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接近
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せつきん
宗助は
別にそれを
氣にも
留めなかつた。
夫にも
拘はらず、
二人は
漸く
接近した。
幾何ならずして
冗談を
云ふ
程の
親みが
出來た。
兎角する
程に
怪の
船はます/\
接近し
來つて、
白、
紅、
緑の
燈光は
闇夜に
閃めく
魔神の
巨眼のごとく、
本船の
左舷後方約四五百
米突の
所に
輝いて
居る。
石垣、
煉瓦塀、
煙突などの
倒潰物は
致命傷を
與へる
事もあるからである。
又家屋に
接近してゐては、
屋根瓦、
壁の
崩壞物に
打たれることもあるであらう。
彼は
更らに
熱い
茶の一
杯が
飮みたかつたのである。
彼は
竈の
底にしつとりと
落ちついた
灰に
接近して
手を
翳して
見た。まだ
軟かに
白い
灰は
微に
暖かゝつた。
なる
程、
彼等が
信仰心を
以て、
遠く
此所まで
來りながら、
肝腎のお
穴には
接近する
事を
得ず。
それ
故に
海上に
浮んでゐる
船舶には
其存在又は
進行が
分りかねる
場合が
多い。
但しそれが
海岸に
接近すると、
比較的に
急な
潮の
干滿となつて
現れて
來る。
今、
我が
弦月丸は一
時間に十二三
海里の
速力をもつて
進航して
居るのに、
其後を
追ふて
斯くも
迅速に
接近して
來るとは、
實に
非常の
速力でなければならぬ。
夫婦と
坂井とは
泥棒の
這入らない
前より、
是丈親しみの
度が
増した
樣なものゝ、それ
以上に
接近しやうと
云ふ
念は、
宗助の
頭にも
御米の
胸にも
宿らなかつた。
又獲物が
鋭く
水を
切つて
進んで
來るのを
彼等の
敏捷な
目が
闇夜にも
必ず
逸することなく、
接近した一
刹那彼等は
水中に
躍つて
機敏に
網を
以て
獲物を
卷くのである。
本船は
連續に
爆裂信號を
揚げ、
非常滊笛を
鳴らし、
危難を
告ぐる
號鐘は
割るゝばかりに
響き
渡つたけれど、
海蛇丸は
音もなく、ずん/\と
接近して
來るばかりである。
役所が
退けて、
例の
通り
電車へ
乘つたが、
今夜自分と
前後して、
安井が
坂井の
家へ
客に
來ると
云ふ
事を
想像すると、
何うしても、わざ/\
其人と
接近するために、こんな
速力で
假令監視の
目から
逭れて
女に
接近したとしても、
打ち
込んだ
女の
情が
強ければ
蛸壺の
蛸が
騙される
樣にころりと
落す
工夫のつくまでは
男は
忍耐と
寧ろ
危險とを
併せて
凌がねば
成らぬ。
又津浪に
浚はれた
場合に
於て、
其港灣の
奧に
接近した
所では
潮の
差引が
急であるから、
游泳も
思ふように
行かないけれども、
港灣の
兩翼端近くにてはかような
事がないから、
平常通りに
泳ぎ
得られる。