刻限こくげん)” の例文
エヘン! と職分、ただそれにだけ忠実な中西弥惣兵衛やそべえは、再三せきばらいをして、かれの耳へ冬の風より辛く、刻限こくげんの約束をうながした。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、その刻限こくげんまで二階に隱れて待ち、茂兵衞が小用に起きた一寸のすきに、二階から降りて、自分の部屋に戻つたのだらう。
申立なば定めし其和尚をしやうをも呼出よびいだし九助が寺へ參りし刻限こくげん歸宅きたく時刻じこく等も取たゞしありしならんと申さるゝに藤八されば其儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
またへやを出る事のかなわない余は、朝から晩までほとんど仰ぎ見た試しがないのだから、こう云うのも実はひさしの先に余る空のはしだけを目当めあてに想像した刻限こくげんである。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とき丁度ちやうど時過じすぎ。いつもなら院長ゐんちやう自分じぶんへやからへやへとあるいてゐると、ダリユシカが、麥酒ビール旦那樣だんなさま如何いかゞですか、と刻限こくげん戸外こぐわいしづか晴渡はれわたつた天氣てんきである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それへ縁側続きの隠居から年寄が来て加わるのが例になっている。昨夜もお祖父さんは刻限こくげんたがえず
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
あとでくと、夜汽車よぎしやが、箱根はこね隧道トンネルくゞつて鐵橋てつけうわた刻限こくげんには、うち留守るすをした女中ぢよちうが、女主人をんなしゆじんのためにお題目だいもくとなへると約束やくそくだつたのださうである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うら淋しいながらに、ちょうどのぼくだりの旅の人があわてて宿をとる刻限こくげんとて、客引きの声もかしましく、この奥州街道に沿う町にもさすがに夕ぐれはあわただしい。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
昼乳ひるちちをしぼる刻限こくげんになった。女が若衆わかしゅうをおこす。細君は花前はなまえにひととおりのさしずをしてくださいというてきた。ほかのふたりのわかいものは運動場の乳牛にゅうぎゅうを入れにかかる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「このつぎの日曜日にちようびが洗礼です。刻限こくげんをみはからって、いらしってください」と言いました。
真夜中まよなかすぎになって、いつものとおり天子てんしさまがおこりをおみになる刻限こくげんになりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ほんに長い旅でござんすから、こよみのよい日をえらむのが肝腎かんじん。わたしもその刻限こくげんには北を
心中浪華の春雨 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
尤も今日は、刻限こくげんおそいせいか、一羽も見えない。唯、所々ところどころ、崩れかゝつた、さうしてそのくづれ目に長い草のはへた石段いしだんの上に、からすくそが、點々と白くこびりついてゐるのが見える。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
賓人まれびとよ、わらごとではありませぬ、こくといふのは、一年中いちねんちゆうでも一番いちばん不吉ふきつときなのです、ほか澤山たくさんあるのに、このこの刻限こくげん御出帆ごしゆつぱんになるといふのはんの因果いんぐわでせう
およそ竜燈といふものおほかたは春夏秋なり。諸国にある㕝諸書にしるしたるを見るに、いづれもおなじさまにて海よりもいで、山よりもくだる。毎年其日其刻限こくげん、定りある事甚奇異きいなり。
よるうちでも、いちばんしんとした、さむ刻限こくげんでありました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「馬鹿なことを言へ。——ところで、もう赤いお神籤を取りに來る刻限こくげんだらう。これを元の通り格子へ結んで置いてくれ」
と、其処では一度別れて、約束の刻限こくげんに、数右衛門が通用門から出て行くと、庄左衛門は先に外へ出て居て、灰色の宵空よいぞらをながめながら立っていた。
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とき丁度ちょうど時過じすぎ。いつもなら院長いんちょう自分じぶんへやからへやへとあるいていると、ダリュシカが、麦酒ビール旦那様だんなさま如何いかがですか、と刻限こくげん戸外こがいしずか晴渡はれわたった天気てんきである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
刻限こくげんといひ、みゝづくのまどをのぞくのから、飛移とびうつるあとをためて、天井てんじやうすみへトン、トコ、トン、トコ、トン——三晩みばんめは、むすめ家内かない三人さんにんなほつていたのである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
て飛石におしたるものならんか右二ヶ條のおもむ而已のみにても心付べきはずなりこれ調しらべし人のあやまりにして勿々なか/\罪は斷しがたし且又其夜傳吉が參りしうらなひ者を呼で傳吉の歸りし刻限こくげん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
近頃ちかごろ御米およね時々とき/″\夜明前よあけまへくるまおといておどろかされることがあつた。さうしてそれおもはせると、何時いつ似寄によつた刻限こくげんなので、必竟ひつきやう毎朝まいあさおなくるまおなところとほるのだらうと推測すゐそくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
およそ竜燈といふものおほかたは春夏秋なり。諸国にある㕝諸書にしるしたるを見るに、いづれもおなじさまにて海よりもいで、山よりもくだる。毎年其日其刻限こくげん、定りある事甚奇異きいなり。
もっとも今日は、刻限こくげんが遅いせいか、一羽も見えない。ただ、所々、崩れかかった、そうしてその崩れ目に長い草のはえた石段の上に、鴉のふんが、点々と白くこびりついているのが見える。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
んとおそろしいでは御座ございませんか、刻限こくげんですもの。
こし申上おかざればかなふ可らずと是も明朝明六時あけむつのお太鼓に登城の用意を申付られたりすでにして翌日よくじつ御城おんしろのお太鼓むつ刻限こくげん鼕々とう/\鳴響なりひゞけば松平伊豆守殿には登城門よりハヤ駕籠かご
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大沼おほぬま刻限こくげんも、村里むらざとかはう、やがて丑満うしみつおもふ、昨夜ゆふべころ、ソレ此処こゝで、とあみつたが、ばんうへ引揚ひきあげるまでもなく、足代あじろうへからみづのぞくと歴然あり/\またかほうつつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もう曉方近く風は薄寒くなりますが、三輪の萬七と約束した刻限こくげんは次第に近づきます。
男は毎晩、磯山いそやまを越えて、娘の家の近くまでかよって来る。すると娘も、刻限こくげんを見計らって、そっと家をぬけ出して来る。が、娘の方は、母親の手前をかねるので、ややもすると、遅れやすい。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「気をつけて行くことだぜ、物騒な刻限こくげんだ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとへばまぼろしをんな姿すがたあこがるゝのは、おひり、極楽ごくらくのぞむとおなじとる。けれども姿すがたやうには、……ぬま出掛でかけて、手場でばつくばつて、ある刻限こくげんまでたねばならぬ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「泥棒の入つた日と刻限こくげんを念入りに聽くんだ——それから入つた手口だ」
こう云う具合でその翌日になると、益々新蔵は気が気でなくなって、泰さんの電話がかかるのを今か今かと待っていましたが、ようやく昨日と同じ刻限こくげんになって、約束通り電話口へ呼び出されました。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
勅使出迎えの刻限こくげんが迫った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お町が殺された刻限こくげんに、お前さんは何處に居なすつたか訊きたいんだ」
刻限こくげん到限こくげん
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「母親が刺された刻限こくげんに、町内の風呂に居なかつたんだらう」
刻限こくげんは?」