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妙
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たえ
ふりがな文庫
“
妙
(
たえ
)” の例文
忽
(
たちま
)
ち、チクリと右の手の甲が痛み出した。見ると毒虫にいつの間にやら
螫
(
さ
)
されていた。駕龍の中には
妙
(
たえ
)
なる名香さえ焚いてあるのだ。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
寺は堤下の低地、ぼくらは門内の“西行の歌碑”と、遊女の
妙
(
たえ
)
の碑を見ていたが、「いますか、坊さんかたれか」と、あとに
従
(
つ
)
いてゆく。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あまり
妙
(
たえ
)
なるに、いぶかしさは忘れたるが、また思い惑いぬ。ひそかに見ばや、小親を置きて世に誰かまたこの
音
(
おん
)
の調をなし得るものぞ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
長い間その楽器は皇帝に秘蔵せられていたが、その弦から
妙
(
たえ
)
なる
音
(
ね
)
をひき出そうと名手がかわるがわる努力してもそのかいは全くなかった。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
みずはか、山姫か、奇しく
妙
(
たえ
)
なる姿は底なしの淵の底までも照している。私はおぼえずよろめいて手にした桶をとり落した。
島守
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
▼ もっと見る
子供の時分に
妙
(
たえ
)
ちゃんという
妹
(
いもと
)
と毎日遊んだ事を覚えている。その妹は大きな模様のある
被布
(
ひふ
)
を
平生
(
ふだん
)
着て、人形のように髪を切り下げていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
露子
(
つゆこ
)
の
目
(
め
)
には、それらの
楽器
(
がっき
)
は
黙
(
だま
)
っているのですが、ひとつひとつ、いい、
奇
(
く
)
しい
妙
(
たえ
)
な、
音色
(
ねいろ
)
をたてて、
震
(
ふる
)
えているように
見
(
み
)
えたのであります。
赤い船
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
西の空に紫の雲がたなびき、珍しい匂が部屋中に満ちあふれ、
妙
(
たえ
)
なる楽の音が聞えてくる中を、昇天されたのであった。
現代語訳 平家物語:13 灌頂の巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
踊り連の
妙
(
たえ
)
なる手ぶりで、蟻も通わせぬようになっているから、さすがの米友も、その一方を突破するに当惑しました。
大菩薩峠:29 年魚市の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あの太陽や青空を、珍しい鳥や獣のすんでいる豊かな森を、あの
砂漠
(
さばく
)
を、あの
妙
(
たえ
)
なる南国の夜を、思い出したのです。
アッタレーア・プリンケプス
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
さす手ひく手の
妙
(
たえ
)
、面白の振りの中に
錆
(
さ
)
びた禅味がたゆとうとて
珍重
(
ちんちょう
)
されたのは、鯉魚庵の有力な
檀越
(
だんおつ
)
となって始終、
道味聴聞
(
どうみちょうもん
)
の結果でありました。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ちなみにわが国の神官の間に伝わる言い伝えに、人間の霊魂は「
妙
(
たえ
)
に
円
(
まろ
)
き」たまであるという考えがあるそうである。
ルクレチウスと科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
折しも
微吹
(
そよふ
)
く風のまにまに、
何処
(
いずく
)
より来るとも知らず、いとも
妙
(
たえ
)
なる
香
(
かおり
)
あり。怪しと思ひなほ
嗅
(
か
)
ぎ見れば、正にこれおのが好物、鼠の
天麩羅
(
てんぷら
)
の香なるに。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
神は
朝
(
あした
)
に命を下し黎明にその所を知らしめて、その造り給える宇宙に
妙
(
たえ
)
なる活動を与えつつあるのである。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
「な、
妙
(
たえ
)
よ、妙よ。わるかったな。おとうさんはもうすっかり了見を変えたから、おまえもよく見て迷わずに成仏しろよ。かわいそうにな、かわいそうにな……」
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
さてその四つの部屋であるが、東南にある一室には、九郎右衛門の病身の妻、お
妙
(
たえ
)
というのが住んでいた。またその反対の西南の部屋には、娘のお艶が住んでいた。
名人地獄
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
その
妙
(
たえ
)
なる顔は紫ビロードの帽子に縁取られ、その身体は
黒繻子
(
くろじゅす
)
の
外套
(
がいとう
)
の下に隠されていた。長い上衣の下からは絹の
半靴
(
はんぐつ
)
にしめられた小さな足が少し見えていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それは私に、まだ見たこともない海の
彼方
(
かなた
)
の国々や、世にも
妙
(
たえ
)
なる異国の花園を想い出させました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その原因は誰にも分りすぎるほど分っていた。それはかの帯刀の
愛娘
(
まなむすめ
)
お
妙
(
たえ
)
に失恋したためだった。
くろがね天狗
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
空の
麗
(
うるわ
)
しさ、地の美しさ、万象の
妙
(
たえ
)
なる中に、あまりにいみじき人間美は永遠を誓えぬだけに、
脆
(
もろ
)
き命に
激
(
はげ
)
しき情熱の魂をこめて、たとえしもない
刹那
(
せつな
)
の美を感じさせる。
