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萱
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かや
ふりがな文庫
“
萱
(
かや
)” の例文
「さては、成田
兵衛
(
ひょうえ
)
の小せがれだな」介は、もう許せないというように、太刀の
柄
(
つか
)
をにぎって、笑い声のした
萱
(
かや
)
の波へ躍って行った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
小房は恥しいほど胸が
顫
(
ふる
)
えるのを感じながら、辰之助の好きな白菊の一輪を
萱
(
かや
)
の中に活けた。柱懸けの
一節切
(
ひとよぎり
)
にはあけびの
蔓
(
つる
)
を
揷
(
さ
)
した。
柿
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
これ等にはほんの雨露を凌ぐといった程度のものから、巨大な
萱
(
かや
)
葺屋根を持つ大きな堂々とした建築物に至る、あらゆる階級があった。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
小屋の隅から三本の青い日光の棒が斜めにまっすぐに兄弟の頭の上を越して向ふの
萱
(
かや
)
の壁の山刀やはむばきを照らしてゐました。
ひかりの素足
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
覗
(
のぞ
)
き込むようにして見ると、髪を長く垂れた、等身大の幽霊の首に白い着物を着せたのが、
萱
(
かや
)
か何かを束ねて立てた上に覗かせてあった。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
▼ もっと見る
丘のすそをめぐる
萱
(
かや
)
の穂は
白銀
(
しろかね
)
のごとくひかり、その間から
武蔵野
(
むさしの
)
にはあまり多くない
櫨
(
はじ
)
の野生がその真紅の葉を
点出
(
てんしゅつ
)
している。
小春
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
愛一郎は、下草のなかにしゃがみこむと、夜目にもそれとわかる飛びだしナイフで、
萱
(
かや
)
のしげみをめちゃめちゃに切りまくった。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
萱
(
かや
)
を刈って来て一尺おき位に畑の周りに立てるのをシデカジメ、あるいはシオリカジメといい、共に
野猪
(
のじし
)
の害を防ぐ装置である。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
低
(
ひく
)
い
粟幹
(
あはがら
)
の
屋根
(
やね
)
から
其
(
その
)
括
(
くゝ
)
りつけた
萱
(
かや
)
や
篠
(
しの
)
の
葉
(
は
)
には
冴
(
さ
)
えた
耳
(
みゝ
)
に
漸
(
やつ
)
と
聞
(
きゝ
)
とれるやうなさら/\と
微
(
かす
)
かに
何
(
なに
)
かを
打
(
う
)
ちつけるやうな
響
(
ひゞき
)
が
止
(
や
)
まない。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
いばらや
萱
(
かや
)
の為めに傷ついた足や手から血を流してゐる事も知らぬらしく夢中によろ/\と歩いてゐる彼の姿は
宛
(
さなが
)
ら夢遊病者のやうであつた。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
あの
萱
(
かや
)
だけでも、お前さま、五百二十
把
(
ぱ
)
からかかりましたよ。まあ、おれは何からお話していいか。村へ大風の来た年には鐘つき堂が倒れる。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
嘗
(
かつ
)
て天皇の行幸に御伴をして、山城の宇治で、秋の野のみ草(
薄
(
すすき
)
・
萱
(
かや
)
)を刈って
葺
(
ふ
)
いた
行宮
(
あんぐう
)
に
宿
(
やど
)
ったときの興深かったさまがおもい出されます。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
小屋は、
田圃
(
たんぼ
)
わきの流れを
堰
(
せ
)
き止めた、せいぜい一坪ぐらいの池の上に、
萱
(
かや
)
の屋根を葺き出して三方を藁で囲ってある。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
元はゆるやかな砂丘つづきで、小松や
萱
(
かや
)
の生え茂っていたその海岸を縫って、近年観光のドライヴ・ウエイができた。
夜の若葉
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
しばらく
闃
(
げき
)
として声はなく、ただ
萱
(
かや
)
の風に
靡
(
なび
)
く音のみがサヤサヤと私の耳についていたが、途端に
嗚咽
(
おえつ
)
の音が洩れて
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
牀
(
ゆか
)
は低いけれども、かいてあるにはあった。其替り、天井は
無上
(
むしょう
)
に高くて、而も
萱
(
かや
)
のそそけた屋根は、
破風
(
はふ
)
の脇から、むき出しに、空の星が見えた。
死者の書
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
また建築に
譬
(
い
)
はば元禄は丸木の柱
萱
(
かや
)
の屋根に庭木は有り合せの松にても杉にてもそのままにしたらんが如く、天明は柱を四角に
鑽
(
き
)
り
床違
(
とこちが
)
へ
棚
(
