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忌
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いま
ふりがな文庫
“
忌
(
いま
)” の例文
手
(
て
)
を
見
(
み
)
ると
竦
(
ぞつ
)
とする。
鱗
(
こけ
)
のある
鉛色
(
なまりいろ
)
の
生物
(
いきもの
)
のやうに、
眼
(
め
)
の
前
(
まへ
)
にそれが
動
(
うご
)
いてゐる。
噫
(
あゝ
)
、
切
(
き
)
つて
了
(
しま
)
ひたい。
此手
(
このて
)
の
触
(
さは
)
つた
所
(
ところ
)
も
忌
(
いま
)
はしい。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
ということは、
恐
(
おそ
)
るべき
忌
(
いま
)
わしき
妖毒
(
ようどく
)
が、今や金博士の性格を見事に切り
崩
(
くず
)
したその
証左
(
しょうさ
)
と見てもさしつかえないであろうと思う。
不沈軍艦の見本:――金博士シリーズ・10――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
それでも夫は
忌
(
いま
)
わしそうに、わたしを見つめているばかりなのです。わたしは
裂
(
さ
)
けそうな胸を抑えながら、夫の
太刀
(
たち
)
を探しました。
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
名を
蔵人
(
くらんど
)
蔵人といって、酒屋の御用の胸板を
仰反
(
のけぞ
)
らせ、豆腐屋の
遁腰
(
にげごし
)
を
怯
(
おびやか
)
したのが、焼ける前から
宵啼
(
よいなき
)
という
忌
(
いま
)
わしいことをした。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
顔を近づけてきて
唾
(
つば
)
まじりにいうではないか。玉日は、
忌
(
いま
)
わしさに、体がふるえた。息までが臭い気のする作法知らずの山法師である。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
箱を流しに往った者は、
忌
(
いま
)
いましいので竹竿で突いて流そうとしたが、突いた時はすこし流れるが、直ぐ又元の処へ戻って来た。
偶人物語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
しかしながら彼のために不幸なことには、一旦癒えていた彼の
忌
(
いま
)
わしい性癖に油を注ぐ一人の女性が
茲
(
こゝ
)
に登場して来るのである。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二つの
忌
(
いま
)
わしい事件が、渦を
捲
(
ま
)
いて起った日から、瑠璃子の家は、暴風雨の吹き過ぎた後のような寂しさに、包まれてしまった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
たとい
忌
(
いま
)
わしき
絆
(
きずな
)
なりとも、この縄の切れて二人離れ離れにおらんよりはとは、その時苦しきわが胸の奥なる
心遣
(
こころや
)
りなりき。
薤露行
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それが道ならぬ、
忌
(
いま
)
わしい事と知りつつも私は、校長先生をお怨み申し上げる気持に、どうしてもなり得なかったのでした。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ここにはたくさんの花があって、あまりにけばけばしいので、それを見るとわたくしはなんだか
忌
(
いま
)
いましくなって来ます。
世界怪談名作集:08 ラッパチーニの娘 アウペパンの作から
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
なにか
忌
(
いま
)
わしい
噂
(
うわさ
)
がお耳にはいるかもしれません、あなたがびっくりするような、不愉快な評判がたつかもしれません。
おばな沢
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
酒に狂暴性を煽られた人間の野獣性と、それに憎悪と、制裁を感じ得ない、麻痺した貞操心!
忌
(
いま
)
わしいものの極みだ。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それを知った後でも、私はややもすればこの
忌
(
いま
)
わしい袋小路につきあたって、すごすごと引き返さねばならなかった。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
件の僧は暫したゝずみて訝しげに見送れば、焚きこめし
異香
(
いきやう
)
、吹き
來
(
く
)
る風に時ならぬ春を匂はするに、俄に
忌
(
いま
)
はしげに
顏
(
かほ
)
背
(
そむ
)
けて
小走
(
こばし
)
りに立ち去りぬ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
人手に掛し抔と
忌
(
いま
)
はしき儀を訴出る者の有
可
(
べき
)
や
殊
(
こと
)
には九助が申上る事
而已
(
のみ
)
御取上に相成只々私しを御
叱
(
しかり
)
は
恐
(
おそれ
)
ながら御奉行樣の
依怙贔屓
(
えこひいき
)
と申ものと云を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
平次の顏を見ると、三人の女は
忌
(
いま
)
はしい物でも避けるやうに、靜かに滑り出て、要領よく姿を隱してしまひました。
銭形平次捕物控:186 御宰籠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