明治美人伝
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
だから極楽に生まれ、浄土へ行っても、自分独りが
蓮華
(
はす
)
の
台
(
うてな
)
に
安座
(
あんざ
)
して、
迦陵頻伽
(
かりょうびんが
)
の
妙
(
たえ
)
なる声をききつつ、百
味
(
み
)
の
飲食
(
おんじき
)
に舌鼓を打って遊んでいるのでは決してありません。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
人の生まるる始めのこと、死にてのちの理などを
推慮
(
おしはかり
)
にいうは、
甚
(
いと
)
も
益
(
やく
)
なき
事
(
わざ
)
なれば、ただに古伝説を守りて、人の生まるることは、
天津神
(
あまつかみ
)
の
奇
(
くすしく
)
妙
(
たえ
)
なる
産霊
(
むすび
)
の
御霊
(
みたま
)
によりて
通俗講義 霊魂不滅論
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
朝日岳と本山をつなぐ雪の頂稜を、駆けるように渡りきって、本山の脇腹——烈風の
死角
(
デットアングル
)
に逃げ込んで、初めてゆるやかに息を吐く……。四辺はすでに
妙
(
たえ
)
なる天上の大花園だ。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
その癖を彫らんとするはもっとも難き事なり、癖を正さんとして自ずから癖の彫られたるはあるべしといいければ、阿波守物の上手その
妙
(
たえ
)
なるを感じて小柄を彫らすを止めたり
十二支考:10 猪に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
荻
(
おぎ
)
の
湖
(
こ
)
の波はいと静かなり。
嵐
(
あらし
)
の誘う木葉舟の、島隠れ行く影もほの見ゆ。折しも松の風を払って、
妙
(
たえ
)
なる琴の音は二階の一間に起りぬ。新たに来たる
離座敷
(
はなれ
)
の客は耳を
傾
(
かたぶ
)
けつ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
御行 (もはや
耐
(
た
)
えかねたような
詠嘆調
(
えいたんちょう
)
にて)ああ、何と云う
妙
(
たえ
)
なる楽の音だ。……これが、このあじけない
現世
(
うつしよ
)
のことなのだろうか?………いいや、これはもう天上の調べだ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
「春の日の霞める時に、
住吉
(
すみのえ
)
の岸に出で居て、釣舟のとをらふ見れば、
古
(
いにしえ
)
の事ぞ
念
(
おも
)
はる」と歌い出し、浦島の子が海神の
妙
(
たえ
)
なる殿に神のおとめと二人いて、老いもせず死にもせずに
日本精神史研究
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
優
(
やさ
)
し美しいとおしの、姿や
妖婉
(
あで
)
の
女郎花
(
おみなえし
)
、香ばしき口に
妙
(
たえ
)
の歌、いとも嬉しき愛の
主
(
ぬし
)
、住むふるさとの極楽に、まされる
妾
(
わらわ
)
の楽しみを、受け給わねば世の中に、これより上のおろかなし
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
浄明寺
(
じょうみょうじ
)
の出陳である。
舟型光背
(
ふながたこうはい
)
につつまれた、明快で優に
妙
(
たえ
)
なる御姿である。技巧は極めて繊細であるが、よく味ってみれば作者の
弛
(
ゆる
)
みなき神経が仏像を一貫して、活きて
顫動
(
せんどう
)
している。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
浜は昼間の
賑
(
にぎ
)
わいに引きかえて、月の景色の
妙
(
たえ
)
なるにもかかわらず人出少し。
女難
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それからまたしばらくするとおしどりたちはくちばしを
胸毛
(
むなげ
)
の中に収めて、
黝
(
あおぐろ
)
い丸い
眼
(
め
)
をおのおのとじた。水の底から老人のふきならす、
妙
(
たえ
)
なる
笛
(
ふえ
)
の
音色
(
ねいろ
)
がひそやかにのぼりはじめたらしい。
おしどり
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
対髑髏
(
たいどくろ
)
にしても若しあれを紅葉山人が書かれたものとしたら、そう云う題もつけなさらなかったろうし、又あの女主人公のお
妙
(
たえ
)
を「隣の女」のお小夜の様な凄い腕の女にされたかもしれない。
紅葉山人と一葉女史
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
さすがの美人が
憂
(
うれい
)
に
沈
(
しずん
)
でる有様、白そうびが露に悩むとでもいいそうな
風情
(
ふぜい
)
を殿がフト御覧になってからは、
優
(
ゆう
)
に
妙
(
たえ
)
なお
容姿
(
ようす
)
に深く思いを
寄
(
よせ
)
られて、子爵の
御名望
(
ごめいぼう
)
にも
代
(
かえ
)
られぬ御執心と見えて
忘れ形見
(新字新仮名)
/
若松賤子
(著)
檣
(
ほばしら
)
や
索綱
(
つな
)
の黒い影の上に遥か高く、南国の星座が美しく燃えていた。ふと、古代
希臘
(
ギリシャ
)
の或る神秘家の言った「天体の
妙
(
たえ
)
なる諧音」のことが頭に浮かんだ。賢いその古代人はこう説いたのである。
環礁:――ミクロネシヤ巡島記抄――
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
はいっただけでも心がふるえるような天井の高い室、
鬚
(
ひげ
)
の生えた
肥
(
ふと
)
ったりっぱな体格をした試験委員、大きなピヤノには、中年の袴をはいた女が後ろ向きになってしきりに
妙
(
たえ
)
な音を立てていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
世間にはなほ
端厳
(
うつくし
)
く
妙
(
たえ
)
なるもののなきにあらず、道を守りて心を正し、父母に
事
(
つか
)
へては孝に君に事へては忠に、他に対しては温和にして、心に
大
(
おおい
)
なる慈悲を
懐
(
いだ
)
くものあらばその端厳さ千万倍なり
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
「やかましいぞ。お
妙
(
たえ
)
!