だな
)
を附け
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
其畑の畔には
萱
(
かや
)
薄
(
すすき
)
が面白く穂に出て、捨て難い
風致
(
ふうち
)
の
径
(
こみち
)
なので其処だけわざ/\草を苅らずに置いたのであった。其れを爺さんが苅ってやると云う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
萱
(
かや
)
屋根のつま下をすれずれに、だんだんこなたへ引き返す、引き返すのが、気のせいだか、いつの間にか、中へはいって、土間の暗がりを
点
(
とも
)
れて来る。
眉かくしの霊
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寒い日に
体
(
からだ
)
を泥の中につきさしてこごえ死んだ
爺
(
おやじ
)
の
掘切
(
ほっきり
)
にも行ってみたことがある。そこには
葦
(
あし
)
と
萱
(
かや
)
とが新芽を出して、
蛙
(
かわず
)
が音を立てて水に飛び込んだ。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
竹の柱に
萱
(
かや
)
の屋根という、こんな家でもいいによッて、娘と二人していたいと思ッた,するとその連感で、自分は娘と二人でこの家の隣家に住んでいる者で
初恋
(新字新仮名)
/
矢崎嵯峨の舎
(著)
丘の表面には
萱
(
かや
)
、えにしだ、野
薔薇
(
ばら
)
などが豊かに生い茂り、
緻密
(
ちみつ
)
な色彩を交ぜ奇矯な枝振りを
這
(
は
)
わせて丘の隅々までも丹念な絵と素朴な詩とを織り込んで居る。
ガルスワーシーの家
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「山遊びなんて、僕もそんな
暢気
(
のんき
)
なことはしていられなくなってね。今日は、山巡りに来た
序
(
つい
)
でなものだから……どうも草盗まれて、
萱
(
かや
)
まで刈られんので……」
土竜
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
萱
(
かや
)
町にある果物問屋の前まで来て、馬車をとめた。
※
(
かねじん
)
という、伊予蜜柑を一手にあつかっている店である。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
生
(
お
)
い
茂
(
しげ
)
る立ち枯れの
萱
(
かや
)
をごそつかせた
後
(
うし
)
ろ姿の
眼
(
め
)
につくは、
目暗縞
(
めくらじま
)
の黒きが中を
斜
(
はす
)
に抜けた
赤襷
(
あかだすき
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そこで、屋敷のうちは、いよいよ静かなものでしたが、裏庭へ穴を掘って与八は、一括したものを投げ込んだが、その上へ
萱
(
かや
)
と柴を載せて、火をつけてしまいました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
さまざまの草
萱
(
かや
)
萩
(
はぎ
)
桔梗
(
ききょう
)
女郎花
(
おみなえし
)
の若芽など、
生
(
は
)
え
出
(
い
)
でて
毛氈
(
もうせん
)
を敷けるがごとく、美しき草花その間に咲き乱れ、綿帽子着た
銭巻
(
ぜんまい
)
、ひょろりとした
蕨
(
わらび
)
、ここもそこもたちて
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
一面に
萱
(
かや
)
や
芒
(
すすき
)
のなびいてゐるのと違つて、八ヶ岳の裾野は裏表とも多く
落葉松
(
からまつ
)
の林や、白樺の森や、名も知らぬ灌木林などで埋つてゐるので見た所いかにも荒涼としてゐる。
樹木とその葉:02 草鞋の話旅の話
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
萱
(
かや
)
や、
芒
(
すすき
)
や、
桔梗
(
ききょう
)
や、
小萩
(
こはぎ
)
や、一面にそれは新芽を並べて、緑を競って生え繁っていた。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
杉は未だ枝を交す程に伸びていない。下草の
薄
(
すすき
)
や
萱
(
かや
)
が思う存分に繁り合って、無遠慮に蔽い被さって来る。大きな岩の鼻を廻ると其蔭に、五、六人の若い娘達が草を刈っていた。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
二三町も行きますと
藪
(
やぶ
)
になっていて、土手の両方には
樒
(
しきみ
)
の赤い実が
鈴生
(
すずなり
)
になっている、
萱
(
かや
)
の繁って、白い尾花の
戦
(
そよ
)
いでいるだらだら坂になりますが、そのだらだら坂を下りますと
嵐の夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それは戦乱の世なら
萱
(
かや
)
や
薄
(
すすき
)
のように
芟
(
か
)
り倒されるばかり、平和の世なら自分から志願して
狂人
(
きちがい
)
になる位が
結局
(
おち
)
で、社会の難物たるに
止
(
とどま
)
るものだが、定基は
蓋
(
けだ
)
し丈の高い人だったろう。
連環記
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼が
其処
(
そこ
)
に走りついた時にも、火の手は背後にも、前にも幾層となく
縞目
(
しまめ
)
を
縒
(
よ
)
って追っていた。わずかな
芒
(
すすき
)
や
萱
(
かや
)
の節々の燃えはじける音は、一つの交響的なほどばしりになって寄せた。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