もうけし
心
(
こゝろ
)
お
前
(
まへ
)
さま
大切
(
たいせつ
)
なほどお
案
(
あん
)
じ申さずには
居
(
を
)
りませぬを
忌
(
いま
)
はしや
何
(
なに
)
ごとぞ
一生
(
いつしやう
)
一人
(
ひとり
)
で
世
(
よ
)
を
送
(
おく
)
るの
死
(
し
)
んで
思
(
おも
)
ひを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
自分は屡々初見の人に紹介される時「例の廢嫡問題の」といふ聞くも
忌
(
いま
)
はしい言葉を自分の姓名の上に附加された。
貝殻追放:002 新聞記者を憎むの記
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
さういたしますと、過ぎ去つたあの出来事を、一生のうちの、
忌
(
いま
)
はしい記憶にしたくないと思ふやうになりました。
顔
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
一々
手
(
て
)
でも
取
(
と
)
りたいほどに
氣遣
(
きづか
)
はれる
母心
(
はゝごゝろ
)
が、
忌
(
いま
)
はしい
汚點
(
しみ
)
の
回想
(
くわいさう
)
によつて、その
口
(
くち
)
を
縫
(
ぬ
)
はれてしまふのである。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
乱倫なる婚姻の行われるところには
忌
(
いま
)
わしき
花柳病
(
かりゅうびょう
)
が多く、
而
(
しか
)
して花柳病ほどに人間の血を悪化するものは無い。
現代の婦人に告ぐ
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
と、闇太郎は、先き程までの、夜の巷での、悪戦苦闘の、
忌
(
いま
)
わしい追憶は、とうに忘れてしまったように、美酒の酔いに、
陶然
(
とうぜん
)
と頬を、ほてらせながら
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
遠くの父母や兄弟の顔が、これまでになく
忌
(
いま
)
わしい陰を帯びて、彼の心を
紊
(
みだ
)
した。電報配達夫が恐ろしかった。
過古
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
下世話
(
げせわ
)
に謂う探偵、世に是ほど
忌
(
いま
)
わしき職務は無く又之れほど立派なる職務は無し、忌わしき所を言えば我身の
鬼々
(
おに/\
)
しき心を隠し友達顔を作りて人に交り
無惨
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
京子は、次第に露骨に、
忌
(
いま
)
わしいそぶりを見せ、
弦
(
つる
)
を離れた矢のように、源吉の胸から、飛び出して行った。
鉄路
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
我が車の隙を
覗
(
うかゞ
)
ひて走りぬけんとしたる時「ボン、ジヨオルノオ、アントニオ」(
吉日
(
よきひ
)
をこそ、アントニオ)と呼ぶは、むかし聞き慣れたる
忌
(
いま
)
はしき聲なり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
私につきまとってるこの固定観念は、各時間に、各瞬間に、新たな形で、期限が迫るにつれてますます
忌
(
いま
)
わしい血まみれの形で、私に現われてくるではないか。
死刑囚最後の日
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
恁
(
か
)
くまでも
昨日
(
きのふ
)
の
奇
(
く
)
しき
懊惱
(
なやみ
)
が
自分
(
じぶん
)
から
離
(
はな
)
れぬとして
見
(
み
)
れば、
何
(
なに
)
か
譯
(
わけ
)
があるのである、さなくて
此
(
こ
)
の
忌
(
いま
)
はしい
考
(
かんがへ
)
が
這麼
(
こんな
)
に
執念
(
しふね
)
く
自分
(
じぶん
)
に
着纒
(
つきまと
)
ふてゐる
譯
(
わけ
)
は
無
(
な
)
いと。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
掘出し物という言葉は元来が
忌
(
いま
)
わしい言葉で、最初は
土中
(
どちゅう
)
冢中
(
ちょうちゅう
)
などから掘出した物ということに違いない。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
まるで別人のように
忌
(
いま
)
わしい気立てになった大次郎ではあったけれど、あれは果して良人の本心だったろうかと、今にして千浪は、疑わざるを得ないのだった。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
忌
(
いま
)
はしい予感を、ひやと覚えたとき、どやどやと背広服着た紳士が六人、さちよの病室へはひつて来た。
火の鳥
(新字旧仮名)
/
太宰治
(著)
暗い
忌
(
いま
)
わしい束縛——その生活のうちに、自分がはいっていったということがわかるようになりました。
世界怪談名作集:05 クラリモンド
(新字新仮名)
/
テオフィル・ゴーチェ
(著)
枝葉の事を
弥聒
(
やかま
)
しくいわれるよりは、
忌
(
いま
)
わしい離婚沙汰などを
出
(
いだ
)
さぬように今の教育を根本から改めて、
自
(
おのずか
)
ら夫婦相和して行かれる完全な人格を作る事を心掛け
離婚について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
春から夏の初へかけて
忌
(
いま
)
わしい凶事が続くと、早々その年をおしまいにするために、
流行正月
(
はやりしょうがつ
)
と名づけて六月の
朔日
(
ついたち
)
