一心いつしん)” の例文
○「南無妙法蓮華経なむめうほふれんげきやう々々々々々々々なむめうほふれんげきやう」と一心いつしんにお題目だいもくをとなへてゐるといかだはだん/\くづれて自分の乗つてゐる一本になりました。
して見れば、何でも一心いつしんにひがみでないと思ふ事だ。さうすると今にもあの女が、——おや、もうみんな寝始めたらしいぞ。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うなると、一刻いつこくじつとしてられぬのは武村兵曹たけむらへいそうである。腕拱うでこまぬいて、一心いつしん鐵檻車てつおりぐるま運轉うんてんながめてつたが、たちま大聲たいせい
様子やうすけば、わし言托ことづけとほり、なにか、内儀ないぎ形代かたしろ一心いつしんきざむとく、……それ成就じやうじゆしたと昨夜ゆふべぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるときわたくし一心いつしん統一とういつ修行しゅぎょうをしてりますと、だれ背後うしろほうわたくしぶものがあるのです。
鬱々ふさいたのはかんがへてたのです。かれ老人らうじん最後さいご教訓けうくん暫時しばらくわすれることが出來できないので、をがまれるほどうつくしいことるにはなにたらからうと一心いつしんかんがへたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此日このひくわいみやびなりしをおもして、詩を作らう、詩を作らう、和韻わゐんに人をおどろかしたいものともだへしが、一心いつしんつては不思議ふしぎ感応かんおうもあるものにて、近日きんじつ突然とつぜんとして一詩たり
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
門口かどぐちやなぎのある新しい二階からは三味線しやみせんきこえて、水に添ふ低い小家こいへ格子戸外かうしどそとには裸体はだか亭主ていしゆすゞみに出はじめた。長吉ちやうきちはもう来る時分じぶんであらうと思つて一心いつしんに橋むかうをながめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たか胸先むなさきくつろげんとする此時このときはやし間一髮かんいつぱつ、まちたまへとばかりうしろ藪垣やぶがきまろびでゝ利腕きゝうでしつかとをとこれぞはなしてなしてと脆弱かよわにも一心いつしん振切ふりきらんとするをいつかなはなさず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これでもこゝらの商人あきんどつちやねえぞ」勘次かんじ一心いつしんながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その時私の心の中で蟲の樣なものが一心いつしんに鳴いてゐる。
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
山の下では一心いつしんに誰かゞ草を刈つてゆく。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わたしのやうに一心いつしん
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
すると一心いつしんとほりましてか、満願まんぐわんの日に梅喜ばいきは疲れ果てゝ賽銭箱さいせんばこそば打倒ぶつたふれてしまふうちに、カア/\と黎明しのゝめつぐからす諸共もろとも白々しら/\が明けはなれますと
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
船橋せんけううへから一心いつしん双眼鏡そうがんきやうふねけてつたが、不思議ふしぎだ、わたくし視線しせん彼方かなた視線しせんとがはしなくも衝突しようとつすると、たちま彼男かなた双眼鏡そうがんきやうをかなぐりてゝ、乾顏そしらぬかほよこいた。
もつと身体からだふたびくさかないてゞもれば、如何いか畜生ちくしやう業通ごふつうつても、まさかにほねとほしてはくまい、と一心いつしんまもつてれば、ぬま真中まんなかへひら/\ともやす、はあ、へんだわ
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たヾねかしとすてものにして、部屋へやよりそとあしさず、一心いつしんくやめては何方いづかたうつたふべき、先祖せんぞ耻辱ちじよく家系かけいけがれ、兄君あにぎみ面目めんもくなく人目ひとめはずかしく、我心わがこヽろれをめてひる
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鈴虫は一心いつしんに鳴きしきる。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
わたくし一心いつしん見詰みつめてあひだに、右舷うげん緑燈りよくとう左舷さげん紅燈こうとう甲板かんぱんより二十しやく以上いじやうたか前檣ぜんしやう閃々せん/\たる白色燈はくしよくとうかゝげたる一隻いつさうふねは、印度洋インドやう闇黒やみふてだん/″\と接近せつきんしてた。