蓮葉はすは)” の例文
が、姿は雨に、月のおぼろに、水髪の横櫛、うなじ白く、水色の蹴出し、蓮葉はすはさばく裾に揺れて、蒼白あおじろく燃える中に、いつも素足の吾妻下駄。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お島のきびきびした調子と、蓮葉はすはな取引とが、到るところで評判がよかった。物馴ものなれてくるに従って、お島の顔は一層広くなって行った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
この理由から「うらなく物の思はるるかな」と答えた妹の姫も蓮葉はすはな気があそばされて好感をお持ちになることができなかった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
蓮葉はすはな事で、からだが燃えるように恥ずかしく思いましたが、私は母にお願いしました。母は、とても、いやな顔をしました。
きりぎりす (新字新仮名) / 太宰治(著)
その蓮葉はすはな、鼻にかかつた声と、白粉の少しむらになつた、肉のうすい喉とが、私に幾分の刺戟を与へるのは云ふまでもない。
世之助の話 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼女の頭には無論朧気おぼろげながらある臆測おくそくがあった。けれどもいられないのに、悧巧りこうぶってそれを口外するほど、彼女の教育は蓮葉はすはでなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と誰に云ったのだか分らないことばを出しながら、いかにも蓮葉はすははたけから出離れて、そして振り返って手招てまねぎをして
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やがては令孃ひめをも幸福かうふく位置ゐちゑて、不名譽ふめいよへしはわけもなきことなり、さて濱千鳥はまちどりふみかよみちはともすがらふでにぎりしが、もとより蓮葉はすはならぬ令孃ひめ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うら若き女子をなごの身にて夜ををかして來つるをば、蓮葉はすはのものと卑下さげすみ給はん事もあらば如何にすべき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「六代目はああいふ気儘きまゝだから……」梅幸は蓮葉はすはらしく立膝たてひざの上で長煙管ながきせるをくるくる廻した。
如何にも不思議そうに、それから哀しそうに、無念そうに眺めて居たが、おやじに催促して、跡の騒ぎや女郎などの「どうぞまたおほほほほほ」など蓮葉はすはないやらしい笑声を聞き捨てて
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
あゝ、モンタギューどの、このやうにおろからしううたなら、わしを蓮葉はすはなともおおもひなさらうが、巧妙じゃうず餘所々々よそ/\しうつくりすます人達ひとたちより、もそッと眞實しんじつ女子をなごになってせう。
それと同時に、母の言葉が、蓮葉はすはに乱暴なのを聴いて、益々心が暗くなつた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
相愛あいあいしていなければ、文三に親しんでから、お勢が言葉遣いを改め起居動作たちいふるまいを変え、蓮葉はすはめて優にやさしく女性にょしょうらしく成るはずもなし、又今年の夏一夕いっせきの情話に、我からへだての関を取除とりの
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これが馬鹿のお母さんならすぐに起き上って紙燭ししょくでもともし、から/\方々を開け散かして、「此のは何うしたんだよ」なんて呶鳴って騒ぐんだが、沈着おちついた方だから其様そん蓮葉はすはな真似はしない
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
すこし蓮葉はすはに下駄を突っかけながら、がらりと格子を開けて出ていった。
三つの挿話 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
と澄んだ美しい声で蓮葉はすはに叫んだ。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
蓮葉はすはなる金切かなきりごゑと
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
楽屋にては小親の緋鹿子ひがのこのそれとは違い、黒き天鵞絨びろうど座蒲団ざぶとんに、蓮葉はすはに片膝立てながら、繻子しゅすの襟着いたるあら竪縞たてじま布子ぬのこ羽織りてつ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「御免下さい。」と蓮葉はすはのような、無邪気なような声で言って、スッと入って来た。そこに腰かけて、得意先の帳面を繰っていた小僧は、周章あわてて片隅へけた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
あれくらゐわたしいてもうらんでも取合とりあつてくださらなかつたは旦那樣だんなさまのおえらいので、あの時代じだいのやうな蓮葉はすはわたし萬一まんいち役所やくしよことでもかしてくださらうなら、どのやうのつまらぬこと仕出來しでかすか
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それと同時に、母の言葉が、蓮葉はすはに乱暴なのを聴いて、益々ますます心が暗くなった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
またわざと怖がって見せる若々しい蓮葉はすはの態度もなかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と言つて、娘は蓮葉はすはに額で一寸にらめるやうな真似をした。
などと言って、少し蓮葉はすはな性質の女房らは
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
蓮葉はすはに笑った、おんなの方から。——これが挨拶あいさつらしい。が、私が酔っています、か、お前さんは酔ってるね、だか分らない。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お今は蓮葉はすはなような歩き方をして、不足そうに言った。近ごろ出来たばかりの、新しい半コートや、襟捲きに引き立つその姿が、おりおり人を振りかえらせていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
