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勾配
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こうばい
ふりがな文庫
“
勾配
(
こうばい
)” の例文
迫った岡はその辺で
谷間
(
たにあい
)
のような地勢を成して、更に
勾配
(
こうばい
)
の急な傾斜の方へと続いて行っている。丁度他に
往来
(
ゆきき
)
の人も見えなかった。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
今日と違って、その当時の衛戍病院の入口は、往来よりも少しく高い所にあって、さしたる
勾配
(
こうばい
)
でもないが一種の坂路をなしていた。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その時分はまだ道路の改正ができない
頃
(
ころ
)
なので、坂の
勾配
(
こうばい
)
が今よりもずっと急でした。道幅も狭くて、ああ
真直
(
まっすぐ
)
ではなかったのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
道は
勾配
(
こうばい
)
になっているわけではないが、さながら満帆の春風を負うて、長江に
柔艫
(
じゅうろ
)
をやるような気分の下に、醍醐へ下るのであります。
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
道がへし折られたように曲って、その先きは、
真闇
(
まっくら
)
な窪地に、急な
勾配
(
こうばい
)
を取って下っていた。彼らはその
突角
(
とっかく
)
まで行ってまた立停った。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
▼ もっと見る
ひろびろとした家で、棟は高いが、屋根の
勾配
(
こうばい
)
はゆるやかで、その建築様式は初期のオランダの移住民から伝えられているものだった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
なだらかな
勾配
(
こうばい
)
のところ/″\に形の面白い石を配置し、落ちて来る水がそれらの間を
屈曲
(
くっきょく
)
しつゝ
白泡
(
しろあわ
)
立って流れるように作られてい
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その脇に沿うてほぼ同じ
勾配
(
こうばい
)
の道路をつけるから、自然に途中で道と河との高度差の最大な処が出来るのであろうかと思われた。
雨の上高地
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その間に
勾配
(
こうばい
)
の急な木造の小橋がいくつとなくかかっている光景は、昭和の今日に至っても、明治のむかしとさして変りがない。
深川の散歩
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そして、崖の上の下り
勾配
(
こうばい
)
にかかると、
跛
(
びっこ
)
でも引くように、首を上げ下げして、歩調を乱すようにしては立ち止まるのであった。
馬
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
達吉
(
たつきち
)
の
伯父
(
おじ
)
さんは、
新
(
あたら
)
しく
造
(
つく
)
ってきた、ぴかぴか
光
(
ひか
)
るブリキのといをのき
下
(
した
)
に
当
(
あ
)
ててみて、
雨水
(
あまみず
)
の
流
(
なが
)
れる
勾配
(
こうばい
)
を
計
(
はか
)
っていました。
僕はこれからだ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
六十度ちかい
勾配
(
こうばい
)
にまでかたむき、やがてまたもとの平面にかえって、こんどは後の方へ、グイグイとそりかえって行くのです。
幻術天魔太郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
勾配
(
こうばい
)
の急な地勢で、二つの
山襞
(
やまひだ
)
に
挾
(
はさ
)
まれているから、森の幅はあまり広くはないし、二百歩も下ると、落葉樹の疎林地帯になる。
山彦乙女
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
ゆるい
勾配
(
こうばい
)
が、麓の街道までもかず枝のからだをころがして行くように思われ、嘉七も無理に自分のからだをころがしてそのあとを追った。
姥捨
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
勾配
(
こうばい
)
の急な町には
疾
(
はや
)
い小川の流れなどが音を立てて、石高な狭い道の両側に、幾十かの人家が窮屈そうに軒を並べ合っていた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
たしかに、
梢
(
こずえ
)
の声なのである。そこはもう下りにかかった
勾配
(
こうばい
)
で、真っ暗な道が、のぞきおろしに、雑木ばやしの崖へとなだれこんでいた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
且
(
か
)
つは
暗
(
くら
)
い。……
前途
(
むかう
)
下
(
さが
)
りに、
見込
(
みこ
)
んで、
其
(
そ
)
の
勾配
(
こうばい
)
の
最
(
もつと
)
も
著
(
いちじる
)
しい
其處
(
そこ
)
から、
母屋
(
おもや
)
の
正面
(
しやうめん
)
の
低
(
ひく
)
い
縁側
(
えんがは
)
に
成
(
な
)
る
壁
(
かべ
)
に、
薄明
(
うすあか
)
りの
掛行燈
(
かけあんどん
)
が
有
(
あ
)
るばかり。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
パッシィの町が尽きたところから左手へ折れ、そこからやや