むかし
思
(
おも
)
へば
忍
(
しのぶ
)
が
岡
(
おか
)
の
名
(
な
)
も
悲
(
かな
)
しき
上野
(
うへの
)
の
背面
(
うしろ
)
谷中
(
や か
)
のさとに
形
(
かた
)
ばかりの
枝折門
(
しをりもん
)
、
春
(
はる
)
は
立
(
たち
)
どまりて
御覽
(
ごらん
)
ぜよ、
片枝
(
かたえ
)
さし
出
(
だ
)
す
垣
(
かき
)
ごしの
紅梅
(
こうばい
)
の
色
(
いろ
)
ゆかしと
延
(
の
)
びあがれど、
見
(
み
)
ゆるは
萱
(
かや
)
ぶきの
軒端
(
のきば
)
ばかり
たま襻
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
爆撃の翌日、川平地区で二人の農民がこの枯れた
萱
(
かや
)
を刈って担いで帰ったところ、その翌日草の当たった両手両足および肩にかゆい紅色の丘疹を生じ、それはかぶれに似ていて数日で治った。
長崎の鐘
(新字新仮名)
/
永井隆
(著)
栗鼠
(
りす
)
は木の幹を上り下りしてキイキイ声で鳴きしきる。山鳩は空を輪のように舞って一斉に下へ落として来てもすぐまた空へ翔け上がる。豹は岩蔭で唸っているし水牛は
萱
(
かや
)
の中で
顫
(
ふる
)
えている。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのとき、今まで、泉の上の小丘を
蔽
(
おお
)
って静まっていた
萱
(
かや
)
の穂波の一点が二つに割れてざわめいた。すると、割れ目は
数羽
(
すうわ
)
の
雉子
(
きじ
)
と
隼
(
はやぶさ
)
とを飛び立たせつつ、次第に泉の方へ真直ぐに延びて来た。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
萱
(
かや
)
で添木を作ってやった。枯れた葉を一枚一枚むしりとってやった。枝を剪んでやった。
浮塵子
(
うんか
)
に似た緑色の小さい虫が、どの薔薇にも、うようよついていたのを、一匹残さず除去してやった。
善蔵を思う
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
裏の行きとまりに低い
珊瑚樹
(
さんごじゅ
)
の
生垣
(
いけがき
)
、中ほどに形ばかりの
枝折戸
(
しおりど
)
、枝折戸の外は三尺ばかりの流れに一枚板の小橋を渡して広い
田圃
(
たんぼ
)
を見晴らすのである。左右の隣家は
椎森
(
しいもり
)
の中に
萱
(
かや
)
屋根
(
やね
)
が見える。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
萱
(
かや
)
びさし間なくしづくの打つ音に涼しくなりぬ夏の夜の雨
礼厳法師歌集
(新字旧仮名)
/
与謝野礼厳
(著)
そこには
萱
(
かや
)
の中に二つ三つの黒い石の頭が見えていた。
草藪の中
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
雉子
(
きじ
)
啼
(
なく
)
や茶屋より見ゆる
萱
(
かや
)
の中 蓑立
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
萱
(
かや
)
の枯れ穂に来ちや
雨情民謡百篇
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
「覚明……。お身は二十年の精進と徳行とを一瞬に無に帰してしまわれたの。千日
刈
(
か
)
った
萱
(
かや
)
を、一時の
憤懣
(
ふんまん
)
に焼いてしまわれた——」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一向人も来ないやうでしたからだんだん私たちは
恐
(
こは
)
くなくなってはんのきの下の
萱
(
かや
)
をがさがさわけて
初茸
(
はつたけ
)
をさがしはじめました。
二人の役人
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
カオルのほうは、力があまって、
萱
(
かや
)
のしげみのなかへ、のめりこんだが、愛一郎に手をつかまれているので、起きあがることができない。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
古い
地誌
(
ちし
)
にはここは広い野で、
萱
(
かや
)
が千駄も苅れるところから、
千駄萱
(
せんだがや
)
といったのが村の名のおこりであろうと書いてある。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
サクサクサクと落葉を踏んでサヤサヤと
萱
(
かや
)
の葉を分け、そして後にはまた一陣の強風がザワザワと全山の梢をひとしきり騒がせて立ち去った後には
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
いばらや
萱
(
かや
)
のために傷ついた足や手から血を流していることも知らぬらしく、夢中によろよろと歩いている彼の姿はさながら夢遊病者のようであった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
汀
(
なぎさ
)
の、
斜向
(
はすむこ
)
うへ——
巨
(
おおき
)
な赤い蛇が
顕
(
あら
)
われた。蘆
萱
(
かや
)
を引伏せて、鎌首を挙げたのは、
真赤
(
まっか
)
なヘルメット帽である。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
萱
漢検準1級
部首:⾋
12画
“萱”を含む語句
萱草
萱堂
茅萱
青萱
萱葺
萱原
苅萱道心
木萱
御萱堂
刈萱
苅萱
萱野
萱笠
高萱
萱山
萱屋
萱門
萱場
尾萱
萱莚
...