叱言こごとは犬か、盗人猫ぬすっとねこか、勝手口の戸をあけて、ぴッしゃりと蓮葉はすはにしめたが、浅間だからじきにもう鉄瓶をかちりといわせて、障子の内に女の気勢けはい
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奥へ通ると、水口みずぐちの方で、蓮葉はすはなような口を利いている女の声がする。相手は魚屋の若い衆らしい。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふと蓮葉はすはに、ものを言つて、夫人はすつと立つて、対丈ついたけに、黒人くろんぼ西瓜すいかを避けつゝ、鸚鵡のかごをコト/\と音信おとずれた。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
金縁きんぶち眼鏡をかけて、細巻ほそまきを用意した男もあった。独法師ひとりぼっちのお島は、草履や下駄にはねあがる砂埃すなぼこりのなかを、人なつかしいような可憐いじらしい心持で、ぱっぱと蓮葉はすはに足を運んでいた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ふと蓮葉はすはに、ものをつて、夫人ふじんはすつとつて、對丈つゐたけに、黒人くろんぼ西瓜すゐくわけつゝ、鸚鵡あうむかごをコト/\と音信おとづれた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見立てて上げるよって……東京ものは蓮葉はすはで世帯持ちが下手へたやと言うやないか。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
トタンにあわただしく、男の膝越ひざごしとのばしたそでの色も、帯の影も、緑の中に濃くなって、活々いきいきとして蓮葉はすはなものいい。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奥のことは一切取り仕切って、永い間の手練てなれの世帯向きのように気が利いた。新吉の目から見ると、することが少し蓮葉はすはで、派手のように思われた。けれど働きぶりがき活きしている。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
まことの性質は霜夜の幽霊のように沈んで寂しいのかも知れないのに、行為ふるまいは極めて蓮葉はすはで、真夏のごときは「おお暑い。」と云うと我が家に限らぬ、他家よそでもぐるぐる帯を解く。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あらア、おばさん繁ちゃんが……。」お庄は蓮葉はすはな大声を出した。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
小さな帳場格子の内からと浴衣のなりで立つとひとしく、取着とッつき箪笥たんすのほのめく次の間のへだて葭簀よしず蓮葉はすはにすらりと引開けて、ずっと入ると暗くて涼しそうな中へ、姿は消えたが
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
羽織を脱いでほうり出して、帯もこんなに(なよやかに、つむりを振向く)あの、蓮葉はすはにしめて、「後生ごしょう、内証だよ。」と堅く口止くちどめをしました上で、宿帳のお名のすぐあとへ……あの
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しまっていたので、高島田にさした平打を抜いて、蓮葉はすはに、はらんばいになったが、絹蒲団にもつかえたか、動きが悪いから、するりと起き上って、こう膝を立てていましたッてね。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蓮葉はすは手首てくびつゝましげに、そでげてたもとけると、手巾ハンケチをはらりとる。……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蓮葉はすはなる笑声、小親にゃ聞えむかと、思わず楽屋なる居室いまかた見られたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やや蓮葉はすは白脛しらはぎのこぼるるさえ、道きよめの雪の影を散らして、はだを守護する位が備わり、包ましやかなおおもてより、一層世のちりに遠ざかって、好色の河童のたわけた目にも、女の肉とは映るまい。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お孝が一声応ずるとともに、崩れた褄は小間を落ちた、片膝立てた段鹿の子の、浅黄、くれないあらわなのは、取乱したより、蓮葉はすはとより、薬玉くすだまふさ切れ切れに、美しい玉の緒のもつれた可哀あわれ白々地あからさま
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
垢抜あかぬけして色の浅黒いのが、しぼりの浴衣の、のりの落ちた、しっとりと露に湿ったのを懊悩うるさげにまとって、衣紋えもんくつろげ、左の手を二の腕の見ゆるまで蓮葉はすはまくったのを膝に置いて、それもこの売物の広告か
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蓮葉はすはに云って、口惜くやしそうに力のない膝をめ合わせる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
時に、見返つた美女たおやめ風采とりなりは、蓮葉はすはに見えてつ気高く
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ッて蓮葉はすはに出て、直ぐ垣隣りの百姓屋の背戸を覗込のぞきこんで
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ほほほほほほ、」と蓮葉はすは仇気あどけなく笑ったが、再び
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おその、蓮葉はすはに裏口より入る。駄菓子屋の娘。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)