“かや”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:カヤ
語句割合
蚊帳49.5%
16.2%
14.5%
9.7%
蚊遣3.2%
蚊屋1.5%
茅萱0.6%
萱草0.6%
蚊幮0.6%
0.6%
(他:16)3.0%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
この子は、母よりも父のほうをよけいにしたっていて、毎晩六畳に父と蒲団ふとんを並べ、一つ蚊帳かやに寝ているのです。
おさん (新字新仮名) / 太宰治(著)
一とおり用意も出来て、階下の六畳、——その頃正三は階下で寝るようになっていた、——の蚊帳かやにもぐり込んだ時であった。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
風がまたどうと吹いて来て窓ガラスをがたがた言わせ、うしろの山のかやをだんだん上流のほうへ青じろく波だてて行きました。
風の又三郎 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼が長屋から出て来ると入れちがいに、数名の人影が、かや彼方かなたを通って、駄菓子屋の裏表へ入ってゆくのが見えた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、かやぶきの家と小さい庭のある曲がりくねった道を通ったのち、あまり立派でもない教会の玄関の前に着いたのです。
十丈二十丈の高さの斷崖の頭の方は篠笹の原かかやの野になつて居り、その下は殆んど直角に切り落ちて露出した岩の壁です。
新しい僕の家の庭には冬青もちかや木斛もっこく、かくれみの、臘梅ろうばい、八つ手、五葉の松などが植わっていた。
追憶 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
喜太夫は、かやの葉を、縁でべ初める。その煙が逃げてゆくひさしに、薙刀なぎなたのような宵月がしていた。
大谷刑部 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あたしも汗をながそう」とおみやは云った、「新さん済まないけれど蚊遣かやりをいてちょうだい、わかるでしょ」
目の先に見える屋根の間からは、炊煙だか、蚊遣かやだかがうっすらと水のように澄みわたった空に消えて行く。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
高品さん夫妻にさえ話さず、売り残って半ば不用の本の詰った四つの本箱や、机や、やぶれ蒲団ぶとんや穴だらけの蚊屋かや
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
高く釣った蚊屋かやの中にしょんぼり坐っているのは年とった主婦で、乱れた髪に鉢巻をして重い病苦に悩むらしい。
やもり物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
金線草みづひき紫茉莉おしろいの色々、茅萱かや穂薄ほすすき露滋つゆしげ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あごで、指したあたりに、茅萱かや小径こみちの方へ、枯れながらなびいていた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
一首の意は、あなたが今旅のやどりに仮小舎をお作りになっていらっしゃいますが、若し屋根葺く萱草かやが御不足なら、彼処あそこの小松の下の萱草をお刈りなさいませ、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
無花果いちじくの下に萱草かやの咲きたるは心にとまらず。
わが幼時の美感 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そして単に薬餌やくじを給するのみでなく、夏は蚊幮かやおくり、冬は布団ふとんおくった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蚊幮かやの外に小さく燃えているランプの光で、独寝ひとりねねやが寂しく見えている。
あそび (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこで上りかまちに腰をかけて懐中ふっくらからその貰うた指環をば出いて、てのひら中央まんなかへ乗せて、タメツ、スガメツ引っくりかやいておりますと、背後うしろからヌキ足さし足、覗いて見た親父おやじが、大きな拳骨で私の頭をゴツウ——ンと一つらわせました。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雛鶏ひなどり家鴨あひると羊肉の団子だんごとをしたぐし三本がしきりにかやされていて、のどかに燃ゆる火鉢ひばちからは、あぶり肉のうまそうなかおり、ちぢれた褐色とびいろの皮の上にほとばしる肉汁の香りが室内に漂うて人々の口に水をかしている。
糸くず (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
太田川を渡り二里太田駅。芳野屋庄左衛門の家に宿す。熱甚。しかれども風あり。此駅に到て蠅大に少し。蚊は多し。此夜かやを設く。行程七里きよ
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
長塚節氏の『はりの如く』の中に「四日深更、月すさまじくえたり」という前書があって、「硝子戸を透してかやに月さしぬあはれといひて起きて見にけり」外二首の歌がある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
すべてを片づけてから、夜の十時過になって、始めて蚊㡡かやの外まで来て、一言ひとこと見舞を云うのが常であった。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
燭の影がことさら青く見えたわけは、光秀のまわりに翠紗すいしゃ蚊㡡かやが広くめぐっていたからであった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天平六年、新羅しらぎに遣はさるる使人等の一行は、ここ志賀の浦波に照りかへす月光を看て、遠くも来にける懐郷の涙をしぼり、志摩郡の唐泊からどまりより引津泊ひくつどまりに移り、可也かやの山べに小男鹿さをしかの声の呦々えう/\たるを聴き、次で肥前国狛しまに船をとどめたりしその夜の歌にいはく
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
早四郎は障子を開けたなと思っていますと、ぷつり/\と、吊ってありましたかや吊手つりてを切落し、寝ている上へフワリと乗ったようだから、
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
早「ねぶったかね/\、お客さん眠ったかえ……居ねえか……約束だから来ただ、かやの中へひえってもいかえひえるよ、入っても宜いかえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ここは淀川の北岸、山崎ノ郷。古くは、河陽かやの離宮やら江口神崎におとらぬ灯やら、関所もあった跡だという。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「幸ひ、池の端かや町の江島屋良助の伜良太郎が、フトした折にお關を見染めた」
吾背子わがせこ仮廬かりほつくらすかやなくば小松こまつしたかやらさね 〔巻一・一一〕 中皇命
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
岡に寄せ我が刈るかや狭萎草さねがやのまことなごやろとへなかも (同・三四九九)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここにすなはちその海邊の波限なぎさに、鵜の羽を葺草かやにして、産殿うぶやを造りき。
——夏は葭戸でもこしらえ、新しいきれいな蚊帖かやでもあげようと思います。
和漢の古書のみを研究して西洋日新の学を顧みず、いにしえを信じて疑わざりし者は、過ぎたる夏の景気を忘れずして冬の差入りに蚊帷かやを買い込むがごとし。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼は眼を開けて時々蚊張かやの外に置いてある洋燈ランプを眺めた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
次にヲザホの王は葛野かずのの別・近つ淡海の蚊野かやの別の祖先です。
細君は漸く體を動かし始めて、かやつた糊を拭き取つたり、飛び散つた文殼を纒めたりして、鼻を啜り上げながら其邊を片附け始める。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「奧さん雜巾は?」と三藏はかやつた糊皿を見て心配さうに細君の顏を見る。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
備中賀陽かやの良藤という者が、狐の女と婚姻して年久しくわが家の床下に住み、多くの児女を育てていたという話なども、昔の人には今よりも比較的信じやすかったものらしい。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)