勾配
(
こうばい
)
を上る小路の道には、古風な石垣が片側の
崖
(
がけ
)
を防いでいた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
何んでも、かね
勾配
(
こうばい
)
をもう一層高くしたほどの高い屋根の家でありますから、山高さんのことを「
屋根高
(
やねだか
)
」さんなど人はいった位でありました。
幕末維新懐古談:55 四頭の狆を製作したはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
物置にしてある小屋の
開戸
(
ひらきど
)
が半分
開
(
あ
)
いている為めに、身を横にして通らねばならない処さえある。
勾配
(
こうばい
)
のない溝に、
芥
(
ごみ
)
が落ちて水が
淀
(
よど
)
んでいる。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
そうしてその麓のなだらかな
勾配
(
こうばい
)
に沿うて、その赤い屋根をもった大きな建物は互に並行した三つの病棟に分れていた。
恢復期
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
爪先上
(
つまさきあが
)
りになって来たようだ。やがて段〻
勾配
(
こうばい
)
が急になって来た。坂道にかかったことは明らかになって来た。雨の中にも滝の音は耳近く聞えた。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いずれかこの町もかかる
類
(
たぐい
)
に漏るべき、ただ東より西へと
爪先上
(
つまさきあ
)
がりの
勾配
(
こうばい
)
ゆるく、中央をば走り流るる小川ありて
水上
(
みなかみ
)
は別荘を貫く流れと同じく
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
(8)mansarde ——フランスの古風な建築によくある二重
勾配
(
こうばい
)
屋根、あるいはその下にある屋根部屋を言う。ここでは後者のことである。
モルグ街の殺人事件
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
三方が窓で、
勾配
(
こうばい
)
のついた天井を結晶ガラスで
葺
(
ふ
)
き、レモン色のカーテンが、自在に動くような仕掛けになっている。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
それから
勾配
(
こうばい
)
のゆるい下り坂になつたが、今度はまた非常に喉が渇きからだ中びしよ濡れの汗が氣になる樣になつた。
泡鳴五部作:04 断橋
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
五万坪に近い庭には、幾つもの小山があり芝生があり、芝生が緩やかな
勾配
(
こうばい
)
を作って、落ち込んで行ったところには、美しい水の
湧
(
わ
)
く泉水があった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
部落はかなり
勾配
(
こうばい
)
の急な
山裾
(
やますそ
)
の、南向きの日当りの
好
(
よ
)
い谷間にあった。田というものは一枚もない。あるのは山と、それを
開墾
(
きりひら
)
いた畑とだけであった。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
幾度となく河床を変え、三日月なりの
水溜
(
みずたま
)
りを置き去りにした。それでも水は多すぎたし、
勾配
(
こうばい
)
は緩やかすぎた。岸からはみだして附近の土地を
濡
(
ぬら
)
した。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
やがて、彼の夢想は、砂を混えたか細い流れのように、
勾配
(
こうばい
)
がなくなると、
水溜
(
みずたま
)
りの形で、止まり、そして
澱
(
よど
)
む。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
登りもそこから
稍々
(
やや
)
急になるのであった。それにした所で、平地を歩くというのに較べて幾らか
勾配
(
こうばい
)
が強くなって来たというに過ぎない位のものであった。
富士登山
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
ぎっしりと人々の押込められた乗合自動車が
緩
(
ゆる
)
い
勾配
(
こうばい
)
をなした電車軌道の脇を異常な緊迫感で疾走している。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
貞時はそういって筒井の爪が、どうかして光に
勾配
(
こうばい
)
を見るときに蛍のような光を見せることに、思い至った。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
前に横たえてある棒をしっかり
握
(
にぎ
)
っているうち、車は
滑
(
すべ
)
りだし、深い穴のなかに
陥
(
お
)
ちてゆきます。再び、登りだしたときは、背も
反
(
そ
)
るような急角度の
勾配
(
こうばい
)
でした。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
「折角たずねてくれたこと、茶も出さねえで失礼だが、お初と来ると、先方も
勾配
(
こうばい
)
の早い奴——早速、穴をさぐって、ひとつ何とかとっちめて置いてやろう——」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
自動車が庁舎の前のゆるい
勾配
(
こうばい
)
を一気に駈け上ると、根賀地が第一番に広場の
砂利
(
ざり
)
の上に降り立った。
空中墳墓
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
山裾の
勾配
(
こうばい
)
に建てられた堂・塔・
伽藍
(
がらん
)
は、更に奥深く、
朱
(
あけ
)