に、もう一度餅を
搗
(
つ
)
き正月の形をする風習は
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
俺
(
おれ
)
は今朝、ある
忌
(
いま
)
わしい場面を、この船の事務員が見たとか、いう話をきいたときは、初めは話のほうが信用できなかった。
否
(
いや
)
、今でも、そんな話は信用しとらん。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
十九から
中間
(
ちゆうかん
)
の六年間と云ふものを、不思議な世界の空気に
浸
(
ひた
)
つて、何か特殊な
忌
(
いま
)
はしい
痕迹
(
こんせき
)
が顔や挙動に
染込
(
しみこ
)
んででもゐるやうに、自分では気がさすのであつたが
或売笑婦の話
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
そして時々、窓掛の
襞
(
ひだ
)
の中に動いてるものを見るために、ちらりとあたりを見回した。——解剖学の書物の中にある
剥皮体
(
はくひたい
)
の図は、なおいっそう
忌
(
いま
)
わしいものだった。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
又一人、又一人、遂に
忌
(
いま
)
はしき
疫
(
やまひ
)
が全村に蔓延した。恐しい不安は、常でさへ
巫女
(
いたこ
)
を信じ狐を信ずる
住民
(
ひとびと
)
の迷信を
煽
(
あふ
)
り立てた。
御供水
(
おそなへみづ
)
は酒屋の酒の様に需要が多くなつた。
赤痢
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お花は
孰
(
いづ
)
れも木綿の
揃
(
そろひ
)
の中に、
己
(
おの
)
れ
独
(
ひと
)
り
忌
(
いま
)
はしき
紀念
(
かたみ
)
の絹物
纏
(
まと
)
ふを省みて、身を縮めて
俯
(
うつむ
)
けり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
彼によれば、人民から
忌
(
いま
)
わしく思われ、
軽侮
(
けいぶ
)
され、不平不満を持たれることが、政治家として最も避けねばならぬことである。人民にきらわれないことが最良の城壁である。
政治学入門
(新字新仮名)
/
矢部貞治
(著)
近来諸方の寺院
頻々
(
ひんぴん
)
として死体発掘の厄に逢うも未だ該犯人の捕縛を見るに至らざるは時節
柄
(
がら
)
誠になげかわしき次第なるがここにまたもや
忌
(
いま
)
わしき死体盗難事件ありその次第を
百面相役者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そしてそれを借りたもので失敗しないものはないと云ふ
忌
(
いま
)
はしい評判まで立つてゐる家だ。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
又はかの「天才」かの「英雄」或は
大人
(
たいじん
)
、
超人
(
てうじん
)
、すべて
忌
(
いま
)
はしき
異形
(
いぎやう
)
のものを敬せむや。
頌歌
(旧字旧仮名)
/
ポール・クローデル
(著)
彼は
齒噛
(
はが
)
みして沈默した。彼は歩みを止めて固い地面を長靴で蹴りつけた。あの
忌
(
いま
)
はしい想念が彼を掴んで、一足も前に進めない程、彼をしつかりと引留めてゐるやうに見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
とHさんは長談義をやうやく結びながら、ニッと冷やかな微笑を浮べて、またもやあの
忌
(
いま
)
はしい病気の名を口にするのでした。……風が出て、一しきり松原を鳴らして過ぎました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
いや、待て、私は自分が雅子をザギ……こんな
忌
(
いま
)
わしい言葉は使いたくない。なんと言ったらいいか、——雅子をなんとかしようと思っていたのか。そんな気持ではなかったはずだ。
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
かれが
蒐集
(
しゅうしゅう
)
したところの
総
(
あら
)
ゆる婦人雑誌や活動写真の絵葉書、ことに
忌
(
いま
)
わしげな桃色をした紙の種類、それからタオルや石鹸や石鹸入れなどが、みんな押入れのなかに
収
(
しま
)
われてあった。
幻影の都市
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
「こなたには面白き話一つする人なし。この様子にては
骨牌
(
カルタ
)
に
遁
(
のが
)
れ
球突
(
たまつき
)
に走るなど、
忌
(
いま
)
はしき事を見むも知られず。おん連れの方と共に、こなたへ来たまはずや。」と笑みつつ
勧
(
すす
)
むる
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
毎日毎日、その
忌
(
いま
)
わしい奇怪の事実が、執拗にウォーソン夫人を苦しめた。彼女はすっかりヒステリカルになってしまい、白昼事務室の卓の上にも、猫の幻影を見るようになってしまった。
ウォーソン夫人の黒猫
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
“忌”の意味
《名詞》
(キ)ある人物が死んだ日。
(キ)喪に服している期間。
(出典:Wiktionary)
“忌(忌み)”の解説
忌み、斎み(いみ)は
神に対して身を清め穢れを避けて慎む事。斎戒。
(転じて)忌み避けるべきこと。禁忌。はばかり。
平安時代以降の用例は大半が2.の意。
(出典:Wikipedia)
忌
常用漢字
中学
部首:⼼
7画
“忌”を含む語句
忌々
忌々敷
可忌
忌憚
物忌
忌明
忌日
嫌忌
忌諱
忌嫌
禁忌
小忌
忌籠
斎忌
忌忌
忌避
猜忌
忌中
忌服
厭忌
...