ二十六だネ。なにわらふんダバ。ンガ阿母オガあねダテ二十歳ハダヂしたヲドゴたけアせ。だけアそれほどチガはねエネ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
商船会社の志望者といつても、もとは大抵胡瓜きうり馬鈴薯じやがいもと同じやうにをかの上で生れたので、それ/″\自分の故郷といふのをつてゐる。
フイイレンチエ随一ずゐいちの大寺院ドオモは十四世紀以来数百年を費して大成し、伊太利イタリイゴシツク建築中最も著しい特色をつて居る。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
しかしながら、もしもコンミニストが、文学を認めたとしたならば、文学のつ此の科学のごとき冷静な特質をも認めねばならぬであろう。
定の父親はあから顔の酒食ひで陸に暮してゐた頃から定職がなかつたと同様、川に追はれて来てもやはり彼の船は定つた航路をたなかつた。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
我々は今迄議論以外もしくは以上の事として取扱はれてゐた「趣味」といふものに対して、もつと厳粛な態度をたねばならぬ。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
後から考えると、私はこの時から、この画家の人柄やその文章の真実性などに対し、ようやく疑惑をち始めたもののようである。
御萩と七種粥 (新字新仮名) / 河上肇(著)
この山とこの池とは二重に反対した暗示をった容貌かたちを上下に向け合っている、春の雪が解けて、池に小波立つときだけあでやかに莞爾にっこりする
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
しかるに君が既に千金をてて贋品をっているということになると、君は知らなくても自分は心にじぬという訳にはゆかぬではないか。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「多勢子供もってみたが、こんな意地張いじっぱりは一人もありゃしない」母親はお島をひねりもつぶしたいような調子で父親と争った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
このウバ桜は怡顔斎いがんさいの『桜品おうひん』では婆彼岸と別のものになっていれど、私はこれは多分同種であろうと思う理由をっている。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
たとへば、吝嗇者りんしょくもののやうにたからおびたゞしうってをっても、たゞしうもちふることをらぬ、姿すがたをも、こひをも、分別ふんべつをも、其身そのみ盛飾かざりとなるやうには。
されば彼の友とするところは、それらの一つを以て優に彼以上に価する人士にあらざるは無し。に彼は美き友をてるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あなたはたしかに特別とくべつ御用ごようってうまれたひと相違そういない……。わたくし指導役しどうやくかみさまもそんなことをってられました……。
夫婦してひとつコップから好きな酒を飲み合い、暫時しばしも離れぬので、一名鴛鴦おしの称がある。夫婦は農家の出だが、別にたがやす可き田畑もたぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
っており、ある時にはある特定物の効用を言い表わし、またある時にはその物の所有がもたらす所の他の財貨を購買する力を
ことつたら、ひとたちのつてゐるしゆ御血汐おんちしほで、このなほるかもれぬ。おもふことも度々たびたびだ。このなら咬付かみつける。真白まつしろだ。
といって、のこのこその店へ入り込んで、天下の重大事であるごとく、誤記を指摘訂正してやる勇気をもたぬ性分でもある。
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
わが日本民族にほんみんぞく靈智れいち靈能れいのうつてゐる。炳乎へいこたる獨特どくとく文化ぶんくわいうしてゐる。もとより拓拔氏たくばつし印度人いんどじんやトルコじんではない。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
H21は、そのてるすべてを彼らに与えて、彼らから聴き出した知識を逐一ちくいちもっとも敏速に通牒つうちょうせよ——そして、一つの注意が付加された。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
うっとうしいと言う言葉は、用い処はほぼもっさりと似ているが、も少し陰鬱いんうつであり深刻な味をち多少のうるささを持つ。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
かかる保証をちながら、私が所有地解放を断行しなかったのは、私としてはなはだ怠慢であったので、諸君に対しことさら面目ない次第です。
小作人への告別 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
自分が呪つた権力は現在の政治がつてゐるそれでは勿論ない。理想の上の妨害物たる権力そのものを指すのであつた。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)