に、青に、金色に、光りの棚雲を、幾重にもつみ重ねて見えた。朝目のすがしさは、其ばかりではなかった。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
そこには彼の推察どおり、一つの小屋があって、木の
塀
(
へい
)
の上から屋根がさし出て、ゆるやかな
勾配
(
こうばい
)
をなして地面に近くたれていて、
菩提樹
(
ぼだいじゅ
)
の木とすれすれになっていた。
レ・ミゼラブル:05 第二部 コゼット
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
岡持
(
おかもち
)
を
提
(
さ
)
げた女房の体は、
勾配
(
こうばい
)
の急な坂をおりて、坂の降り口にあるお寺の石垣に沿うて左へ曲って往った。寺の
門口
(
かどぐち
)
にある赤松の幹に、
微暗
(
うすぐら
)
い
門燈
(
もんとう
)
の
燈
(
ひ
)
が映って見える。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
これが
勾配
(
こうばい
)
九分
(
くぶん
)
の
一
(
いち
)
の
斜面
(
しやめん
)
に
沿
(
そ
)
ひ、
五分時間位
(
ごふんじかんぐらゐ
)
の
間
(
あひだ
)
に
一里半程
(
いちりはんほど
)
の
距離
(
きより
)
を
馳
(
は
)
せ
下
(
くだ
)
つたものらしい。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
(ぼくは
立派
(
りっぱ
)
な
機関車
(
きかんしゃ
)
だ。ここは
勾配
(
こうばい
)
だから
速
(
はや
)
いぞ。ぼくはいまその
電燈
(
でんとう
)
を通り
越
(
こ
)
す。そうら、こんどはぼくの
影法師
(
かげぼうし
)
はコンパスだ。あんなにくるっとまわって、前の方へ来た)
銀河鉄道の夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
坂を上り切ると、路はしばらくごたごたした小山の裾を曲り曲りして、やがて房一の乗つた自転車が心持下り
勾配
(
こうばい
)
のために次第に速力がついた頃、突然前方に平地が開けて来た。
医師高間房一氏
(新字旧仮名)
/
田畑修一郎
(著)
その内に
彼是
(
かれこれ
)
十間程来ると、線路の
勾配
(
こうばい
)
が急になり出した。トロツコも三人の力では、いくら押しても動かなくなつた。どうかすれば車と一しよに、押し戻されさうにもなる事がある。
トロツコ
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
車が
勾配
(
こうばい
)
にさしかかった頃おいに、二人ばかりの税関吏が、扉をノックしてきた。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
勾配
(
こうばい
)
がつかぬので、屋根は
海鼠板
(
なまこいた
)
のトタンにし、
爪立
(
つまだ
)
てば頭が
閊
(
つか
)
える
天井
(
てんじょう
)
を張った。先には食堂にして居たので、此狭い
船房
(
カビン
)
の様な棺の中の様な
室
(
しつ
)
で、色々の人が余等と食を共にした。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
その他には半坪の流し場があるきりで、押入も敷物もついてなかった。
勾配
(
こうばい
)
のひどく急な茅屋根の天井裏には
煤埃
(
すすほこ
)
りが真黒く下って、柱も
梁
(
はり
)
も敷板も、鉄かとも思われるほど
煤
(
すす
)
けている。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
もうゆるい
勾配
(
こうばい
)
につれて石段がはじまり、村の背負っている山のてっぺんの方までも低い石垣の段々畑が続いているような土地柄なので、どこの家でも高いか低いか石垣の上に建っている。
赤いステッキ
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
林
(
はやし
)
の
外
(
はづ
)
れから
田圃
(
たんぼ
)
へおりる
處
(
ところ
)
は
僅
(
わづ
)
かに五六
間
(
けん
)
であるが、
勾配
(
こうばい
)
の
峻
(
けは
)
しい
坂
(
さか
)
でそれが
雨
(
あめ
)
のある
度
(
たび
)
にそこらの
水
(
みづ
)
を
聚
(
あつ
)
めて
田圃
(
たんぼ
)
へ
落
(
おと
)
す
口
(
くち
)
に
成
(
な
)
つて
居
(
ゐ
)
るので
自然
(
しぜん
)
に
土
(
つち
)
が
抉
(
ゑぐ
)
られて
深
(
ふか
)
い
窪
(
くぼみ
)
が
形
(
かたちづく
)
られて
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それが、ゆるい
勾配
(
こうばい
)
をもって、また一つ先の小山のほうへ、渡り板をさしかけたように、坂になっているのだった。ところどころに、
朽木
(
くちき
)
が横倒しに置かれて、足がかりの段になっていた。
あの顔
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
狭い、
勾配
(
こうばい
)
の急な
裏梯子
(
うらばしご
)
を上り切ったところの細長い板の間は、突き当たりに厚いカーテンがかかっていて、
古椅子
(
ふるいす
)
や古テーブルなどを積み重ね、片側をわずかに人が通れるだけ開けてある。
宝石の序曲
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
“勾配”の意味
《名詞》
勾 配 (こうばい)
地形等における水平面に対する傾斜の程度。
(数学)ベクトル解析において、スカラー場に対して定義され、場の各方向への変化率を記述する偏微分ベクトル場。
(出典:Wiktionary)
勾
常用漢字
中学
部首:⼓
4画
配
常用漢字
小3
部首:⾣
10画
“勾”で始まる語句
勾欄
勾引
勾玉
勾当
勾
勾践
勾坂
勾璁
勾当内侍
勾珠