汝
(
われ
)
ア何も、泣くこたアねえじゃねえか」
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
我
(
わが
)
艦長松島海軍大佐
(
かんちやうまつしまかいぐんたいさ
)
は、
流
(
なが
)
るゝ
汗
(
あせ
)
を
押拭
(
おしぬぐ
)
ひつゝ、
滿顏
(
まんがん
)
に
微笑
(
びせう
)
を
湛
(
たゝ
)
えて
一顧
(
いつこ
)
すると、
忽
(
たちま
)
ち
起
(
おこ
)
る「
君
(
きみ
)
が
代
(
よ
)
」の
軍樂
(
ぐんがく
)
、
妙
(
たえ
)
に
勇
(
いさ
)
ましき
其
(
その
)
ひゞきは、
印度洋
(
インドやう
)
の
波
(
なみ
)
も
躍
(
をど
)
らんばかり、
我
(
わが
)
軍艦
(
ぐんかん
)
「
日
(
ひ
)
の
出
(
で
)
」の
士官
(
しくわん
)
水兵
(
すいへい
)
は
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
哀傷の姫は
妙
(
たえ
)
なる言葉にわれをよび
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
妙
(
たえ
)
なる器を再び地上に投げつける。
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
「お
妙
(
たえ
)
さん、鰻がどうした」
水籠
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
いとも
妙
(
たえ
)
なる声をもて
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
妙
(
たえ
)
なる
流
(
ながれ
)
。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
明智氏は亡んだが、
桔梗
(
ききょう
)
の根は諸家に分脈されている。そのうちにも
妙
(
たえ
)
なるものは、後に
伽羅沙
(
がらしゃ
)
とよばれた細川忠興夫人である。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
路
(
みち
)
近い農家の背戸に牡丹の緋に咲いて
蕋
(
しべ
)
の香に黄色い雲の色を
湛
(
たた
)
えたのに、舞う蝶の
羽
(
はね
)
袖のびの影が、仏前に捧ぐる
妙
(
たえ
)
なる白い手に見える。
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
三十一文字
(
みそひともじ
)
を
妙
(
たえ
)
なる調べもて編み出し、水茎のあとうるわしく草紙物語を綴る婦人も珍しいとはしないが、婦人にして漢詩をよくするという婦人は極めて珍しい。
大菩薩峠:34 白雲の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あな
尊
(
とう
)
とや観世音
菩薩
(
ぼさつ
)
、
忝
(
かたじ
)
けなや勢至菩薩。筏の
舳
(
へさき
)
に立って、早や招いていらるるぞ。やっしっし、やっしっし、それ筏は着くぞ。あの
妙
(
たえ
)
なる響は極楽鳥の鳴き声じゃな。
或る秋の紫式部
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
土屋庄八郎昌猛はこれほど勝れた人物であったが家庭的には不幸の人で、
高坂
(
こうさか
)
弾正の娘であり己が妻であるお
妙
(
たえ
)
の方を信ずることが出来なかった。お妙の方には恋人があった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
背のあたりに金色の毛混りて、
妙
(
たえ
)
なる光を放つにぞ、名をばそのまま
黄金丸
(
こがねまる
)
と呼びぬ。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
自分の口からいうは変でござりまするが、その娘の
妙
(
たえ
)
めが、どうしたことやら、少しばかり器量よしでござりましてな、それゆえ、いくらか人さまの目にもついたのでございましょう。
右門捕物帖:15 京人形大尽
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
“妙”の意味
《形容動詞》
(みょう)普通でない。道理に合わない。不思議だ。奇妙だ。
《名詞》
(みょう)巧みであること。優れていること。
(出典:Wiktionary)
妙
常用漢字
中学
部首:⼥
7画
“妙”を含む語句
巧妙
微妙
神妙
美妙
白妙
奇妙
端厳微妙
妙手
妙義山
妙齢
妙諦
玄妙
霊妙
妙機
妙子
妙見
妙義
南無妙法蓮華経
敷妙
妙音
...