不自由ふじいう)” の例文
時候じこうかはといふものは、めう心細こゝろぼそいやうな氣のするものですね、これはあながち不自由ふじいうくらしてゐるばかりではないでせうよ。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
落葉おちばには灰際はひぎはから外側そとがはつたひてがべろ/\とわたつた。卯平うへい不自由ふじいう火箸ひばし落葉おちばすかした。迅速じんそく生命せいめい恢復くわいふくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うけんや其中は母の看病かんびやうくすり何呉なにくれさだめて不自由ふじいうならんと此事のみ心にかゝ牢舍らうしやしたる我心を少しは汲譯くみわけはや現在ありのまゝに申上て此苦このくるしみをたすけられよと申を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この田舍ゐなかみづ不自由ふじいうなところでした。たにそこはうまでけばやまあひだながれて谷川たにがはがなくもありませんが、人家じんかちかくにはそれもありませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
病院びやうゐんなどにはひるものは、みんな病人びやうにん百姓共ひやくしやうどもだから、其位そのくらゐ不自由ふじいうなんでもいことである、自家じかにゐたならば、猶更なほさら不自由ふじいうねばなるまいとか、地方自治體ちはうじちたい補助ほじよもなくて
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
勿躰もつたいなやといふ可愛かはゆきもあり、此子これためため不自由ふじいうあらせじことのなかれ、すこしは餘裕よゆうもあれかしとてあさひとよりはやき、此通このとほけてのしもさむさをこらへて
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やぶれたストーヴについて、不自由ふじいう外出がいしゅつについて、ふうられた手紙てがみについて、不親切ふしんせつ軍医ぐんいについて、よこつら竹刀しないばす班長はんちょうについて、夜中よなかにみんなたたおこ警報けいほうについて
きながら、出入ではひりも出來できぬとあつては、畫師ゑかき不自由ふじいうなものぢやが、なう。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そして、それがなんとなくかれたいしてどくな、彼女かれの一しやうつうじてすまないことのやうに、おもはれるのであつた。まちは、もはや不自由ふじいうあしわるい、自分じぶん肉體からだについてはあきらめてゐる。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
勘次かんじたゞしなにのみこがれてたのであるが、段々だん/\日數ひかずつて不自由ふじいうかんずるとともみゝそばだてゝさういふはなしくやうにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
天秤棒てんびんぼう兩方りやうはうかた手桶てをけをかついだ近所きんじよ女達をんなたちがそこへ水汲みづくみあつまつてます。みづ不自由ふじいうなところにうまれたとうさんは特別とくべつにその清水しみづのあるところをたのしおもひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もらうけ我養子となしたりけり是に因て後藤秀盛は丸龜の城下へ無刀流劔術むたうりうけんじゆつの道場を出せしが此道場日々に繁昌はんじやうして殊の外弟子も多く何一ツ不自由ふじいうなくくらしけるにつき後藤は我目矩わがめがね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ちゝ存命中ぞんめいちゆうには、イワン、デミトリチは大學だいがく修業しうげふためにペテルブルグにんで、月々つき/″\六七十ゑんづゝも仕送しおくりされ、なに不自由ふじいうなくくらしてゐたものが、たちまちにして生活くらしは一ぺんし、あさからばんまで
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひとをしへをかないで、銀座ぎんざにも、新宿しんじゆくにも、バーの勝手かつてらないから、たびさきで不自由ふじいうする。もつとも、のち番頭ばんとうちんじたところでは、女中ぢよちうとの詮衡上せんかうじやう花番はなばんとかにあたつたからださうである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そんぢやおめえさんもうものにや不自由ふじいうなしでえゝな」ばあさんはうらやましさうにいつた。さうしてちひさな木片もくへんいれためもつあさきたなふくろ草刈籠くさかりかごからした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、かれさらつゞけて。『全體ぜんたいきみ不自由ふじいう生活せいくわつをされてゐるので、いへへば清潔せいけつでなし、きみ世話せわをするものし、療治れうぢをするにはぜにし。ねえきみ、で我々われ/\せつきみすゝめるのだ。 ...
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
賣りても差出すべきに不屆なりと申さるれば勘兵衞私し病氣に付き不自由ふじいうにて船乘ふなのりも出來難く其故べつして難澁なんじふ仕つり候間兎角とかく出來兼ね恐入候と申を汝出來ぬと言て彦兵衞は如何どうして其品を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とうさんが子供こども時分じぶんからみづといふものを大切たいせつおもひ、ずつとおほきくなつてもみづながれてるのをるのがきで、みづおとくのもきなのは、うしてみづ不自由ふじいう田舍ゐなかうまれたからだとおもひます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)